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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。


第29回 「社会理論と社会システム」

客観主義

 最初に、社会問題の捉え方の立場についてみていきましょう。社会問題の捉え方には、大きく分けて「客観主義」の立場と「主観主義」の立場があります。
 客観主義は本質主義ともいわれ、物事には変化しない普遍的な本質が備わっているという考え方です。客観主義の立場は、まず一定の客観的な枠組みを作り、それを普遍的で客観的な尺度として、現実を分析して考えるという方法をとります。「客観的に実在して誰の目にも明らかな現実として存在するもの」を「社会問題」として捉える考え方です。例えば、貧困という客観的事実を社会問題として捉えます。この客観主義の立場に「規範主義」と「機能主義」があります。


規範主義

 「規範主義」とは、社会秩序は人々が共有している共通の価値観である「社会的規範」によって保たれているという考え方です。「社会的規範」から外れた、周りの人と違った考えや行動は、「逸脱」であり「社会問題」であると捉える考え方です。具体的には、道徳規範が弛緩し崩壊していった結果、犯罪が生まれ、治安が悪化し、社会的秩序が崩壊していき、社会問題を引き起こすという考え方をとります。

機能主義

 次に、機能主義の立場をみていきましょう。機能主義は、社会秩序は社会の各機能の相互作用によって保たれていると考えます。「システムの要素である機能」の相互作用がどのような働きをしているかという「機能」に焦点を当てて分析するアプローチ方法です。社会は統一されたシステムを形成しているので、社会秩序の維持や社会の目標達成にとってマイナスに作用することは社会問題であると捉えます。

 機能主義の代表的な立場にマートンがいます。マートンは、機能主義の立場から社会における機能を「順機能」「逆機能」という言葉で説明しました。システムの目標にとってプラスに働く機能を順機能とし、マイナスに働く機能を逆機能としました。この「マイナスに働く機能」のために、社会が機能不全状態を起こしている場合を社会問題としました。

 マートンは官僚制を取り上げ、ウェーバーが合法的支配の典型であるとした官僚制について、官僚制がもっている順機能だけでなく、逆機能も指摘しました。規則や命令の遵守、権限の原則、文書主義、専門化という性格は、恣意性の排除による公平性の確保、仕事の正確さを保障しますが、官僚制はこのような順機能だけでなく、これらを固守しようとするあまり、融通のきかなさ、画一性、膨大な書類と煩雑な手続き等の逆機能がみられることを指摘しました。


主観主義

 上記の客観主義の立場に対して、「主観主義」の立場があります。主観主義の立場とは、「認識論的立場」とも言い換えることができます。認識論的立場とは、物事は最初から決められた枠組みで成り立っているのではなく、現実の生活の中における相互作用によって「解釈されながら意味をもってくる」という考え方です。ですから、社会問題とは何であるかと考えるとき、「社会問題をどのように認識するか」によって社会問題の捉え方も変わってくるという立場をとります。

 具体例として、客観主義の立場では、性差は社会の中にもともと存在していると考えますが、主観主義の立場では、性差にかかわる社会問題は社会の認識が作り出しているものであると考えます。

構築主義

 主観主義の代表的な立場には、「構築主義」があります。構築主義は1970年代に提唱された概念で、社会問題というものが初めからもともとあるのではなく、人々が社会問題であると申し立てたことによって社会問題になるのであるとしました。すなわち「社会問題は人々の認識によって作り出される」という考え方です。

 先程の性差についてみてみると、構築主義では、性差に関する社会問題は文化や経済システム、政治的社会的に作り出され認識されるものであり、社会的要因によって認識されるものであると考えます。社会問題という事柄が客観的に起きているかどうかという視点ではなく、人々がそれを社会問題として捉えているかどうかで、社会問題となるかどうかが決まるという考え方です。ですから構築主義の立場は、「社会問題として申し立てる活動そのもの」に焦点を当てて社会問題を分析しようとします。

 以上が社会問題の捉え方の概観です。社会のさまざまな現象を捉えるとき、さまざまな視点があること、自分はどの視点で社会を分析しようとしているのか、社会が問題としているものが、どのような視点で問題とされているのかなど、注意深く考えていくことが精神障害者を援助する過程で大きな洞察力になるでしょう。

客観主義(本質主義) 物事には、変化しない普遍的な本質が備わっているという考え方
・規範主義:人々が共有している価値観(規範)が社会秩序を保っているという考え方
・機能主義:社会秩序を維持するための機能に焦点を当てた考え方
主観主義(認識論) 物事は、解釈されながら意味を持ってくるという認識論的立場
・構築主義:人々が、社会問題だと主張すると社会問題になると考える

社会病理

 犯罪や自殺等のさまざまな社会現象を分析するとき、社会学ではそれらを単に個人の内面的な病理現象が引き起こしていると捉えるのではなく、「社会全体の仕組みに内在する要因が犯罪や自殺を引き起こしている」と考えます。そしてその社会が内包している要因を「社会病理」と呼んでいます。

逸脱理論

 社会病理が引き起こす行動を「逸脱」と呼びます。この逸脱行動をどのように捉えるかという理論を「逸脱理論」といいます。逸脱理論には、「文化学習理論」「社会緊張理論」「統制理論」「社会解体論」「コンフリクト理論」「ラベリング理論」などがあります。

文化学習理論

 犯罪の原因が個人に起因するものではなく、社会に内在する要因によるものであるという考え方に基づいて提唱された理論の1つに「文化学習理論」があります。文化学習理論は、分化的接触理論、差異的接触理論とも呼ばれ、犯罪や非行等の社会問題は「下位集団文化」の中で学習され、その文化を通じて、世代から世代へと伝承されていくとみる立場です。

 少年犯罪は、仲間集団における文化の学習を通して形成されると考え、少年一人ひとりが生まれつき逸脱的な性格を有していたために逸脱行動に至ったのではなく、非行を行う集団の文化の中で非行を学習し、逸脱行動を学んでいったと考えます。

社会緊張理論

 社会緊張理論とは、「社会の仕組みが緊張を伴っている場合」に、犯罪という逸脱行動を生み出すという理論です。社会が生み出している緊張とは、「文化的目標とその目標達成のための手段が解離しているという緊張状態」のことです。

 アメリカにおける文化的目標は、アメリカ建国の開拓期以来、社会的、経済的地位における成功であり、人生における成功こそがすべての目標であるという価値観が文化的目標として刷りこまれてきました。しかし、開拓期の誰でも頑張れば成功できる社会から、次第に貧困や差別が固定化し階層化されてきた社会においては、頑張っても成功するための手段としての制度が整っていないため、そこに緊張が生まれます。

 文化的目標である人生における成功という目標に達することができないという現実につき当たらざるをえなくなったときに、人々は非合法な手段を用いても成功という目標を達成しようとして、逸脱行動が生まれるという考え方です。アメリカの社会学者マートンは、これをアノミー的逸脱理論として提唱しました。

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