メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第5回 「心理学理論と心理的支援」のポイント

 さて、今回も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準に即した内容を中心に、「心理学理論と心理的支援」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。

 新年度の新しい環境に疲れている方も多いかもしれませんが、無理は禁物です。「空を見上げて、一呼吸」してみましょう。5月の空は気持ちがいいですよ。ゴールデンウィーク、みなさん、思い思いの空の下、思い思いの時間を過ごしたことと思います。新年号「令和」もスタートしましたね。平和、そして幸多き時代になればと思います。

本科目のねらい

 本科目の出題基準によると、大項目として、1.人の心理学的理解、2.人の成長・発達と心理、3.日常生活と心の健康、4.心理的支援の方法と実際の4つがあげられています。

第31回試験をみてみると…

 本科目に関しては、昨年度も広範囲な事項が満遍なく出題されていました。ただし、テキストワークブック過去問解説集模擬問題集などをしっかりと学習することで得点につながっています。問題8「動機づけ」、問題9「感覚・知覚」、問題10「記憶」、問題11「適応:防衛機制」などの<人の心理学的理解(心理学概論)>の項目については、しっかりと読み込ませ、詳細の知識と正しい理解を問う問題です。こちらは、例年の傾向で、難易度は例年通りです(やや難しいと言うことです)。この他、「心理療法」については、出題頻度も高く、重要項目です。内容としては、問題14で、「行動療法に関連する心理療法(技法)」について問われています。さらに、〈ストレス〉については、コーピングについて問われました。「問題焦点型コーピング」は、「ストレッサーに向き合い、直接的に問題の消去や提言を図るもの」で、一方「情動焦点型コーピング」は、「ストレッサーには向き合うことはせず、楽しいことを考えることで怒りや悲しみなどの感情の緩和を図るもの」です。また、問題13は、数年に一度出題される「心理検査」について問われました。

 以上、今後も、出題基準から万遍なく出題され、難易度としても60%を問うような問題が出題される可能性が高いです。そのため、基礎や用語などを適切に整理、暗記しておくことが重要です。また、試験当日は緊張もあってか頭が混乱しているので、丁寧に読み進めないとイージーなミスをしてしまう可能性がある科目でもあります。基礎的な用語や知識について、適切に理解していることが重要です。
 では、出題基準で取り扱われる4つの項目をもとに整理していきます。

各項目の詳細について

1.人の心理学的理解

 本項目は、10項目に細分化されています。それは、1)心と脳、2)情動・情緒、3)欲求・動機づけと行動、4)感覚・知覚・認知、5)学習・記憶・思考、6)知能・創造性、7)人格・性格、8)集団、9)適応、10)人と環境です。

 この10項目は、人を心理学的に理解するうえでどれも重要な概念です。どの項目についてもしっかりと学習しておく必要があります。過去問でも、この項目から数問出題されています。本科目は、例年7問出題されますが、本項目については、半分の4問前後が出題されていることになります。そういった意味で、非常に重要な項目であることがわかります。

 少し整理してみると、第31回試験では、「動機づけ:内的動機づけ(問題8)」「感覚・知覚(問題9)」「記憶(問題10)」「防衛規制(問題11)」について問われています。基礎的な知識を具体的な内容で問うような形式で出題されています。これらは、過去問ベースで整理しておきましょう。また、第30回試験では、問題8で「帰属過程・原因帰属」について問われています。簡単に説明すると、出来事や時との行動の原因を推論することで、「内的帰属」と「外的帰属」に分類されます。文字通り、「内的帰属」は、原因を行為者側に求めるもので、行為者の能力や性格などが原因であると帰属されるのに対し、「外的帰属」は、原因を行為者の置かれている状況に求めるもので、行為者を取り巻く環境や時間的問題が原因であると帰属されるものです。第30回試験の問題8では、「内的帰属」の実例が問われました。正答としては「1.(自分の)勉強不足に原因がある」となります。それ以外は、「2.問題が難しかった」「3.電車が遅れて遅刻した」「4.運が悪かった」「5.教師の指導力不足」といった選択肢が並び、これらは前述の「外的帰属」の例となります。このように、用語をしっかりと整理しておけば、解答可能な問題が並びます。本科目で重要なことは、わからない用語をそのままにするのではなく、過去問解説集などをベースにきちんと整理しておくことです。このほか、問題9は「オペラント条件づけ」について問われ、これは学習理論におけるスキナーの研究で、「スキナー箱:ネズミがバーを押せば餌が出る箱」に代表される「ネズミが餌を得るためのバー押し反応を頻回に行う。このような自発的な行動について、餌という「報酬(強化子)」が行動を促進し、罰が行動の抑制をもたらす条件」、これを「オペラント条件づけ」と呼びました。このほか、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ):パブロフや、試行錯誤学習:ソーンダイク、モデリング(観察学習):バンデューラなどの研究が有名です。こちらについては、必ず整理しておきましょう。

 さらに過去の問題を見ておくと、第29回試験では、「記憶」について問われ、なかでも「エピソード記憶」について出題されています。「エピソード記憶」とは、個人的に体験した出来事についての記憶で、設問文を借りれば「昨晩、近くのファーストフード店でハンバーグカレーを食べた」といった記憶をいいます。

 以上、本項目は、用語と実例を問う応用的な問題が出題されます。こちらは、出題頻度も高く、過去の問題をはじめ、参考書などでも整理されているので、そちらを参考に「暗記」しておきましょう。また、第27回試験では、人格・性格について問われ、「パーソナリティ」について出題されています。やや踏み込んだ内容ですが、これを機に整理しておきましょう。パーソナリティ理論については、問われた特性論のほかに、類型論というものもあります。合わせて整理しておきましょう。さらに、第26回試験では、「欲求・動機づけと行動」で、「マズローの人間の動機または欲求理論」に関する問題が問われました。マズローについては、近年の出題頻度はそれほど高くありませんが、基本的な内容であり、重要な内容でもあるので、必ず整理しておいてください。この他、「集団」についても出題され、「集団の機能」に関する内容が問われています。具体的には、PM理論や集団思考などが問われていました。この集団については、「社会理論と社会システム」や、専門科目の「福祉サービスの組織と経営」といった科目でも出題される知識のため、関連させて学習すると効果が得られやすいと思います。

 このように、本項目は、過去の問題からもわかるように、全7問中2~3問程度出題される重要項目と言えます。前述しましたが、用語と概念がきちんと整理されていることが重要です。テキストワークブックの知識は確実に頭に入れておきましょう。

2.人の成長・発達と心理

 本項目は、「発達の概念」について理解することが目的となります。特に、発達の定義、発達段階、発達課題、生涯発達心理、アタッチメント、アイデンティティなどに関する学習が必要です。また、喪失体験に関する知識の習得も重要となります。具体的には、ピアジェやエリクソンの発達段階説の整理が大切といえます。この項目からも例年必ず出題されています。今後も必ず問われる項目だと思いますので、よく理解しておいてください。

 第31回、第29回、第28回、第27回試験では出題されませんでしたが、第30回試験では、久しぶりですが、ピアジェの認知発達理論が問題12で問われました。こちらは過去問ベースで整理しておきましょう。また、第26回試験では、問題11で「発達」に関する内容が問われ、ここでは、身体的発達や言語的発達などが問われています。この他、新生児の発達や、時間的経過による発達的変化などについても問われました。非常に横断的な問題です。それに対し、第25回試験では、思春期・青年期の発達に限定して出題されました。内容としては、エリクソンは、思春期・青年期の12歳から20歳頃までの発達課題は、「同一性の獲得」であると整理しています。つまり、性的成熟に伴い生じる身体的変化を機に、身体的・精神的に自己を統合し、アイデンティティを確立する段階であるとしています。また、第24回試験では、問題10で「子供の発達の一般的な時期(発達段階)」に関する内容が問われました。このほか、問題11で「アイデンティティ・ステイタス」に関する問題が出題されました。さらに、第23回試験では、「乳幼児期における発達的変化」に関する問題、第22回試験では、「ヴィゴツキー、ピアジェ、ゲゼル、ボウルヴィ、エリクソンの発達理論の考え方」が出題されていました。過去問ベースで、まず各段階の発達に関する理論や概念について整理しておきましょう。ちなみに、第31回試験では、前の科目「人体の構造と機能及び疾病」で「エリクソン」が問われています。

 このように、定期的に出題されています。そして、出題内容も多岐にわたっています。まずは過去の問題から整理を始めていくとよいでしょう。

3.日常生活と心の健康

 本項目では、「ストレスとストレッサー」について理解することが目的となります。特に、ストレッサーやコーピングの用語や概念の理解、うつ症状やアルコール依存、燃え尽き症候群(バーンアウト)などを含むストレス症状の理解、ストレスマネジメントの理解が重要となります。この項目からも例年、1問は必ず出題されています。

 第31回試験では、ストレス対処法に関して、コーピングについて問われています。コーピングとは、ストレスが脅威であると評価された場合に、それを適切に処理してストレス反応を少しでも軽減しようとする意図的な水準の対処過程のことで、具体的には、「問題焦点型」と「情動焦点型」の二つに大別されます。前者の「問題焦点型コーピング」とは、文字通り〈ストレッサーに向き合い、直接的に問題の消去ないし低減を図る〉コーピングで、一方で「情動焦点型コーピング」とは、〈ストレッサーには向き合わず、楽しいことを考えることで怒りや悲しみなどの感情・情動を緩和させる〉コーピングです。
 第30回試験では、「バーンアウトシンドローム(燃え尽き症候群)」について問われています。燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、アメリカのフロイデンバーガーが1970年代に提唱した概念で、長い間の目標への貢献が報いられなかった時に生じる精神的・心理的・身体的疲弊状態で、孤立・孤独感や、抑うつ、不安、理想ややる気の喪失などの症状で、医師や看護師、ソーシャルワーカーなどの対人援助職に多く見られる現象と言われています。皆さんもこのような状態になったことはないですか? この時、重篤な場合は薬などの薬物療法やカウンセリング、心理療法などが必要となりますが、相談できる体制や人がいることが重要だと言われています。そういった意味で、ソーシャルサポートについても整理して理解しておいてください。また、マスラックは、(1)情緒的消耗(心身ともに疲れ果てたという感覚)、(2)個人的達成感の低下(仕事へのやりがい低下)、(3)脱人格化(人間性を軽視し、大切に扱わなくなる)といった3つの因子でバーンアウトを説明しました(バーンアウト尺度)。第28回試験では、問題10で「タイプ行動パターン」について、タイプA行動が問われ、27回試験では、問題11で「ストレスとストレス対処方法(コーピング)」について問われました。こちらのコーピングは重要項目ですので、初めて聞いた方は必ず整理しておきましょう。

 さらに過去の問題を見てみると、第26回試験では、「行動の特徴と防衛機制」に関する問題、第25回試験では、問題13で「心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する問題が出題され、非常に基礎的な内容が問われています。やはり、本科目では、用語と、基礎的な知識、概念等をしっかり整理しておくことが重要です。

 今後も、この項目からは引き続き出題される可能性が高いと思いますので、例えば、うつ症状やアルコール依存、燃え尽き症候群(バーンアウト)などを含むストレス症状について、よく理解しておいてください。