張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第8回 「精神保健福祉に関する制度サービス」
精神医療審査会
精神医療審査会は、精神保健福祉法に規定され、精神障害者の人権を護るために、都道府県及び指定都市に設置される機関です。任意入院以外の入院の要否、入院中の処遇の要否の審査等を行います。なお、精神医療審査会の事務局は、精神保健福祉センターに設置することとされています。
精神医療審査会の委員
精神医療審査会の委員は、精神障害者の医療に関し学識経験を有する者(精神保健指定医)、精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者、法律に関し学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命します。
委員の人数は、精神保健指定医が2名以上、精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者が1名以上、法律に関し学識経験を有する者が1名以上の、計5名とされており、合議体の数は実情に応じて知事が決めることができます。
委員の任期は原則2年ですが、2年を超え3年以下の期間で都道府県が条例で定める場合は、その条例で定める期間とします。
精神医療審査会の業務
都道府県知事は、精神科病院又は指定病院の管理者に対して、措置入院者、医療保護入院者の定期病状報告を義務付けています。また、改善命令等を受けた精神科病院の管理者に対しては、任意入院者についても病状報告を求めることができるとされています。
都道府県知事は、これらの管理者からの病状報告を精神医療審査会に通知し、患者の入院の必要性について審査を求めなければなりません。精神医療審査会は、この都道府県知事からの審査の求めに対して審査を行い、知事に報告する義務があります。
精神医療審査会はこのほか、医療保護入院者の入院届け出の審査、入院中の者やその保護者からの退院請求、処遇改善請求に対する審査等の業務を行い、都道府県知事に審査結果を報告します。都道府県知事は、これらの審査結果に基づいて改善命令等の必要な措置を講じ、その措置の内容を請求者や関係者に通知することになっています。
退院・処遇改善請求
次に、退院請求と処遇改善請求についてみていきましょう。入院患者、その家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人、保佐人)及びその代理人である弁護士は、都道府県知事に対して、退院請求及び処遇改善請求を行うことができます。請求は書面が原則ですが、口頭や電話でも可能です。
意見陳述
上記の退院請求や処遇改善請求があった場合、精神医療審査会は、請求をした者、当該審査に係る入院中の者が入院している精神科病院の管理者の意見を聴かなければなりません。ただし、精神医療審査会がこれらの者の意見を聴く必要がないと特に認めたときは、この限りでないとされています。
診察・出頭命令と審査禁止規定
精神医療審査会はこれらの審査にあたり、精神保健指定医である委員に、当該入院患者の診察をさせ、関係者の報告等を求め、あるいは出頭を命じて審問することができます。
審査請求を行った者が入院している病院の管理者、勤務者が精神医療審査会の委員であるときは、その審査に加わることはできません。
精神医療審査会に関する以上の内容を簡単に表にまとめておきましょう。
設置義務 | 都道府県、指定都市 |
---|---|
事務局 | 精神保健福祉センターに設置 |
審査会委員 | 都道府県知事が任命 |
委員数 | 精神保健指定医(2名以上) 精神障害者の保健・福祉学識経験者(1名以上) 法律の学識経験者(1名以上) 計5名 |
合議体の数は実情に応じて知事が決める | |
業務 |
①医療保護入院者の入院届け出の審査 ②措置入院者、医療保護入院者の定期病状報告書の審査 ③入院中の者やその保護者からの退院請求、処遇改善請求に対する審査 |
報告義務 | 精神医療審査会は、審査結果を都道府県知事に報告する義務がある |
改善命令は知事が出す | |
退院・処遇改善請求 | 入院患者、その家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人、保佐人)及びその代理人である弁護士が都道府県知事に対して行う |
請求は書面が原則だが、口頭(電話)可能 | |
意見陳述 | 退院・処遇改善請求があった場合は、原則、請求者・病院管理者等の意見聴取義務 |
診察・出頭命令 | 審査にあたり、精神保健指定医である委員に診察させ、関係者の報告等を求め、あるいは出頭を命じて審問できる |
審査禁止規定 | 審査請求を行った者が入院している病院の管理者、勤務者が審査会の委員のときはその審査に加わることはできない |
なお下記に、精神保健福祉センター、地方精神保健福祉審議会、精神障害者に係る保健所の役割をそれぞれ表にまとめておきますのでご参照ください。
精神保健福祉センター
設置 | 都道府県・指定都市に設置義務 |
---|---|
業務 |
①相談及び指導のうち複雑又は困難な事例への対処 ②精神医療審査会事務 ③精神障害者保健福祉手帳の交付決定業務・自立支援医療(精神科通院医療)の支給認定に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とする事務 ④障害者総合支援法の規定により市町村が行う障害福祉サービスの支給要否決定に関する意見提示等 ⑤精神保健福祉に関する知識の普及及び調査研究 ⑥障害者総合支援法の規定により市町村に対する技術協力と援助の提供 |
地方精神保健福祉審議会
根拠法 | 精神保健福祉法 |
---|---|
設置 | 都道府県・指定都市に任意設置 |
役割 | 精神保健福祉法第9条の規定による精神保健及び精神障害者の福祉に関する事項の調査審議機関。都道府県及び指定都市に設置される。 精神保健福祉行政の施策等について、都道府県知事(指定都市市長)の諮問に答え、また、独自に意見具申する。 |
精神障害者に係る保健所の役割
保健所 | 精神障害者に関する知識の普及・啓発 |
---|---|
精神保健福祉に関する専門性の高い相談・支援 | |
精神保健福祉法に基づく移送手続き | |
医療保護入院者の入院届の受理・都道府県知事への進達(届けること) | |
デイ・ケアの実施 | |
当事者の会・家族会の組織化・支援、セルフヘルプグループ育成、ボランティア団体への支援、精神障害者の受療支援、未治療者への対応 |
いかがでしたか。このほか障害者総合支援法、介護保険制度等についてもよく学習しておきましょう。次回は、「精神障害者の生活支援システム」を取り上げます。では、第24回精神保健福祉士国家試験から今回の課題を挙げておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第24回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉に関する制度とサービス」
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問題61 精神医療審査会に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 医療保護入院者は審査の対象外である。
- 2 精神科病院の管理者に入院中の者の退院を命じることができる。
- 3 委員には精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者が含まれる。
- 4 委員の任期は5 年である。
- 5 入院中の者の電話での退院請求を審査することができる。
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