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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第14回 「地域福祉の理論と方法」

 皆さんこんにちは。コロナ禍の厳しい状況の中で精神的にも大変だと思いますが、健康管理に留意しながら学習を進めていきましょう。今回は「地域福祉の理論と方法」を取り上げていきます。この科目は、地域におけるさまざまな分野の実践について出題されますので、高齢、障害、児童等の地域実践について、どの分野から出題されても対応できるようにしておきましょう。では、まず前回の課題の解説をします。

第23回 精神保健福祉士国家試験 「現代社会と福祉」

問題 25 イギリスの新救貧法(1834年)に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 劣等処遇の原則を導入し、救貧の水準を自活している最下層の労働者の生活水準よりも低いものとした。
  • 2 パンの価格に基づき定められる最低生計費よりも収入が低い貧困者を対象に、救貧税を財源としてその差額を給付した。
  • 3 貧困調査を実施して、貧困は社会的な要因で発生することを明らかにした。
  • 4 働ける者を労役場で救済することを禁止し、在宅で救済する方策を採用した。
  • 5 貧困の原因として欠乏・疾病・無知・不潔・無為の5大巨悪を指摘した。
正答1

解答解説

  • 1 〇 新救貧法は、従来の教区ごとの救済行政ではなく、救済行政を全国一元化する「全国統一の原則」、最底辺の労働者の生活水準より低い救済基準とする「劣等処遇の原則」、それまで行われていた院外救済を禁止し、ワークハウスに収容する「院内救済の原則」を規定し、救貧の対象をきわめて限定し、救貧を抑制することを大きな目的として制定されたものです。
  • 2 × 救貧税を財源として最低生計費と所得との差額を給付したのは、スピーナムランド制度です。18世紀後半は、1789年のフランス革命の影響を受けてイギリスの物価が高騰し、困窮に陥る民衆が続出しました。このような状況に対して、スピーナムランド村の治安判事総会で決定し採用されたのが、スピーナムランド制度です。これは、パンの価格に基づいて基本生活費を計算し、この額に届かない収入世帯には院外救済として救貧税を財源に賃金補助を行うという制度で、物価高騰にあえぐ困窮者を救済しました。ただ、低賃金でも賃金補助が行われるため、雇用主があえて賃金を引き下げるという事態を引き起こし、労働しなくても賃金が補助されるので労働者の勤労意欲をそぐという弊害が生まれました。その結果、救貧税が膨れ上がり、主な納税者である農業労働者の貧困化という状態が引き起こされ、新救貧法制定へとつながっていきました。
  • 3 × 貧困が社会的な要因で発生するのを明らかにしたのは、貧困調査です。イギリスで最初に貧困調査を行ったのは、チャールズ・ブースで、1886年から1891年にかけてロンドンにおける貧困調査を実施し、『ロンドン市民の生活と労働』を著しました。その著書でブースは、住民の3割以上が貧困線以下に該当していることを指摘しました。貧困の原因は、従来考えられていたような個人の責任によるのではなく、「不安定雇用」や「不衛生な環境」等の社会的要因が大きいことを指摘しました。
  • 4 × 新救貧法は、それまで行われていたギルバート法やスピーナムランド制度による院外救済、すなわち在宅での救済を禁止し、すべて労働能力のある貧民はワークハウスに収容して強制労働に従事させることを規定しました。院外救済の結果、救貧税の額が繰り返し引き上げられ、納税者である農民が各地で暴動を起こして社会の不安と混乱を招いたためです。
  • 5 × 貧困の原因として5大巨悪を指摘したのは、ベヴァリッジ報告です。ベヴァリッジ報告は、第二次世界大戦後のイギリスの社会保障体制のあり方について1942年に出された報告書です。ナショナル・ミニマムの具現化のために、住宅・雇用・教育を含む包括的社会保障の理念と枠組みを提示した社会保障計画で、「欠乏」「疾病」「無知」「不潔」「無為」の5大巨悪に対して、均一拠出・均一給付という「社会保険」を中心に、国が責任をもってナショナル・ミニマムを達成すべきであるとし、これを「公的扶助」と「任意保険」で補うという考え方を提示しました。この報告書の提言をもとに、第二次世界大戦後のイギリスの社会保険の枠組みが構築されました。その後イギリスは、ゆりかごから墓場までといわれる、老齢、疾病、障害、失業等をすべて包含した福祉国家体制を築き上げていきました。

 いかがでしたか。「現代社会と福祉」の科目では、福祉の原理論や現代社会の課題などについてもよく学習しておきましょう。
 では今回の「地域福祉の理論と方法」について、出題基準に沿って過去問題を分析しながら対策を立てていきます。




地域福祉の基本的考え方

 「概念と範囲」の分野では、コミュニティの概念や定義、地域福祉に関する代表的な理論を整理しておきましょう。ロス、ロスマン、岡村重夫、右田紀久恵、三浦文夫などの理論を学習しておきましょう。

 地域福祉政策に関するさまざまな分野の報告書、法律、生活困窮者、地域包括ケアシステム、福祉提供ビジョン、社会福祉法改正による地域福祉計画の位置付け等、最新の動向が出題されていますので、報告書や法改正等に注意して学習しておきましょう。

 第23回では、地域福祉に関する報告書、検討会とりまとめ等の内容が出題されています。社会保障審議会や厚生労働省から出されているさまざまな提言が、政策に反映されていきますので、政策との関係から理解しておくとよいでしょう。

 「地域福祉の理念」の分野では、ソーシャルキャピタル、ノーマライゼーション、ローカルガバナンス、ソーシャルインクルージョン、社会的起業等の理念、人権尊重、権利擁護、自立支援、地域生活支援などについて学習しておきましょう。障害者の地域移行については、障害者総合支援法による障害者自立支援制度の地域移行や地域定着支援について、よく学習しておきましょう。
 第23回では事例問題で、ノーマライゼーション、ソーシャルインクルージョン、自己決定・自立生活の支援、住民主体の観点からの支援の具体的あり方を問う問題が出題されました。

 「地域福祉の発展過程」の分野からは、コミュニティ・オーガニゼーション理論、コミュニティケア報告書、セツルメント運動、わが国の地域福祉の歴史等が出題されています。わが国の社会福祉協議会の発展の歴史や、イギリスの各種の報告書として、シーボーム報告、エイブス報告、ウルフェンデン報告、バークレイ報告、グリフィス報告等を押さえておきましょう。
 第23回では、民生委員制度、方面委員制度の歴史的発展の経緯についての出題がありました。

 「地域福祉における住民参加の意義」の分野からは、地域住民の参加のあり方が出題されています。住民主体の地域福祉活動、住民参加型在宅福祉サービス、共同募金、特定非営利活動法人、地域密着型サービス運営推進会議等が出題されています。福祉関係の各分野において、地域住民の参加がどのように規定されているかを各法律に当たって整理しておきましょう。




地域福祉の主体と対象

 この分野からは「地域福祉の主体」として、生活支援コーディネーター、介護支援専門員、介護予防・日常生活支援総合事業、認知症サポーター、地域ケア会議の役割と位置付け等が出題されています。介護保険制度における各職種、各機関の役割と事業の内容を理解しておきましょう。

 「地域福祉の対象」としては、避難行動要支援者、ホームレス、生活困窮者、ひきこもり、障害者虐待について、それぞれの法律上の定義が出題されています。各分野における定義をまとめておくとよいでしょう。

 「社会福祉法」としては第23回で、社会福祉法における地域福祉の推進に関して、地域福祉を推進する主体としての、「地域住民」「社会福祉事業を経営する者」「社会福祉に関する活動を行う者」の法律上の位置付け、支援機関との連携、国・地方公共団体の地域福祉を推進するための役割が出題されました。この分野は今後も出題される可能性が高いので、法律の条文に直接当たって理解を深めておきましょう。

 「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成29年制定)により、社会福祉法の一部が改正され、平成30年4月1日から施行されています。
 地域共生社会の実現に向けて、社会福祉法に地域福祉の推進がどのように規定されているか、社会福祉法における地域住民の位置付けと役割、地域における包括的な支援体制づくり、地域福祉計画の策定等、改正のポイントを確認しておきましょう。

 また第23回では、社会福祉法における社会福祉法人の地域社会における公益的取り組みについて、具体的な事例が出題されました。平成30年1月23日付の厚生労働省通知「社会福祉法人による『地域における公益的な取組』の推進について」に、詳細な規定が記載されています。また、厚生労働省のホームページに「地域における公益的な取組について」として概要図が掲載されていますので、理解を深めておきましょう。

 そのほか第23回では、地域生活課題を抱える人々への支援のための施策として、生活困窮者自立支援法、日常生活自立支援事業、災害対策基本法、住居確保給付金、ひきこもり地域支援センター設置運営事業に関する出題がありました。地域生活を支援するさまざまな制度や法体系に注意して学習しておくことをおすすめします。

地域福祉に係る組織、団体及び専門職や地域住民

 「行政組織と民間組織の役割と実際」の分野は大変出題率が高く、ほとんど毎回の出題がみられます。特定非営利活動法人、社会福祉協議会、民生委員、児童委員、共同募金については、基礎的な分野ですので十分学習しておきましょう。今回は後ほど、民生委員制度の歴史的発展の経緯を中心に解説していきます。

 社会福祉協議会の組織と役割、社会福祉法に規定されている地域福祉計画策定時の住民の意見反映措置、地域福祉コーディネーターの位置付け、共同募金会の配分方法等の出題実績がありますので、これらについても整理しておくとよいでしょう。

 ボランティア活動や企業の社会貢献活動、生活協同組合、農業協同組合、住民参加型の在宅福祉サービス、社会的企業、ソーシャルビジネス等の出題もみられますので、これらについても理解を深めておきましょう。

 高齢者保健福祉の分野では、介護予防・日常生活支援総合事業や包括的支援事業の組織と業務内容、配置される人材とその役割、認知症サポーター、日常生活自立支援事業における専門員の資格要件、認知症地域支援推進員、認知症ケア専門士、介護相談員についての出題がありました。地域で地域福祉を担う人材、組織について、分野ごとにポイントを押さえておきましょう。

 第23回では、地域福祉などを推進する民間組織への寄付等について、認定特定非営利活動法人の税制優遇措置、共同募金の配分先、社会福祉法人の剰余金の扱い、社会福祉協議会の活動実態、市民の社会貢献に関する実態調査が出題されています。

 「専門職や地域住民の役割と実際」の分野からは、社会福祉協議会の福祉活動専門員の事例問題での出題が多く見受けられます。状況に応じた専門員の対応方法等、実践現場での適切な対応について理解を深めておきましょう。

 第23回では、権利擁護人材育成事業における市民後見人の活動実態、生活支援コーディネーターの資格要件、認知症サポーター養成事業、ゲートキーパー養成研修の対象、日常生活自立支援事業の専門員の業務が出題されています。

地域福祉の推進方法

 「ネットワーキングの意義や方法とその実際」については、地域の中の社会資源をネットワーク化し、地域住民の生活課題を解決する手法を習得しておきましょう。地域福祉の連携のあり方、地域福祉コーディネーターの業務、地域包括ケアによるコーディネート等の出題がみられます。

 「地域における社会資源の活用・調整・開発」については、社会資源の意義、社会資源としての共同募金や町内会、市民後見人、住民主体の概念と専門職との関係等をよく押さえておきましょう。また、町内会やふれあいいきいきサロン、地域包括支援センター等の社会資源の活用方法等も学習しておくとよいでしょう。

 市町村社会福祉協議会の生活支援コーディネーター、ソーシャルアクションの展開等が出題されています。地域住民が地域の課題を自分たちの課題としてとらえ、住民が主体となって取り組むことができるための援助のあり方を学んでおきましょう。

 「地域における福祉ニーズの把握方法と実際」として、ニーズ把握のための構造化面接、半構造化面接、住民懇談会の持ち方等の出題実績があります。質的ニーズと量的ニーズの把握方法等、ニーズ把握の具体的手法について理解しておきましょう。
 インタビュー技法、アクションリサーチ、マッピング技法などは、「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」の科目の社会調査の分野と重なりますので、併行して学習しておくとよいでしょう。

 「地域ケアシステムの構築方法と実際」の分野からは、高齢者保健福祉の領域における地域ケア会議の位置付け、生活支援コーディネーターと協議体、介護予防・日常生活支援総合事業、在宅医療・介護連携推進事業、認知症初期集中支援チームなどが出題されています。

 「地域における福祉サービスの評価方法と実際」として、第三者評価事業が出題されています。「福祉サービス第三者評価事業の指針」「福祉サービス第三者評価機関認証ガイドライン」について、組織体系、研修体系、評価機関の認証要件、評価項目等について目を通しておきましょう。

 第23回では、福祉サービスの立案及び評価として、パブリックコメント、ニーズ推計、福祉サービス第三者評価事業、福祉サービスのアウトカム評価、プログラム評価のための指標の設定についての出題がありました。各分野の法改正が進み、福祉計画についての評価が重視されるようになってきています。計画策定のためのニーズ推計や計画実施後の評価方法について、理解を深めておきましょう。

 以上全体を概観してきましたが、今回は、民生委員制度の歴史的経緯を中心に解説していきたいと思います。




エルバーフェルト制度

 民生委員制度の源流は、ドイツのエルバーフェルト制度に求めることができます。1852年にドイツのエルバーフェルト市で実施された救貧委員制度で、市域を1区内に4名以上の貧困者がいないように、546に区分し、ボランティアの「救貧委員」を配置しました。「救貧委員」は、担当区域を訪問、調査し、貧困者の救済と相談援助や指導を行いました。これにより、貧困者を就労に結び付けることができるようになり、救貧税の支出が大幅に減少するという結果が生まれました。

米騒動

 わが国では大正期に入ると、1914(大正3)年から1918(大正7)年に起きた第一次世界大戦によって、物価が高騰し貧困が深刻化していきました。特に一部の商人が米を投機の対象としたため米価が高騰し、都市の勤労者や下層の農民は生活が成り立たなくなり、米の卸問屋への焼き討ち事件が頻発しました。




済世顧問制度

 このような時代背景のもと、岡山県知事の笠井信一は、大正天皇から岡山県の貧しい人々の生活状況について尋ねられました。これを受けて笠井信一は貧困の実態を調査し、その結果、極貧の状況にある者が約1割近くいることがわかり、ドイツのエルバーフェルト制度をはじめ、諸外国の救貧対策や防貧対策を研究して、1917(大正6)年に「済世顧問制度」を創設しました。

 これは、ドイツのエルバーフェルト制度をモデルとしたもので、市を基本的な行政単位として、篤志家を「済世顧問」という名称で名誉職として委嘱し、貧困者の相談にのり、道徳的感化や必要な物品の斡旋等によって、貧困を救済しようとした制度です。

 この済世顧問制度は、地域の優れた人材に済世顧問を委嘱し、困窮に陥ってしまう前の予防的な活動に重点を置いた活動であるということ、また、人々が本来持っている能力を発揮できる機会を提供して、自立を支援する活動であるという特徴がありました。




方面委員制度

 「済世顧問制度」が誕生した翌年の1918(大正7)年、大阪府で「方面委員制度」が創設されました。この当時、富山県で発生した米騒動は大阪にも波及して、市民の生活はきわめて厳しく、生活困窮者への早急な支援が求められていました。

 大阪府知事の林市蔵は、当時内務官僚として監護法制定等に尽力し、大阪府に社会事業協会を設立するなど福祉に造詣の深い大阪府最高嘱託の法学博士、小河滋次郎を協力者として、全国に先駆けて方面委員制度を発足させました。

 方面委員制度もドイツのエルバーフェルト制度を参考にしたもので、小学校学区に方面委員を配置し、「方面カード」という台帳を作成して、要保護世帯の指導と援助を行いました。「方面委員」の「方面」とは「地域」のことで、方面委員は一定の区域を担当し、区域を訪問調査して世帯状況を把握して「方面カード」に記入し、生活が困窮した状態にある人々を迅速に救済機関につなげていく働きをしました。この制度は、次第に全国に広がっていきました。




救護法

 社会の厳しい困窮状態に対して、1929(昭和4)年には、従来の「恤救規則」に代わるものとして「救護法」が制定されました。この法律で、方面委員は救護の実施機関である市町村長を補助する、「補助機関」として位置付けられました。

 ただ国は、財源不足を理由になかなか法律を施行しなかったため、全国の方面委員を中心として、「救護法実施促進運動」が各地に展開され、ついに政府も施行せざるを得なくなり、競馬法改正で財源を得たとして、救護法は1932(昭和7)年1月から施行されました。

方面委員令

 大阪で始まった方面委員制度は全国に普及していき、1931(昭和6)年には、方面委員の全国連絡組織として、「全日本方面委員連盟(現在の全国民生委員児童委員連合会の前身)」が結成され、初代会長に渋沢栄一が就任しました。

 救護法に方面委員が補助機関として位置付けられたこと等により、1936(昭和11)年には、国が「方面委員令」を公布し、方面委員制度の法的な基盤が整備されて、方面委員制度は全国的な制度として展開されていくことになりました。




民生委員令

 その後わが国は、1937(昭和12)年の日中戦争、1941(昭和16)年の太平洋戦争と戦争のただなかに入り、国民の窮乏の度合いは一層高まりました。第二次世界大戦は1945(昭和20)年に終了し、その翌年の1946(昭和21)年の9月には、「方面委員令」に代わって「民生委員令」が制定されました。

 この「民生委員令」によって、「方面委員」の名称が「民生委員」と改められ、従来都道府県知事から委嘱されていた立場から厚生大臣(現在の厚生労働大臣)から委嘱されるという立場になりました。

児童委員兼務規定

 1947(昭和22)年には、児童福祉法が制定され、児童福祉法上に民生委員が児童委員を兼務することが規定されました。すでに戦前から、方面委員は児童の福祉の活動を行っていたことや、子どもの課題は家庭の環境と密接に関係することなどの理由によるものです。




民生委員法

 1948(昭和23)年7月に、「民生委員法」が公布されました。この法律の制定によって、「民生委員制度」が法律上に位置付けられ、委員の資格要件や任期、委員の選任の方法などが明確に規定されました。

 1949(昭和24)年には厚生省通知により、民生委員の立場は、「補助機関」から「協力機関」に移行しました。翌年の1950(昭和25)年の現行生活保護法により、「補助機関」としては「社会福祉主事」が位置付けられ、民生委員は「協力機関」として法律上に明確に規定されました。

居宅ねたきり老人の実態調査

 民生委員の活動は多岐にわたりますが、委員活動のなかで調査活動は重要な役割を持っています。これは単に行政から依頼される訪問調査等の実施だけでなく、自主的に住民の生活課題を把握し、必要な支援を社会的に実現するために行政等に働きかけるという役割を重視しているためです。

 1968(昭和43)年には、民生委員制度創設50周年である1967(昭和42)年を期に企画された、初めての全国規模の調査である「居宅ねたきり老人の実態調査」を、社会福祉協議会と協力して実施しました。

 この時代は、高齢者人口が増加し、自宅で長期間寝たきり状態にある高齢者が増えているのではないかと考えて実施したもので、調査の結果、70歳以上の寝たきり高齢者が全国で20万人以上いることが明らかにされ、その後の在宅福祉施策の充実にも大きな影響を与えました。

 その後も、「独居老人世帯の実態調査」や「孤独死老人の追跡調査」を実施し、ひとり暮らし高齢者の厳しい生活状況を明らかにしています。これらの結果をうけて、1973(昭和48)年には民生委員の活動として、近隣住民による日常協力体制の確立、孤立する高齢者への福祉サービスの充実を目標に、「孤独死老人ゼロ運動」を全国的に展開しました。
 その後も、民生委員制度創立100周年の記念事業の一環として、2016(平成28)年には「社会的孤立に関する調査」等を実施しています。

エルバーフェルト制度 民生委員制度の源流。「救貧委員」を配置し担当区域を訪問、調査し貧困者の救済・相談援助・指導を実施
済世顧問制度 1917(大正6)、岡山県知事の笠井信一が創設
篤志家に「済世顧問」を委嘱し、貧困者の相談・道徳的感化・必要な物品の斡旋等により貧困を救済
方面委員制度 1918(大正7)年、大阪府知事の林市蔵と小河滋次郎が創設
方面委員を配置し要保護世帯の指導と援助を実施
救護法 1929(昭和4)年制定、1932(昭和7)年施行。方面委員を「補助機関」として位置付け
方面委員令 1936(昭和11)年、国が「方面委員令」を公布
民生委員令 1946(昭和21)年、「民生委員令」制定。委嘱者が都道府県知事から厚生大臣に移行
児童委員兼務規定 1947(昭和22)年、児童福祉法の制定により民生委員は児童委員を兼務することを規定
民生委員法 1948(昭和23)年「民生委員法」公布。1950(昭和25)年、現行生活保護法に民生委員を「協力機関」として位置付け
居宅ねたきり老人の実態調査 1968(昭和43)年、社会福祉協議会と協力して全国規模の調査を実施。在宅福祉施策の充実に影響を与える

 最後に、民生委員の性格と職務、組織、配置基準については、表を参照してください。

民生委員の性格と職務

民生委員の性格 民間の制度的ボランティア(無償、経費は支給) 都道府県知事が推薦・厚生労働大臣が委嘱(任期は3年)
民生委員の身分 非常勤特別職地方公務員 秘密保持義務違反の罰則規定はない
職務内容 生活状況把握、生活相談・助言、情報提供、連携と支援、福祉事務所等への協力、社会福祉を目的とする事業への支援等
民生委員のあり方 人格の尊重、秘密保持義務、差別禁止、職務上の地位利用の禁止
相談内容・支援件数 ① 高齢者、②子ども、③障害者、④その他の順
活動内容 友愛訪問、安否確認、諸行事への参加が多い

民生委員の組織

民生委員の定数 民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の区域ごとに、都道府県の条例で定める

民生委員の年齢 18歳以上

民生委員の区域 市町村の区域内に「担当の区域又は事項」を定めてその職務を行う

指揮監督 民生委員は「都道府県知事」の指揮監督を受ける
都道府県知事は、民生委員の指導訓練を実施しなければならない
費用負担 都道府県が負担する
民生委員協議会の組織 民生委員は、都道府県知事が市町村長の意見をきいて定める区域ごとに、民生委員協議会を組織しなければならない
市は数区域に分けた区域、町村はその区域を一区域とする
(市には、複数の協議会の設置が可能という意味である)
民生委員協議会の役割 民生委員が担当する区域・事項を決定、職務についての連絡・調整、関係行政機関との連絡、情報の収集、民生委員の研修、関係各庁への意見具申、市町村の社会福祉関係団体の組織に加入が可能
民生委員推薦会 民生委員を推薦するために市町村に設置される組織
民生員推薦会 民生委員を都道府県知事に推薦→都道府県知事→厚生労働大臣に推薦
児童委員との関係 児童福祉法に基づく児童委員を兼務(児童福祉法に規定)。児童委員は、児童福祉司または福祉事務所に協力する
主任児童委員 都道府県知事・民生委員推薦会は、民生委員を推薦する際、主任児童委員を明示する。厚生労働大臣が指名
区域は担当しない。「区域担当委員」ではなく「事項担当委員」として児童委員活動及び児童委員活動の支援を実施

民生委員・児童委員の実態と配置基準

民生委員の実態 女性6割、男性4割で女性が多い
民生委員の定数 22~23万人台で推移
定数配置基準 東京都・指定都市(220~440世帯に1人)
人口10万人以上の市(170~360世帯に1人)
人口10万人未満の市(120~280世帯に1人)
町村(70~200世帯に1人)

 いかがでしたか。この科目は10点科目のため範囲が広いですが、出題率の高い範囲を丁寧に学習すれば得点に結び付きますから、着実に学習して力を付けていきましょう。次回は「福祉行財政と福祉計画」を取り上げます。
 では、第23回の精神保健福祉士試験から今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士試験 「地域福祉の理論と方法」

問題 33 民生委員制度やその前身である方面委員制度等に関する次の記述のうち、正しいもの2つ選びなさい。

  • 1 方面委員制度は、岡山県知事である笠井信一によって、地域ごとに委員を設置する制度として1918 年(大正7年)に創設された。
  • 2 方面委員は、救護法の実施促進運動において中心的な役割を果たし、同法は1932年(昭和7年)に施行された。
  • 3 民生委員法は、各都道府県等で実施されていた制度の統一的な発展を図るため、1936年(昭和11年)に制定された。
  • 4 民生委員は、旧生活保護法で補助機関とされていたが、1950年(昭和25年)に制定された生活保護法では実施機関とされた。
  • 5 全国の民生委員は、社会福祉協議会と協力して、「居宅ねたきり老人実態調査」を全国規模で1968年(昭和43年)に実施した。

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※専門科目のみ