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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第16回 「社会保障」

 皆さんこんにちは。受験勉強は順調に進んでいますか。社会福祉振興・試験センターのホームページに、第24回の精神保健福祉士国家試験の「試験概要」と「受験申し込み手続き」が掲載されています。

 試験日は、昨年と同様、2月の初頭の令和4年2月5日(土曜日)に専門科目、6日(日曜日)の午前に共通科目となっています。受験申込書の受付期間は、「令和3年9月9日(木曜日)から10月8日(金曜日)まで(消印有効)」です。

 前もって受験の申し込みに必要な書類『受験の手引』を取り寄せる必要があります。『受験の手引』は、請求してから手元に届くまでには数日間かかるので、早めに請求しましょう。ホームページには、「8月上旬から遅くとも受付期間締め切り1週間前の10月1日(金曜日)までに請求してください。」「『受験の手引』は、ヤマト運輸の宅配便で8月下旬以降に順次発送します。」と記載されています。

 社会福祉振興・試験センターのホームページから請求することもできますが、その場合は8月上旬に請求窓口が開設されますので、今から受験手続きの準備をしておきましょう。詳細は、社会福祉振興・試験センターのホームページでご確認ください。

 今回は「社会保障」を取り上げます。近年、多角的な視点からの出題が多くなっています。各制度を細部まで丁寧に学習して短文事例問題にも対応できる力をつけていきましょう。では最初に前回の課題の解説をしていきます。

第23回 精神保健福祉士試験 「福祉行財政と福祉計画」

問題 43 福祉の財源に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者家計改善支援事業の費用には国庫負担金が含まれる。
  • 2 生活保護法に基づき、保護費には国庫補助金が含まれる。
  • 3 介護保険法に基づき、介護給付費には国庫負担金が含まれる。
  • 4 身体障害者福祉法に基づき、身体障害者手帳の交付措置の費用には国庫補助金が含まれる。
  • 5 「障害者総合支援法」に基づき、地域生活支援事業の費用には国庫負担金が含まれる。
正答3

解答解説

  • 1 × 生活困窮者家計改善支援事業の費用には、「国庫負担金」ではなく、「国庫補助金」
    が含まれます。生活困窮者自立支援制度の努力義務事業である「家計改善支援事業」は、任意事業である「子どもの学習・生活支援事業」とともに、「国庫補助」が2分の1となります。ただし「家計改善支援善事業」は、「自立相談支援事業」と「就労準備支援事業」を一体的に行う場合は、「国庫補助」が3分の2になります。
  • 2 × 生活保護法に基づき、保護費には「国庫補助金」ではなく、「国庫負担金」が含まれます。保護費の国庫負担割合は、国が4分の3、実施機関が4分の1になっています。生活保護施設も同じ割合です。また、生活困窮者自立支援制度の必須事業である「自立相談支援事業」「住居確保給付金」についても、生活保護に要する費用と同様、国庫負担が4分の3、実施機関が4分の1の負担になります。
  • 3 〇 介護保険法に基づく介護給付費のうち、居宅サービスと介護予防・日常生活支援総合事業に係る費用については、国は25%が国庫負担となっており、このうち5%は、調整交付金となっています。施設サービス費は、国は20%の国庫負担となっています。
  • 4 × 身体障害者手帳交付措置費用については、「国庫負担」「国庫補助」は一切ありません。すべて、都道府県の一般財源で賄うことになっています。これは、身体障害者手帳交付措置事務は、自治事務となっているからです。
  • 5 × 「障害者総合支援法」に基づく、地域生活支援事業の費用には、国庫負担金は含まれません。地域生活支援事業の費用については、国は2分の1以内を補助できるとされており、義務的経費としての「国庫負担」ではなく、任意的経費である「国庫補助」であることに気を付けておきましょう。「障害福祉サービス」に要する費用については、国は、義務的経費として2分の1の「国庫負担」になることも覚えておきましょう。

 いかがでしたか。「福祉行財政と福祉計画」では、「福祉行政」「福祉財政」「福祉計画」の分野を、バランスよく学習しておきましょう。
 では今回の「社会保障」について近年の出題実績を分析しながら、出題傾向と対策について解説していきます。

現代社会における社会保障制度の課題

 「厚生労働白書」や「総務省人口推計」等から、少子高齢化の実態、人口推計に関する出題がみられます。現代社会における社会保障制度の課題として、人口動態の変化、少子高齢化と社会保障制度の関係、労働環境の変化等を学習しておきましょう。

 第23回では、日本の人口に関して、「人口推計」(総務省)、「人口動態統計月報年計(概数)」(厚生労働省)、「国立社会保障・人口問題研究所の推計」から、人口の増減、合計特殊出生率の推移、平均寿命予測、老年人口の推計、高齢化率予測が出題されました。




社会保障の概念や対象及びその理念

 「社会保障の概念と範囲」では、社会保障制度審議会の1950年勧告、1995年勧告の内容、社会保障の役割と意義、理念、対象について学習しておきましょう。「社会保障制度の発達」は大変出題率が高い分野です。医療保険制度、公的年金制度の沿革、老人保健制度、介護保険制度等の歴史的展開と経緯を、時代背景を踏まえて理解し、暗記ではない、理解に基づく知識を積み重ねておきましょう。

 第23回では、「平成29年版厚生労働白書」から、社会保障制度審議会1950年勧告における社会保障制度の目的と社会保障制度の定義の出題がありました。また久しぶりに、社会保障の機能としての「生活安定・向上機能」「所得再分配機能」「経済安定機能」の出題がありました。社会保障の機能としての、ビルトイン・スタビライザー機能を理解しておきましょう。

社会保障の財源と費用

 この分野も出題率の高い箇所です。社会保障の財源構成、国民負担率、社会保障給付費の部門別構成割合、対国内総生産比、対国民所得比やその国際比較など、よく出題される分野ですから、国立社会保障・人口問題研究所のホームページなどで確認して整理しておきましょう。




社会保険と社会扶助の関係

 社会保険と社会扶助の関係を理解しておきましょう。社会保険制度と公的扶助の基本的な特質について、救貧的機能・防貧的機能、個別給付・画一給付、給付要件、給付対象、財源等が出題されています。それぞれの制度の、目的と性格の違いを押さえておきましょう。

公的保険制度と民間保険制度の関係

 公的保険と民間保険の性格の違い、強制加入と任意加入、保険料の扱い、自動車損害賠償責任保険、確定拠出年金、厚生年金基金等の出題実績があります。基本的な内容を把握しておきましょう。




社会保障制度の体系・年金保険制度の具体的内容・医療保険制度の具体的内容

 ここからは毎回3問から4問出題されており、きわめて出題率の高い分野です。わが国の社会保険制度は、「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5種類の社会保険によって構成されています。

 それぞれの保険制度の目的、仕組み、保険者、被保険者、給付内容、給付要件、財源構成について整理しておきましょう。また児童扶養手当、子ども手当等の家族手当制度についても確認しておきましょう。ではそれぞれの内容について学習しておくべきことをみていきます。

年金保険制度

 年金保険制度について、被用者、非被用者の年金制度の基本的枠組みを理解しておきましょう。第一号被保険者・第二号被保険者・第三号被保険者の被保険者要件、保険料免除制度、老齢年金・障害年金・遺族年金のそれぞれの受給資格と算定方法、労災保険と障害年金との関係、遺族基礎年金の受給要件等について、よく学習しておきましょう。

 第23回では、20歳前障害の障害基礎年金の受給、障害厚生年金と労働者災害補償年金との関係、離婚時の年金分割制度、国民年金の第一号被保険者の保険料、国民年金の保険料免除制度と学生納付特例制度、第三号被保険者要件、配偶者加算についての出題がありました。今回は後ほど、この年金保険制度について取り上げていきます。

医療保険制度

 医療保険制度の仕組み、国民健康保険と健康保険の違い、医療保険の給付内容、自己負担割合、高額療養費医療制度、後期高齢者医療制度等の全体の枠組みをしっかりと理解し整理しておきましょう。医療保険と労災保険との関係、出産手当と出産育児一時金との違い、保険外併用療養費等の基本的な内容についても理解を深め、確実に点を取れるようにしていきましょう。

 第23回では、医療保険制度の仕組みとして、国民健康保険の被保険者、健康保険組合と国民健康保険組合の違い、協会けんぽの保険料率の設定、健康保険の被扶養者要件が出題されました。

介護保険制度

 生活保護受給者と介護保険との関係、介護保険料負担、介護保険財源構成等の出題がみられます。介護保険制度と医療保険制度の関係、介護保険と労災保険との関係等、他制度との関係をよく理解しておきましょう。

労災保険制度

 業務災害、通勤災害の定義、労災保険給付の対象要件、特別加入制度、労災の給付内容、労災保険料の滞納時の保険給付の可否、障害厚生年金と労災給付との関係、労災補償と民事訴訟での損害賠償との関係、医療保険給付と労災保険給付との関係等が出題されています。労災保険の適用対象、労災保険の保険料率、事業主の保険料負担、通勤災害の認定要件等も含めて、事例問題に対応できるようにしておきましょう。

 第23回では、労災給付としての通勤災害の認定条件、雇用期間と労災給付の関係、労災給付の給付割合、労災給付と医療保険の関係、労災保険料滞納時の労災給付の有無に関しての出題がありました。

雇用保険制度

 雇用保険の仕組み、監督機関、保険者、被保険者要件、雇用保険料の事業主と被用者の負担割合、雇用保険財源、雇用保険法と求職者支援法との関係等を押さえておきましょう。

 雇用保険の給付内容として、基本手当、就業促進手当、教育訓練給付、育児休業給付・介護休業給付等が出題されています。出題傾向をみると回を重ねるごとに詳細になり難易度が上がっていますので、細部にわたって丁寧に学習しておきましょう。

 第23回では事例問題で、求職者給付と雇用継続給付に関する出題がありました。コロナ禍の中で失業や解雇が増えていますので、雇用保険の給付内容について、事例に対応できる力をつけておきましょう。

家族手当制度

 児童手当、児童扶養手当、出産・育児支援等について学習しておきましょう。児童手当と児童扶養手当の併給、所得制限、支給対象児童、児童手当の財源、諸手当の併給について、理解しておきましょう。

 第23回では、特別障害者手当の所得制限、特別児童扶養手当と児童手当の併給の可否、障害児福祉手当の給付対象、児童扶養手当の支給対象年齢、母子生活支援施設入所児童に対する児童扶養手当支給の可否が出題されました。

諸外国における社会保障制度

 諸外国の社会保障制度が出題されています。ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、アメリカなどの先進主要国における社会保障制度の概要について、それぞれの国の社会保障制度の発展の歴史的経緯を踏まえて、現在の社会保障制度体制を把握しておきましょう。

 アメリカの医療保障制度としての、メディケア、メディケイド、オバマ政権による医療制度改革、ドイツの疾病保険、介護保険制度、イギリスのベヴァリッジ報告に基づく社会保険制度や国民保健サービス制度(NHS)、フランスの医療保険における償還払い制度、各国の社会保障制度の歴史的発展と特徴等を整理しておきましょう。

 以上全体を概観してきましたが、今回は年金保険制度について取り上げていきます。




年金保険制度

 わが国の社会保険制度は、年金保険、医療保険、労働保険、介護保険のすべてが強制加入制度によって実施されています。年金保険制度も20歳以上60歳未満は、強制加入になっています。日本国内に居住していることが年金保険に加入するための要件とされていますが、日本国籍でなければならないという国籍要件はありません。これはわが国が国連の難民条約を批准しているためです。難民条約では社会保障に関して国籍によって差別をしてはならないと規定しています。

被保険者の種類

 強制加入の国民年金制度は、国民年金被保険者を、第一号被保険者、第二号被保険者、第三号被保険者に分類しています。第一号被保険者は、20歳以上60歳未満で第二号被保険者・第三号被保険者以外の者です。20歳以上なら学生も強制加入となっています。
 第二号被保険者は、被用者つまりサラリーマンで厚生年金保険に加入している者で、第三号被保険者は、第二号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の者です。

加入要件 国籍要件はない
第一号被保険者 20歳以上60歳未満で、第二号被保険者・第三号被保険者以外の者
第二号被保険者 厚生年金被保険者
第三号被保険者 20歳以上60歳未満で、第二号被保険者の被扶養配偶者




保険料免除制度

 第一号被保険者には、保険料の「免除制度」と「学生納付特例制度」及び「納付猶予制度」があります。免除制度には、「法定免除」と「申請免除」があり、法定免除対象者は生活保護の生活扶助受給者と障害基礎年金受給権者です。申請免除は、低所得者で保険料支払いが困難な者が対象で、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。

 法定免除の期間は年金の受給資格期間の算定対象になり、65歳になったら老齢基礎年金は2分の1を受給することができます。申請免除の期間も年金の受給資格期間に算定され、年金額は、全額免除期間分は8分の4、4分の3免除期間分は8分の5、半額免除期間分は8分の6、4分の1免除期間分は8分の7が支給されます。保険料納付免除期間の保険料は過去10年にさかのぼって追納でき、追納した期間は年金額に反映されます。

特例制度と猶予制度

 上記の免除制度とは別に、「学生納付特例制度」と「納付猶予制度」があります。
 「学生納付特例制度」は、本人の所得が一定額以下のときに、申請により特例の対象になります。家族の収入額は関係ありません。「納付猶予制度」は、20歳以上50歳未満の国民年金第一号被保険者で、本人、あるいは本人と配偶者の所得が一定額以下の場合、申請すれば保険料納付が猶予される制度です。

 学生納付特例制度と納付猶予を受けた期間は、年金額には反映されませんが老齢年金の受給資格期間の算定対象になります。10年にさかのぼって追納することができ、追納した期間は年金額に反映されます。また、特例期間中あるいは猶予期間中に障害を負った場合でも、障害基礎年金は全額支給されます。

保険料免除制度等

法定免除 生活扶助受給者、障害基礎年金受給権者が対象
受給資格期間の算定対象。老齢基礎年金は2分の1を受給できる
申請免除 低所得者対象
4段階の免除があり、段階に応じて一部支給がされる
学生納付特例 本人の所得が一定以下の場合対象
受給資格期間の算定対象になるが年金額には反映されない
納付猶予制度 本人あるいは本人と配偶者の所得が一定以下の場合対象
受給資格期間の算定対象になるが年金額には反映されない




第二号・第三号被保険者の国民年金部分の保険料

 厚生年金保険に加入している第二号被保険者の国民年金部分の保険料は、厚生年金の保険料の中から支払われます。

 20歳以上60歳未満で第二号被保険者の被扶養配偶者である第三号被保険者の保険料は、第三号被保険者本人には支払い義務はありません。第三号被保険者の保険料は、配偶者である第二号被保険者が加入している年金保険者が、「基礎年金拠出金」として拠出することになっています。

基礎年金部分と厚生年金部分の給付

 国民年金の基礎部分である基礎年金の給付には、「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」の3種類があります。厚生年金部分の給付には、「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」があります。

老齢基礎年金

 基礎年金部分の給付である老齢基礎年金を受け取るためには、年金を受給する資格として、10年の受給資格期間を満たす必要があります。年金額は、保険料納付額と月数に算定率を乗じて算定されます。保険料免除期間も免除額に応じて一部が月数に応じて支給額に反映されます。保険料を40年払い続ければ、満額支給になります。

マクロ経済スライド方式

 老齢基礎年金の年金額は、マクロ経済スライド方式が採用されています。マクロ経済スライド方式とは、年金の被保険者(加入者)の減少、平均寿命の延び、社会の経済状況を考慮して年金の給付金額を変動させる制度です。少子化により、稼働能力者が減少傾向にある中で、高齢化による年金受給者の増加に対して、全体の収支のバランスをとっていこうという考え方に基づいた計算方式です。

支給開始年齢

 老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳ですが、本人の希望により、60歳からの「繰り上げ支給」、70歳までの「繰下げ支給」という制度があります。繰り上げ支給の時は減額になり、繰下げ支給の時は増額になります。2022(令和4)年4月からは、繰り下げ支給年齢が、75歳までに延長になります。

老齢基礎年金

受給資格期間 10年
年金額の算定 保険料納付額と月数に算定率を乗じて算定
保険料免除期間の月数も反映される
マクロ経済スライド方式を採用
満額支給 40年間納付の場合は満額支給
支給開始年齢 65歳(減額繰上支給、増額繰り下支給制度あり)

障害基礎年金

 障害基礎年金の受給要件は、国民年金法施行令の障害等級の1級と2級に該当する者で、被保険者期間のうち3分の2以上の期間の保険料が納付あるいは免除されている者、または、65歳未満で初診日のある月の前前月までの1年間に保険料未納期間がない者です。

 学生納付特例適用期間、納付猶予適用期間は納付済み期間と同様に扱われ、この期間に障害を負った場合、障害基礎年金は全額支給されます。障害認定日以降の障害である「事後重症」にも適用されます。20歳未満に障害を負った場合は、被保険者期間がなくても1級あるいは2級に該当すれば「所得制限」を条件に支給対象になります。

 障害基礎年金の支給額は、2級が老齢基礎年金満額相当額と同額で、1級は、その1.25倍になります。支給対象者が生計を維持する者で子どもがいる場合は、子の加算がつきます。また、受給権発生後に子どもが生まれた場合でも加算の対象になります。

障害基礎年金

対象障害等級 1・2級
支給要件 原則保険料納付済み期間が被保険者期間のうち3分の2以上あること
20歳未満障害も所得制限を条件に対象となる
事後重症にも支給される
学生納付特例適用期間、納付猶予適用期間の障害も対象
支給額 1級(2級の1.25倍)
2級(老齢基礎年金満額と同額)
子の加算 子がある場合は子の加算がつく

遺族基礎年金

 遺族基礎年金の受給対象は、「子」と「子のある配偶者」です。「子」は18歳未満であること、障害児の場合は20歳未満であることが条件で、婚姻した子は対象外です。「子のある配偶者」に支給される場合は、その子に対しては「子の加算」がつくので、「子」に対する個別の支給はありません。

 支給要件は、25年以上の受給資格期間がある者が死亡した場合で、被保険者期間の3分の2以上は保険料を納付していることが条件です。遺族基礎年金の年金額は老齢基礎年金の満額と同額で、それに上記の「子の加算」がつきます。

遺族基礎年金

対象 子と子のある配偶者
子:18歳未満、障害児は20歳未満(婚姻した子は対象外)
支給要件 25年以上の受給資格期間がある者が死亡した場合に支給
年金額 老齢基礎年金の満額と同額+子の加算

厚生年金制度

 次に被用者保険である厚生年金制度について確認しておきましょう。厚生年金制度の被保険者の対象年齢は70歳未満になっています。5人以上従業員を使用する事業所は強制適用事業所として厚生年金に必ず加入しなければなりません。従業員が5人未満の事業所の場合は、従業員の2分の1以上の同意によって厚生労働大臣の認可を受ければ厚生年金の適用事業所になることができます。

被保険者要件

 厚生年金に加入し被保険者になるための被保険者要件として、正規職員であること、あるいは、正規職員の勤務時間のおおむね4分の3以上の勤務時間がある者であることが求められています。ただし、501人以上企業に勤務する場合は、週20時間以上、月額賃金8万8千円以上、雇用見込み期間1年以上である者は、被保険者になることができます。また、労使合意がなされた場合は、500人以下の企業で働く労働者の場合も、上記の条件を満たしている者は、被保険者になることができます。

 2022(令和4)年10月以降は、100人以上企業、雇用見込み期間が2か月を超える者も対象となり、2024(令和6)年からは50人以上企業も対象となります。

厚生年金保険料

 厚生年金の保険料は、32等級の標準報酬制になっています。保険料負担は労使折半で、事業主は、事業主負担分と被保険者から徴収した保険料を税務署に納付する義務があります。被保険者の育児休業期間と産前産後休業期間中の保険料は、本人負担と事業主負担とも、全額免除になっています。

厚生年金制度

対象年齢 70歳未満
加入要件 正規職員、正規職員の勤務時間のおおむね4分の3以上ある者
501人以上企業で一定の条件を満たした者及び500人以下の企業で労使合意のもと一定の条件を満たした者
保険料 32等級の標準報酬制
保険料負担 労使折半
保険料免除 育児休業期間、産前産後休業期間の保険料は、本人分・事業主分とも全額免除される

老齢厚生年金

 老齢厚生年金の給付要件は、老齢基礎年金の受給権者であること、すなわち10年間の受給資格期間を満たしていることと、老齢厚生年金の被保険者期間が1か月以上あることです。老齢厚生年金の給付額は、標準報酬月額と被保険者期間に基づいて算出され、老齢基礎年金に上乗せする形で支給されます。

 老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳で、65歳から70歳までの繰下げ支給制度があり、繰下げ支給の場合は年金額が増額になります。2022(令和4)年4月以降は、繰り下げ支給年齢の上限が75歳までとなります。なお、外国人で6か月以上加入期間のある者は、帰国後2年以内に脱退一時金の請求が可能です。

在職老齢年金制度

 65歳以上の在職者で年金と給与が一定額以上の場合には、年金の一部停止あるいは全額停止が行われます。これを在職老齢年金制度といいます。ただし、個人事業主の場合は、事業収入は給与ではないため、在職老齢年金制度の対象にはなりません。なお、在職老齢年金制度は老齢厚生年金だけを対象としており、老齢基礎年金は対象としていませんので老齢基礎年金部分は全額支給となります。

老齢厚生年金

給付要件 老齢基礎年金受給権者で被保険者期間1か月以上の者
支給開始年齢 65歳。65歳から70歳までの繰下げ支給制度(増額)あり
支給形態 老齢基礎年金に上乗せ支給
在職老齢年金制度 年金と給与が一定額以上の場合、年金一部停止・全額停止

障害厚生年金

 障害厚生年金は、被保険者期間中に初診日がある傷病による障害で1級、2級及び3級に該当する者と、それ以外の軽度の障害が対象です。1級と2級対象者は、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級と軽度の場合の一時金としての障害手当金は、障害厚生年金だけの独自給付です。

 20歳前に障害を負った場合は、初診日が厚生年金の被保険者期間中ではないので、障害厚生年金の給付対象にはなりません。業務災害で障害を負った場合は、障害厚生年金は全額給付され労働者災害補償保険の障害補償年金は減額して給付されます。

障害厚生年金

支給対象 1・2級は上乗せ、3級、障害手当金は独自給付
20歳前障害 支給対象外
併給調整 障害厚生年金は全額支給、障害補償年金は減額支給

遺族厚生年金

 遺族厚生年金の遺族の範囲は、妻、子、夫、父母、孫、祖父母で、受給には順位があります。第1順位は、配偶者(妻又は夫:夫は55歳以上)と子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で障害等級の1級もしくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと)です。

 第2順位は、父母(55歳以上)です。第3順位は、孫(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと)です。第4順位は、祖父母(55歳以上)です。

 第1順位者に受給権があるときは、第2順位以下の人は遺族厚生年金を受けられる遺族とはなりません。また、先の順位の人が受給権を失った場合でも、次の順位の人は受給権を取得(転給)できません。

 夫の死亡時に30歳未満で子のない配偶者の受給期間は、受給開始から5年間に限定されています。遺族厚生年金の受給額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

遺族厚生年金

遺族の範囲 妻、子、夫、父母、孫、祖父母
有期年金制度 30歳未満の子のない妻は5年間に
年金額 老齢厚生年金額の4分の3

 以上が年金保険制度の概要です。いかがでしたか。次回は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。では今回の課題を、第23回の精神保健福祉士国家試験問題の中からあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士国家試験問題 「社会保障」

問題 55 国民年金に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。正しいもの2つ選びなさい。

  • 1 国民年金の第一号被保険者の保険料は、前年の所得に比例して決定される。
  • 2 障害基礎年金を受給していると、国民年金の保険料納付は免除される。
  • 3 学生納付特例制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。
  • 4 自営業者の配偶者であって無業の者は、国民年金の第三号被保険者となる。
  • 5 障害基礎年金には、配偶者の加算がある。