メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第12回 「社会理論と社会システム」

 皆さん、こんにちは。今回は「社会理論と社会システム」を取り上げます。この科目は出題範囲が広く理論的な理解が求められるので、苦手意識を持っている受験生が多いかもしれませんが、社会変動に伴う社会の仕組みの変化やそれぞれの時代に生きる人々の意識の変化、ライフスタイルの変化、現代社会の諸課題など、現代に生きる私たちにとって、とても身近な科目です。

 現代社会が抱えるさまざまな問題の影響を受けて困難を感じている人々を援助する精神保健福祉士として、社会に対するより深い洞察力と分析力を養い、よりよい援助者となるために学ぶ楽しさを体験していただき、理解を深める一助となればと願っています。
 では最初に、前回の課題を解説していきましょう。

第23回 精神保健福祉士国家試験 「心理学理論と心理的支援」

問題 9 知覚に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 外界の刺激を時間的・空間的に意味のあるまとまりとして知覚する働きを、知覚の体制化という。
  • 2 明るい場所から暗い場所に移動した際、徐々に見えるようになる現象を、視覚の明順応という。
  • 3 個人の欲求や意図とは関係なく、ある特定の刺激だけを自動的に抽出して知覚することを、選択的注意という。
  • 4 水平線に近い月の方が中空にある月より大きく見える現象を、大きさの恒常性という。
  • 5 二つの異なる刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小の差異を、刺激閾という。
正答1

解答解説

  • 1 〇 知覚の体制化とは、知覚は、視覚でとらえたものを、「まとまり」を持ったものとして知覚する傾向があるということである。ドイツの心理学者であるヴェルトハイマー(Wertheimer, M.)は、ゲシュタルト心理学を提唱した。ゲシュタルトとは「形態」という意味で、人間の心理を、部分や要素の単なる集合ではなく、「全体性を持ったまとまり」としてとらえる心理学の立場である。代表的な例として、ルビンの図地反転図形がある。ルビンは、背景を「地」、まとまってとらえた形を「図」として示し、知覚の体制化を示した。
  • 2 × 明るい場所から暗い場所に移動した際、徐々に見えるようになる現象は、視覚の暗順応という。明順応とは、暗い場所から明るい場所に移動した際、徐々に見えるようになる現象である。
  • 3 × 選択的注意とは、さまざまな情報の中から、興味や関心のある特定の情報だけを選択して、注意を向ける認知の働きのことである。さまざまな音や会話が飛び交うパーティ会場のようなところで、特定の人との会話が成り立つカクテルパーティ効果が代表的なものである。
  • 4 × 水平線に近い月の方が中空にある月より大きく見える現象は、空間の異方性という。空間の異方性とは、物体が置かれた方向や、位置、背景等によって、大きさが異なって見える知覚のことである。同じ大きさの物体でも、その物体の周囲に、それ以上大きいものがあるとその物体は小さく見え、その物体の周囲にその物体よりも小さいものがある場合、その物体は大きく見えるということをいう。
  • 5 × 二つの異なる刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小の差異は、「弁別閾」という。例えば、手のひらに一定の量の粉をのせておき、次に、被験者が目を閉じた状態で、被験者の手のひらに、5グラムの粉を追加して乗せた場合、被験者は、重さが変わったとは気づかないとする。さらに5グラム追加しても気づかず、さらに5グラム追加して、初めて手のひらにのせられた粉が「増えた」ということを気づいた場合の「弁別閾」は、15グラムになる。

 いかがでしたか。「心理学理論と心理的支援」は、記憶、学習理論、発達理論、ストレス、心理検査、心理療法などの頻出分野についても、十分に学習しておきましょう。
 では、今回の「社会理論と社会システム」に入っていきましょう。出題基準に沿って、過去問の出題傾向を分析しながら、分野ごとに対策をたてていきます。

現代社会の理解

 【社会システム】の分野では、社会現象をシステムとしてとらえる考え方や、社会の文化や規範、社会の構造や発展に伴う社会意識の変化等についての理解を深めておきましょう。
 階級と階層の概念の違い、社会移動における垂直移動、水平移動、世代間移動、世代内移動等の意味、経済指標と社会指標の違い、社会指標を用いた調査の目的等についても学習しておきましょう。社会の福祉水準を測定する指標として、幸福度指標、所得格差指標等が出題されています。わが国の就業構造等も出題されていますので気をつけておきましょう。

 【法と社会システム】の分野では、法と社会規範、法と社会秩序について理解しておきましょう。ノネとセルズニックの法モデル、ウェーバーの支配類型論等が定番問題です。私たちの生活の秩序と法が、どのようにかかわっているのか、合法的支配や法治国家の意味について、また抑圧的法、自律的法、応答的法の、それぞれの違いについてもよく学習しておきましょう。

 【経済と社会システム】の分野では、市場や交換・互酬性の概念、現代社会における働き方、成果主義や均等処遇、裁量労働制やフリーター、ワーク・ライフ・バランス等の概念を理解しておきましょう。

 グローバル化や産業構造の仕組みの変化に伴って、労働形態、労働環境が大きく変化しています。ジニ係数、完全失業率、有効求人倍率、非正規雇用、同一労働同一賃金、男女間の賃金格差等が出題されています。働き方改革も進められていますから、日々のニュースにも注意をしておきましょう。

 市場の概念の分野からは、消費社会論が取り上げられています。ロストウ、ガルブレイス、リースマン、ヴェブレン、ボードリヤールの消費論について、それぞれの理論のポイントを押さえておきましょう。

 【社会変動】の分野は、近代化や産業化、情報化による「社会の変化と特質」を整理しておきましょう。デュルケム、ウェーバー、テンニース等の出題実績があります。社会の変化は、家族形態やライフサイクル等にも影響を与えています。社会生活の各分野に、社会変動がどのような影響をもたらしているか、という視点で学習しておくとよいでしょう。

 【人口】の分野では、人口の概念、人口構造の変化、少子高齢化など、現代の人口問題や実態について押さえておきましょう。人口転換、世界人口予測、世界の人口増加の要因、わが国の人口減少の実態、人口ボーナスと人口オーナス、わが国の少子化の実態、合計特殊出生率、平均寿命、65歳以上人口割合等について確認しておきましょう。
 第23回では、「少子化社会対策白書」から「合計特殊出生率」に関して、合計特殊出生率の推移、諸外国との比較についての出題がありました。

 人口の概念、人口構造の変化、少子高齢化など、現代の人口問題や実態について押さえておきましょう。人口統計で用いられる基本用語の定義や人口の実態等については、「社会保障・人口問題研究所」等のホームページで確認できますので、目を通しておくとよいでしょう。

 【地域】については、地域やコミュニティの概念、都市化と地域社会の変化、過疎問題、地域における集団や組織について学習しておきましょう。ウェルマンのコミュニティ解放論、都市化や限界集落、わが国のコミュニティ政策の展開等について理解を深めておきましょう。
 第23回では、同心円地帯理論、アーバニズム論、下位文化理論、コミュニティ開放論、都市の発展段階論が出題されました。

 【社会集団及び組織】の分野では、第一次集団と第二次集団の違い、フォーマルグループとインフォーマルグループ、ゲマインシャフトとゲゼルシャフト、準拠集団、コミュニティとアソシエーション等が出題されています。近代化に伴って、集団の性格がどのように変化していったかを押さえておきましょう。ウェーバーの官僚制論や官僚制の基本的特性、官僚制の逆機能等についても理解しておいてください。
 第23回では、準拠集団、第一次集団と第二次集団との違い、内集団と外集団、ゲマインシャフトとゲゼルシャフト、公衆と群衆の違いについて出題されています。

生活の理解

 【家族】の分野では、家族の概念、時代の変遷による家族の変容、家族構造や家族形態、家族の機能の変化等が出題されています。定位家族、生殖家族、核家族、拡大家族、直系家族、複合家族などの家族形態を理解しておきましょう。また、国民生活基礎調査による家族形態を、世帯人員別、世帯類型別、65歳以上世帯の特徴等を含めて確認しておきましょう。

 【生活の捉え方】の分野からは、ライフサイクル、ライフコース、家族周期、コーホート、ライフイベント等の概念等が出題されています。生活様式の多様化に伴って生まれてきたライフコースの概念や、生活時間や生活の質、消費の捉え方などについても学習しておきましょう。第23回では、ライフコースについての出題がありました。

人と社会との関係

 【社会関係と社会的孤立】の分野では、現代社会における人間関係の希薄さと孤立に対して、ロバート・パットナムの社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の概念を理解しておきましょう。

 【社会的行為】の分野では、ウェーバーによる「価値合理的行為」と「目的合理的行為」の意味、ハーバーマスの「コミュニケーション的行為」「戦略的行為」、パーソンズの「主意主義的行為論」等について理解を深めておきましょう。ウェーバーの理解社会学や合理的選択理論等も出題されています。

 【社会的役割】の分野からは、役割期待、役割演技、役割葛藤、役割距離、役割取得、他者や社会から求められる役割と個人の役割遂行との関係、役割と自我の形成等の考え方を整理しておきましょう。第23回では、役割距離について出題されています。

 【社会的ジレンマ】の分野については、個人の合理的行為とそれがもたらす集団への結果、フリーライダー、創発特性、選択的誘因、共有地の悲劇、囚人のジレンマ等について、それぞれの意味をよく理解しておきましょう。第23回では、社会的ジレンマの定義が出題されました。

社会問題の理解

 【社会問題の捉え方】では、犯罪や逸脱の捉え方についての理解を深めておきましょう。ラベリング理論、構築主義、社会統制論、緊張理論、文化学習理論等が出題されています。社会病理や逸脱の考え方を理解しておきましょう。第23回では、マートンによるアノミー論の出題がありました。

 【具体的な社会問題】では、ジェンダー、環境問題、貧困問題、失業、非行、社会的排除、ハラスメント、DV、児童虐待、いじめなど、現代の社会のおける諸問題についての出題があります。貧困の概念と測定方法、ラウントリーやタウンゼントの貧困の概念、ジニ係数、相対的貧困率などの定義や意味、実態を把握しておきましょう。

 以上全体を概観してきましたが、今回は「都市化の理論」について取り上げていきます。
都市はどのように形成されたのか、都市におけるコミュニティはどのような性格を持っているかという研究を「都市化の理論」といいます。

シカゴの発展

 19世紀後半は、アメリカ合衆国の工業化が進展し西部が開発されていくことによって、アメリカ中西部の都市であるシカゴが急速に発展していきました。シカゴは、五大湖地方からミシシッピ川への水上航路の集約地であり、大陸横断鉄道の集約地点でもありました。また、天然資源にも恵まれていたため、鉱業や工業が急激に発展し、そのための労働力としてヨーロッパからの移民が流入し、居住環境が整わない状態のまま人口が急増していきました。

 その結果、貧困問題や労働問題、民族問題などが噴出していきました。19世紀期後半にはシカゴ大学が創設され、大学として初の社会学科が開設されました。20世紀になると、都市研究が進められていき、シカゴ学派都市社会学と呼ばれるようになりました。

 シカゴ大学の都市研究は、都市に暮らす人びとの体験を重視した経験的研究を行い、教授のパークは、同僚のバージェスやワースらとともに、シカゴという都市の形成過程を、参与観察によって研究しました。シカゴ大学による都市研究の立場を「シカゴ学派」と呼びます。

同心円地帯理論

 パークと共に都市研究を行ったバージェスは「都市の成長」という論文で、都市の形成過程を「同心円地帯理論」として提示しました。「同心円地帯理論」とは、都市の成長過程は「5重の同心円の拡大過程」であるという理論です。

 都市形成のプロセスは、まず、都市の中心に、工場や商業などの「中心業務地区」である「中央ビジネス地区」が形成されます。次に、その周囲に低賃金労働者が住む下水道や住環境が未整備なスラム街や下宿屋、娯楽街ができます。労働力は移民が多く、貧困ゆえのさまざまな社会問題が山積する地域が生まれます。この地域を「推移地帯」「遷移地帯」と呼びます。

 この「推移地帯」の周囲には、移民の第二世代が居住する「労働者居住地帯」が形成されていきます。この地域には、ドイツ人街や2階建て住宅などが建設されていきます。さらにこの「労働者居住地帯」の周囲には、中産階級の居住地である「住宅地帯」が形成されていきます。この「住宅地帯」は、高級賃貸マンションや繁華街等で形成されていきます。

 この「住宅地帯」を取り囲むようにして、同心円の最も外側の地帯には、家族向け一戸建て住宅や居住用ホテルなどが立ち並ぶ、水と光と緑にあふれ自然環境が豊かな「郊外」と呼ばれる「通勤者地帯」が生まれます。以上のようにバージェスは、都市形成過程を「同心円地帯理論」で説明しました。

社会解体論

 また、バージェスは、都市の形成過程において、最初遷移地帯に住んでいた移民が、生活水準が上がっていくにつれて、円の中心から外側に向かって移住していき、その過程の中で、「移民社会」という社会組織としての共同体の絆が失われていき「社会解体」が起こり、次第に「都市の分業体系」に再編されていくということを指摘しました。

 けれど、都市の急激な発展による社会解体に、分業体系への再編が追いつくことができず、都市の発展は、犯罪や非行などの都市問題を生み出すとしました。パークとバージェスを中心とした「シカゴ学派」は、「社会解体が都市問題をひきおこす」という、「社会解体論」を提唱しました。

アーバニズム

 シカゴ大学で、パークとバージェスの学生であり、その後シカゴ大学の教授になったワースは、「生活様式としてのアーバニズム」(1938)という論文で、「都市の生活様式」としての「アーバニズム論」を提唱しました。ワースは、「都市」そのものと、「都市における生活様式」とを区別して論じ、「都市」の特徴として、「規模が大きく、人口密度が高く、社会的異質性が高く、流動的な居住地」をあげました。

 ワースは、この「都市」という環境に居住する住民に特徴的にみられる生活様式を「アーバニズム」と名付けました。ワースは、都市の発展による人々の都市の生活様式の変化の特徴として、親密で個人的な接触から、表面的で一時的な接触に移行し、近隣社会の絆が薄れ衰退していくことによって、無関心や無干渉、孤独、合理性、世俗主義などがみられるようになるとしました。

コミュニティ喪失論

 ワースは、都市の発展が分業の進展と大量生産、大量消費を生み出し、マスメディアの発達により、都市社会に流動的な大衆と大衆文化、大衆政治を生み出すとし、パークやワースと共に、都市化はコミュニティを衰退させるという「コミュニティ喪失論」の立場をとりました。

コミュニティ存続論

 ホワイトは、都市における地域コミュニティ研究を行い、パークやバージェス、ワースらが提唱した「コミュニティ喪失論」に対して、「コミュニティ存続論」を提唱しました。

 ホワイトは、イタリア系スラムの研究を通して、都市空間の中でもコミュニティは喪失していないとしました。ホワイトは、コーナーヴィルというスラム街の中の非行青少年たちの生活を綿密に観察し、「大都市の中にもコミュニティと呼べる全人格的で親密な人間関係が存続している」と主張しました。

 スラム地区は混乱した社会的カオス状態にみえるが、内部からみると、コーナーヴィルはよく組織され統合された社会システムがあるとし、コーナーヴィルが混乱した状態にみえるのは、社会組織がないためでなく、その社会組織が周囲の社会構造とうまくかみあわないことが原因であるとしました。そのため、地域にやくざ組織等が発達し、その組織の中にも、独自のコミュニティが形成されているとしました。

コミュニティ開放論

 従来のコミュニティ論は、地域を基盤とした地理的空間を共有することを前提とした理論が主流でしたが、ウェルマンは、地理的空間にとらわれない「コミュニティ開放論」を提唱しました。「コミュニティ開放論」とは、物理的距離には関係なく、心理的距離の近い人間関係によってコミュニティの形成は可能であるという理論です。

 現代社会は、交通や通信手段の発達によって、物理的距離が遠くても親密な人間関係築くことが可能になっています。コミュニティは、地理的空間を共有することを条件とするという考え方から解放され、心理的に自由な関係性の構築が可能であるというのが、「コミュニティ開放論」です。

下位文化理論

 「下位文化理論」は、フィッシャーが提唱した理論です。都市は人口が集中しているため、各自が自分の好む仲間とネットワークを形成することが可能であり、都市は多様なネットワークが形成されていき、それを基盤として多様な「下位文化」が生まれてくるという理論です。

 「下位文化」という言葉はあまり聞きなれないと思いますが、ここでは、「一部の人びとにだけ共有される文化」という意味で使用されています。フィッシャーは、「都市化によってコミュニティは喪失する」という「コミュニティ喪失論」に対して、都市化はコミュニティを衰退させるのではなく、「新しい下位文化を育てる」と主張しました。

 都市の人口の集中度が高ければ高いほど、さまざまな人間の集まりである都市には、さまざまなネットワークが形成され、個人がネットワークを選択する際に、多様な選択肢から選ぶことができる、すなわち、その選択の幅が広がるとしました。

 都市化が進んでいるほど、親族や隣人との絆の形成に比べて、興味や関心を共有する友人同士の絆の形成や結合が容易になり、多様な下位文化が形成されるという理論です。都市では類似した者同士が結びつく「同類結合」が起こり、ネットワークが分化していく中で、革新性や創造性に富んだ多様な下位文化が形成されていくとしています。この「下位文化理論」は、「コミュニティ変容論」に位置付けられています。

都市の発展段階論(都市循環モデル論)

 「都市の発展段階論」は、クラッセンが提唱した理論で、「都市循環モデル論」とも呼ばれています。クラッセンは、都市形成過程を研究し、「都市形成期」には、都市に人口が集中し都市化が進みますが、一定の期間を経ると、都市から人口が流出して都市の空洞化と衰退という「逆都市化」の現象が起こり、その後、「再度の都市化」が進んでいくという過程を繰り返すとしました。

都市形成期

 都市形成期は、初めに「中心都市部」への人口の流入が起こります。これを「都市化」といいます。ただ、中心都市部は人口の受容量に限界があるため、「中心都市の周囲」に人口の流入が始まります。

郊外化

 ある程度所得が増えた人々は、自然環境の豊かな郊外に住居を求めるようになり、「郊外化」が起こります。この時期は、中心都市部への人口流入は減少し、郊外への人口流入の度合いが高くなります。このプロセスがさらに進行すると、中心都市部への人口流入はほとんどなくなり、人口が増加するのは郊外だけになります。

ドーナツ化現象

 大都市中心部の居住人口が、地価の高騰や生活環境の悪化などのために減少し、周辺部の人口が増大して、人口分布がドーナツ状になる現象を「ドーナツ化現象」といいます。都心は、土地をより効率的に活用しようとしてオフィス化が進行していき、郊外は宅地化が進行していきます。都市中心部の人口が空洞であるため、リングドーナツの形にちなんで名付けられています。

インナーシティ現象

 高額所得者の都心部から郊外への人口流出が起こることによって、都市中心部の居住者層は高齢化し、購買力も低下していきます。また、住宅や施設も老朽化し、居住環境の劣悪化等の現象が、都心部の周辺に起きてきます。この現象を、インナーシティ現象といいます。

逆都市化

 その後、郊外への人口流入は続きますが、逆に、都市中心部への人口流入はなくなり、都市中心部の人口増加はみられなくなります。この現象を「逆都市化」といいます。この現象が続いた後は、都市中心部の経済活動が停滞し衰退し、人口の空洞化現象が起こります。またそれに連動して、郊外の人口も減少していきます。この現象を「逆都市化」といいます。

再都市化(ジェントリフィケーション)

 都市中心部の産業の発展が停滞し、人口が減少していく現象に対して、都市を再生し、人口を呼び戻そうとする試みを、「再都市化」あるいは「ジェントリフィケーション」といいます。再都市化のために、従来の産業ではなく時代にマッチした新しい産業の創設や、テーマを持った都市の形成、高額所得者をターゲットにした商業施設の誘致などの、都市環境の改善を行います。この結果、都市中心部が再び活性化され、人口がもう一度都市中心部に流入して、改めて都市が形成されていくことを、「再都市化」といいます。

 クラッセンは、このように、都市は順序を追って形成されていき、その後逆都市化現象が起こり、それに対して再都市化が実施されて、再び都市が形成されていくという、「都市の発展段階論(都市循環モデル論)」を提唱しました。

同心円地帯理論 バージェスが提唱。都市の成長過程は「5重の同心円の拡大過程」であるとした
社会解体論 シカゴ学派(パーク、バージェス、ワースら)が提唱。都市の急激な発展により社会解体が起こり犯罪や非行などの都市問題を生み出すとする理論
アーバニズム 大規模集団、高密度、異質性、流動的な都市の生活様式のこと。表面的・一時的な接触、絆の衰退、無関心・無干渉、孤独、合理性、世俗主義等を特徴とする
コミュニティ喪失論 シカゴ学派が提唱
コミュニティ存続論 ホワイトが提唱。都市空間の中でもコミュニティは喪失しておらず、独自のコミュニティが存続しているとする理論
コミュニティ開放論 ウェルマンが提唱。現代社会は交通・通信手段の発達により、地理的空間にとらわれないコミュニティが形成されるという理論
下位文化理論 フィッシャーが提唱。都市は多様なネットワークが形成されていき、それを基盤として多様な「下位文化」が生まれるとした
都市の発展段階論 クラッセンが提唱。都市循環モデル論ともいう。「都市形成期」「逆都市化」「再度の都市化」という過程を繰り返すとした

 いかがでしたか。「社会理論と社会システム」の受験対策は、人物や業績の単なる暗記にとどまらず、社会全般を多角的な視点でとらえて深い理解力を培うことによって、受験のための本当の底力を付けていくことになります。これからもさらに学習を重ねて、学ぶ楽しさを体験していただければと願っています。
 次回は「現代社会と福祉」を取り上げていきます。

 では、第23回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士試験 「社会理論と社会システム」

問題 16 都市化の理論に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 フィッシャー(Fischer, C.)は、都市の拡大過程に関して、それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする、同心円地帯理論を提起した。
  • 2 ワース(Wirth, L.)は、都市では人間関係の分節化と希薄化が進み、無関心などの社会心理が生み出されるとする、アーバニズム論を提起した。
  • 3 クラッセン(Klaassen, L.)は、大都市では類似した者同士が結び付き、ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする、下位文化理論を提起した。
  • 4 ウェルマン(Wellman, B.)は、大都市では、都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し、都市中心部の空洞化が生じるとする、都市の発展段階論を提起した。
  • 5 バージェス(Burgess, E.)は、都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする、コミュニティ解放論を提起した。

受験対策WEB講座の配信がスタート!

「見て覚える!精神保健福祉士国試ナビ2022」
https://chuohoki.socialcast.jp/set/219?fcid=12

※専門科目のみ