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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第20回「高齢者に対する支援と介護保険制度」のポイント

 さて、今回は、「高齢者に対する支援と介護保険制度」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。今回も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準で整理していきます。

本科目のねらい

 本科目の出題基準によると、大項目として、1.高齢者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉・介護需要(高齢者虐待や地域移行、就労の実態を含む。)、2.高齢者福祉制度の発展過程、3.介護の概念や対象、4.介護予防、5.介護過程、6.認知症ケア、7.終末期ケア、8.介護と住環境、9.介護保険法、10.介護報酬、11.介護保険法における組織及び団体の役割と実際、12.介護保険法における専門職の役割と実際、13.介護保険法におけるネットワーキングと実際、14.地域包括支援センターの役割と実際、15.老人福祉法、16.高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)、17.高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)、18.高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)の18項目があげられています。

 以上の項目はそれぞれ独立しているわけではなく、他項目と深く関連しています。そのため、それぞれを関連づけて学習していくことが効率のよい学習の仕方だと思います。

第31回試験をみてみると…

 本科目は、昨年度と同様に、全10問中2問が短文の事例問題でした。本科目では、やはり、科目タイトルになっている「介護保険制度」に関して、しっかり出題されます。例えば、介護保険法における組織や団体の役割・専門職や、地域包括支援センターについても問われています。この他、高齢者に関わる保健医療福祉施策の展開についても問われました。あと、第30回試験では『高齢社会白書』(内閣府)についても問われています。このように、実態や動向といった統計や調査を基にした問題については、毎年出題されていますので、過去問をベースにチェックしておいてください。
 過去連続で出題されている介護過程・介護技術に関する内容については、問題128で「片麻痺」の杖歩行について、問題129で「認知症ケア:認知症総合支援事業(認知症初期集中支援チーム)」について問われています。

 それでは、出題基準で取り扱われる18項目を、ここでは7つに大別して整理していきたいと思います。

各項目の詳細について

(1)高齢者福祉概論
1.高齢者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉・介護需要(高齢者虐待や地域移行、就労の実態を含む。)、2.高齢者福祉制度の発展過程、15.老人福祉法

 (1)高齢者福祉概論では、3つの項目が該当しますが、ここでは1項目について解説したいと思います。

 1.高齢者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉・介護需要では、高齢者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢について整理するとともに、高齢者の福祉需要、高齢者の介護需要を整理する必要があります。高齢者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢については、『厚生労働白書』(厚生労働省)や『高齢社会白書』(内閣府)などを活用して、概観を掴んでおくとよいでしょう。また、高齢者の福祉需要としては、高齢者虐待の実態、高齢者の地域移行や就労の実態について整理しておく必要があります。さらに、高齢者の介護需要としては、要介護高齢者の実態、認知症高齢者の実態について整理しておく必要があります。

 過去の問題を見てみると、第31回試験では、問題126で、日本における高齢者の保健・福祉に係る政策について、「老人福祉法」「老人保健法:現・高齢者の医療の確保に関する法律」「ゴールドプラン」「「介護保険制度」について問われています。併せて、問題134では、「老人福祉法」に関する老人福祉施設の設置に関する規定や、国及び都道府県、市町村、社会福祉法人等の役割について問われています。これに加え、民生委員法に規定される民生委員の役割についても問われています。この2問では、高齢者政策に関する広範の知識が問われています。しかし、詳細の内容というより、基本的な内容を問うものなので、過去問ベースで整理しておきましょう。第30回試験では、前述した通り、『高齢社会白書』からの出題がありました。こちらは第29回、第28回試験でも問われた統計資料です。過去の問題で取り扱われた項目を中心に『高齢社会白書』を一読しておきましょう。第26回試験では、問題126で「我が国の人口の高齢化の動向」について問われ、総務省の「人口推計」や国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」「日本の世帯数の将来推計」などから出題されています。さらに、第26回の問題127では「国民生活調査」による高齢者の所得状況に関する問題が出題されています。今年度も、このような統計・調査を基にした動向や実態を問う問題が出題される可能性が高いので、必ずチェックしておいてください。また、問題127では、老人福祉法に関する展開についてその具体的内容が問われています。1963年の法律制定以降の変遷について問われています。また、老人福祉法に基づく市町村の「福祉の措置」の対象について問われています。

(2)介護概論
3.介護の概念や対象、5.介護過程、8.介護と住環境

 ここでは、3つの項目をまとめて解説したいと思います。

 まず、5.介護過程では、介護過程の概要や介護の技法についての理解が重要です。介護過程について整理してみると、(1)情報の収集→(2)収集された情報をもとに整理、分析、評価(課題や問題の明確化)→(3)介護計画の立案→(4)介護計画の実施・施行→(5)実施計画の評価・修正というプロセスをたどります。(1)(2)はアセスメント、(3)はプランニング、(4)はインターベンション、(5)モニタリングと呼ばれます。

 また、介護の技法では、ボディメカニクス、歩行や車いす等の介助、食事・口腔衛生の介護、入浴・清潔の介護、排泄の介護、薬の管理と服薬、内部障害者(心臓ペースメーカーや消化管ストマ、人工透析など)の介護、視覚・聴覚および言語障害者の介護、寝たきり者の介護、事故時の対応と応急手当、睡眠の介護などがあげられます。これらの項目については、一読しておけば十分対応できる内容なので、必ず一度目を通しておいてください。

 3.介護の概念や対象では、介護の概念と範囲、介護の理念、介護の対象などについての理解が重要です。特に、介護福祉士の倫理綱領や義務規定などについて学習しておく必要があります。

 8.介護と住環境では、高齢者が使用する部屋や寝室などの配慮について整理しておいてください。住環境の整備は、具体的には、段差解消、歩行確保、手すりや滑りにくい床、戸、色彩や照明と採光、室温や介護者用の介護スペースなどについて整理しておくとよいでしょう。

 過去の問題を見ておくと、第31回試験では、前述した通り、片麻痺の杖歩行(三動作歩行)に関する「杖」と「足」の動かす順番について問われています。第30回試験は、問題128で「対麻痺」の状態を問うもので、対麻痺とは、「両側の下肢に麻痺」がある状態を指します。このほか、「片麻痺」「交叉性麻痺」「単麻痺」「四肢麻痺」について問われています。それがどのような状態なのかは、各自で調べておきましょう。また、問題129は、嚥下障害を有する人への食事介護のあり方について問われています。さらに、第29回試験では、問題130の高次脳機能障害に対する排泄介護に関する事例問題が出題されています。このほか、第27回試験では、問題128で「移動の介護」について、問題129で「片麻痺がある人への介護の観点から見た浴室の環境整備」などが出題されています。また、第26回試験でも、問題130で「右麻痺の高齢者に対する介護の方法」について問われています。このように、障害や麻痺については、科目「人体の構造と機能及び疾病」の人体の部位と病変に関する問題などで出題されていますので、連動させて整理しておきましょう。

(3)ケア―認知症・終末期ケア
6.認知症ケア、7.終末期ケア

 ここでは、2つの項目をまとめて解説したいと思います。

 まず、6.認知症ケアでは、認知症自体の理解が必要になります。大別すると、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあげられます。それぞれの特徴については、整理しておいてください。

 認知症ケアの原則としては、認知症の特徴を理解し、心理的変化、日常生活動作(ADL:Activity of Daily Living)、生活歴や職業歴、趣味や嗜好・習慣などを正しく理解したうえで、尊厳ある生活の維持を目標とします。また、ここでも個別化の原則が適応され、一人ひとりの生活習慣や障害の状態などに合わせた介護(支援)計画の策定が重要となります。さらに、回想法などの効果的なケアや支援方法がありますのでよく整理しておきましょう。

 次に、7.終末期ケアでは、人間観や倫理についてよく理解しておいてください。近年、ソーシャルワーカー(社会福祉士)が、終末期(ターミナル)に関わるケースが増えてきています。今後、事例問題としても出題される可能性がとても高い項目だと思いますので、しっかりと整理しておきましょう。

 第29回試験では、本項目からの出題はありませんでしたが、第30回試験では、問題130で「緩和ケアチームにおけるソーシャルワーカーの役割」に関する事例問題が出題されています。また第28回試験の問題129で「介護老人福祉施設における介護保険の看取り介護加算」が関連する項目としてあげられ、また問題128の地域包括支援センターにおける社会福祉士の初期対応に関する事例問題が出題されました。さらに、第24回、第23回試験では、終末期の支援について、事例問題が出題されています。また、第23回試験、第22回試験では、認知症ケアに関する事例問題等が出題されています。このように、今後も、事例問題などで、認知症ケア、終末期ケアについては出題される可能性が高いので、過去問ベースで整理しておきましょう。