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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第28回 クローズアップ~地域福祉の理論と方法

 今回は、「地域福祉の理論と方法」で特に理解しておくべきポイントについて解説します。

「地域福祉の理論と方法」のポイントの振り返り

 本科目は、1)地域福祉の基本的考え方、2)地域福祉の主体と対象、3)地域福祉に係る組織、団体、及び専門職や地域住民、4)地域福祉の推進方法の4項目から幅広い分野の問題が出題されています。内容としましては、3)地域福祉に係る組織、団体、及び専門職や地域住民から最も多く出題されていますが、この項目は独立しているわけでなく、1)地域福祉の基本的考え方、2)地域福祉の主体と対象の基本的な考え方や基礎の知識と関連しています。また、4)の地域福祉の推進方法では、事例問題が出題されることも多く、この事例問題は1)2)3)の応用問題となっています。このことから、各項目を独立させて学習するより、全項目を関連づけて整理、学習することが、本科目の学習のコツとなります。

 また、社会福祉法人や特定非営利活動法人をはじめ、社会福祉協議会とボランティア活動や組織などについて整理しておいてください。特に、近年の社会福祉法の改正に伴い、社会福祉法人の抜本改革がはじまっています。ここでは、社会福祉法人のあり方や組織や役員等の役割も大きく変わりました。必ずチェックしておいてください。本科目との関連では、社会福祉法人の「地域における公益的な活動」です。社会福祉法人は社会福祉事業を主たる事業とする非営利法人であり、制度や市場原理では満たされないニーズについても率先していく取り組みとして掲げられた新たな事業と言えます。

 さらに、地域のネットワーキングを中心に、社会資源の活用・調整・開発、地域ケアシステムの構築方法の整理が必要です。また、福祉サービスの評価方法についても、「社会福祉法」に規定されているので確認しておいてください。

 最後に、「コミュニティケア」についても確認しておきましょう。これは、自分の生活する地域を自分たちの手でつくり、育て、保つことを前提とし、子育ても、高齢者の介護も、障害者の地域生活も、地域の治安や安全も、すべて地域の問題として捉え、地域住民みんなが取組む課題として認識していくという考え方です。

わが国における地域福祉の最近の動向

 「地域福祉」という言葉は、言葉が適切かどうかわかりませんが、社会福祉分野におけるいわゆる“トレンド(流行・傾向)”です。高齢者、障害者、児童などすべての福祉が、地域による支え合いを前提として、法整備をしています。特に、現代の社会福祉においては、「コミュニティ」という概念が重視されており、また「コミュニティケア」という、地域住民の自治意識が重視されます。「コミュニティケア」とは、前述しましたが自分の生活する地域を自分たちの手でつくり、育て、保つことを前提とし、子育ても、高齢者の介護も、障害者の地域生活も、地域の治安や安全も、すべて地域が抱える問題として捉え、地域住民みんなが取組む課題として認識していくという考え方です。今回は、1950年代まで日本の多くの地域社会の形態であった「伝統的地域社会」と、1950年代から1970年代までの「現代都市社会」、1970年代以降の「コミュニティ(ケア)」について整理したいと思います。

 「伝統的地域社会」とは、いわゆる村落共同体で、相互扶助に重きが置かれ、密接なつながりがある反面、閉鎖的で、自由や自立を拘束するという側面をもつ特徴があります。

 次に「現代都市社会」ですが、これは伝統的地域社会の崩壊を意味し、地域のしがらみから個人を解放したところに特徴があります。しかしその反面、地域の人々の結びつきは希薄になり、孤独な社会となって、問題が潜在化する傾向にあります。例えば、孤独死や家庭内暴力(DV)、児童虐待、貧困などの問題が、社会へと顕在化されることなく家族内の問題とされる傾向があります。

 最後に「コミュニティ(ケア)」ですが、これは、現代都市社会のマイナス面を受け、伝統的地域社会への回帰でなく、個人の自由を前提とし、新たな地域で人間関係や相互扶助を模索する理念として捉えられています。そして、この1970年以降の「コミュニティ」や「コミュニティケア」については、イギリスの理論や実践が日本で取り入れられます。そして、その主導は、社会福祉協議会がリーダーシップをとり、近年、コミュニティ(ケア)の主体は「住民」であることが強調されています。このことから、本科目では、イギリスの福祉の発展過程、社会福祉協議会の発展過程、『内容や役割、住民主体』の福祉が出題されています。これに加えて、「地域包括ケアシステム」「我が事・丸ごと共生社会」などについては、各自整理しておきましょう。合わせて、「日常生活圏域」についても整理しておきましょう。

 地域社会が以上のように変化してきたことをよく理解しておく必要があります。地域の関係性の希薄化が、昨今報道されている高齢者の孤独死や児童虐待などの問題と関連しているのです。また、忘れてはいけない2011年3月11日に起きた大震災や大津波後の震災復興に関する内容、熊本地震、西日本豪雨災害など(その後も各地で、豪雨災害や地震災害などが続いています)、近々では、千葉の台風豪雨災害に関するボランティア活動についても、整理しておくとよいと思います。さらに、ボランティア活動やNPOについても整理しておいてください。これらの問題は、対象者個人だけの問題ではなく、その個人と、その個人を取り巻く環境との調整がうまくいっていないことで生じています。ソーシャルワーカーは、その相互作用面・接触面の調整の役割を担っています。そのため、個人の理解とともに、地域社会や社会情勢の理解も必要になってきます。

「地域福祉の理論と方法」の傾向と対策

 どの科目においても必ずといってよいほど問われていますが、歴史・発展過程に関する内容については必ず整理しておきましょう。地域福祉の歴史的変遷や具体的施策に関する内容についての理解が重要です。例えば、シーボーム・レポート(報告)やバークレイ・レポート(報告)は重要であるとともに、過去の旧カリキュラムの「地域福祉論」では、出題の頻度が高い事項でした。また、現代では、住民参加型の地域福祉の重要性がいわれています。

 次に、「社会福祉法」から始まり、「介護保険法」「障害者総合支援法」などの地域福祉サービスの体系に関する内容の整理が大切です。特に、2000(平成12)年の社会福祉法の改正に伴い、同法第4条に「地域福祉の推進」が明文化され、いわば、国の福祉のあり方は地域での支え合いや地域における福祉を前提としています。さらに、第4条の2が加わり、より具体的な地域福祉推進の方向性が示されました。

社会福祉法 第4条 地域福祉の推進
地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

第4条の2
地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 さらに、社会福祉および地域福祉の推進に関する内容の整理が必要となります。これは、支援体制や組織化だけでなく、その担い手といったところにまで及んでいます。列挙してみますと、「民生委員・児童委員」「社会福祉協議会」「社会福祉法人」「ボランティア」「NPO」「NGO」などがあげられます。これらの組織や担い手については必ず整理しておいてください。どれも重要です。特に、「社会福祉協議会」「ボランティア」「NPO(特定非営利活動法人)」の3つについては必ず整理しておきましょう。

 また、地域の相談活動に関する内容も重要です。従来からその拠点として重要な「社会福祉協議会」の役割については、ほぼ例年出題されています。また、介護保険法では「地域包括支援センター」、障害者総合支援法では「障害者の地域相談支援」なども重要です。

 最後に、近年の地域福祉施策の動向に関する内容についてですが、例えば「住民参加型のサービス」や「地域における自立支援体制(例えば、ソーシャルサポート)」、「民間事業者等の活用・連携」といったテーマ、また、サービスの適正化として「苦情処理の仕組み」や「第三者評価」などの学習、また「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」などに関する知識を習得しておく必要があります。

 用語として理解しておく必要があるものとしては、「福祉サービス第三者評価事業」「運営適正化委員会」「民生委員」などがあげられます。これらの用語の理解が不明確な人は、社会福祉用語辞典などを利用して内容の理解を深めておいてください。

地域福祉の促進

 前述のとおり、地域福祉、すなわち地域支援は、現代の社会福祉における主流でありますし、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の重要な役割・機能といえます。前述した社会福祉法第4条の一文はとても重要なので、よく理解しておいてください。

 そもそもこの動きは、1980年代以降に強まったのですが、この時期は「コミュニティケア」「在宅福祉」「コミュニティオーガニゼーション」といった言葉が定着した時期ともいえます。併せて、社会福祉協議会の役割や機能、歴史的変遷についても整理しておきましょう。

 そして、現在では、「福祉」とは、国や都道府県が保障するものから市町村や地域といった「コミュニティ」、そして住民が一体となって「支え合う」ことが重要とされています。このとき、国や都道府県はあくまでもサブとなり、地域住民や市町村の活動を支持する立場にあることを理解しておく必要があります。すなわち、まったく国や都道府県が「地域の生活」に介入しないわけではありません。ついては、国や都道府県の役割や負担などについても整理しておく必要があります。

「地域福祉の理論と方法」のまとめ

 本科目は、前述しましたが、現代の社会福祉を捉えるためにとても重要な知識が詰まった科目といえます。それは、現在の福祉自体が、地域支援や自立支援を前提としており、さらにその担い手として、地域住民や地域で着実に事業を行う社会福祉法人やNPO法人が重要視されているからです。もちろん、それだけの担い手では、複雑化・多様化する現代の福祉ニーズに対応することはできませんので、民間の事業所や大手の事業所のサービス提供も重要となります。これらのバランスによって、双方の利点を活かすとともに、欠点を補うような補完関係にあることが大切だと思います。そういった意味では、ネットワーキングの意義や方法及び実際についても理解しておく必要があります。

 しかし、昨今の報道などをみてみますと、地域のなかで取り残される社会的な弱者への支援が届かず、孤独死や虐待といった問題が頻繁に引き起こっています。「自分の生活には関係ない」という意識は、コミュニティケアという概念においてはありえない考え方です。コミュニティケアの基礎は、「自分の住む街だからこそ、自分たちでオリジナルなまちづくりをする」というような思考から成り立っています。

 そういった意味では、福祉の問題を地域レベルで考えていく力が重要です。例えば、児童虐待、家庭内暴力(DV)、高齢者介護、障害者の自立支援、ホームレスの自立支援など、対象者の脆弱性に着目し、その人自身の抱える問題を矯正するのではなく、地域の問題として、住民全体、社会全体で取り組むことが重要といえます。つまり、個人が抱える問題をみんなで支えるといった視点が必要なのです。

 ここまでで出てきた用語や法律については、必ず確認しておいてください。本科目は、きちんと用語や法律を理解しておけば得点ができる科目です。また、併せて、社会福祉協議会の役割の整理、学習をしておいてください。

 以上、「地域福祉の理論と方法」の解説でした。次回は、「クローズアップ~福祉行財政と福祉計画」です。

秋の深まり

 徐々に秋になってきました(いや、急に?)。夏の暑さはなくなりました。秋は、夏に比べ、少し落ち着いて、ものを考えたり、読み物をじっくり読んだりできる時期ですね。
 皆さんも、ぜひ、この過ごしやすい秋の時間を大切にしてください。これから寒くなりますと、朝晩の勉強がつらくなりますからね。
 季節の変わり目ですので、皆さん、体調管理を万全に、ご自愛ください。

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