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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。


第30回 「現代社会と福祉」

選別主義と普遍主義

 福祉政策の方法の考え方として、「選別主義」と「普遍主義」があります。

 「選別主義」とは、救済の基準を設定し、一定以下の水準の者だけを救済の対象とするという考え方です。生活保護のように生活保護基準を決め、資力や収入を調べるミーンズテスト、稼働能力、親族扶養の可能性を調べることを条件として、保護基準以下の人だけを生活保護の対象とするというような方法です。この選別主義は、スティグマを伴うために、本当は救済されるべき人々の捕捉率すなわち申請率が低くなりやすいという傾向があります。

 「普遍主義」とは、救済の対象を限定せずにすべての人を対象とするという考え方です。所得保障や社会福祉サービスを提供する場合、受給資格を判定するための資産調査(ミーンズテスト)等を要件としないで、必要としているすべての人々がサービスを利用できるようにする考え方です。

 この考え方で福祉政策を行うと、ミーンズテストはないためスティグマは軽減されますが、中所得者層、高額所得者層も平等にサービスを利用できるために、逆に財政負担が増大するという傾向が生まれます。


所得の再分配

 福祉政策を進めていくための資源の分配の方法として、所得の再分配があります。所得の再分配は大きく分けて、「水平的再分配」と「垂直的再分配」の2種類に分類することができます。

 「水平的再分配」とは、同一所得間、同一職種間等で、稼得能力のある人から稼働能力のない人に所得を再分配することです。社会保険などが該当します。社会保険は、稼働能力がある間に保険料を支払っておいて、障害や病気、高齢、死亡などで、働けなくなったときに保険給付を行うという方法で、「水平的再分配」の代表的なものです。

 「垂直的再分配」とは、高額所得者から低額所得者への再分配のことです。累進課税などが代表的なものです。「累進課税」とは、課税額が高いほど適用される税率が上がるという課税方式です。日本では、所得税、相続税、贈与税に採用されています。このようにすることで、その課税額を低所得者の福祉政策に回すという方法です。

負の所得税

 「垂直的再分配」の中に「負の所得税」という考え方があります。「負の所得税」とは、一定以下の収入しかない人々は政府に税金を納めず、逆に政府から給付金を受け取るというものです。すべての人に一定の税率を一律にかけ、基礎控除額を定めて、それを上回った者から所得税を徴収し、下回った者に対しては、給付金を給付するという方法もあります。

選別主義 救済の基準を設定。スティグマを伴う
普遍主義 救済の対象を限定しない。スティグマを軽減するが財政負担は増大する
水平的再分配 稼得能力のある人からない人への再分配
垂直的再分配 高額所得者から低額所得者への再分配
負の所得税 収入が一定以下の場合は課税ではなく政府から給付金を受け取る

福祉政策の手段

 福祉政策を進めていく手段として、大きく分けて「給付的手段」と「規制的手段」があります。

給付的手段

 「給付的手段」の中には、「現金給付」「現物給付」「間接的給付」の3種類があります。

 「現金給付」とは、社会保障制度における給付のうち、直接現金を給付することによって福祉政策を実現しようとする方法です。具体的には、生活保護の給付や社会手当などの給付が該当します。わが国の医療保険制度における給付のうち、傷病手当は現金給付によって実施されています。

 「現物給付」は、社会保障制度における給付のうち、医療サービス、福祉サービスの提供など、対人援助として金銭給付以外の方法で直接行われる給付方法のことです。わが国の介護保険制度における給付は、現物給付によって行われています。わが国の医療保険制度の給付のうち、療養の給付等は現物給付によって実施されています。

 「間接的給付」とは、直接金銭や現物を給付するのではなく、所得から一定の課税対象額を控除する「税制控除」等の方法で資源を分配する方法です。例えば、障害者控除などは障害者の収入から一定額を控除したものに課税されますから、結果的に課税額の負担の軽減になるという給付形態です。


規制的手段

 福祉政策の手法としての「規制的手段」は、「社会的規制」と「経済的規制」に分類されます。

 「社会的規制」とは、法律や規則などによる規制によって福祉政策を行うことです。労働者の基本的人権を守るために、「労働基準法」や「最低賃金法」などが制定されていることなどがこの社会的規制に該当します。

 「経済的規制」とは、需要と供給を調整して規制するという方法によって、福祉政策を実施する方法です。具体的には、「参入規制」や「設備等の増設規制」、「輸入規制」等が該当します。例えば、介護保険制度で例を挙げると、市町村介護保険事業計画に盛り込まれた介護サービスの必要量が満たされた場合は、それを超える事業者からの指定申請に対しては、指定しないことができるとされていることなどが、この「経済的規制」に該当します。

給付的手段 現金給付:生活保護、社会手当等
現物給付:福祉サービス等
間接的給付:税制控除等
規制的手段 社会的規制:法律や規則などによる規制
経済的規制:参入規制、設備等の増設規制、輸入規制等

福祉政策の手法

 福祉政策としての資源配分の手法として、「ラショニング」という方法があります。「ラショニング」とは、「割り当て」という意味があり、希少な資源を市場メカニズムを用いないで、必要とする人々に供給する方法のことです。

 「ラショニング」は、「財政ラショニング」と「サービスラショニング」に分類することができます。「財政ラショニング」には、予算配分等のように、公共部門への財源配分と個々の社会部門への財源配分を行うこと等が該当します。例えば、わが国の年度当初の予算で、一般会計の中に「社会保障関係費」を割り当てるように、市場原理によらないで予算配分を行うことなどがあります。

 「サービスラショニング」とは、ニーズ判定から資源の分配を行うことです。福祉事務所の現業員が生活保護の申請を受けた場合、生活が困窮に陥っているかどうかミーンズテストを行い、ニーズ判定をして、保護基準に達していないような場合には、保護の実施を決定するようなラショニングの方法のことです。

ラショニング 希少な資源を市場メカニズムを用いないで、必要とする人々に供給する方法
財政ラショニング 予算配分等のように、公共部門への財配分と個々の社会部門への財配分を行うこと
サービスラショニング ニーズ判定から資源の分配を行うこと

 以上、福祉政策におけるニーズと資源、給付形態について解説してきましたがいかがでしたか。「現代社会と福祉」の科目では、福祉の原理論、イギリスの福祉の歴史的発展の経緯、福祉国家論、現代社会の課題等についても理解を深めておきましょう。次回は「地域福祉の理論と方法」について取り上げます。では第23回の精神保健福祉士国家試験の中から課題を挙げておきますのでチャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士国家試験 「現代社会と福祉」

問題 26 福祉政策における資源供給の在り方に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 現金よりも現物で給付を行う方が、利用者の選択の自由を保障できる。
  • 2 バウチャーよりも現金で給付を行う方が、利用者が本来の目的以外に使うことが生じにくい。
  • 3 日本の介護保険法における保険給付では、家族介護者に対して現金給付が行われることはない。
  • 4 負の所得税は、低所得者向けの現金給付を現物給付に置き換える構想である。
  • 5 普遍主義的な資源の供給においては、資力調査に基づいて福祉サービスの対象者を規定する。

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