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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

特別編(1) 第31回社会福祉士国家試験 午前<共通科目>問題の講評

はじめに

 まずは皆さん、大変お疲れ様でした。試験からまだそれほど時間が経っていませんが、解答速報や問題の見直しなどをして、少し冷静に試験を振り返れるようになったのではないでしょうか?

 ただ、合格ラインはまだわかりませんので、合否に関係なく、第31回試験の振り返りをしておいてください。合格した人は、さらに現場実践での「知」となりますし、不合格だった人は、来年度の受験に向けて、反省したり課題を見つけ出したりと、準備を進めることができます。合格発表(3月15日(水))までの約50日間を有効に使ってください。何もしなくても50日。何かをしても50日です。

 それでは、今回は、「午前<共通科目>問題」の講評です。

基礎の確実な習得と、それを活かす応用力が必要でした。

 今週と来週の2回に分けて、第31回社会福祉士国家試験の講評を行いたいと思います。今回は、午前<共通科目>問題(精神保健福祉士との共通科目の問題)についてです(解答速報の閲覧登録はこちらから)。
 午前<共通科目>の試験科目は以下の11科目で、試験時間は10時から12時15分までの135分(2時間15分)でした。

  • ■ 人体の構造と機能及び疾病(7問)
  • ■ 心理学理論と心理的支援(7問)
  • ■ 社会理論と社会システム(7問)
  • ■ 現代社会と福祉(10問)
  • ■ 地域福祉の理論と方法(10問)
  • ■ 福祉行財政と福祉計画(7問)
  • ■ 社会保障(7問)
  • ■ 障害者に対する支援と障害者自立支援制度(7問)
  • ■ 低所得者に対する支援と生活保護制度(7問)
  • ■ 保健医療サービス(7問)
  • ■ 権利擁護と成年後見制度(7問)

 講評ですから、短絡的に「難しい問題でした」とか、「やさしい問題でした」とか、「よい問題でした」とか、「悪問でした」とか主観的なことはあまり書かないようにしたいと思いますが、そうはいっても…。まず、私が実際に解いてみた感想としては、「基本的な内容を抑えながらも、新たな項目や、現代の社会問題や福祉に関する知識を問う問題が出題されていた」、また「基礎の確実な習得と、それを生かす応用力が問われた」、そのため「昨年の難易度よりもやや難しい」といった印象です。しかし、新聞などで時事を抑え、過去の問題をきちんと学習していれば解答できる内容が中心でした。ですから、合格ラインは、6割90点ぐらいが目安となるでしょう。詳細をもう少し記してみると、「午前の共通科目、午後の専門科目共に、昨年同様の難易度で、基本を押さえておくことである程度は得点ができた。ただし、各科目1~2問程度のやや難しい問題が出題された」「事例問題は、相談援助系の事例問題は全体的に易しく、その他の事例問題も、知識と実践を問う応答問題ではあるものの全体的に易しい」という印象でした。皆さんはいかがでしたか?

 過去の問題や、各種模擬問題をはじめ、中央法規の講義などで私が取り上げた基礎的な内容も問われていたので、制度や統計、基本的事項をしっかりと押さえていた方は、かなり明確、明瞭に解けた問題が多かったのではないでしょうか。また一方で、各科目で、新たに問われた項目もありました。多少、用語や法律・通知、人名などがわからなくても、設問文をしっかり読み、その内容や時代背景、福祉の変遷や動向などをしっかり捉えることで、正答までたどり着ける問題が多くありました。そういった意味では、一つひとつの設問の誤りを指摘できる力が必要でしたので、項目に対する関連知識が必要となります。このように、社会福祉士の試験では、福祉の動向や変遷などをきちんと理解しておくことが重要であることがわかります。

 さて、ここ数日、第31回試験を受けた方から感想をいただいているのですが、「しっかりと暗記しておけば、意外と解けた問題が多かった」、「問題文をよく読めば、初めての語句や・用語であっても内容が理解できた」、「二つ選ぶ問題がとても多かったが、問題文をしっかり読んで挑むことで得点できた」という冷静な感想を多くいただいています。私も同感です。しっかりと統計や法律、用語などについて整理していた人は、あとはじっくりと、まちがえなく問題を読解さえすれば解答できた問題が多かったと思います。ただ、やはり、実際の試験となると、そう冷静でなんていられないのもまた事実ですが。

 また、前述しましたが、法律や制度についても多く出題されていました。事前に法律や制度にあたっていた人は、確実に得点できたと思います。この統計や制度に関しては、毎年必ず問われますし、非常に重要な学習ポイントであることがわかります。さらに、このような問題は、図表での出題がありませんので、過去の問題や模擬問題を繰り返し、文章に慣れ、問題に慣れていた人は確実に得点できたと思います。

 午前<共通科目>問題の総評として、本年度の試験の合否を分ける大きなポイントは、用語や概念、理論についてしっかりと理解できていたかどうかだと思います。本年度の試験は、用語や概念、理論にかなり忠実な問題が多かったため、しっかりと学習し、理解していた場合、明快に解答できたと思います。さらに、この基礎知識を具体的に活用する場面が事例などで出題されており、ある意味で応用的な問題であったと言えます。

 事例問題については、昨年同様に短文の事例問題がちりばめられていました。また、各問題間及び各科目間の問題の難易度にバラつきがあったため、根気よく、確実に、わかる問題を得点できたかが重要だと思います。途中で投げ出してしまったり、初めのほうに難しい問題があったので先入観で本年度の試験を「難しい」と捉えてしまった方は、苦戦したと思います。

 それでは、各科目について、それぞれ講評していきたいと思います。

人体の構造と機能及び疾病(7問)

 本科目の出題傾向は、昨年とほとんど変わりませんでした。つまり、出題基準からバランスよく、広範囲の事項について出題されていました。各問題をみてみると、問題1「エリクソンの発達理論」、問題2「人体の各器官の機能と構造」、問題5「高血圧」、問題7「DSM-5」は想定できた内容であり、例年出題されている項目です。これに加え、今回は、問題6の「障害」や問題3「ICF:生活機能分類」が問われました。「加齢を伴う疾患や状態」「がん」や「認知症」などもチェックしていましたが、問われませんでした。
 各設問の「誤りの設問文」の「誤り」が微細な情報であったり、わかりにくいなど、受験生にとってはやや難しかった科目かもしれません。

心理学理論と心理的支援(7問)

 本科目に関しては、昨年度も広範囲な事項が満遍なく出題されていました。ただし、テキストワークブック過去問解説集模擬問題集などをしっかりと学習していた人は比較的簡単に解けたのではないでしょうか。問題8「動機づけ」、問題9「感覚・知覚」、問題10「記憶」、問題11「適応:防衛機制」などの<人の心理学的理解(心理学概論)>の項目については、しっかりと読み込ませ、詳細の知識と正しい理解が問われる問題です。こちらは、例年の傾向で、難易度は例年通りです(やや難しいと言うことです)。この他、「心理療法」については、出題頻度も高く、重要項目であることから、チェックをしていた方は、得点できたのではないでしょうか。内容としては、問題14で、「行動療法に関連する心理療法(技法)」について問われています。さらに、〈ストレス〉については、コーピングについて問われましたが、こちらは大丈夫でしたよね。「問題焦点型コーピング」は、「ストレッサーに向き合い、直接的に問題の消去や提言を図るもの」で、一方「情動焦点型コーピング」は、「ストレッサーには向き合うことはせず、楽しいことを考えることで怒りや悲しみなどの感情の緩和を図るもの」でしたね。また、問題13は、数年に一度出題される「心理検査」について問われました。

社会理論と社会システム(7問)

 本科目から続く社会学系の科目が苦手の人は多いですが、社会学系の科目は、現代社会を学問的に捉える力を試すものです。つまり、現代社会の問題と、それを科学的に整理する力(理論:人名や功績など)が必要になります。問題を見てみると、問題16で「ジニ係数」について出題されていました。こちらは、大丈夫でしたよね(中央法規の受験対策講座(セミナー)でもお話ししました)。「0から1」で値を取り、「値が大きくなるほど(1に近づくほど)格差が大きくなる」ですね。この他、「人口」「社会集団」「社会的行為」「フリーライダー」と言った、用語を問う問題が多かったです。ただし、これらの用語は、出題が予想されたいたものであり、社会福祉士に必要な「社会学」の知識であり、社会を理解するためにも基礎となる知識となります。

現代社会と福祉(10問)

 本科目は、まず、現代社会の問題をきちんと理解していることが重要となります。では、現代社会の問題とは何か? 列挙してみると、「貧困・格差社会」「ジェンダー」「人権」「働き(ワーク・ライフ・バランス)」「過疎(限界集落)」などが挙げられます(中央法規の受験対策講座(セミナー)を受講された皆さんは、やりましたね!)。そして、それを社会福祉学的に理解するために必要な項目が出題されていました。そう考えると、今年もたくさん出題されましたね。例えば、問題26「ヘイトスピーチ解消法」や「問題28「性同一性障害や性的指向・性自認」、問題29「育児・介護休業法:介護休業制度」、問題31「最低賃金制度」です。これらの問題は、日頃から「いかに現代社会の動向に関心を向けているか」が重要になり、新聞などを通して時事に精通しておくことが重要です。この傾向は、今後も続くと思いますので、受験生の皆さんは、日頃から新聞などを通して現代社会の動向に関心を向けておくことが重要です。よって、本科目は、基礎的な知識などの理解とともに、現代社会の理解が問われており、内容的にはやや難しい科目の中に入るかと思います。

地域福祉の理論と方法(10問)

 本科目の問題は、幅広い分野から問題が出題されていました。地域福祉の推進する社会福祉協議会の内容から始まり、事例問題で、社協の生活支援相談員や地域包括支援センターのソーシャルワーカーの対応事例が問われました。このほか、地域福祉を展開するために必要な基本的内容が問われていたことが特徴のように思います。また、問題41では、「地域包括ケア」について問われています。これらの内容は、出題が予想されていたものなので、得点できた方も多かったのではないでしょうか。この他、問題33では「地域に関する理念や概念」、問題36では「地域福祉の対象」に関する用語の理解を確認するような知識を問う問題が出題されました。本科目の難易度的には、内容が広範であることや、実践事例に関する事例問題が問われたこと、暗記を主とする用語を問う問題が出題されたことを総合すると、「やや難しかった」科目と言えそうです。

福祉行財政と福祉計画(7問)

 本科目の内容は、大別すると、(1)福祉行財政、(2)福祉計画の二つに分けることができます。内容的にも、かなり広範にわたり出題されていました。出題を予想していた地方財政に関する統計的な内容は、例年出題される「地方財政白書」からの出題はありませんでした。こちらについては、地方の財政を理解するためにも社会福祉士に必須の知識となります。出題されませんでしたが、各自でチェックしておきましょう。福祉計画は、この財政を基盤として策定されるものです。関連項目としては、「一般会計歳出予算・社会保障関係費」について問われました。内容を見ておくと、問題42では「都道府県の役割」が問われ、問題44では「医療と介護の改革」について問われました。この他、福祉計画では、問題48で「第5期障害福祉計画」について問われましたが、こちらは、出題の予想がされていたものです。ちなみに、平成30年度から、障害児の支援の提供体制を確保するため、「第1期障害児福祉計画」が合わせて策定されることになりました。

社会保障(7問)

 社会保障は、「働く人が支える仕組み」ですので、現代の「働く人」の状況を的確に理解する力が必要です。ですから、現代の「働く人」の実情については重要ポイントです。労働人口や人口の動向や推計については、必ず整理しておかなければなりません。今年度は、これらにまつわる問題は出題されませんでしたが、昨年度(第30回試験)では、問題49で「高齢化」に関する統計的な内容が問われました。また、社会保障費に関する統計資料を問う問題は出題されませんでしたが、問題49で「社会保険制度の財源」について問われました。さらに、今年度は、「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労働保険(労働者災害補償保険)」と社会保険全般を問う問題や、それを横断するような事例問題も出題されました。併せて、諸外国の医療や介護の制度についても問われました。出題が予想されていた「各種福祉手当」についての出題はありませんでした。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度(7問)

 本科目の問題は、昨年度はかなり具体的な内容を問われていましたが、今年度は基礎的な内容を問うものが多く出題され、そういった意味では、昨年度に比べてやや易しく、標準レベルの難易度でした。例えば、問題56「障害者の実態調査」、問題57「障害者福祉制度の発展過程」などの例年問われる問題から始まり、「障害者総合支援法」の基本的内容を問う問題が出題されました。この他、事例問題では、特別支援学校高等部卒業見込みのHさんの具体的支援に関する各関係機関の役割を問う問題や、高齢障害者への相談支援事業所の活動事例などが問われました。

低所得者に対する支援と生活保護制度(7問)

 本科目は、出題基準から万遍なく出題されており、例年通りの内容、例年通りの難易度でした。低所得者の状況を問う問題から始まり、生活保護の8つの扶助や、原理原則(生活保護の基準)、福祉事務所の組織と業務、生計困難者への支援(無料低額宿泊所)などについて問われました。事例問題については、生活保護における扶養義務者との関わりといった基礎的な知識を応用的に問う事例問題や、生活困窮者自立支援事業を実施する市役所の相談支援員の対応・支援事例が問われました。

保健医療サービス(7問)

 本科目は、内容的にテキスト全体を網羅する内容で、基本的な内容が問われました。例年出題される「国民医療費の概況」については、今年度も出題されました。この他、問題70「医療保険の給付内容」や、問題72「医療費」、問題73「診療報酬」、問題75「医療関係職種の業務」などは、出題が予想されていたものです。難易度としては、昨年度に比べて「易しかった」と思います。
 多職種連携・協働、チームケア(医療)、「医療」と「介護」の連携、平成30年診療報酬改定などの出題はありませんでした。今後は、これらの内容が事例問題などでも問われる可能性があると思います。

権利擁護と成年後見制度(7問)

 本科目は、(1)憲法・民法・行政法、(2)成年後見制度、(3)権利擁護といった構成で出題されました。まず、(1)憲法・民法・行政法では、憲法における生存権(問題77)について問われ、行政法では、行政事件訴訟法(取消訴訟)について事例問題で問われました(問題79)。民法については、問題82の「特別商取引に関する法律:クーリングオフ」に関する事例問題が問われました。これらの事例問題は、基礎知識をベースに応用的な知識を問う問題でした。やや難しい問題です。次に、(2)成年後見制度では、「成年後見関係事件の概況」について、統計に関する問題が問われましたが、こちらは出題が予想されていたものなので、解答できた方も多いのではないでしょうか。ただ、これ以外、成年後見制度について問われていませんが、これはソーシャルワーカーにとって必須の知識です。例えば、「法定・任意後見制度」や、「後見・保佐・補助」など、基礎的な内容は各自で整理しておきましょう。必ず必要となる知識ですし、ソーシャルワーカーとして実践をしていけば必ず出会う事柄です。(3)の権利擁護に特化した内容としては、問題83「児童虐待防止法」です。こちらは、近年益々注目される項目ですので、ソーシャルワーカーにとって必須の知識となります。

おわりに

 以上、雑駁ですが、第31回社会福祉士国家試験の午前<共通科目>問題の講評でした。この原稿は、皆さんが受験をされた当日の深夜から翌日にかけて作成しました。試験当日の午後一から第31回試験を解いた後、本講座の原稿作成のためにさらに2回、よって、すでに、全問題を3往復以上読み込み、吟味しています。

 例年、受験された方から試験の感想が寄せられてきますが、皆さん、やはり不安なようです。本年度の試験は、基礎をしっかりと積み上げ、それを活用できる力を養ってきた人(やはり、過去問解説集模擬問題集などをしっかりと、繰り返し解いてきた人)は、相当の得点ができたと思います。そういった意味では、わかっていた問題をミスで間違えたり、できる問題を落としたりといった小さなミスが合否に大きく影響する可能性があります。

 一発勝負の試験ですので、当日の体調や心の動き、さまざまな環境要因や状況などは、合否に影響を与えます。皆さんいかがでしたか。

 ただ、何はともあれ、結果は結果。それを真摯に受け止め、これからの実践に活かしていってほしいと思います。

 冒頭でもお話ししましたが、合否に関係なく、もう二度と見たくない、開きたくない試験問題、テキストかもしれませんが、ここで復習しておくことが、必ずこれからの力になります。

 次回は、「特別編(2) 第31回社会福祉士国家試験・午後<専門科目>問題の講評」(2月15日(火)更新予定)です。