メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

特別編Ⅰ 第32回社会福祉士国家試験 午前<共通科目>問題の講評

はじめに

 まずは皆さん、大変お疲れ様でした。試験からまだそれほど時間が経っていませんが、解答速報や問題の見直しなどをして、少し冷静に試験を振り返れるようになったのではないでしょうか?

 ただ、合格ラインはまだわかりませんので、合否に関係なく、第32回試験の振り返りをしておいてください。合格した人は、さらに現場実践での「知」となりますし、不合格だった人は、来年度の受験に向けて、反省したり課題を見つけ出したりと、準備を進めることができます。合格発表(3月13日(金))までの約50日間を有効に使ってください。何もしなくても50日。何かをしても50日です。

 それでは、今回は、「午前<共通科目>問題」の講評です。

基礎の確実な習得と、それを生かす応用力が必要でした

 今週と来週の2回に分けて、第32回社会福祉士国家試験の講評を行いたいと思います。今回は、午前<共通科目>問題(精神保健福祉士との共通科目の問題)についてです(解答速報の閲覧登録はこちらから)。
 午前<共通科目>の試験科目は以下の11科目で、試験時間は10時から12時15分までの135分(2時間15分)でした。

  • ■ 人体の構造と機能及び疾病(7問)
  • ■ 心理学理論と心理的支援(7問)
  • ■ 社会理論と社会システム(7問)
  • ■ 現代社会と福祉(10問)
  • ■ 地域福祉の理論と方法(10問)
  • ■ 福祉行財政と福祉計画(7問)
  • ■ 社会保障(7問)
  • ■ 障害者に対する支援と障害者自立支援制度(7問)
  • ■ 低所得者に対する支援と生活保護制度(7問)
  • ■ 保健医療サービス(7問)
  • ■ 権利擁護と成年後見制度(7問)

 講評ですから、短絡的に「難しい問題でした」とか、「やさしい問題でした」とか、「よい問題でした」とか、「悪問でした」とか、主観的なことはあまり書かないようにしたいと思いますが、そうはいっても…。まず、私が実際に解いてみた感想を少し述べると、問題自体は、「基本的な内容を問う問題」を中心に、「現代の社会問題や福祉に関する知識」が問われ、全体的な印象としては、「基礎の確実な習得と、それを生かす応用力が問われた」というところでしょうか。このことから、日頃から新聞などで時事を抑え、過去の問題をきちんと学習していれば解答できる内容が中心でしたので、「昨年同様の難易度(やや易しい)」という印象です。ですから、合格ラインは、6割90点ぐらい(昨年度の89点+α)が目安となると個人的には思います。詳細をもう少し記してみると、「午前の共通科目、午後の専門科目共に、昨年同様の難易度で、基本を押さえておくことである程度は得点ができた。ただし、各科目1~2問程度のやや難しい問題が含まれていた」「事例問題は、相談援助系の事例問題は全体的に易しく、その他の事例問題も、知識と実践を問う応答問題ではあるものの全体的に易しい」という印象でした。皆さんはいかがでしたか?

 過去の問題や、各種模擬問題をはじめ、中央法規の講義などで私が取り上げた基礎的な内容も問われていたので、制度や統計、基本的事項をしっかりと押さえていた方は、かなり明確、明瞭に解けた問題が多かったのではないでしょうか。また一方で、各科目で、新たに問われた項目もありました。多少、用語や法律・通知、人名などがわからなくても、設問文をしっかり読み、その内容や時代背景、福祉の変遷や動向などをしっかり捉えることで、正答までたどり着ける問題が多くありました。そういった意味では、一つひとつの設問の誤りを指摘できる力が必要でしたので、項目に対する関連知識が必要でした。このように、社会福祉士の試験では、福祉の動向や変遷などをきちんと理解しておくことが重要であることがわかるでしょう。

 さて、試験直後から、第32回試験を受けた方から感想をいただいているのですが、「しっかりと暗記しておけば、意外と解けた問題が多かった」、「問題文をよく読めば、初めての語句や・用語であっても内容が理解できた」、「2つ選ぶ問題が多かったが、問題文をしっかり読んで挑むことで得点できた」といった感想を多くいただいています。私も同感です。しっかりと統計や法律、用語などについて整理していた人は、あとはじっくりと、まちがえなく問題を読解さえすれば解答できた問題が多かったと思います。ただ、やはり、実際の試験となると、そう冷静でなんていられないのもまた事実ですが。

 また、前述しましたが、法律や制度についても多く出題されていました。事前に法律や制度にあたっていた人は、確実に得点できたと思います。この統計や制度に関しては、毎年必ず問われますし、非常に重要な学習ポイントであることがわかります。さらに、このような問題は、図表での出題がありませんので、過去問や模擬問題を繰り返し、文章に慣れ、問題に慣れていた人は確実に得点できたと思います。

 午前<共通科目>問題の総評として、本年度の試験の合否を分ける大きなポイントは、用語や概念、理論についてしっかりと理解できていたかどうかだと思います。本年度の試験は、用語や概念、理論にかなり忠実な問題が多かったため、しっかりと学習し、理解していた場合、明快に解答できたと思います。さらに、この基礎知識を具体的に活用する場面が事例などで出題されており、ある意味で応用的な問題であったと言えます。

 事例問題については、昨年同様に短文の事例問題がちりばめられていました。また、各問題間及び各科目間の問題の難易度にバラつきがあったため、根気よく、確実に、わかる問題を得点できたかが重要だと思います。途中で投げ出してしまったり、初めのほうに難しい問題があったので先入観で本年度の試験を「難しい」と捉えてしまった方は、苦戦したと思います。

 それでは、各科目について、それぞれ講評していきたいと思います。

人体の構造と機能及び疾病(7問)

 本科目の出題傾向は、昨年とほとんど変わりませんでした。つまり、出題基準からバランスよく、広範囲の事項について出題されていました。各問題をみてみると、問題1、問題3では、「人体の構造と機能」や「消化器の構造と機能」について問われ、問題2は、定番ですが「加齢に伴う病態」について問われました。これに加え、ICFや、アルマ・アタでの宣言などの健康に関する定義(問題4、5)や、脳卒中やリハビリテーションについても問われました。予想していた内容としては、このほか、「がん」や「認知症」「DSM-5」がありましたが、そちらは問われませんでした。また、各設問の「誤りの設問文」の「誤り」が微細な情報であったり、わかりにくいなど、受験生にとってはやや難しかった科目かもしれません。

心理学理論と心理的支援(7問)

 本科目に関しては、昨年度も広範囲な事項が満遍なく出題されていました。ただし、テキストワークブック過去問解説集模擬問題集などをしっかりと学習していた人は比較的簡単に解けたのではないでしょうか。問題8、9については、心理学概論の基礎的な知識が問われました。具体的には、問題8で、「学習」について、「順応」「馴化」から、「馴化」について問われました。馴化とは、「脳・中枢のレベルで起こる反応の低下」で、具体的には、「ある刺激が長時間繰り返し与えられることにより、その刺激に対して鈍感になり、反応が徐々に見られなくなっていく現象」です。また、問題9では、パーソナリティについて問われました。このほか、問題12、13では、ストレスに関する問題が出題されました。中央法規の「実力アップ講座」に参加された方は、できましたよね? 「ハーディネス」に「脱人格化」、やりましたよね。最後の問題は、例年出題されます「心理療法」でした。

社会理論と社会システム(7問)

 本科目から続く社会学系の科目が苦手の人は多いですが、社会学系の科目は、現代社会を学問的に捉える力を試すものです。つまり、現代社会の問題と、それを科学的に整理する力(理論:人名や功績など)が必要になります。実際の問題を見てみると、問題15では、ヴェーバーの支配の3類型((1)伝統的支配、(2)カリスマ的支配、(3)合理的支配)から、「合理的支配」の具体的内容が問われました。また、問題19では、社会的行為からパーソンズの「主意主義的行為理論」について問われました。このほか、社会学の基礎となる用語として「コンパクトシティ」「囚人のジレンマ」「構築主義」などが問われていました。残念ながら、貧困に関する用語や人名とその理論については出題されませんでしたが、これから社会福祉士として活躍するためには重要な知識なので、「ジニ係数」「相対的貧困率」など、心に留めておきましょう。

現代社会と福祉(10問)

 本科目は、まず、現代社会の問題をきちんと理解していることが重要となります。そして、それを社会福祉学的に理解するために必要な項目が出題されていました。具体的な内容を見ておくと、まず、「社会福祉法」から2問出題されていました(問題22、29)。このほか、「一億総活躍社会」「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策」「義務教育段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」などが出題されていました。昨年の第31回試験では、「ヘイトスピーチ解消法」や「性同一性障害や性的指向・性自認」「育児・介護休業法:介護休業制度」「最低賃金制度」が出題されていましたね。これらの問題は、日頃から「いかに現代社会の動向に関心を向けているか」が重要になり、新聞などを通して時事に精通しておくことが重要です。この傾向は、今後も続くと思いますので、解けなかった受験生の皆さんは、日頃から新聞などを通して現代社会の動向に関心を向けておくことが重要です。よって、本科目は、基礎的な知識などの理解とともに、現代社会の理解が問われており、内容的にはやや難しい科目の中に入るかと思います。

地域福祉の理論と方法(10問)

 本科目の問題は、幅広い分野から問題が出題されていました。地域福祉の推進する社会福祉協議会や地域住民、民生委員、ボランティアの内容から始まり、事例問題では、社会福祉協議会の福祉活動専門員の対応事例が問われました。このほか、地域福祉を展開するために必要な基本的内容が問われていたことが特徴のように思います。本科目の難易度的には、内容が広範であることや、実践事例に関する事例問題が問われたこと、暗記を主とする用語を問う問題が出題されたことを総合すると、「やや難しかった」科目と言えそうです。

福祉行財政と福祉計画(7問)

 本科目の内容は、大別すると、(1)福祉行財政、(2)福祉計画の二つに分けることができます。内容的にも、かなり広範にわたり出題されていました。(1)で出題を予想していた地方財政に関する統計的な内容は、例年出題される「地方財政白書」からの出題がありました。こちらについては、地方の財政を理解するためにも社会福祉士に必須の知識となります。基礎的な用語を押さえた上で、各項目の統計を整理する学習をきちんとしていれば解けた問題です。そして、(2)は、この財政を基盤として策定されるものです。全部で4問出題されましたが、やや詳細を問う内容となっていました。福祉計画については、こちらの4問を中心に復習をしておきましょう。また、社会福祉士として活躍される皆さんは、地域で策定される福祉計画をもとに、我々の地域福祉が実施されますので、一読しておきましょう。

社会保障(7問)

 社会保障は、「働く人が支える仕組み」ですので、現代の「働く人」の状況を的確に理解する力が必要です。ですから、現代の「働く人」の実情については重要ポイントです。労働人口や人口の動向や推計については、必ず整理しておかなければなりません。第32回試験では、問題50で「社会保障費用統計」から出題され、問題51では、社会保障に関する歴史的変遷について問われました。また、例年出題されていますが、「年金保険」「医療保険」「労働保険(労働者災害補償保険)」については、その詳細が問われました。このように、本科目は、学習に取り掛かる際に、専門的な用語やその仕組みの理解から始めなければいけないので、「苦手意識」を持つ方も多いですが、実際の問題では、基礎さえきちんと理解していれば、解答できる問題もたくさんあります。また、社会福祉士にとって、社会保障に関する知識は、実践の中でも重要となりますので、わからなかった問題は必ず復習しておきましょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援法(7問)

 本科目の問題は、昨年同様に、基礎的な内容を問うものが多く出題され、そういった意味では、標準レベルの難易度でした。例えば、問題56「障害者の実態調査」、問題57「障害者福祉制度の発展過程」などの例年問われる問題がから始まり、「障害者総合支援法」の基本的内容を問う問題が出題されました。この他、問題62では、通常『更生保護制度』の科目で取り扱われる「医療観察制度」について問われました。キーワードとしては、「重大な他害行為」「社会復帰調整官」「生活環境の調査」「生活環境の調整」「精神保健観察」でしょうか。現在、国や社会、国民から「更生保護」(例えば保護観察や医療観察)における社会福祉士をはじめ精神保健福祉士に対する期待は大きなものです。そういった意味では、社会福祉士として、マスターしておく項目と言えます。出題されなかったもので、重要項目としては、「障害者差別解消法」「障害者虐待防止法」については、必ず各自で復習しておきましょう。

低所得者に対する支援と生活保護制度(7問)

 本科目は、出題基準から万遍なく出題されており、例年通りの内容、例年通りの難易度でした。低所得者の状況を問う問題から始まり、生活保護の8つの扶助や、原理原則(生活保護の基準)、福祉事務所の組織と業務、低所得者の支援を行う組織・制度などについて問われていました。事例問題については、福祉事務所の生活保護現業員の対応に関する問題が出題され、「自立」への支援と、保護の申請に関する支援について問われています。出題されなかった項目としては、「生活困窮者自立支援制度」です。こちらは、実践現場で必ず遭遇する社会資源です。各自で、復習しておきましょう。

保健医療サービス(7問)

 本科目は、内容的に出題基準を網羅する内容で、基本的な内容が問われました。例年出題される「国民医療費の概況」については、本年度は出題されませんでした。国民医療費については、「現在の医療」を把握するために重要な指標・統計ですので、必ず整理しておいてください。このほか、例年出題されている「医療保険制度」「医療施設」などが出題されていました。加えて、他職種の理解として、保健師や訪問リハビリテーション(理学療法士)について問われていました。事例問題は、退院支援と末期患者の家族への対応について出題されていました。難易度としては例年通りですが、診療報酬制度や、多職種連携・協働、チームケア(医療)、「医療」と「介護」の連携(平成30年診療報酬改定)などの出題はありませんでした。現代の医療や保健医療サービスを理解するためには、「国民医療費」や「診療報酬制度(高額療養費制度や保健外併用療養)」、「インフォームドコンセント」や「ACP(アドバンスケアプランニング)」「医療事故調査制度」、「クリティカルパス」や「IPW(インタープロフェッショナルワーク)」といった内容は、整理しておきましょう。

権利擁護と成年後見制度(7問)

 本科目は、(1)憲法・民法・行政法、(2)成年後見制度、(3)権利擁護といった構成で出題されました。まず、(1)憲法・民法・行政法では、問題78で契約に関する内容(民法)や、問題79で「行政処分に対する不服申し立て」ついて問われました。このほか、成年後見制度に関する幅広い知識が問われました。出題が予想された「成年後見関係事件の概況」について、統計に関する問題や、(3)の権利擁護に関する問題は出題されませんでした。権利擁護=虐待や暴力・搾取については、ソーシャルワークの定義(グローバル定義)や社会福祉士の倫理綱領等でも、「人権」の理念として重視していますので、それを根拠とする各種の虐待防止法については、必ず整理しておきましょう。第32回試験は(本科目に限らず)、「人権」や「権利擁護」についてやや取り扱いが不十分な気もしました。こちらは、近年益々注目される項目でありソーシャルワーカーにとって必須の知識となります。また、成年後見制度もソーシャルワーカーにとって必須の知識です。例えば、「法定・任意後見制度」や、「後見・保佐・補助」など、基礎的な内容は各自で整理しておきましょう。必ず必要となる知識ですし、ソーシャルワーカーとして臨床をしていけば必ず出会う事柄です。

おわりに

 以上、雑駁ですが、第32回社会福祉士国家試験の午前<共通科目>問題の講評でした。この原稿は、皆さんが受験をされた当日の深夜から翌日にかけて作成しました。試験当日夕方から第32回試験を解いた後、本講座の原稿作成のためにさらに2回、よって、すでに、全問題を3往復以上読み、吟味しています。

 前述したとおり、受験した方から試験の感想が寄せられていますが、皆さん、やはり不安なようです。本年度の試験は、基礎をしっかりと積み上げ、それを活用できる力を養ってきた人(やはり、過去問解説集模擬問題集などをしっかりと、繰り返し解いてきた人)は、相当の得点ができたと思います。そういった意味では、わかっていた問題を間違えたり、できる問題を落としたりといった小さなミスが合否に大きく影響する可能性があります。また、一発勝負の試験ですので、当日の体調や心の動き、さまざまな環境要因や状況などは、合否に影響を与えます。

 ただ、何はともあれ、結果は結果。それを真摯に受け止め、これからの実践に活かしてもらいたいと思います。

 冒頭でもお話ししましたが、合否に関係なく、もう二度と見たくない、開きたくない試験問題、テキストかもしれませんが、ここで復習しておくことが、必ずこれからの力になります。

 次回は、「特別編(2) 第32回社会福祉士国家試験・午後<専門科目>問題の講評」です。