5分で学ぶ露木先生の合格ゼミ
ー社会福祉士受験対策講座

新年度のスタートに合わせて、露木先生の受験対策講座もリニューアルいたします。これから学習を始める方、苦手な科目を学びたい方、モチベーションを維持したい方にとって、スマホで手軽に、科目別のポイント解説をチェックすることができます。
社会福祉士国家試験を受験される方は、ぜひ、「露木ゼミ」をご活用ください!
- プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)
-
社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。
第8回「地域福祉の理論と方法」の重要ポイント
第8回「露木ゼミ」も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準に即した内容を中心に、「地域福祉の理論と方法」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。
それでは、「地域福祉の理論と方法」のポイント解説です。
- 今日のレッスン
Lessen.1 出題基準(出題分野)と過去3か年の出題傾向の分析
地域福祉の理論と方法については、前回「現代社会と福祉」同様に、環境を理解する科目と言え、全150問中10問出題されています。このうち、2問が事例問題となっています。
受験生の声として、苦手意識を持っている人が多い科目の一つで、「難しい」「地域共生社会がわかりにくい」「地域福祉の支援イメージがつきにくい」など様々です。一方で、現代のソーシャルワーク(ジェネラリスト・ソーシャルワーク)では、地域を基盤としたソーシャルワークや相談援助が支援の前提となる考え方の一つです。
攻略法としては、過去問題をベースに、まず専門用語を整理した上で、実際の地域支援を想定することです。また、福祉計画などや地域問題などについても整理しておく必要があります。
出題傾向 【 】内は問題番号
第35回試験 | 第34回試験 | 第33回試験 | |
地域福祉の基本的考え方 | 【32】【33】【34】 | 【32】【38】 | 【32】【33】【34】 |
地域福祉の主体と対象 | 【36】【37】【38】 | 【33】【35】 | 【36】【37】【38】 |
地域福祉に係る組織、団体及び専門職や地域住民 | 【39】【41】 | 【36】【37】 | 【39】【40】 |
地域福祉の推進 | 【35】【40】 | 【34】【39】【40】【41】 | 【35】【41】 |
出題の傾向としては、地域福祉の基本的な理念や概念(イギリスや日本の地域福祉の発展過程を含む)からはじまり、社会福祉法で規定される地域福祉の推進や、住民を主体とする地域福祉や民間や社会福祉法人を含む地域福祉のあり方、地域共生社会、民生委員などの内容を問う問題が出題されています。
Lessen.2 なぜ、地域福祉なのか? 〜社会福祉法
「なぜ、地域福祉なのか?」については、前回講義(第7回「現代社会と福祉」)の社会福祉の変遷がヒントになるかもしれません。
《社会福祉は、慈善事業からはじまり、社会事業、厚生事業をへて、戦後に制度化されます。また、1950年からの約50年に福祉は、「対象者」「措置」「処遇」を前提とした受動的なものでした。しかし、1990年代の社会福祉基礎構造改革を経て、2000年以降の福祉は、「利用者」「契約」「サービス」を前提とする能動的なものへと変化してきました。そして、現代の福祉は、「地域福祉」を時代へと変化しております。》
このように現代の福祉は、社会福祉法によってその方向性が示されているわけです。ここでは、同法第1条や第4条を中心に地域福祉のあり方について整理していきたいと思います。
社会福祉法(地域福祉に関連した項目)
条項 | 法文 |
第 1 条 |
(目的) 「社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まって、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という)の推進を図る」 「社会福祉事業の公明かつ適切な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もって社会福祉の推進に資する」 |
第 4 条 |
(地域福祉の推進) 「2 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」 「3 地域住民等は、地域福祉の推進に当たっては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。」 |
このように、社会福祉法では、現在、これからの福祉のあり方について、「住民主体の地域福祉の推進(我が事)」や「福祉サービスや専門人材の包括化(丸ごと)」を明文化することで「地域共生社会の実現」を目指しているわけです。
これに、同法第106条の3の包括的な支援体制の整備、同106条の4の重層的支援体制整備事業も一読しておいてください。さらに、同法第107条の市町村地域福祉計画、同第108条の都道府県地域福祉計画の作成を加え、地域福祉計画の充実化(他の福祉計画との調和や積極的活用)が示されています。
Lessen.3 地域福祉の発展(過程)〜イギリスの地域福祉
イギリスを中心に日本やアメリカの地域福祉の変遷(発展過程)を年表にして整理しておきましょう。
地域福祉の発展過程 〜イギリスを中心に
年 | 内容(イギリス) | 内容(日本・アメリカ) |
1869年(英) 1877年(米) |
慈善組織(化)協会(COS):慈善的救済の組織化と貧民の発生の抑制を目的とした救貧組織として、イギリスのロンドン、アメリカのニューヨーク(バッファロー)に設立された。 | |
1880年代 | セツルメント運動:貧困問題の解決のために、大学生や教員、社会事業家などが集まり行われた地域の改良活動で、その拠点のセツルメントハウスとして、イギリスでは、1884年バーネット夫妻が設立したトインビーホール(ロンドン)や、アメリカでは、1886年コイトによってネイバーフッド・ギルド(ニューヨーク)、1889年アダムスによってハル・ハウス(シカゴ)が設立された。 | |
1939年 | レイン報告(米):全米社会事業会議において採択され、コミュニティ・オーガニゼーションの基本的な体系をまとめた(目標:資源とニーズを調整すること)。 | |
1955年 | 全国社会福祉協議会の設立(日) | |
1962年 | 社会福祉協議会基本要領(日):全社協は、社協の基本的な機能はコミュニティ・オーガニゼーションの方法を地域社会に適用することであるとした。 | |
1968年 |
シーボーム報告(地方自治体及び統一的対人社会サービスに関する報告):対人社会サービスの提供の主要な責任を担っていた地方自治体がソーシャルワークに関連した部門を統合(再編)すべきであると勧告した。 ⇒1970年、地方自治体社会サービス法:地方自治体社会サービス部の設立。コミュニティケアの推進体制の確立。 |
|
1969年 | エイブス報告:ボランティアの活用(社会サービスにおけるボランティアの役割は、専門家にできない新しい社会サービスを開発することであることを強調した。 | |
1978年 | ウルフェンデン報告:社会サービスを①インフォーマル部門、②公的部門、③民間営利部門、④民間非営利部門の四つに分類し、公的サービスの主な役割を認めながらも、多様な供給主体独自の役割を承認する福祉多元主義が打ち出された。 | |
1982年 | バークレイ報告:コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践であるコミュニティソーシャルワークを提唱した。 | |
1983年 | 市町村社会福祉協議会(日):社会福祉事業法に明記される(法制化)。 | |
1988年 | グリフィス報告:自治体の役割には、マネジメントが必要であることや、高齢者の施設入所の財源を国から地方自治体へ移譲すること、市場原理を導入した企業やボランタリー組織のサービスを促進することなどを提唱した。 | |
1990年 | 国民保健サービス及びコミュニティケア法:①ケアマネジメントシステム(ケアマネジメントや苦情処理手続)の導入、②権限や財源の地方自治体への一元や福祉計画の策定義務、③サービス購入者とサービス提供者の分離、④市場原理を導入した民間活用など。 | |
1997年 | 介護保険法制定(日本):高齢者福祉サービスの公的保険制度。ケアマネジメント(ケアマネージャー)。 |
世界における地域福祉の推進は、貧困問題を個人的な問題から、社会や地域の問題として取り上げることで、社会運動化され、社会活動へと繋がっていきます。また、これらの社会活動は、国の福祉政策やソーシャルワークの誕生に影響を与えました。なお、国の福祉政策については、「ナショナルミニマムからコミュニティケアへ」と、変化していきます。
以上、地域福祉の理論と方法のポイント解説です。次回は、「福祉行財政と福祉計画です。
難しい人間関係
最後に、少しだけコラムをお送りしたいと思います。お時間がある方は、もうしばらくお付き合いいただき、参考にしてみてください。
我々、対人援助職は、常に「人」と関わり、支援を行っています。それは、「クライエントや利用者」であったり、その家族であったり、職場の仲間やチームを組むメンバーであったり、上司や部下、関係先の人々などです。そして、この「人」との関わり、関係性は非常に難しいところであり、また面白いところでもあります。
しかし、みなさん、この人間関係に多かれ少なかれ苦労しているのではないでしょうか?
対人援助者は、人が好きでなければできない仕事ですが、これは人間関係が上手ということとは少し違います。我々は、人と関係をもつ際、相手に完璧を望むため、相手に「欠陥」や「ミス」があると、ついイライラとしてしまいます。それは相手も同じで、相互作用的に関係は悪化していきます。
そんな時、考え方を少し転換してみると、難しい人間関係をよくする方策が見つかるかもしれません。それは、「人間にはみんな、欠陥があるものだ」と考えられるかだと思います。「欠陥」というと、語弊があるかと思いますが、「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」と言い換えてもよいでしょう。そして、この「欠陥」、即ち「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」を「愛せるか/許せるか」ということが大事だと思います。
つまり、最終的には、完璧でない欠陥や脆弱さをもつ人を「愛せるか」ということなのだと思います。これが人と関わることの「面白さ」です。そして「私」自身にも、そんな「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」はあり、それを自ら受け入れられるか、自ら愛せるかが重要となってきます。そうすることで、相手を受け入れ、愛していけるのだと思います。
しかし、今の日本は、この「脆弱さ」「弱さ」「過ち/誤り」を許容できない【世知辛い】世の中になってきてしまっている気がします。「脆弱や弱さ」「過ち/誤り」を許さない、評価・監視社会になっている気がします。我が国の目指す共生社会とは、人を評価し、監視し合う地域づくりではなく、緩やかな結びつきで繋がる弾力性のある地域づくりだと思うのですが… 皆さんはどう思いますか?
- ■お知らせ■
-
本講座とは直接関係性はありませんが、私のメールマガジン【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】があります。こちらの講座では、勉強方法やマル秘話、独学や勉強時間がない方を対象に開講しています。また、4月からは第36回社会福祉士国家試験に向けた講座がスタートしました。気になる方は、チェックしてみてください。
- ※上記メルマガ【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】は、中央法規出版及び本講座「けあサポ」との関係はありません。そのため、本メルマガの問い合わせに関しては、中央法規出版では対応しておりません。
社会福祉士国家試験受験対策WEB講座、好評配信中!
もっと問題を解きたい人は受験対策アプリ!
社会福祉士合格アプリ2024 過去問+模擬問+一問一答+穴埋め
来年の受験対策アプリはこれ!【過去問】発売中!
【模擬問】【一問一答】【穴埋め】6~7月リリース予定!
- 詳細はこちらから
- ダウンロードはこちらから
受験対策コンテンツによりアクセスしやすい! けあサポアプリ版
けあサポ ― 介護・福祉の応援アプリ ―
- ※ 上記リンクから閲覧端末のOSを自動的に判別し、App StoreもしくはGoogle playへと移動し、ダウンロードが可能です。
中央法規メルマガ会員 募集中!
「社会福祉士」業務に役立つ新刊情報やオンラインイベント情報等を、いち早くお届けします! この機会にぜひお申し込みください。