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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第33回 クローズアップ~保健医療サービス

「保健医療サービス」のポイントの振り返り

 本科目は、出題基準やテキストの内容が満遍なく出題されており、医療制度や診療報酬などに関する基礎的な知識が問われます。また、医療ソーシャルワーカーの役割や機能については、連携や協働、診療報酬、介護報酬の実例といった切り口で、事例問題などで出題されています。そのため、併せて他専門職の役割や機能、業務、連携にまつわる診療報酬や介護報酬について整理しておいてください。また、国民医療費の動向については、例年出題されており、例えば、診療種類別国民医療費の構成割合などはしっかりと整理しておきましょう。

 本科目の難易度はそれほど高いものではありませんが、「社会保障」と同様に、医療費や診療報酬、医療制度については、用語とその構造、内容などをしっかりと理解しておかないと解けない問題も多くあるので、一度「決心」して、じっくり制度と向かい合う必要があります。

診療報酬における医療施設の機能と類型

医療施設の機能と類型

 医療施設の機能と類型を整理する場合は、いくつかの分け方ができます。例えば、医療法や保健医療政策、診療報酬によって分類されています。これらについては、テキストワークブックなどで確認しておいてください。

 ここでは、まず医療法で示される、医療提供施設や病床について整理し、さらに診療報酬によって分類した医療施設の機能や類型の代表的な病棟について整理していきます。

医療法による医療提供施設と、病床について

(1)医療法とは

 まず、医療法について少し整理しておくと、その基本理念は、「患者の視点に立った質の高い効率的な医療提供体制の構築」にあります。さらに、その目的は、「医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受けるものの利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与すること」にあります。

 また、2006年の医療法改正では、病院や診療所などの医療機関間の連携強化、退院時調整など在宅医療の推進などのための規定などが整備されています。つまり、医療機能の分化や連携を推進し、切れ目のない医療を提供し、在宅医療の充実を図ることが、医療法の目的として示されています。

(2)医療提供施設

 前述の医療法では、保健医療サービスが提供される場として、「病院、診療所、介護老人保健施設、調剤を実施する薬局」を挙げ、これを医療提供施設と言います。

(3)医療法に定める病院、診療所とは

 医療法では、病院や診療所について、以下のように整理しています。病院は、医師または歯科医師が、公衆または特定多数人のために医業・歯科医業を行う場所であって、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものと規定しています。つまり、診療所とは、19床以下であり、入院設備を持たない無床診療所もあります。クリニックや医院も、この診療所にあたります。ちなみに、日本では、無床診療所が圧倒的に多く、特に1970年代以降有床診療所は減少しています。

(4)医療法に定める病床とは

 医療法では、病床を、(1)精神病床、(2)結核病床、(3)感染症病床、(4)療養病床、(5)一般病床療 に分けています。

 まず、(1)精神病床は、精神疾患を有する者を入院させる病床で、日本の病院の約1割がこの精神病床のみの精神科病院です。(2)結核病床は、結核患者を入院させる病床で、(3)の感染症病床は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定される1類感染症、結核を除く2類感染症、新型インフルエンザなどの感染症、指定感染症および新感染症の所見があるものを入院させる病床です。ちなみに、昨今話題になっているエボラ出血熱は、1類感染症です。一方、デング熱は4類感染症で、感染症病床の対象疾患ではありませんが、感染症法で、全ての医師が、全ての患者の発生について届出を行う感染症となっており、患者が発生するたび、診断した医師が、最寄りの保健所に届け出ます。もちろん、エボラ出血熱(1類感染症)も同様です。(4)療養病床は、前述の(1)から(3)以外の病床で、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させる病床です。(4)一般病床は、前述(1)から(4)以外の病床です。

診療報酬

 まず基礎から解説すると、診療報酬とは、「保険医療機関(病院)や保険薬局が行う保健医療サービスに対する対価として医療保険者(市町村や会社などの保険者)から受け取る報酬」をいいます。次に、この報酬は、中央社会保険医療協議会の審議を踏まえ厚生労働大臣の告知として出されます(原則2年ごとに改定)。もう少し、解説すると、この診療報酬とは、全国同一の「診療報酬の算定方法(点数表)」によって診療行為ごとに定められています。また、一点10円で、保険医療機関(病院や診療所等)は、1か月単位で行った診療を点数表に基づき診療報酬明細書(レセプト)にまとめ、患者負担分を除いた費用を、審査支払機関を通じて医療保険者に請求することになっています。

 また、診療報酬は、医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤診療報酬に分かれています。このほか、診療行為の回数に比例して増減する支払方法の出来高払いや、DPC(診断群分類)など治療内容にかかわらず疾病別に入院一日当たりの金額が定められている包括払いなどがあります。

 診療報酬に関しても重要項目なので、必ず整理し、確認しておいてください。

図1 医療保険の仕組み

医療ソーシャルワーカーの業務指針

 医療ソーシャルワーカーの業務指針は、前身の「保健所における医療社会事業の業務指針」(1958(昭和33)年)が病院で展開されるソーシャルワークの業務を適切に示すものではないという議論のなか、1989(平成元)年に、医療ソーシャルワーカーが専門職であることを明確化するために新たな業務指針として誕生しました。その後、2002(平成14)年に「医療ソーシャルワーカー業務指針」は改定され、現在に至っています。

 業務指針は、「一 趣旨」「二 業務の範囲」「三 業務の方法等」「四 その他」の4部で構成されており、「二 業務の範囲」では、具体的な業務内容を6つ列挙しています。その業務とは、

  • (1)療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
  • (2)退院援助
  • (3)社会復帰援助
  • (4)受診・受療援助
  • (5)経済的問題の解決、調整援助
  • (6)地域活動


 このほか、「三 業務の方法等」では、7つの項目が示されています。その項目とは、(1)個別援助に係る業務の具体的展開、(2)患者の主体性の尊重、(3)プライバシーの保護、(4)他の保健医療スタッフおよび地域の関係機関との連携、(5)受診・受療援助と医師の指示、(6)問題の予測と計画的対応、(7)記録の作成等があげられています。

 以上が、「医療ソーシャルワーカー業務指針」の概要です。これらの詳細については、必ず確認しておいてください。

日本の国民医療費

 日本の平成27年度の国民医療費は42兆3644億円でした。この国民医療費総額は、年々増えています。例えば、前年度は40兆8071億円でしたので、平成26年度はそれに比べ、1兆5573億円、3.8%増加しています。ただし、最新の平成28年度国民医療費は、2263億円、0.5%の減少で、総額42億1381億円でした。しかし、依然、国民医療費は高い状況にあることが変わりありません。次に人口一人当たりの国民医療費、つまり、「一人あたり年間にどれくらいの医療費を使っているか」ということですが、33万3300円です。この金額、低く感じますか? それとも高く感じますか? もちろん、健康で医療費をほとんど使わない人もいれば、30万円を超えて利用している人もいるでしょう。ちなみに、年齢別にみてみると、65歳以下が18万4900円に対して、65歳以上は74万1900円。さらに、75歳以上は92万9000円でした。

 統計を開始した昭和29年度は、国民医療費総額は2152億円で、人口一人当たりの国民医療費は2400円でした。その後、昭和40年度に国民医療費総額は1兆円を突破し、昭和53年度には10兆円、平成2年度には20兆円、平成11年度には30兆円を超えました。同様に、人口一人当たりの国民医療費も、昭和40年度に1万円を超え、昭和55年度には10万円を超え、さらに平成6年度には20万円を超えました。もちろん、物価の変動や制度の変更などはありますが、このように国民医療費の総額や一人あたりの国民医療費は年々増加傾向にあります。細かい数字が並びますが、必ずチェックしておきましょう。

 では、国民医療費総額の42兆3644億円はどのように集められているのでしょうか。その内訳は、公費分(租税)が16兆4715億円(38.9%)、保険料分は20兆6746億円(48.8%)となっています。残りは患者の窓口負担などです。つまり、保険料が全体の半分を占めていることです。また、公費は「国庫」と「地方」に分かれますが、国庫は10兆8699億円(25.7%)、地方は5兆6016億円(13.2%)となっており、国の負担が大きいことがわかります。また、保険料のうち事業主は8兆7299億円(20.6%)、被保険者は11兆9447億円(28.2%)となっています。

 次に、年齢別の国民医療費をみてみますと、高齢者(65際以上)の国民医療費が全体の6割弱(59.3%)と多く、0~14歳については、6.0%と低い状況にあります。このことから、小児がんをはじめ、小児医療にも保険内での医療を提供することが望まれ、大きな課題となっています。しかし、簡単に小児医療に費用を投入すればいいのかというと、医療費がかかるということは、国民の負担も増えるということで、現在の医療費をいかに、無駄をなくし、必要なところに分配していくかが重要です。そういった意味でも、医療の効率化や、根拠に基づく医療提供が重要視されています。

 また、一般診療医療費を主傷病分類別でみてみますと、「循環器系の疾患」が19.9%で最も多く、次いで「新生物」が13.7%となっています。このことから治療が長期化する慢性的な疾患の割合が高く、継続的な医療が必要なことがわかります。また、65歳未満では「新生物」が最も多く、65歳以上では「循環器系の疾患」が最も多くなっています。

まとめ

 このほか、整理しておく必要がある項目としては、高額療養費や後期高齢者医療制度などの医療保険に関するものです。医療保険制度は社会保障の一つですが、この科目で問われる可能性がとても高いと思います。また、労働者災害補償保険や交通事故(自動車損害賠償責任保険)、自由診療、民間保険などに関しても整理しておいてください。

 あと、もう一つ重要な項目は、連携や協働に関する知識です。現在の医療・保健・福祉分野では、この連携と協働がキーワードとなっています。そのため、社会福祉士として、この連携と協働の知識、技術は必須項目となっています。事例問題で出題される可能性も高いので、必ず学習しておきましょう。

 以上、「保健医療サービス」の解説でした。 次回は、「クローズアップ~権利擁護と成年後見制度」です。

 医療制度や、社会保障制度については、自身が必要になった時にはじめてよく調べ、わかる制度だと思います。社会福祉士は、支援の際、この社会保障や社会保険の制度を有効に活用していきます。よって、社会保障や社会保険の制度についての学習は必修項目となります。では、どのように学習していくのかというと、具体的な生活の困難さや困りごとに着目して制度を整理してみることです。

 例えば、「もし、病気になってしまったときの医療費はどうなるのだろうか」、そして「病気によって休職している期間の生活費(給料)はどうなるのだろうか」と、生活の具体的な困難さを想像してみることです。このような利用者が皆さん社会福祉士の前に相談に来た時、どのような制度を活用し支援していくのでしょうか?

 具体的には、病気の治療費100万円をどうするかということ、そして治療のために休職しなければいけない時の給料(生活費や医療費)をどうするか、ということです。

 まずは、医療保険の医療給付では、100万円の医療費は保険による7割の療養給付を受けることができるので、30万円になります(患者負担は3割)。しかし、この金額も高額で、このとき「高額療養費制度」を利用します。また、治療のための休職については、医療保険の医療外の給付で「傷病手当金」を利用していきます。ここでは、簡単に整理しましたが、このように、医療保険制度や高額療養費制度、傷病手当金などの知識が必要となってきます。
 以上、具体的な困りごと、生活の困難さを想像して整理することが重要で、実例を想像しながら整理すると理解も深まります。

 それでは、11月、引き続き、年末に向けて一緒に頑張りましょうね。

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