メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第20回 「権利擁護と成年後見制度」

 皆さん、こんにちは。今回は「権利擁護と成年後見制度」を取り上げます。この科目は精神保健福祉士として精神障害者の権利を護る立場にある私たちが、実践の場で法的根拠に基づいて、いかに精神障害者の権利を護っていくかという具体的な知識を問われる科目です。苦手に感じる受験生が多いかもしれませんが、身近な行為を法律的な視点で考える訓練をしていきましょう。

 では、まず前回の保健医療サービスの課題の解説をしていきます。

第23回 精神保健福祉士国家試験 「保健医療サービス」

問題 70 医療保険制度における保険者とその被保険者に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 健康保険の保険者には、全国健康保険協会が含まれる。
  • 2 船員保険の保険者は、健康保険組合である。
  • 3 日雇特例被保険者の保険の保険者は、国民健康保険組合である。
  • 4 国民健康保険の被保険者には、国家公務員共済組合の組合員が含まれる。
  • 5 後期高齢者医療制度の被保険者は、75 歳以上の者に限られる。
正答1

解答解説

  • 1 〇 被用者を対象とする健康保険法に基づく健康保険には、「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「組合管掌健康保険(健康保険組合)」があります。全国健康保険協会は、健康保険組合に加入していない民間の中小企業の被用者が加入する保険で、保険料率は都道府県ごとに設定し、給付内容は法定給付だけです。健康保険組合は、厚生労働大臣の認可によって設立される組合で、一定の範囲内で組合ごとに自主的に保険料率を設定でき、従業員の保険料負担割合を労使折半より低く設定することができます。また法定給付以外の付加給付を行うことができ、企業の福祉厚生としての疾病予防のための事業などを実施することも可能です。
  • 2 × 船員保険の保険者は、全国健康保険協会です。船員保険法第4条第1項に、「船員保険は、協会が、管掌する」と規定されており、第2項に、「協会が管掌する船員保険の事業に関する業務のうち、被保険者の資格の取得及び喪失の確認、標準報酬月額及び標準賞与額の決定並びに保険料の徴収(疾病任意継続被保険者に係るものを除く。)並びにこれらに附帯する業務は、厚生労働大臣が行う」と規定されています。全国健康保険協会の業務として、同法第5条に、保険給付に関する業務、保健事業及び福祉事業に関する業務、船員保険事業に関する業務であって厚生労働大臣が行う業務以外のもの等と規定されています。
  • 3 × 日雇特例被保険者の保険の保険者は、全国健康保険協会です。全国健康保険協会の被保険者には、健康保険の適用事業所に使用される「一般被保険者」と、臨時に使用される「日雇特例被保険者」があります。「日雇特例被保険者」の対象は、2か月以内の期間を定めて雇用される者、4か月以内の季節業務で雇用される者、6か月以内の臨時的事業の事業所で雇用される者、1か月以内だけ雇用される日雇労働者などです。国民健康保険組合とは、医師や弁護士、美容師、土木建築業等が同業種ごとに、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けて設立するもので、保険料率は一定の範囲内で組合ごとに設定することができ、法定給付以外に独自の付加給付を行うことができます。
  • 4 × 国民健康保険の被保険者には、国家公務員共済組合の組合員は含まれていません。国家公務員共済組合は、国家公務員を対象とした独立した医療保険制度で、組合員は、国家公務員共済組合の被保険者です。国民健康保険の被保険者は、「都道府県の区域内に住所を有する者」であり、「健康保険の被保険者、船員保険の被保険者、国家公務員共済組合・地方公務員等共済組合の組合員、私立学校教職員共済制度の加入者、健康保険の被扶養者、各共済組合の被扶養者、後期高齢者医療制度の被保険者、生活保護の被保護者、国民健康保険組合の被保険者」等は適用除外とされています。
  • 5 × 後期高齢者医療制度の被保険者は、75 歳以上の者及び65歳以上75歳未満の一定の障害の状態にあると認められた者です。生活保護受給者は適用除外です。被保険者は、家族の被扶養者であっても個人として保険料を支払う義務が生じます。保険料は後期高齢者広域連合が決定し、市町村が徴収します。保険料の算出方法は、均等割額と所得割額を合計して個人単位で算出し徴収も個人単位で行います。医療費の自己負担割合は、原則1割負担で、現役並所得者は3割負担です。

 いかがでしたか。「保健医療サービス」は、このほか診療報酬制度、医療施設、医療計画や地域医療構想、医師や看護師などの医療専門職の役割、地域医療における連携等をよく学習しておきましょう。
 では今回の「権利擁護と成年後見制度」について、出題基準に沿って過去の出題傾向を分析し対策を立てていきます。

相談援助活動と法との関わり




相談援助活動において想定される法律問題

 「福祉サービスの利用と契約」については、福祉サービスを提供する事業者と利用者との契約における、債務と債務不履行責任、不法行為による損害賠償責任の出題実績があります。また、判断能力が低下した状況での売買契約の取り消し要件等、民法の契約の概念についても出題されています。

 認知症の利用者が起こした事故についての責任の所在、利用者同士のけんかによる怪我とそれに対する職員の対応等、不法行為責任、法定監督義務者責任、使用者責任、求償権についても確認しておきましょう。

 第23回では、利用者同士のトラブルで負傷した事例問題で、損害賠償責任がどのように発生するのか、責任能力と不法行為責任の関係、使用者責任、安全配慮義務違反、債務不履行責任、求償権等が出題されています。

 「消費者被害と消費者保護」の分野からは、特定商取引におけるクーリングオフに関する出題がみられます。「消費者契約法」や「特定商取引法」の内容を学習しておきましょう。消費者契約法における契約取り消しの要件、福祉関係事業者における個人情報等の適切な取り扱いに関する法令、改正個人情報保護法等にも気をつけておきましょう。

 自己破産、借家保証については、まだ出題実績はありませんが、小項目として例示されていますので「破産法」や「借地借家法」等の概要を知っておくとよいでしょう。

 「行政処分と不服申立」については、福祉サービスに関する苦情申立と行政処分に対する不服申立の違い、介護保険や障害者自立支援給付の介護給付費等に係る行政処分や、生活保護制度における処分等に対する不服申立などが出題されています。各分野におけるそれぞれの不服申立制度について、整理しておきましょう。

日本国憲法の基本原理の理解

 「基本的人権の尊重」として、自由権、平等権、社会権、参政権、受益権について、それぞれの権利の内容を確認しておきましょう。

 基本的人権の保障における外国人への適用、生存権訴訟の最高裁判例、参政権、国民の義務等が出題されています。社会保障関連法規や生活保護法における外国人の取り扱いを理解しておきましょう。

 自由権のうち、信教の自由、人身の自由、財産権の自由、表現の自由、幸福追求権、人格権、プライバシー権等、援助者として知っておくべき利用者の人権について、具体的にどのようにかかわるべきかという視点での学習をしておくとよいでしょう。

 第23回では、財産権の制限について、条例による制限の可否、法律による財産権の制限の範囲、所有権の法律による制限の可否、私有財産を公共のために制限する際の損失補償の限度と要否、法令上の補償規定に基づかない財産権の保障の憲法解釈が出題されました。判例を知っていないと解けない難易度の高い内容でした。

民法の理解




 民法の基本的な考え方として、意思能力、行為能力、制限能力者等について、成年後見制度との関連でそれぞれの意味を押さえておいてください。

 契約については、契約の意味、契約の種類、民法における典型契約、双務契約・片務契約等の契約の類型、委任契約などの内容を整理しておきましょう。第23回では2017(平成29)年の民法改正を踏まえて、アパートの賃貸借契約に関する出題がありました。

 親族については、親権者の懲戒権の制限、未成年の子どもに対する親権の行使、成年擬制、労働契約、離婚による親権、監護権、養育費の負担、面会交流権等、子どもをめぐる各権利について学習しておきましょう。

 養子縁組制度については、民法改正により特別養子縁組制度の改正がありました。年齢の引き上げ等、改正内容を押さえておきましょう。また、普通養子縁組と特別養子縁組の違い、養子縁組制度における家庭裁判所の役割等を整理しておきましょう。

 親族の定義、血族と姻族、婚姻、離婚、親権と監護権、認知、児童虐待などにおける親権の濫用、親権停止・親権喪失宣告請求などについても理解を深めておきましょう。扶養義務者の順序とその程度について当事者の協議が調わない場合の家裁の役割、絶対的扶養義務と相対的扶養義務の範囲等についても確認しておきましょう。

 相続については、法定相続順位と相続割合、遺言による指定相続と遺留分制度、遺産分割協議、遺言能力と遺言の効力などについて学習しておきましょう。この分野からは、相続の具体的な相続割合、生前贈与の扱いなどが出題されています。第23回では、遺言に関して、公正証書遺言、遺留分侵害、被保佐人の遺言の有効性等が出題されました。

行政法の理解

 行政法の分野で基本となる法律は、「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法」が代表的なものです。これらの法律における行政行為、行政手続、行政不服申立制度、行政事件訴訟の類型、国家賠償の基本的考え方について理解を深めておきましょう。

 2016(平成28)年度の行政不服審査法の改正内容の出題実績があります。行政不服申立の手順、審査請求期間、審理員の位置付け、行政事件訴訟との関係、再調査の請求先等、行政不服審査法と行政事件訴訟法との関係をよく理解しておきましょう。

 行政機関の情報公開については、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」による情報公開制度などの内容について、学習しておきましょう。

成年後見制度

 成年後見制度には、「民法」に基づく「法定後見制度」と「任意後見契約に関する法律」に基づく「任意後見制度」の2種類があります。基本的に根拠法も性格も異なる制度ですので、違いを理解しておきましょう。

 民法に基づく法定後見制度については、補助人、保佐人、後見人に付与される権限の違いや、法定後見人の選任、代理権、同意権、取り消し権の付与と範囲、申立における本人の同意の必要の有無、市町村長申立等の法定後見制度の概要について、整理しておきましょう。

 第23回では、成年後見人等に対して付与し得る権限が、親権との比較で出題されています。また、法定後見と任意後見において付与される権限の違いが出題されています。任意後見制度には、代理権しか付与されないということも覚えておきましょう。

 後見人の責務として、本人の意思尊重義務や善管注意義務、成年後見人の法定監督義務者責任、本人と法定後見人との利益相反時の対応等に注意して学習しておくとよいでしょう。法定後見人の辞任要件、後見人の欠格事由等も出題されていますので気をつけて学習しておきましょう。

任意後見制度

 「任意後見」については、「任意後見契約に関する法律」に目を通して、その制度の概略を理解しておきましょう。任意後見契約締結の要件、契約の法的効果の発生要件、任意後見監督人選任請求権者、任意後見制度と成年後見制度との関係、任意後見人と本人との利益相反の場合の対応、任意後見監督人の欠格要件、任意後見人解任請求等が出題されています。

 第23回では、任意後見契約の公正証書の登記先、任意後見監督人選任請求権者、代理権目録への代理権の記載、任意後見契約の解除要件、法定後見と任意後見の関係が出題されています。今回は後ほど、この分野を取り上げて解説していきます。

 成年後見制度における家裁の役割や東京法務局の役割、任意後見制度における登記所のそれぞれの役割についての出題もみられますので、関係機関の役割、位置付けを整理しておきましょう。

 成年後見に関する民法の改正内容も出題されています。成年被後見人宛ての郵便物の転送、成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結等の、家庭裁判所への手続き等、改正内容を整理しておくとよいでしょう。

 「成年後見制度の最近の動向」については、裁判所のホームページに「成年後見制度の概況」が掲載されていますので、審理期間、後見類型、保佐類型、補助類型の申立件数、申立ての動機、成年後見人等と本人との関係、市区町村長申立件数、本人の男女別割合・年齢階層別割合等を最新データで押さえておきましょう。

日常生活自立支援事業




 事業の実施主体、利用対象者、利用手続きのプロセス、事業の利用形態の民法の典型契約における位置付け等の出題があります。事業の根拠法、事業内容、従事職員の資格、専門員と生活支援員の役割、利用対象者、成年後見制度との関係等についての基本的内容を整理しておきましょう。また事業の最新の動向を把握しておきましょう。

成年後見制度利用支援事業

 この分野からは、制度の利用対象者、制度の内容等が出題されています。成年後見制度利用支援事業は、障害者総合支援法における市町村の地域生活支援事業の必須事業として位置付けられていますので、事業の実施状況等も含めて理解を深めておきましょう。

 「成年後見制度利用促進法」の詳細な内容が出題されています。成年後見制度利用促進基本計画の計画期間とその内容、成年後見制度利用促進会議の設置、成年後見等実施機関、成年後見関連事業者の定義などについて確認しておきましょう。

権利擁護に係る組織、団体の役割と実際

 家庭裁判所の家事調停事項、家事審判事項のそれぞれの内容、人事訴訟、少年事件等について学習しておきましょう。また、後見登記、不動産登記等における法務局の役割、市町村申立等における市町村の役割、弁護士、司法書士の役割や、社会福祉士の活動の実際についても、それぞれの役割を理解し、事例問題にも対応できるようにしておきましょう。市町村長申立とその対象、市町村における市民後見人等の人材育成についても押さえておきたいものです。

権利擁護活動の実際

 この分野からは、事例問題での出題が多く見受けられます。知的障害者に対する虐待事例、成年後見人による財産管理、認知症高齢者に対する成年後見活動の実際、高齢者、児童、障害者のそれぞれの虐待防止法における虐待の定義、悪質商法による認知症高齢者の被害への対応等が出題されています。なお近年連続して、DVや虐待関係をテーマとしてまとめて1題出題される傾向がみられます。

 高齢者虐待防止法、児童虐待防止法、障害者虐待防止法のそれぞれの内容を整理しておきましょう。また消費者被害等について各分野の法制度を習熟しておくとともに、権利侵害等に対する権利擁護活動の実際に対応できる力をつけておきましょう。

 アルコール等依存者への対応、非行少年への対応、ホームレスへの対応、多問題重複ケース等の分野からの出題はまだありませんが、これらに関しても他科目と重複する分野ですから併行して学習しておくとよいでしょう。

 以上全体を概観してきましたが、いかがでしたか。今回は、任意後見制度について解説していきます。

成年後見制度

 まず、成年後見制度の「法定後見制度」と「任意後見制度」の違いと法的根拠について整理しておきましょう。成年後見制度は、「民法」に基づく「法定後見制度」と「任意後見契約に関する法律」に基づく「任意後見制度」に大きく分けられています。成年後見制度は、「家庭裁判所」が請求に基づいて職権で後見人等を選任する制度であり、任意後見制度は、「当事者」が自分の意思で任意後見人を選ぶ制度です。

 法定後見制度と任意後見制度の関係は、「自己決定の尊重」という観点から、本人に任意後見制度を利用する意思があるなら、任意後見制度の利用が、法定後見制度より優先するのが原則とされています。法定後見制度は、任意後見制度を補完する役割を果たす制度として位置付けられているということを、まず理解しておきましょう。

任意後見制度とは

 任意後見制度と成年後見制度との違いは、成年後見制度が、後見人等に対する家庭裁判所の監督権が強いのに対して、任意後見制度では、家庭裁判所は任意後見人を直接監督するのではなく、家庭裁判所が選任する任意後見監督人を通して監督するという方法で任意後見人に対して、間接的に関与する、「本人の意思を尊重する」考え方が基盤になっているという点です。

成年後見制度 「民法」に基づく「法定後見制度」と「任意後見契約に関する法律」に基づく「任意後見制度」がある
法定後見制度 後見人等に対する家庭裁判所の関与が強い
任意後見制度 任意後見人に対して家庭裁判所は間接的に関与する

任意後見契約の手続き

 任意後見契約は、委任契約の一種です。任意後見人となる者を誰にするかは、本人の自由意思に任されています。また、任意後見人の代理権の範囲も、契約によって自由に定めることができます。また、成年後見制度には、「同意権」「取消権」「代理権」があるのに対して、任意後見契約は、「代理権」だけを委任する契約だということに注意しておきましょう。

公正証書による登記

 任意後見契約は、本人がまだ判断能力がある間に、自分自身で任意後見を委任したい人物を選び、任意後見を委任します。この際、口頭だけの約束ではなく、公証人役場で公証人の立ち合いのもと、「代理権目録の範囲」を明記した公正証書を作成して、公証人の嘱託により、公正証書を法務局の登記所に登記します。

 この登記により、依頼された者は「任意後見受任者」という立場になります。任意後見を委任される者について、法律上の制限はありません。本人の親族や知人、あるいは専門職である弁護士、司法書士、社会福祉士などが委任されることがあります。また、社会福祉協議会などの社会福祉法人等も受任者になることができます。

任意後見監督人の選任申立

 以上の手続きを経て、公正証書による登記所への登記を経ても、「任意後見受任者」には、任意後見人としての法的効力は発生しません。任意後見受任者の法的効力を発生させるためには、家庭裁判所に対して、「任意後見監督人選任の申立」を行う必要があります。

 任意後見契約を行った本人の判断能力が不十分な状況になり、任意後見人選任の申立が必要になった場合は、「本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者」が、申立を行うことができます。本人以外の者の請求によって任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければなりません。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでないとされています。

 本人に対する訴訟提起者とその配偶者・直系血族は申し立てることができません。任意後見人選任の申立という行為は、本人の人権に深くかかわることなので、法律で厳格に限定されているということを覚えておきましょう。

委任契約 本人が任意後見人になるべき人を選び委任契約を行う
公正証書による登記 公証人役場で公証人の立ち合いのもと代理権の範囲を明記した公正証書を作成し、公証人により公正証書を法務局の登記所に登記
任意後見監督人選任申立権者 本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者
(訴訟提起者とその配偶者・直系血族は申立ができない)
本人の同意 本人以外の者の請求の場合は、原則本人の同意が必要

法的効力の発生

 任意後見監督人の選任申立を受けた家庭裁判所は、本人の判断能力を調べ、任意後見監督人の選任が必要な状況であると判断したら、任意後見監督人選任の審判を下します。この審判により、登記によって「任意後見受任者」であった者が「任意後見人」となり、任意後見人として「公正証書に記載されている代理権の法的効力」が発生します。

任意後見監督人の欠格事由

 任意後見監督人になることができない者は、任意後見人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者、本人に対し訴訟をし、または訴訟をした者・その配偶者・直系血族、行方の知れない者です。

 任意後見人と利害関係のある者は、任意後見人を監督できないということを理解しておきましょう。

 家庭裁判所は、任意後見監督人を複数選任することもできます。また、社会福祉法人や福祉関係の公益法人、営利法人等を選任することもできます。家庭裁判所は選任の際、任意後見監督人候補者の職業や経歴、本人と候補者との利害関係の有無などを調べ、考慮して選任します。

任意後見監督人の業務

 家庭裁判所から選任された任意後見監督人の業務は、任意後見人の事務を監督すること、任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること、急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において必要な処分をすること、任意後見人またはその代表する者と本人との利益が相反する行為について、本人を代表することです。

 任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、または任意後見人の事務もしくは本人の財産の状況を調査することができます。また、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務または本人の財産の状況の調査を命じ、任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができます。

任意後見監督人が欠けた場合等

 任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族もしくは任意後見人の請求により、または職権で、任意後見監督人を選任することになります。また、任意後見監督人が選任されている場合でも、家庭裁判所が必要であると認めるときは、本人、配偶者4親等内親族等の者の請求により、または職権で、さらに任意後見監督人を選任することができます。

任意後見監督人の役割

法的効力の発生 家裁が任意後見監督人を選任した時点で「任意後見受任者」であった者が「任意後見人」となり、代理権の法的効力が発生
任意後見監督人の欠格事由 任意後見人(任意後見受任者)の配偶者・直系血族・兄弟姉妹等は任意後見監督人になれない
法人など 任意後見監督人は複数でもよく、営利法人を含む法人も可能
任意後見監督人の業務 任意後見人の事務の監督と家裁への定期報告、任意後見人と本人の利益相反行為について本人を代表
任意後見監督人が欠けた場合 家裁は請求によりまたは職権で任意後見監督人を選任する。複数選任することもできる

任意後見人

 家庭裁判所による任意後見監督人の選任によって、「任意後見受任者」が「任意後見人」になると、公正証書に記載されている代理権目録の範囲の、特定の法律行為の代理権を行使することができるようになります。

 任意後見人は、任意後見人の事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければなりません。任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族または検察官の請求により、任意後見人を解任することができます。

任意後見契約の解除

 「任意後見監督人が選任される前」には、本人または任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができます。「任意後見監督人が選任された後」においては、本人または任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができます。

任意後見契約の終了

 任意後見契約の終了には、任意後見人の解任による終了があります。家庭裁判所は、職権では、任意後見人を解任することはできません。任意後見人が不適格である場合、任意後見監督人、本人、その親族、検察官の請求により、家裁が解任し終了することになります。

 また、任意後見監督人の選任後、法定後見が開始したとき、本人または任意後見人(受任者を含む)が死亡したとき、破産等により終了します。ただし、任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ善意の第三者に対抗することができません。

任意後見人

任意後見人の業務 公正証書に記載された特定の法律行為の代理権の行使
任意後見人の義務 本人の意思尊重義務、身上配慮義務
任意後見契約の解除 任意後見監督人選任前:公証人の認証を受けた書面により解除
任意後見監督人選任後:正当な事由がある場合、家裁の許可により解除
終了 任意後見監督人、本人、その親族、検察官の請求により、家裁が解任した場合
法定後見開始の場合
本人または任意後見人(受任者を含む)の死亡・破産等の場合
代理権の消滅 任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ善意の第三者に対抗することができない

後見開始の審判の請求

 任意後見契約は、代理権に限られた委任契約です。そのため、同意権や取消権が必要な事案については、任意後見は、法的効力を有しません。

 任意後見契約時に決めた任意後見人の代理権の範囲が狭すぎて、本人への支援が不足なため、代理権を追加する必要があるが、すでに本人の判断能力が不十分になってしまった場合や、本人が次々に契約トラブルに巻き込まれ、取消権が必要な場合などは、本人のために、同意権、取消権が付与される法定後見制度に移行するという方法があり、本人の利益のために特に必要であると認められる場合は、後見開始の審判の請求により、法定後見への移行が可能です。

後見開始請求権者

 任意後見から法定後見に移行する際の、後見開始の審判の請求ができるのは、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人に限定されています。これは、法定後見の開始は、深く人権にかかわることであるという考え方によります。

後見開始の審判

 家庭裁判所は、任意後見契約が登記されている場合、請求権者から請求があり、本人のために特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができます。

法定後見と任意後見の関係

任意後見優先 本人の自己決定権を尊重するため、原則は任意後見契約が優先される
法定後見への移行 同意権、取消権が必要な場合等本人のために特に必要があると認められる場合は法定後見への移行が可能
後見開始請求権者 任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
家裁の審判 請求があり、本人のために特に必要があると認めるときに限り後見開始の審判等をすることができる

 いかがでしたか。この科目は、憲法、民法、行政関係法、成年後見制度と範囲が広く、法律用語が難しいため苦手意識のある方が多いようですが、出題内容は限られていますから頻出内容をしっかり押さえ、法律的な考え方を身につけることによって、十分対応できます。ぜひ自信をもって取り組んでください。

 今回まで、共通科目について過去の出題傾向を分析して対策を立ててきました。次回からは、専門科目についてポイントを絞って解説をしていきます。次回は「精神疾患とその治療」を取り上げます。では、第23回精神保健福祉士試験の中から今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士国家試験 「権利擁護と成年後見制度」

問題 82 任意後見制度に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 任意後見契約に関する証書の作成後、公証人は家庭裁判所に任意後見契約の届出をしなければならない。
  • 2 本人は、任意後見監督人選任の請求を家庭裁判所に行うことはできない。
  • 3 任意後見契約では、代理権目録に記載された代理権が付与される。
  • 4 任意後見監督人が選任される前において、任意後見受任者は、家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することができる。
  • 5 任意後見監督人が選任された後において、本人が後見開始の審判を受けたとしても、任意後見契約は継続される。