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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第14回 「権利擁護と成年後見制度」のポイント

2.成年後見制度

 本項目では、相談援助活動において必要となる成年後見制度(後見人等の役割や機能を含む。)について理解することが重要となります。そのため、成年後見の概要、保佐の概要、補助の概要、任意後見、民法における親権や扶養の概要、成年後見制度の最近の動向などについての理解が必要です。

 まずは、成年後見制度を少し復習しておきましょう。成年後見制度は、2000(平成12)年4月に、民法の一部を改正する法律(従来の禁治産・準禁治産的考えと擁護の廃止、後見・保佐制度の改正)、任意後見契約に関する法律及び後見登記等に関する法律により誕生した新たな制度です。こんなふうに解説すると、とてもわかりにくいですよね。

 では、2000(平成12)年4月から始まった制度はなんでしょう? それは、「介護保険制度」です。この介護保険制度は、従来の「措置(行政処分)」にかわり、「契約」に基づく利用者に対する福祉サービスの提供という新たな福祉の枠組みを示したものです。つまり、福祉サービスを受ける利用者は、利用者自ら、サービス提供者と「契約」を行うことで、福祉サービスを受けることができるのです。よって、「契約」を行うことができない者は、福祉サービスを受けることができない事態となってしまいます。そこで、介護や福祉サービスを必要とする契約が困難である認知症高齢者や知的障害者、精神障害者等が適切に契約を行うことができるような仕組みを創設したのです。この契約を代理するものが、後見人、保佐人、補助人というわけです。その詳細は、以下の図で整理しておきますので、チェックしてください。ここでのポイントは、「代理権」と「取消権・同意権」の内容です。「代理権」は、文字通り本人にかわり契約を「代理」します。一方、「取消権・同意権」は、本人と契約相手とを仲介・仲裁する形で「取消や同意」を行います。

図表 補助・保佐・後見制度の概要
  補助開始の審判保佐開始の審判後見開始の審判
条件対象者と判断能力精神上の障害(例えば、
認知症や知的障害、精神障害など)により、判断能力が不十分な者
精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者
開始手続き本人との同意必要不要不要
申し立て権者(1)本人、(2)配偶者、(3)4親等内の親族、(4)検察官、(5)任意後見受任者、任意後見監督人(任意後見契約に関する法律)、(6)市町村長
代理権付与の対象申し立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為同左財産に関する全ての法律行為
付与の手続き補助開始の審判+同意権付与の審判+本人の同意保佐開始の審判+代理権付与の審判+本人の同意後見開始の審判
本人の同意必要必要不要
責務身上配慮義務本人の心身の状態及び生活の状況に配慮する義務同左同左
同意権・取消権付与の対象申し立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」民放の第13条1項の特定行為
  • (1)元本の領収・利用
  • (2)借財または保証
  • (3)不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  • (4)訴訟行為
  • (5)贈与、和解または仲裁合意
  • (6)相続の承認・放棄、財産の分割
  • (7)贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申し込みの承諾、または負担付遺贈の承認
  • (8)新築、改築、増築または大改修
  • (9)長期にわたる賃貸借
日常生活に関する行為以外の行為
  • (1)狭義の財産管理を目的とする法律行為
  • (2)生活または療養監護(身体監護)を目的とする法律行為
  • (3)これらの法律行為に関連する登記の申請や要介護認定などの申請などの公法上の行為
  • (4)これらの後見事務に関して生ずる紛争についての訴訟行為
付与の手続き補助開始の審判+同意権付与の審判+本人の同意補佐開始審判後見開始審判
取消権者本人・補助人本人・補佐人本人・後見人

 成年後見制度で、もう一つだけ整理しておきますね。それは、「法定後見制度」と「任意後見制度」についてです。まず、「法定後見制度」は〈法律に基づく後見制度〉で、「任意後見制度」は〈契約に基づく後見制度〉です。つまり、「法定後見制度」は、「法律(家庭裁判所の審判)」により開始される後見の仕組みです。一方、「任意後見制度」は、「契約」に基づくため、契約ができない状態の者は、利用することができませんので、将来的に自己の判断能力が低下した場合の後見人等を予め決めておくものです。この契約では、公正証書を作成し、任意後見契約を登記しておきます。

 過去の問題を見ておくと、第31回試験では、問題80で、成年後見開始等における統計問題が出題されています。出典は「成年後見関係事件の概況」です。過去にも本資料からの出題があるので一読しておきましょう。ただし、第31回試験では、成年後見制度の詳細内容については出題されていませんので、それ以前の過去の問題に当たっておく必要があります。例えば、第30回試験では、任意後見制度について問われています(問題79)。前述の通り、任意後見制度とは、〈契約に基づく後見制度〉で、事前に後見の契約をしておくということになります。よって、必要な際は、本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者が家庭裁判所に監督人の選任申立てを行い、家庭裁判所が「本人の判断能力が不十分である」と判断した時に「任意後見監督人」の選任をして、効力が発生することとなります。また、第29回試験では、問題81で「保佐及び補助」について問われています。さらに、問題82では、「成年後見登記事項証明書の交付事務を取り扱う組織」について問われています。後者については、一問一答なので、解説しておくと、成年後見登記事項証明書の交付事務を取り扱うのは、「法務局」です。こちらは、このまま暗記してしまいましょう。また第28回試験では、法定後見における保佐に関する問題が問われています。このほか、第27回試験では、法定後見における補助(問題80)について問われています。また、第28回、第27回試験共に、成年後見制度をめぐる近年の動向や成年後見関係事件の概況について問われており、例年、成年後見制度に関する問題は、2問程度出題され、さらに事例問題でも問われています。このように、成年後見制度については、臨床現場でも頻回に遭遇するケースですので、現時点でしっかりと理解しておいてください。一度、現場で成年後見のケースを受け持つと、その内容がはっきりとみえてきます。そういった意味では、現場で成年後見制度の事例をもっている人はかなり有利だと思います。

3.日常生活自立支援事業

 本項目については、日常生活自立支援事業の概要を理解するために、専門員の役割、生活支援員の役割、日常生活自立支援事業の最近の動向などについて具体的に整理しておくことが重要です。

 社会福祉基礎構造改革に伴う社会福祉法の成立により、利用者保護制度として、地域福祉権利擁護事業(社会福祉法の第二種社会福祉事業)が創設され、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者などの自己決定能力が低下した人々の福祉サービス利用を支援するため、民法の成年後見制度を補完するシステムとして、都道府県及び指定都市社会福祉協議会において実施されています(社会福祉法第81条等)。この対象は、在宅生活者に限定されることなく、福祉施設入居者も適応であり、2007(平成19)年度から地域福祉権利擁護事業の名称が「日常生活自立支援事業」と改名されました。具体的な事業内容としては、(1)福祉サービスの利用援助、(2)苦情解決制度の利用援助、(3)住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助などです。さらに、これに伴う援助の内容は、預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)、定期的な訪問による生活変化の察知です。この事業も、現場ではよく見聞きし、また実際に利用することが多い事業となりますので、しっかりと学習しておきましょう。

 第30回試験では出題されませんでしたが、第31回試験、第27回試験では、ズバリ「日常生活自立支援事業」に関する問題が問われています。