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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第29回 クローズアップ~福祉行財政と福祉計画

 今回は、「福祉行財政と福祉計画」で特に理解しておくべきポイントについて解説します。

「福祉行財政と福祉計画」のポイントの振り返り

 本科目の内容を大別しますと、「福祉行政・福祉行財政に関する理解」と「福祉計画に関する理解」の2つが求められていることがわかります。まず、前者の「福祉行政・福祉行財政に関する理解」には、出題基準の大項目の1.福祉行政の実施体制、2.福祉行財政の動向の2項目が含まれ、後者の「福祉計画に関する理解」には、3.福祉計画の意義と目的、4.福祉計画の主体と方法、5.福祉計画の実際の3項目が含まれています。

 本科目の傾向としては、上述の5項目よりかなり広範にわたって出題されており、内容としては、例年、都道府県や市町村の役割、国と地方との関係など、福祉行政の実施体制について問われています。この他、介護保険給付費の負担や保育所運営費、民間の助成など福祉の財源、福祉計画などの実施状況の評価・監視に関する問題も問われています。また、例年出題されている『地方財政白書』などの統計も問われ、「福祉行財政の動向」が出題されています。福祉計画では、「福祉計画等の策定」や各種福祉計画策定に際して、相互の連携に関する各福祉法の規定に関する問題が出題されています。

 このことから、本科目の攻略法は国や地方の役割や機能を整理しておくこと、特に地方における財源や役割・機能についてよく学習、整理しておくことが重要です。まず、勉強の取りかかりとして、皆さんが勤務する機関、または生活する都道府県、市区町村の地域福祉計画を一読してみてください。現在は、高齢者、障害者、児童、地域、保健医療、安全、災害対策などの包括的な計画として策定しているところが多く、地域福祉計画から、その地域がどのような生活や未来を目指しているのかがわかります。さらに、このなかから「圏域」をどのように捉えているのかも読みとってください。この圏域は、地域によって違っています。

国・都道府県の役割

国の役割

 国の役割としては、法定受託事務と自治事務についての整理が必要です。法定受託事務とは、本来、国が果たすべき事務を地方公共団体が受託する第一号法定受託事務と、本来、都道府県が果たすべき事務を市町村が受託する第二号法定受託事務とがあります。

 ここでは、第一号法定受託事務について整理しておきますが、第一号法定受託事務とは適切な処理を特に確保する必要から国が処理基準を定めることができ、例えば、助言・勧告、資料提出要求、同意、許可・認可・承認、指示、代執行、協議など、その事務に対する国の特別な関与が認められています。

 さらに、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(地方分権一括法)施行後の地方公共団体の福祉行政における法定受託事務は、生活保護法による保護、社会福祉法人の認可、福祉関係手当の支給、福祉施設の認可があります。

 次に、自治事務についてですが、自治事務は地方公共団体の処理する事務のうち、法定受託事務を除いたものをいいます。また、自治事務には、法律に定めのない自治事務と法令に定めのある自治事務とがあり、国の技術的助言や勧告、資料提出要求など、国の特別な関与が認められています。さらに、地方分権一括法施行後の地方公共団体の福祉行政における自治事務は、社会福祉関係法による措置や福祉サービス利用者からの費用徴収、自治体の独自事業があります。

都道府県の役割

 都道府県の役割としては、福祉行政の広域的調整、事業者の指導監督など、市町村の役割としてはサービスの実施主体、介護保険制度における保険者としてのそれぞれの役割や機能などがありますので、その詳細については整理しておいてください。

 ここで、少し整理しておきたい用語は、「地方分権」です。近頃、地方が元気になっており、地方自治や分権化について議論されるようになっていますので、理解している人も多いのではないでしょうか。地方分権とは、「日本国憲法で定める地方自治の理念に基づき、その地域住民のニーズに応答し、全般的な住民の福祉を達成するために、地方自治体の業務に関わる権限と責任を国から地方へ委譲すること」をいいます。用語については、再度確認しておきましょう。

 地方公共団体についても整理しておきますが、地方公共団体は法人であり、普通地方公共団体と特別地方公共団体に大別できます。

 このほか、都道府県の主な福祉行政の業務については、必ず整理しておきましょう。例えば、都道府県は、社会福祉法人や社会福祉施設の許可、指導および監督、更生相談所や児童相談所などの設置、補助金の配分などがあり、これらの業務は、専門性や広域性、効率性に配慮する必要があります。

 また、市町村の役割についても整理しておきましょう。簡単に整理しておきますと、市町村は、地方自治法の規定で、基礎的な地方公共団体であるとされており(図参照)、都道府県が処理することとされているものを除いて、一般的に、地域における事務を処理することとなっています。具体的には、市町村長の事務部局として条例で部局を置くことができ、市には福祉事務所の設置が義務づけられています。

図 地方公共団体の分類図

 以上の国、都道府県、市町村の特徴や役割、業務を理解したうえで、国と地方との関係についても整理しておいてください。

福祉計画

 福祉行政における福祉計画とは、「法令に根拠をもつ計画」と「行政計画」の2つに分けることができますが、この福祉計画は、国や都道府県・市町村などの地方公共団体などが策定の主体となります。

 前者の「法令に根拠をもつ計画」は、根拠となる法に基づいて、計画作成主体、計画の趣旨、事業の目標などが示されており、例えば、障害福祉計画、介護保険事業計画などがこれに当たります。後者の「行政計画」は、計画策定に際しての根拠となる法律はありませんが、具体的には、各都道府県の行政計画(総合発展計画)の社会福祉分野の部門別計画として策定される例が多く、事業目標の策定と計画期間内に整備すべきサービス基盤などを数値目標として示し、国が策定を求めている計画に連動しているなどの特徴をもっています。

 ここでは、地域福祉計画について整理しますが、地域福祉計画は、2000(平成12)年6月の社会福祉事業法等の改正によって社会福祉法に新たに規定された事項であり、市町村地域福祉計画や都道府県地域福祉支援計画などがあります。また、この地域福祉計画の策定にあたっては、各地方自治体が主体的に取り組むこととなっており、地域住民の意見を十分に反映させながら策定する計画であり、今後の地域福祉を総合的に推進するうえで大きな柱となっています。

 福祉計画で重要なことは、行政主導ではなく、地域住民を主体として地域全体で福祉の今後を考え、計画していくということです。

老人福祉計画

 老人福祉計画は、老人福祉法に基づく行政計画であり、1990(平成2)年の老人福祉法改正によって、地方公共団体に策定が義務づけられました。その目的は、老人福祉の事業に係る全般的な基盤整備で、都道府県、市町村それぞれに策定が義務づけられています。

 都道府県老人福祉計画は、都道府県が定める区域ごとの養護老人ホーム、特別養護老人ホームの必要入所定員総数やその他の老人福祉事業の量の目標、老人福祉施設の整備および老人福祉施設相互間の連携のために講ずる措置に関する事項、老人福祉事業に従事する者の確保または資質の向上のために講ずる措置に関する事項、老人福祉事業の供給体制の確保に関して必要な事項を策定するとされています。

 市町村老人福祉計画は、市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の具体的な量的目標や老人福祉事業の量の確保のための具体的方策、老人福祉事業の供給体制の確保に関して必要な事項を定めることとされており、さらに市町村内の要援護高齢者数や障害の状況、養護の実態などを勘案して策定されます。

 そして、これら都道府県および市町村の老人福祉計画は、それぞれの介護保険事業計画と一体のものとして策定されなければなりません。また、それぞれに地域福祉計画との調和が保たれる必要があるため、すべての福祉計画は、交互に関連、作用していることがわかります。

障害者計画

 障害者計画は、障害者基本法によって、国に対して策定が義務づけられている行政計画の一つで、平成15年度から平成24年度までの10年間を計画期間として、リハビリテーションとノーマライゼーションの理念に基づき、啓発・広報をはじめ、生活支援や生活環境、教育・育成、雇用・就業、保健・医療、情報・コミュニケーション、国際協力の8分野について基本的な方向性を示しています。また、老人福祉計画と同様に、都道府県および市町村に障害者計画、障害福祉計画の策定が義務づけられています。なお、市町村障害者計画の策定については、はじめは努力義務でしたが、平成19年度から義務となっています。

 第三次の障害者基本計画の対象期間は平成23年度から平成29年度(5年間)でした。この計画では、社会の実現に向けて、障害者を必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体と捉え、障害者が自らの能力を最大限に発揮し、自己実現ができるように支援するとともに、障害者の活動を制限し、社会への参加を制限している「社会的な障壁」を除去するために、政府が取り組むべき障害者政策の基本的な方向を定めています。また、基本原則としては、(1)地域社会における共生、(2)差別の禁止、(3)国際的協調が挙げられています。さらに、この原則に基づき、(1)生活支援、(2)保健・医療、(3)教育・文化芸術活動・スポーツ等、(4)雇用・就業、経済的自立の支援、(5)生活環境、(6)情報アクセシビリティ、(7)安全・安心、(8)差別の解消及び権利擁護の推進、(9)行政サービス等における配慮、(10)国際協力の10分野について基本的な方向性を示しています。

 これに加えて、平成30年度からの5カ年計画「第4次障害者基本計画」についても、整理しておく必要がります。基本理念としては、「共生社会の実現に向け、障害者が、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加し、その能力を最大限発揮して自己実現できるよう支援」するとしています。これに加え、1)2020東京パラリンピックも契機として、社会のバリア(社会的障壁)除去をより強力に推進する、2)障害者権利条約の理念を尊重し、整合性を確保する、3)障害者差別の解消に向けた取り組みを着実に推進する、4)着実かつ効果的な実施のための成果目標を充実する、といった4つの基本的方針を示しています。 このように、障害者基本計画の詳細については、必ず整理しておいてください。

 また、障害者領域では、障害者総合支援法に基づき、市町村障害者福祉計画、都道府県障害福祉計画が策定されています。少しだけ解説しておくと、都道府県障害者福祉計画は、前述の都道府県障害者計画(障害者基本法)や、都道府県地域福祉支援計画(社会福祉法)その他の法律の規定に則る計画であって障害者等の福祉に関する事項を定めるものとの調和が保たれなければならないとしています。さらに、医療法の規定する医療計画を相まって、精神科病院に入院している精神障害者の退院の促進に資するものでなければならないとしています。また、2016(平成28)年の児童福祉法改正により、厚生労働大臣が定める基本指針に即して、市町村障害児福祉計画、都道府県障害児福祉計画の策定が義務付けられました(2018(平成30)年施行)。

子ども・子育て支援事業計画

 2015(平成27)年の子ども・子育て支援法の施行により、市町村子ども・子育て支援事業計画、都道府県子ども・子育て支援事業支援計画の策定が義務付けられました。また、本法に基づき、内閣総理大臣は、教育・保育および地域子ども支援事業の提供体制を整備し、子ども・子育て支援給付ならびに地域子ども・子育て支援事業および仕事・子育て両立支援事業の円滑な実施の確保その他子ども・子育て支援のため施策を総合的に推進するための基本指針を定めることになっています。なお、次世代育成支援対策法に規定される次世代育成支援行動計画は、子ども・子育て支援法の施行にあたり、その策定が義務から任意へと変更されました。ただし、従業員101人以上の一般事業主には、職業生活と家庭生活との両立を支援するための雇用環境の整備等について、一般事業主行動計画の策定と従業員への周知が義務付けられており、従業員100人以下の一般事業主については努力義務とされています。

以上、「福祉行財政と福祉計画」の解説でした。次回は、「クローズアップ~社会保障」です。

「私」あっての福祉支援 ~健康管理が大切

 一段と寒くなってきましたね。季節の変わり目です。体調管理は大丈夫でしょうか? 試験を乗り越えるためには、常に健康でいることが大切です。どんなに勉強しても、試験当日に体調が悪くては本来の力を発揮することはできません。日頃から体調管理には気をつけておきましょう。

 対人援助においては、サービスの道具として、援助者自身があげられます。そういった意味では、援助者である自分自身の健康を保つことは、ソーシャルワーカー(社会福祉士)にとってとても大切な責務といえます。つまり、「私」あっての福祉援助です。

 とはいえ、季節の変わり目は心身ともに減退するものです。特に、睡眠と栄養摂取を意識して過ごしてほしいと思います。

 いよいよ今期も、実力アップ講座(社会福祉士受験対策講座(セミナー))が全国で始まります。今年度の私が担当する講義は、東京をスタートに、福岡、ラストは大阪です。参加を予定されている皆さん、まずは基礎的な用語を事前学習しておいてください。セミナーでは、試験に出題される可能性が高い重要項目に絞って解説いたします。

 それでは、皆さん、会場でお会いしましょう。

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