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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第3回 「精神疾患とその治療」

薬物療法の種類

 薬物療法における薬物の種類を大きく分類すると、抗精神病薬と気分安定薬抗うつ薬抗不安薬認知症薬等に分類することができます。それぞれ効果が異なりますが、精神疾患や状態像により、効果と副作用を見極めながらいくつかを組み合わせて使用することがあります。

抗精神病薬

 まず、抗精神病薬から取り上げます。統合失調症でよく使用される治療薬である抗精神病薬には、大きく分けて「定型抗精神病薬」「非定型抗精神病薬」があります。

定型抗精神病薬

 統合失調症では、脳内の中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰な伝達により、幻覚などの精神症状が出現します。定型抗精神病薬は、脳内のドーパミン神経系の伝達を遮断する作用をもっており、ドーパミンの過剰な伝達を防いで、幻覚などの精神症状を改善させる働きがあります。

 この定型抗精神病薬には、鎮静効果のあるクロルプロマジン、抗幻覚作用のあるハロペリドール、スルピリドなどがあり、ドーパミン遮断作用により統合失調症の陽性症状に有効です。

非定型抗精神病薬

 非定型抗精神病薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンやその他の神経伝達物質への作用をもっており、幻覚などの陽性症状に対する効果だけでなく、錐体外路症状などの副作用の発現が少なく、定型抗精神病薬では改善が得られない、陰性症状や認知機能障害に対しても効果が得られることがあるといわれています。

 この非定型抗精神病薬には、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン等があります。

抗精神病薬の副作用

 これらの抗精神病薬は、中脳辺縁系だけでなく、中脳皮質系、黒質線条体系、漏斗下垂体系でも、ドーパミン遮断作用をもっているため、これらの箇所では遮断による副作用が出現します。以下、抗精神病薬の副作用についてみていきます。

黒質線条体系での作用による錐体外路症状

 抗精神病薬の使用により、黒質線条体系におけるドーパミン遮断作用によって、錐体外路症状が起こります。抗精神病薬の短期使用で出現するものとして、パーキンソニズムアカシジアジストニアがあります。

パーキンソニズム
 パーキンソニズムとは、パーキンソン病と似通った症状です。ただし、パーキンソン病では症状が徐々に進行するのに対し、抗精神病薬の副作用では、手足の震え、小刻み歩行、無表情な仮面様顔貌、筋強剛、歩行障害、姿勢不安定、運動障害などが薬の使用により速やかに出現することを特徴とします。

アカシジア
 アカシジアとは、筋強直による静座不能や、静止不能の状態をいいます。座ったままでいられない、じっとしていられない、下肢がむずむずする、下肢の灼熱感、足踏み、姿勢を絶えず変える、目的のない徘徊などがみられます。また、焦燥や不安といった精神的な動揺を感じたり、眠ることができないなどの様々な反応がある。これらによって、自殺企図、衝動的行動につながることがあります。

ジストニア
 ジストニアとは、筋肉が異常に緊張してしまう状態で、不随意で持続的な筋収縮にかかわる運動障害です。口やあご、舌、顔面、頸部、胴体部、手足などがつっぱる、ねじれるという状態を発現します。瞼の痙攣、眼球の上転、白目の状態になる、ものをうまく飲み込めない、呼吸しづらい、顔や首が強くこわばる、首が反り返る、舌が出たままになる、ろれつがまわらない、体が傾くなどの症状を呈します。

遅発性ジスキネジア
 抗精神病薬の長期使用でみられる副作用が遅発性ジスキネジアです。遅発性ジスキネジアは、口の周囲の不随運動、頭部、四肢、体幹の筋肉の異常行動を発現します。異常な不随意運動の発現箇所としては、舌、口周辺部、顔面にみられることが多く、顔面口部に繰り返し唇をすぼめる、とがらせる、舌を左右に揺らす、舌を突き出す、口をモグモグする、歯をくいしばるなどの症状がみられます。また、足が動いてしまったり突っ張ったりして歩きにくい、手に力が入って力が抜けないなど、四肢等の異常運動がみられることがあります。

漏斗下垂体系での内分泌・代謝系異常

 抗精神病薬によって、ドーパミン受容体遮断作用が、漏斗下垂体系に作用すると、プロラクチンの血中濃度が異常高値を示すようになり、高プロラクチン血症が引き起こされることがあります。プロラクチンが多量に分泌されると、脳下垂体からの乳汁を放出させる刺激ホルモンの分泌が異常に亢進して、乳汁分泌や月経異常をきたします。

悪性症候群

 抗精神病薬の投与中に、急に投薬を増量したり変更したり中断すると、重篤な副作用が現れることがあります。高熱・発汗、意識のくもり、手足の震えや身体のこわばり、言葉の話しづらさやよだれ、食べ物や水分の飲み込みにくさなどの錐体外路症状、頻脈や頻呼吸、血圧の急激な上昇など、自律神経系の急激な変動などが複数認められることがあります。悪性症候群は、急性の多臓器不全など重篤な症状をたどることもありますので、迅速な対応が必要です。

抗精神病薬

定型抗精神病薬 ドーパミン遮断作用により統合失調症の幻覚などの陽性症状に有効
副作用として錐体外路症状が強い
クロルプロマジン(沈静効果)、ハロペリドール(抗幻覚)、スルピリド等
非定型抗精神病薬 ドーパミン、セロトニン等への作用により陽性症状・陰性症状・認知機能障害にも有効
錐体外路症状などの副作用の発現が少ない
リスペリドン、パリペリドン、オランザピン等
抗精神病薬の副作用 パーキンソニズム、アカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジア、高プロラクチン血症、悪性症候群

気分安定薬

 次に、気分安定薬を取り上げます。気分安定薬には、炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどがあります。 

炭酸リチウム

 炭酸リチウムは、中枢神経に作用して、感情の高まりや行動を抑える気分安定作用があるので、躁病や躁うつ病の躁状態、うつ病相の急性期などに使用されます。主な副作用として、手足の震え、のどの渇き、下痢、尿量の減少などがみられます。

 炭酸リチウムは、適正な血中濃度が保たれない場合、リチウム中毒症に至る可能性があります。リチウム中毒症では、食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状、振戦、傾眠、錯乱等の中枢神経症状、運動障害、運動失調等の運動機能症状、発熱、発汗等の全身症状がみられます。中毒が進行すると、急性腎不全により電解質異常が現れ、全身けいれん、ミオクローヌス等がみられることがあります。

 このように、甲状腺機能低下や腎臓機能障害の恐れがあるため、定期的な血中濃度の検査が必要です。

バルプロ酸ナトリウム

 バルプロ酸ナトリウムは、気分安定作用と抗てんかん作用があり、躁病、躁うつ病の躁状態、てんかん等の治療に用いられます。これは、脳内の抑制性神経伝達物質の濃度の上昇、ドーパミン濃度の上昇、セロトニン代謝の促進などにより、脳内の抑制系を活性化して脳神経の興奮を鎮める作用によります。

 主な副作用として、傾眠、ふらつき、吐き気、食欲不振、全身倦怠感などが報告されています。劇症肝炎などの肝障害や、高アンモニア血症を伴う意識障害、血小板減少等によるあざ、急性膵炎、口内のあれなどがみられることもあります。

カルバマゼピン

 カルバマゼピンは、脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて気分を安定させ、てんかん発作を抑える作用があるので、躁状態やてんかんの治療に使用します。

 主な副作用として、眠気、めまい、ふらつき、けん怠感、疲れやすさ、運動失調、脱力感、発疹、頭痛等がみられます。まれに、再生不良性貧血、無顆粒球症などの血液障害や皮膚や粘膜の過敏症を出現するスティーヴンス-ジョンソン症候群、肝機能障害などが報告されています。

気分安定薬

炭酸リチウム 中枢神経に作用し気分安定作用がある。躁状態に使用
副作用は甲状腺機能低下、腎臓機能障害、リチウム中毒症状。定期的な血中濃度モニターが必要
バルプロ酸ナトリウム 気分安定作用、抗てんかん作用。躁状態・てんかん等の治療に使用
副作用は傾眠、肝機能障害、高アンモニア血症を伴う意識障害等
カルバマゼピン 脳の働きを抑える作用。躁状態やてんかんの治療に使用
眠気、めまい、ふらつき、けん怠感、まれに無顆粒球症などの血液障害、肝機能障害等の副作用がある

抗うつ薬

 うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどが不足してしまうために起こると考えられており、その脳内神経伝達物質の作用を強めるような働きをするのが抗うつ薬です。抗うつ薬には、大きく分けて三環系抗うつ薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)があります。

三環系抗うつ薬

 三環系抗うつ薬の代表的なものに、イミプラミンがあります。三環系抗うつ薬は、モノアミンの再取り込みを阻害することによって、セロトニンやノルアドレナリン等のモノアミンが減少することを抑える働きをします。

 このとき、アセチルコリンも阻害してしまう抗コリン作用があるため、副作用として口渇や排尿困難、眼圧上昇などが起こります。そのため緑内症患者には禁忌とされています。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

 抗うつ薬としての選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、セロトニンの再取り込み阻害作用だけをもち、アセチルコリン等は阻害しません。このことによって結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持されるので、従来の抗うつ薬でみられた抗コリン作用はほとんどみられません。

 投薬の効果は、服用後2~ 3週間を要しますので、効果がみられないからといって勝手に薬の服用をやめる、症状の強いときだけ頓服のように使用するというような服用方法は避けなければなりません。

 副作用としては、服用初期の吐き気や嘔吐、食欲不振等の消化器症状や眠気、服用による体重増加や便秘などがあります。眠気に対しては、運転や危険な作業等に注意し、就寝前に服用することが勧められています。

 また服用後初期に、不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、躁状態等の副作用がまれにみられます。これらの中枢神経を刺激することによる症状を総称して「賦活症候群」、あるいは「初期刺激症状」といいます。

 この薬をうつ病患者に処方するときは、いらいらする、攻撃性が増すなどの出現に注意を促し、自殺関連の危険を回避できるようにしておくことが必要です。

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、急に服用を中止すると、薬の血中濃度が下がり離脱症状が出現します。断薬時の離脱症状として、めまい、嘔吐、頭痛、知覚異常、不眠、不安、焦燥等などがありますので、薬の服用を中止するときは医師の指示により徐々に減らしていくことが必要です。

抗うつ薬

三環系抗うつ薬 セロトニンやノルアドレナリン等の減少を抑制
副作用として抗コリン作用である口渇や排尿困難、眼圧上昇等がみられる。緑内症患者には禁忌
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニンの再取り込み阻害作用だけでアセチルコリン等は阻害しない
初期投与・用量変更時に不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、躁状態等の副作用あり
賦活症候群による自殺を回避するため、いらいら感等の出現に注意
断薬症状として、めまい、嘔吐、頭痛、知覚異常、不眠、不安、焦燥等


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