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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第21回 「精神疾患とその治療」

 皆さんこんにちは。不安定な天候や新型コロナの流行も続いており落ち着かない日々ですが、体調を崩さないよう健康には十分気をつけて、この時期を乗り越えていってください。

 今回から専門科目に入っていきます。「精神疾患とその治療」は、代表的な精神疾患とその症状が出題範囲の大部分を占めます。疾病の特徴や症状と、治療法などをよく把握しておきましょう。今回は、薬物療法とその副作用を中心に取り上げていきます。ではまず、先週の「権利擁護と成年後見制度」の課題を解説していきます。

第23回精神保健福祉士試験 「権利擁護と成年後見制度」

問題 82 任意後見制度に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 任意後見契約に関する証書の作成後、公証人は家庭裁判所に任意後見契約の届出をしなければならない。
  • 2 本人は、任意後見監督人選任の請求を家庭裁判所に行うことはできない。
  • 3 任意後見契約では、代理権目録に記載された代理権が付与される。
  • 4 任意後見監督人が選任される前において、任意後見受任者は、家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することができる。
  • 5 任意後見監督人が選任された後において、本人が後見開始の審判を受けたとしても、任意後見契約は継続される。
正答3

解答解説

  • 1 × 公証人は、代理権の範囲を明記した任意後見契約に関する公正証書を作成したら、公正証書を法務局の登記所に「登記」しなければなりません。この登記により、委任を受けた者は「任意後見受任者」という立場になります。任意後見を委任される者について、法律上の制限はありません。本人の親族や知人、あるいは専門職である弁護士、司法書士、社会福祉士などが委任されることがあります。また、社会福祉協議会などの社会福祉法人等も受任者になることができます。
  • 2 × 本人は、任意後見監督人選任の請求を家庭裁判所に行うことができます。公正証書による登記所への登記を経ても、「任意後見受任者」には、任意後見人としての法的効力は発生しません。任意後見受任者の法的効力を発生させるためには、家庭裁判所に対して、「任意後見監督人選任の申し立て」を行う必要があります。任意後見契約を行った本人の判断能力が不十分な状況になり、任意後見人選任の申立てが必要になった場合は、「本人」、「配偶者」、「4親等内の親族」、「任意後見受任者」が、申立てを行うことができます。本人以外の者の請求によって任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければなりません。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでないとされています。本人に対する訴訟提起者とその配偶者・直系血族は申し立てることはできません。
  • 3 〇 任意後見契約は、本人がまだ判断能力がある間に、自分自身で任意後見を委任したい人物を選び任意後見を委任する契約で、公正証書には、「代理行為の範囲」を明記しなければならないこととされています。法定後見制度と任意後見制度の違いは、法定後見制度には、「代理権」「取消権」「同意権」があるのに対して、任意後見制度は、「取消権」「同意権」はなく、「代理権」のみであるという点です。任意後見契約を結んだ時点では、この代理権の法的効力は発生せず、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時点で、「任意後見受任者」は「任意後見人」となり、代理権の法的効力が発生します。
  • 4 × 「任意後見監督人が選任される前」には、本人または任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができます。「任意後見監督人が選任された後」においては、本人または任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができます。
  • 5 × 任意後見監督人が選任された後、本人が後見開始の審判を受けた場合は、任意後見契約は終了します。任意後見契約の終了には、このほか、任意後見人が不適格である場合には、任意後見監督人、本人、その親族、検察官の請求により家裁が解任し終了します。また、本人または任意後見人、任意後見受任者が死亡したとき、破産等により終了します。ただし、任意後見人の代理権の消滅は登記をしなければ善意の第三者に対抗することはできません。

 いかがでしたか。この科目では、憲法の基本的人権、民法の契約、親族、相続、消費者保護等についてもよく学習しておきましょう。では「精神疾患とその治療を」取り上げていきます。今回は精神疾患の薬物療法とその副作用について解説していきます。

薬物療法の種類

 薬物療法における薬物の種類を大きく分類すると、「抗精神病薬」と「気分安定薬」、「抗うつ薬」、「抗不安薬」、「認知症薬」に分類することができます。それぞれ効果が異なりますが、精神疾患や状態像により、効果と副作用を見極めながら、いくつかを組み合わせて使用することがあります。

抗精神病薬

 まず、抗精神病薬から取り上げます。統合失調症でよく使用される治療薬である抗精神病薬には、大きく分けて「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」があります。

定型抗精神病薬

 統合失調症では、脳内の中脳辺縁系におけるドーパミンの過剰な伝達により、幻覚などの精神症状が出現します。定型抗精神病薬は、脳内のドーパミン神経系の伝達を遮断する作用をもっており、ドーパミンの過剰な伝達を防いで、幻覚などの精神症状を改善させる働きがあります。

 この定型抗精神病薬には、鎮静効果のあるクロルプロマジン、抗幻覚作用のあるハロペリドール、スルピリドなどがあり、ドーパミン遮断作用により統合失調症の陽性症状に有効です。

非定型抗精神病薬

 非定型抗精神病薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンやその他の神経伝達物質への作用をもっており、幻覚などの陽性症状に対する効果だけでなく、錐体外路症状などの副作用の発現が少なく、定型抗精神病薬では改善が得られない、陰性症状や認知機能障害に対しても効果が得られることがあるといわれています。
 この非定型抗精神病薬には、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン等があります。

抗精神病薬の副作用




 これらの抗精神病薬は、中脳辺縁系だけでなく、中脳皮質系、黒質線条体系、漏斗下垂体系でも、ドーパミン遮断作用をもっているため、これらの箇所では、遮断による副作用が出現します。以下、抗精神病薬の副作用についてみていきます。

黒質線条体系での作用による錐体外路症状

 抗精神病薬の使用により、黒質線条体系におけるドーパミン遮断作用によって、錐体外路症状が起こります。抗精神病薬の短期使用で出現するものとして、パーキンソニズム、アカシジア、ジストニアがあります。

〔パーキンソニズム〕

 パーキンソニズムとは、パーキンソン病と似通った症状です。ただし、パーキンソン病では、症状が徐々に進行するのに対し、抗精神病薬の副作用では、手足の震え、小刻み歩行、無表情な仮面様顔貌、筋強直、歩行障害、姿勢不安定、運動障害などが、薬の使用により速やかに出現することを特徴とします。

〔アカシジア〕

 アカシジアとは、筋強直による静座不能や、静止不能の状態をいいます。座ったままでいられない、じっとしていられない、下肢がむずむずする、下肢の灼熱感、足踏み、姿勢を絶えず変える、目的のない徘徊などがみられます。また、焦燥や不安といった精神的な動揺を感じたり、眠ることができない等のさまざまな反応があり、これらによって、自殺企図、衝動的行動につながることがあります。

〔ジストニア〕

 ジストニアとは、筋肉が異常に緊張してしまう状態で、不随意で持続的な、筋収縮にかかわる運動障害です。口やあご、舌、顔面、頸部、胴体部、手足などが、つっぱる、ねじれるという状態を発現します。瞼の痙攣、眼球の上転、白目の状態になる、ものをうまく飲み込めない、呼吸のしづらさ、顔や首が強くこわばる、首が反り返る、舌が出たままになる、ろれつがまわらない、体が傾くなどの症状を呈します。

〔遅発性ジスキネジア〕

 抗精神病薬の長期使用でみられる副作用が、遅発性ジスキネジアです。遅発性ジスキネジアは、口の周囲の不随意運動、頭部、四肢、体幹の筋肉の異常行動を発現します。異常な不随意運動の発現箇所としては、舌、口周辺部、顔面にみられることが多く、繰り返し唇をすぼめる、とがらせる、舌を左右に揺らす、舌を突き出す、口をモグモグする、歯をくいしばるなどの症状がみられます。また、足が動いてしまって歩きにくい、手に力が入って力が抜けない、足が突っ張って歩きにくいなど、四肢等の異常運動がみられることがあります。

漏斗下垂体系での内分泌・代謝系異常

 抗精神病薬によって、ドーパミン受容体遮断作用が、漏斗下垂体系に作用すると、プロラクチンの血中濃度が異常高値を示すようになり、高プロラクチン血症が引き起こされることがあります。プロラクチンが多量に分泌されると、脳下垂体からの、乳汁を放出させる刺激ホルモンの分泌が異常に亢進して、乳汁分泌や月経異常をきたします。

悪性症候群

 抗精神病薬の投与中に、急に投薬を増量したり変更したり中断すると、重篤な副作用が現れることがあります。高熱・発汗、意識のくもり、手足の震えや身体のこわばり、言葉の話しづらさやよだれ、食べ物や水分の飲み込みにくさなどの錐体外路症状や、頻脈や頻呼吸、血圧の急激な上昇など、自律神経系の急激な変動などが複数認められることがあります。悪性症候群は、急性の多臓器不全など重篤な症状をたどることもありますので、迅速な対応が必要です。

抗精神病薬

定型抗精神病薬 ドーパミン遮断作用により統合失調症の幻覚などの陽性症状に有効
副作用として錐体外路症状が強い
クロルプロマジン(沈静効果)、ハロペリドール(抗幻覚)、スルピリド等
非定型抗精神病薬 ドーパミン、セロトニン等への作用により陽性症状・陰性症状・認知機能障害にも有効
錐体外路症状などの副作用の発現が少ない
リスペリドン、パリペリドン、オランザピン等
抗精神病薬の副作用 パーキンソニズム、アカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジア、高プロラクチン血症、悪性症候群

気分安定薬




 次に、気分安定薬を取り上げます。気分安定薬には、炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどがあります。

炭酸リチウム

 炭酸リチウムは、中枢神経に作用して、感情の高まりや行動を抑える気分安定作用があるので、躁病や躁うつ病の躁状態、うつ病相の急性期などに使用されます。主な副作用として、手足の震え、のどの渇き、下痢、尿量の減少などがみられます。

 炭酸リチウムは、適正な血中濃度が保たれない場合、リチウム中毒症に至る可能性があります。リチウム中毒症では、食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状、振戦、傾眠、錯乱等の中枢神経症状、運動障害、運動失調等の運動機能症状、発熱、発汗等の全身症状がみられます。中毒が進行すると、急性腎不全により電解質異常が現れ、全身けいれん、ミオクローヌス等がみられることがあります。
 このように、甲状腺機能低下や腎臓機能障害の恐れがあるため、定期的な血中濃度の検査が必要です。

バルプロ酸ナトリウム

 バルプロ酸ナトリウムは、気分安定作用と抗てんかん作用があり、躁病、躁うつ病の躁状態、てんかん等の治療に用いられます。これは、脳内の抑制性神経伝達物質の濃度の上昇、ドーパミン濃度の上昇、セロトニン代謝の促進などにより、脳内の抑制系を活性化して脳神経の興奮を鎮める作用があります。

 主な副作用として、傾眠、ふらつき、吐き気、食欲不振、全身倦怠感などが報告されています。劇症肝炎などの肝障害や、高アンモニア血症を伴う意識障害、血小板減少等によるあざ、急性膵炎、口内のあれなどがみられることもあります。

カルバマゼピン

 カルバマゼピンは、脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて気分を安定させ、てんかん発作を抑える作用があるので、躁状態やてんかんの治療に使用します。

 主な副作用として、眠気、めまい、ふらつき、けん怠感、疲れやすさ、運動失調、脱力感、発疹、頭痛等がみられます。まれに、再生不良性貧血、無顆粒球症などの血液障害や、皮膚や粘膜の過敏症を出現するスティーヴンス-ジョンソン症候群、肝機能障害などが報告されています。

気分安定薬

炭酸リチウム 中枢神経に作用し気分安定作用がある。躁状態に使用
副作用は甲状腺機能低下、腎臓機能障害、リチウム中毒症状。定期的な血中濃度モニターが必要
バルプロ酸ナトリウム 気分安定作用、抗てんかん作用。躁状態・てんかん等の治療に使用
副作用は、傾眠、肝機能障害、高アンモニア血症を伴う意識障害等
カルバマゼピン 脳の働きを押さえる作用。躁状態やてんかんの治療に使用
眠気、めまい、ふらつき、けん怠感、まれに無顆粒球症などの血液障害、肝機能障害等の副作用がある

抗うつ薬

 うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどが不足してしまうために起こると考えられており、その脳内神経伝達物質の作用を強めるような働きをするのが抗うつ薬です。抗うつ薬には、大きく分けて、三環系抗うつ薬と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)があります。

三環系抗うつ薬

 三環系抗うつ薬の代表的なものに、イミプラミンがあります。三環系抗うつ薬は、モノアミンの再取り込みを阻害することによって、セロトニンやノルアドレナリン等のモノアミンが減少することを押さえる働きをします。
 このとき、アセチルコリンも阻害してしまう抗コリン作用があるため、副作用として、口渇や排尿困難、眼圧上昇などが起こりますので、緑内障患者には禁忌とされています。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

 抗うつ薬としての、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、セロトニンの再取り込み阻害作用だけをもち、アセチルコリン等は阻害しません。このことによって結果的にセロトニン濃度がある程度高く維持されるので、従来の抗うつ薬でみられた抗コリン作用はほとんどみられません。

 投薬の効果は、服用後2週間から3週間を要しますので、効果がみられないからといって勝手に薬の服用をやめたり、症状の強いときだけ頓服のように使用するというような服用方法は、避けなければなりません。

 副作用としては、服用初期の吐き気や嘔吐、食欲不振等の消化器症状や、眠気、服用による体重増加や便秘などがあります。眠気に対しては、運転や危険な作業等に注意し、就寝前に服用することがすすめられています。

 また服用後初期に、不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、躁状態等の副作用がまれにみられます。これらの、中枢神経を刺激することによる症状を総称して「賦活症候群」、あるいは「初期刺激症状」といいます。
 この薬をうつ病患者に処方するときは、いらいらする、攻撃性が増すなどの出現に注意を促し、自殺関連の危険を回避できるようにしておくことが必要です。

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、急に服用を中止すると、薬の血中濃度が下がり離脱症状が出現します。断薬時の離脱症状として、めまい、嘔吐、頭痛、知覚異常、不眠、不安、焦燥等などがありますので、薬の服用を中止するときは医師の指示により徐々に減らしていくことが必要です。

抗うつ薬

三環系抗うつ薬 セロトニンやノルアドレナリン等の減少を抑制
副作用として抗コリン作用である口渇や排尿困難、眼圧上昇等がみられる。緑内障患者には禁忌
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニンの再取り込み阻害作用だけでアセチルコリン等は阻害しない
初期投与・用量変更時に、不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、躁状態等の副作用あり
賦活症候群による自殺を回避するため、いらいら感等の出現に注意
断薬症状として、めまい、嘔吐、頭痛、知覚異常、不眠、不安、焦燥等

抗不安薬




 抗不安薬は、不安や緊張、焦燥感の改善、催眠作用、筋弛緩、抗けいれん作用、自律神経に対する調整作用等があります。代表的なものにベンゾジアゼピン系抗不安薬があります。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、中枢神経系を抑制する作用があるため、脳内の活動が落ち着き、心の不安、緊張を和らげることができます。

 抗不安薬は半減期によって、短時間型、中間型、長時間型、超長時間型に分類します。半減期が短ければ短いほど、速く血中濃度がピークに達して、その後、速やかに薬は血中から除去されます。急に強まってきた不安症状に対しては、速やかに症状を改善させるための短時間型の抗不安薬が適しています。また、不安症状が長期間持続するような場合には、血液中の薬物濃度を安定して保つために、長時間型の抗不安薬が適しています。

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用として、昼間の強い眠気、筋弛緩作用によるふらつき、精神依存性があります。眠気までいかなくても、ぼんやりした感じ、注意散漫、集中力低下などの症状が出る場合もあります。また、運動失調や、ろれつがまわらなくなったりすることもあります。そのほか、脱力感、疲労感、倦怠感なども、薬の服用のはじめによくみられます。

 また、服用後の記憶が障害される、「前向性健忘」がみられます。ベンゾジアゼピンは、情動中枢としての海馬に作用して情動性興奮を鎮めるとともに、海馬の記憶機能を抑制し健忘を引き起こすと考えられています。さらに、理性の働きが鈍くなり、怒りやすさ、涙もろさなどがみられ、攻撃性や興奮性が次第に強くなり、年齢不相応な行動をとる「脱抑制」の状態になることが知られています。

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、短期間の使用では依存性は生まれませんが、長期間の使用が続くと「身体依存性」が形成されてきます。連続して使用した後に急激に中止すると、中止後の初期に「反跳性の不安」や、不眠、振戦、発汗、せん妄等の「退薬症状」が出現しやすくなります。

抗不安薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬 枢神経系抑制作用により、不安、緊張を緩和
副作用として、催眠作用、筋弛緩作用、前向性健忘、脱抑制がみられる
長期間の使用による身体依存性を有する
急激な中止による反跳性の不安や不眠、振戦、発汗、せん妄等の、退薬症状が出現

認知症薬

 認知症にはさまざまな種類がありますが、現在、血管性認知症に適応する認知症薬はまだ開発されていませんが、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の症状の進行を遅らせる薬が開発されています。

 認知症の症状は徐々に進行していきますが、認知症薬は、症状の進行を遅らせることができるので、その人らしさを保って生活することが可能で、家族や介護者の負担を軽減することができます。

ドネペジル塩酸塩

 アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の症状の進行を遅らせる薬としてわが国で多く使用されているのは、ドネペジル塩酸塩です。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症は、神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが、脳内において減少していることが知られています。私たちの脳は、神経伝達物質を介して記憶や学習を行っていますが、認知症になるとこのアセチルコリンが減少するため、記憶力や学習力が衰えると考えられています。

 このアセチルコリンを分解する役割をもつ酵素がアセチルコリンエステラーゼで、ドネペジル塩酸塩は、このアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め、神経伝達を助けて脳内コリン作動性神経を活性化し、認知症状を改善します。

 ただ、副作用として、心室頻拍、心室細動、徐脈、不整脈、心筋梗塞、心不全等が報告されていますので、心疾患を有している場合は特に注意が必要です。また、消化器系の副作用として、食欲不振、下痢、嘔気、消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、消化管出血なども報告されており、その他、肝炎、肝機能障害、黄疸、脳出血なども報告されています。

 精神神経系の副作用としては、興奮、易怒性、幻覚、攻撃性等がみられることがありますが、身体依存性はなく、離脱症状がみられたという報告はありません。またドネペジル塩酸塩は、アセチルコリンエステラーゼの作用を阻害するため、脳内のアセチルコリンとドーパミンのバランスが崩れるため、パーキンソニズムの悪化や出現を招く可能性が指摘されています。

ガランタミン消化水素酸塩

 ガランタミン消化水素塩酸は、軽度および中等度のアルツハイマー型認知症の症状の進行を抑制する薬です。私たちの脳は、神経伝達物質を介して記憶や学習を行っていますが、アルツハイマー型認知症では、アセチルコリンが脳内において減少していると考えられています。

 脳内では、神経細胞から放出されたアセチルコリンが受容体に結合することによって情報の通り道が開き、情報伝達が行われます。情報伝達が終わるとその役割を終えたアセチルコリンは、アセチルコリンエステラーゼという酵素によって分解されます。ガランタミン消化水素酸塩は、このアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内のアセチルコリンの濃度を高めて神経伝達を助ける作用をします。

 またガランタミン消化水素酸塩は、アセチルコリン受容体に作用してアセチルコリンに対する感受性を高め、アセチルコリンの働きを助け情報の伝達を活性化します。アルツハイマー型認知症では、アセチルコリンだけでなくアセチルコリン受容体も減少しているので、ガランタミン消化水素酸によって、減少した受容体が効率的に情報伝達を行えるようになることが期待されています。副作用として、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢などがみられます。

リバスチグミン

 リバスチグミンは、飲み薬ではなく薬剤のついたシールを貼って使うパッチ製剤です。軽度および中等度のアルツハイマー型認知症に使用されます。コリンエステラーゼ阻害薬に分類され、アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑える機能によって、脳内のアセチルコリン濃度を高め、アルツハイマー型認知症の症状が進むのを遅らせることが期待されています。主な副作用として、下痢や頭痛、食欲不振、パッチを貼った部位のかゆみなどが報告されています。

メマンチン塩酸塩

 脳内のグルタミン酸は、記憶や学習にかかわる神経伝達物質の役割を担っています。認知症患者の脳内では、異常なタンパク質の出現によってグルタミン酸が過剰になっています。そのため、記憶の機能が妨害されてしまい、記憶することが困難となっていると考えられています。

 メマンチン塩酸塩は、過剰なグルタミン酸の放出を抑えるはたらきがあり、記憶の機能の妨害を防ぎます。メマンチン塩酸塩の効果は、アルツハイマー型認知症に限られています。副作用として、投与開始初期の傾眠、痙攣、意識障害、妄想、幻覚、せん妄等がみられることがあります。また、徐脈や不整脈がみられることがあります。

認知症治療薬

ドネペジル塩酸塩 アセチルコリンエステラーゼの作用阻害薬。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の症状の進行を抑制。副作用として心疾患を有している場合は特に注意が必要
ガランタミン消化水素酸塩 アセチルコリンエステラーゼの作用阻害薬。アルツハイマー型認知症の進行を抑制。副作用として吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢等
リバスチグミン アセチルコリンエステラーゼの作用阻害薬。アルツハイマー型認知症の進行を抑制。副作用として下痢、頭痛、食欲不振、パッチを貼った部位のかゆみなど
メマンチン塩酸塩 アセチルコリンエステラーゼの作用阻害薬。アルツハイマー型認知症の進行を抑制。副作用として投与開始初期の傾眠、痙攣、意識障害等

 以上、薬物療法とその副作用についてみてきましたがいかがでしたか。「精神疾患とその治療」では、各分野の疾患の症状と特徴とともに、治療方法等についてもよく整理しておきましょう。次回は「精神保健の課題と支援」を取り上げていきます。

 では今回は、第22回と第23回の国家試験問題の中から、2問、課題を上げておきますのでチャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験「精神疾患とその治療」

問題7 次のうち、抗精神病薬の主な副作用として、適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 健忘
  • 2 脱抑制
  • 3 身体依存
  • 4 反跳性不安
  • 5 遅発性ジスキネジア
第23回 精神保健福祉士国家試験「精神疾患とその治療」

問題 6 次の記述のうち、認知症患者に用いられるドネペジル塩酸塩について、正しいもの1つ選びなさい。

    1 効能は認知機能の回復である。
    2 血管性認知症に適応がある。
    3 心疾患には特に注意が必要である。
    4 服薬を中止すると強い離脱症状を認める。
    5 神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を促進する。