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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第3回 はじめに終わりのことを考えよ

 今回は、前回の続きで、第31回社会福祉士国家試験の専門科目の解説をお送りいたします。第2回でもお話ししましたが、社会福祉士の国家試験は1日で実施され、午後の試験時間は13時45分~15時30分までの105分(1時間45分)で、以下8科目の「専門科目」が実施されます。

  • ■ 社会調査の基礎(7問)
  • ■ 相談援助の基盤と専門職(7問)
  • ■ 相談援助の理論と方法(21問)
  • ■ 福祉サービスの組織と経営(7問)
  • ■ 高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)
  • ■ 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)
  • ■ 就労支援サービス(4問)
  • ■ 更生保護制度(4問)

 なお、第31回社会福祉士国家試験の概要・講評、共通科目の解説については第2回をご覧ください。まだ第31回国家試験の問題を見ていない人は、この機会に一読しておいてください(問題【共通科目】【専門科目】正答はこちら)。

各科目の分析(専門科目)

社会調査の基礎(7問)

 本科目は、昨年度に比べやや難化しました。しかし、昨年度同様に、基礎的な知識や内容を問うような問題も多く出題されていました。例えば、問題85「質問紙調査」(中央法規の受験対策講座(セミナー)では、他記なのか、自記なのかとじっくりやりましたね。)や、問題89「面接調査法」、問題90「質的調査の記録やデータの収集方法」については、得点できた方も多いのではないでしょうか。この他、やや難解だった問題としては、問題86「測定と尺度」や、問題87「調査票の改修後の手続き」、問題88「量的データの集計や分析」だったと思います。出題されなかった項目としては、「調査倫理や個人情報」「全数・標本調査」「横断・縦断調査」などの調査の基礎でした。ただし、これらの内容は、ソーシャルワーカーに必要な知識となりますので復習しておきましょう。

相談援助の基盤と専門職(7問)

 本科目は、「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。本科目は、社会福祉士やソーシャルワーカーの倫理、価値に重きが置かれ、社会福祉士にとって重要な原理・原則についても取り扱われています。これに、ソーシャルワークの歴史的変遷といった内容も含まれます。問題91「社会福祉士及び介護福祉士法」、問題92「ソーシャルワークのグローバル定義」、問題95「アドボカシー」については、得点できた方も多かったのではないでしょうか。また、例年通り、チームアプローチに基づくソーシャルワーカー(スクールソーシャルワーカー)の対応や、障害者相談に関する生活指導員の対応事例が問われています。あと、日本のソーシャルワークの発展に寄与した人物と、ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークについても問われています。難易度としては、例年通りと言えそうです。

相談援助の理論と方法(21問)

 本科目の問題数は全21問と、全科目のなかで一番配分が大きい科目です。本科目でしっかりと得点できていることが合格の必須条件だと思います。第31回試験は、全21問中7問が事例問題でした。内容的には、昨年度の試験と同様の傾向で、難易度も変わりありません。
 理論・アプローチ、モデルに関する問題や相談援助の過程に関する問題も例年同様に多く出題されましたが、やや踏み込んだ内容が問われています。例えば、問題101のナラティブ・アプローチの応答に関する事例問題や、問題102のホリスの「心理社会的アプローチ」の介入技法、問題108のアイビィのマイクロ技法の基礎となっている「基本的関わりの技法」、問題107のソーシャルワーカーの役割などは、やや難問と言えそうです。一方で、問題103の「ソーシャルワークのアプローチ」に関する基礎的な内容を問う問題や、問題105のブラッドショーの「ニーズ類型論」、問題100のピンカスらの「4つの基本的システム」については、過去の問題をしっかり整理しておけば解けた方も多いと思います。
 この他、毎年出題されている問題112「社会資源」に関する内容や、問題115「スーパービジョン」、問題116「記録」については、例年通りの内容・難易度でした。また、グループワークについては、問題1134で問われていました。  ソーシャルワーカーにとって、グループに対する支援やグループワークの知識・技術は、必須です。グループワークについては、各自で整理しておきましょう。国家資格取得後、必ず必要になる実践場面が出てくると思います。

福祉サービスの組織と経営(7問)

 本科目の出題基準は、(1)福祉サービスにかかる組織や団体、(2)福祉サービスの組織と経営にかかる基礎理論、(3)福祉サービス提供組織の経営と実際、(4)福祉サービスの管理運営の方法と実際となっています。
 第31回試験を見てみると、これら4項目が万遍なく出題されていました。難易度としては、昨年度の試験と同様のものでした。内容を見てみると、福祉サービスの経営(問題119)やリーダーシップに関する理論(問題120)をはじめ、福祉サービスの提供組織の財務管理と資金調達や、リスクマネジメント、ヘルスケアの質の評価(ドネベディアン)、人事管理などが問われました。読み込ませる問題もあり、難易度としては、やや難しかったと思います。また、経営学の知識が問われる形の出題が多かったです。これからのソーシャルワーカーには、適切な組織経営や運営の知識技術が必須となります。そういった意味では、法人の知識も整理しておきましょう。今回、社会福祉法人について全く触れられませんでしたが、非常に重要な知識です。必ず整理しておきましょう。

高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)

 本科目は、全10問中2問が事例問題でした。その内容は、在宅サービス利用者へのケアプランに関する対応事例(問題127)と、地域包括支援センターのソーシャルワーカーの対応事例でした。前者のケアプランに関する対応事例は、今後、実践現場でも多くなる「障害者サービスを長く利用してきた障害者が、高齢となり、高齢者サービスを利用する」といったサービスの一貫性の担保、つまり「共生型サービス」の実施にまつわる内容でした。

 この他、我が国の高齢者の保健・福祉政策に関する基礎的な内容から始まり、介護保険制度や介護支援専門員、地域包括支援センター、老人福祉法などの知識を問う問題が出題されていました。各問題、難易度としてはやや難しい、詳細を問うような内容も含まれていました。例年出題されるものとして、介護概論に関する知識で、問題128で右片麻痺者の杖歩行(三動作歩行)に関する介助にまつわる基礎知識が問われました。このような問題は、「右片麻痺なので、〈右半身〉は〈患側〉、〈左半身〉が〈健側〉と丁寧に整理して解答を進めていきます。高齢者虐待に関する内容としては、問題135の地域包括支援センターのソーシャルワーカーの対応事例が、当たります。

 今年度出題はされませんでしたが、高齢者福祉に関する国際比較については、「高齢社会白書」が出典となります。本科目における「高齢社会白書」の出題頻度は高いので、今後もチェックが必要です。このほか、介護保険制度については、都道府県・市町村の役割、国民健康保険団体連合会の役割についても整理しておきましょう。

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)

 本科目は、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されていました。また、事例問題は、全7問中1問で、リハビリテーションに対応したサービスを選択する知識を問う問題でした。ただし、この他に、短文を読ませてその対応を問う問題や、説明文を読んで該当する社会資源を答えるような問題も出題されていました。

 この他、医療型障害児入所施設や、母子及び父子並びに寡婦福祉法、特別養子縁組などについて問われています。こちらも知識を問う内容ですので、やや難しく感じた方もいらっしゃるかと思います。また、統計問題としては、「福祉行政報告例」から児童相談所の相談に関するものが問われていました。

 一方で、現代の児童を取り巻く環境を整理する際にあげられる「子どもの貧困」「児童福祉法の改正点」「児童相談所」などに関する問題は今回は出題されませんでした。さらに、我が国の子ども・家庭福祉の基盤となる児童の権利に関する内容も問われませんでした。この辺りは、社会福祉士にとって重要な項目ですので、各自復習をしておきましょう。

就労支援サービス(4問)

 本科目は、基本から応用を問う問題形式でしたが、得点できたのではないでしょうか。ここ数年、労働や働きに関する基本的知識や統計、障害者、生活保護受給者、高齢者等の各就労支援サービスに関する知識が幅広く問われています。今回も、これらの内容が満遍なく問われていました。

 内容としては、問題143では、日本の労働に関する統計を根拠とする労働市場を整理するような問題や、被保護者就労準備支援事業(一般事業分)や就労支援を担う機関などでした。これに加えて、障害者就業・生活支援センターのソーシャルワーカーの対応事例が問われました。難易度は例年通りです。

 このほか、出題がなかったものとしては、「障害者雇用率制度」「求職者支援法」については整理しておきましょう。この知識は、科目「社会保障」に関連するものですが、本法は、雇用保険を受給できない者に対して、(1)無料の職業訓練を実施して、(2)給付金を支給するとともに、(3)ハローワークが就労支援を行う制度で、スキルアップをはかり、早期の就職を目指す目的があります。

更生保護制度(4問)

 本科目で出題された項目は、「更生保護制度の基礎」「保護観察制度」「更生保護の担い手(保護観察官と保護司)」「医療観察制度」など、例年通りの内容でした。よって、難易度は例年通りからやや易しい内容でした。問題148では、保護観察官と保護司について基本的な内容が問われていましたし、問題150の医療観察制度における社会復帰調整官の役割については、「生活環境の調査」「生活環境の調整」「精神保健観察」といった一連の流れを理解しておく必要があります。