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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第6回 「精神保健福祉の理論と相談援助の展開(1)」

 皆さまこんにちは。今回は「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」を取り上げていきます。範囲が広いので今回と次回の2回に分けて進めていきます。この科目では、精神保健福祉士としての援助を具体的にどのように実践していくか、諸制度を熟知した上でケースに適用できる実践力が求められます。援助の基本理念を押さえた上で、具体的な援助技術を駆使していけるように、細部まで丁寧に学習しておきましょう。

 ではまず、前回の課題の解説をしておきましょう。

第23回 精神保健福祉士国家試験

問題21 次のうち、グリーンウッド(Greenwood,E.)が掲げたソーシャルワーク専門職の属性として、適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 個人的な責任を伴う、理論を携えた活動であること
  • 2 地域社会の承認があること
  • 3 専門職を養成するための教育システム及びその訓練課程があること
  • 4 利他的な動機があること
  • 5 構成員の大多数が加入している専門職能団体があること
正答2

解答解説

  • 1 × グリーンウッドは、ソーシャルワーク専門職の属性として、個人的な責任を伴う活動であるという定義はしていない。
  • 2 〇 グリーンウッドは、ソーシャルワーク専門職の属性として、「コミュニティの承認を得ていること」を挙げている。コミュニティの承認に関して、専門職として認められるためには、教育、経験、独占性等を明らかにする必要性があるとしている。
  • 3 × ソーシャルワーク専門職の属性として、専門職を養成するための教育システム及びその訓練課程があることを挙げているのは、フレックスナーである。フレックスナーは、「教育的手段を講じることよって伝達可能な技術があること」を挙げている。
  • 4 × ソーシャルワーク専門職の属性として、利他的な動機があることを挙げているのは、フレックスナーである。
  • 5 × ソーシャルワーク専門職の属性として、構成員の大多数が加入している専門職能団体があることを挙げているのは、フレックスナーである。フレックスナーは、ソーシャルワーク専門職の属性として、「専門職団体・組織を作っていること」を挙げている。
第21回 精神保健福祉士国家試験

問題21 精神科ソーシャルワーカーの歴史に関する次の記述のうち、正しいもの2つ選びなさい。

  • 1 1948年(昭和23年)に、精神科ソーシャルワーカーは精神衛生相談員という名称で初めて精神病院に配置された。
  • 2 1964年(昭和39年)に、保健所の精神衛生相談員を主たる構成員とする日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会が設立された。
  • 3 1987年(昭和62年)の精神衛生法改正時の附帯決議では、精神科ソーシャルワーカー等のマンパワーの充実を図ることとされた。
  • 4 1993年(平成5年)の障害者基本法では、精神科ソーシャルワーカーの具体的な業務が規定された。
  • 5 2010年(平成22年)の精神保健福祉士法の改正では、精神障害者への地域相談支援の利用に関する相談が精神保健福祉士の役割として明確に位置づけられた。
正答3、5

解答解説

  • 1 × わが国初の精神科ソーシャルワーカーの配置は、1948(昭和23)年、国立国府台病院の院長の村松常雄が医療社会事業部を設置し、「社会事業婦」を配置したことによる。これがわが国における本格的な精神科ソーシャルワーカーの導入となった。
  • 2 × 1964(昭和39)年の日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会が設立されたときの構成員の所属先は、ほとんどが「精神科病院勤務者」であった。精神科病院で働く精神科ソーシャルワーカーは、生活療法等のリハビリテーションを主に行っていた。
  • 3 〇 1987(昭和62)年には「精神衛生法」が改正され「精神保健法」が制定され、この附帯決議で精神科ソーシャルワーカー等のマンパワーの充実を図ることが明記された。1995(平成7)年には、「精神保健法」が「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改称・改正され、附帯決議に「精神科ソーシャルワーカーの国家資格制度の創設」について検討することが盛り込まれ、精神保健福祉士の国家資格化への取り組みが更に加速し、1997(平成9)年には「精神保健福祉士法」が制定・公布され、精神保健福祉士の国家資格化が実現した。
  • 4 × 精神科ソーシャルワーカーの具体的な業務が規定されたのは、1989(平成元)年の日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会(現・日本精神保健福祉士協会)が作成した「精神科ソーシャルワーカー業務指針」である。この指針は、精神障害者の社会的復権と自己決定権を重視している。
  • 5 〇 精神保健福祉士に対する社会的ニーズの多様化に対応して精神保健福祉士の業務の範囲が拡大し、2010(平成22)年の精神保健福祉士法の改正により、障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)における「地域相談支援の利用に関する相談」が、精神保健福祉士の業務として明記された。

 いかがでしたか。では今回の「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」について、近年の出題傾向を分析し受験対策のポイントを取り上げていきます。

精神保健医療福祉の歴史と動向

 この分野からは、わが国の精神保健福祉として、札幌宣言、谷中輝雄、生活モデル、地域生活支援体制の強化等が出題されています。諸外国の精神保健医療福祉としては、イタリア、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、韓国、イギリス、フランス等の主要国の精神保健医療政策の発展の経緯についての出題があります。第23回では、精神保健福祉士領域において資格化されている人材に関して出題されました。

 わが国の精神保健医療福祉関連の法制度の変遷、諸外国の精神保健医療福祉の動向、精神保健医療福祉の事項と人物等がそれぞれ、3~4年に1度の間隔で出題されていますので、そのことを踏まえて対策しておくことをおすすめします。

精神障害者に対する支援の基本的な考え方と必要な知識

 わが国における精神科ソーシャルワーカーの活動の歴史や、精神保健福祉士法として法制化された歴史的背景を、精神障害者の権利擁護と自立生活支援の観点から理解を深めておきましょう。

 精神障害者支援の理念については、ノーマライゼーション、エンパワメント、ストレングス、リカバリー、レジリエンス等を実践にいかに適用していくかを理解し、事例問題に取り組める力を養っておきましょう。

 精神障害の概念や法律上の精神障害者の定義としては、精神保健福祉法における精神障害者の定義、またその他の関連法としては、障害者雇用促進法、医療観察法、自殺対策基本法、発達障害者支援法、障害者差別解消法、障害者総合支援法などの、それぞれの法律における精神障害者への支援についても確認しておくとよいでしょう。

 精神障害者の人権と尊厳については、権利原則、インフォームドコンセント、権利擁護システムとしての精神医療審査会、成年後見制度、日常生活自立支援事業、障害者虐待防止法などに関する制度や法律も学習しておきましょう。

精神科リハビリテーションの概念と構成

 この分野は、WHOによる精神科リハビリテーションの理念と定義、精神科リハビリテーションにおける精神保健福祉士の役割などについて理解を深めておきましょう。精神科リハビリテーションにおけるチームアプローチ、地域に根差したリハビリテーション(CBR)、精神科リハビリテーションの基本原則等が出題されています。
 第23回では、アンソニーによる精神科リハビリテーションの基本原則が出題されました。今回は後ほど、精神科リハビリテーションの理念と基本原則、リハビリテーション計画について取り上げて解説していきます。

精神科リハビリテーションのプロセス

 精神科リハビリテーション計画の必要性、計画内容の要点、計画のための機能評価と資源評価、個別利用者支援における評価、プログラム評価とニーズ評価、プロセス評価の意味について学習しておきましょう。評価の方法として、代表的な評価尺度の具体的内容と使用目的も押さえておきたいものです。

 精神科リハビリテーションのアプローチの方法としては、長期在院者の地域移行、新規入院者の地域移行、地域リハビリテーションにおけるリカバリーの概念や当事者主体、ソーシャルインクルージョンの理念、ケアマネジメントやアウトリーチなどの技法、急性期や寛解期における課題と援助手法、ライフサイクルとの関係等を把握しておくとよいでしょう。

 精神疾患発病後、入院後、急性症状消退後、精神療養病床に入院中等のそれぞれの状態の患者へのリハビリテーションのアプローチの方法、疾病の時期と状態像、それに相応しいそれぞれのアプローチ方法を、適切に提供できるよう理解を深めておきましょう。

 就労移行支援事業所における職業リハビリテーションのアプローチ方法が出題されています。障害者の職業リハビリテーション機関の役割と活用の仕方等、制度系の知識も整理しておきたいものです。第23回では、精神科デイ・ケアにおけるリワークプログラムの出題がありました。

 以上、出題基準の大項目4まで解説してきました。出題基準の大項目5以降については、次回に取り上げていきたいと思います。では今回は、精神科リハビリテーションの理念と基本原則、リハビリテーション計画について解説していきます。

WHOによるリハビリテーションの定義

 最初に、「リハビリテーション」の考え方について確認しておきましょう。
 WHOは、1968年に「リハビリテーションとは、医学的、社会的、教育的、職業的手段を組み合わせ、かつ相互に調整して、訓練あるいは再訓練することによって、障害者の機能的能力を可能な最高レベルに達するようにすること」と定義しています。この定義は、リハビリテーションは分野ごとに個別に行われるものではなく、これらの4つの分野を適切に組み合わせ、総合的・包括的に提供されるべきものであることを表しています。

トータルリハビリテーション

 トータルリハビリテーションとは、医学的リハビリテーション、社会的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーションを総合的に提供するものです。医学的リハビリテーションがまず前提にあるということではなく、医学的リハビリテーションと並行しながら、社会的、教育的、職業的リハビリテーションを必要に応じて、総合的に実践していくという考え方です。

アンソニーのリハビリテーションの定義

 次に、精神科リハビリテーションの定義についてみていきましょう。
 アンソニーはリハビリテーションを「長期にわたり精神障害を抱える人が、専門家による最小限の介入で、その機能を回復するのを助け、自分の選んだ環境で落ち着き、自分の生活に満足することができるようにすることである」と定義しています。

 アンソニーは精神科リハビリテーションのあり方について、専門家とのかかわりに関して、専門家の介入は「最小限」であるべきだとしています。また、環境への適応については、どのような環境にも適応できるようにするのではなく、「自分の選んだ環境」で落ち着き、自分の生活に満足できるようにすることだとしています。

 これは、当事者主体の考え方に立つもので、障害者基本法第3条第1項第2号の「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」という理念に共通するものであるといえるでしょう。

ウィングによる精神科リハビリテーションの定義

 イギリスのウィングとモリスは、精神科リハビリテーションを「精神障害に伴う社会的原因を明らかにし、予防し、最小にすると同時に、個人が自らの才能を伸ばし、それを利用して、社会的役割の成功を通じて自信と自尊心を獲得することを助ける過程である」と定義しています。

 「個人が自らの才能を伸ばし」、「自信と自尊心を獲得する過程」とは、精神障害という疾患や障害を持っていても、自分自身の持っている力を伸ばして社会的役割を果たすことを通して、自信や自尊心を取り戻すことを重視する考え方で、その人らしい生き方の実現を目指す、リカバリーやレジリエンスの概念に通じるものです。

リカバリー

 精神科リハビリテーションにおける理念としての、リカバリーとレジリエンスについて整理しておきましょう。リカバリーとは、障害があっても、その人らしい充実した生産的な生活を送ることができるように、希望や誇りを取り戻して社会的役割を獲得すること、意味のある人生を達成すること、他者とのつながりを取得すること等の幅広い概念で、自分自身が希望する自分になるという過程を重視します。

 リカバリーの考え方は、精神障害を有する者一人ひとりが、それぞれ自分が求める生き方を主体的に追求することで、支援者には、それを支援することが求められます。治療によって症状を和らげることは必要ですが、リカバリーの目的は症状をなくすことではなく、障害者自身が夢や希望を実現することができるように、周囲が支えることを重視します。

レジリエンス

 レジリエンスとは、精神的回復力、復元力、耐久力等を意味する言葉で、ストレスや逆境に直面したとき、それに対応し、克服していく能力をいいます。さまざまな困難に陥ったときの、こころのしなやかさという意味を持っています。

 精神科リハビリテーションにおいて使用される場合は、精神疾患を受け止めた上で、さまざまなストレスを柔軟に跳ね返し、回復していく力といった意味で用いられています。レジリエンスを高めることによって、精神疾患の予防や回復に大きく役立ちます。

WHOによるリハビリテーションの定義 医学的、社会的、教育的、職業的手段を組み合わせたもの
トータルリハビリテーション 医学的、社会的、教育的、職業的リハビリテーションを必要に応じて、総合的に実践
アンソニーの定義 専門家による最小限の介入
ウィングの定義 自らの才能を伸ばし自信と自尊心を獲得する過程
リカバリー 障害があっても、その人らしい人生や希望、誇りを取り戻し、社会的役割を獲得すること
レジリエンス 精神疾患を受け止め、さまざまなストレスを柔軟に跳ね返し回復していく力

アンソニーによる精神科リハビリテーションの基本原則

 アンソニーは、精神科リハビリテーションの基本原則として、(1)精神障害を抱えた人の能力の改善、(2)当事者が必要とする生活の環境における自らの行動が改善されること、(3)多様な技術を駆使する臨機応変さ、(4)精神障害を抱えた人の職業上の予後の改善、(5)精神科リハビリテーションの構成要素として不可欠な希望、(6)熟慮した依存性は究極の自立につながる、(7)本人の参加(当事者と支援者との協働作業)、(8)当事者の技能開発と環境的支援と開発(フォーマル、インフォーマルな社会資源の開発と利用)、(9)長期の薬物療法は必要条件ではあるが十分条件とはいえないという、9つの原則を提示しています。

アンソニーのリハビリテーションの基本原則

障害者の能力の改善
当事者自らの行動の改善
多様な技術の駆使
職業上の予後の改善
構成要素として不可欠な希望
熟慮した依存性は究極の自立
当事者参加
当事者の技能開発と環境的支援開発
長期の薬物療法は必要条件ではあるが十分条件とはいえない

心理社会的リハビリテーションアプローチ

 精神科リハビリテーションのアプローチとして用いられるのは、心理社会的リハビリテーションアプローチです。心理社会的リハビリテーションアプローチとは、自分の症状を正しく理解し社会復帰を促していくアプローチです。

 精神症状の陽性症状に対しては薬物治療を行いながら、それと並行して陰性症状や認知機能障害に対しては、認知のあり方を改善させ、生活能力を回復させていき、医学的、社会的、教育的、職業的リハビリテーションを総合的に提供していくアプローチ方法です。

 アンソニーは、心理社会的リハビリテーションアプローチについて、自己実現や自己決定、教育訓練による能力の獲得、社会参加、個別的ニードとケア、就労支援、スタッフとのコラボレーション、社会環境への働きかけ、医療ケアを踏まえた生活支援という原則を提示しています。

 この心理社会的リハビリテーションアプローチから生まれたものに、職業リハビリテーションモデル、クラブハウスモデル、再発予防モデル、ケアマネジメントモデル等があります。

職業リハビリテーションモデル

 職業リハビリテーションモデルは、対象者の職業能力の評価や職業訓練により、一般就労や保護的就労、過度的雇用、援助つき雇用等、さまざまな就労形態プログラムによって実施されるモデルです。この場合、就労の可否は、精神疾患の診断や症状に焦点を当てるのではなく、本人の職業能力や、職業能力の開発・訓練を重視し、就労の可能性に焦点を当てるという考えに基づいていることが重要です。

クラブハウスモデル

 クラブハウスモデルは、1940年代に、アメリカのニューヨークで始まった精神障害者の自助活動によるモデルです。「当事者が運営に主体的に参加し、相互に支援することによって運営する」という考え方に基づいているのが特徴です。相互支援を行うことで、失った自信や能力を回復することを目標としています。

再発予防モデル

 再発予防モデルは、ストレス―脆弱性仮説に基づくモデルで、再発予防を目指して日常生活の質を改善しようとするモデルです。再発の引き金となる諸要素を分析し、ストレス管理、社会生活技能訓練、行動療法、心理教育等で、早期に対処する力を養っていきます。

ケアマネジメントモデル

 ケアマネジメントモデルは、精神障害者の地域生活を支援するモデルです。多職種によるチームが地域の精神障害者を訪問して、統合的に支援するモデルで、包括的地域生活支援プログラム(ACT)が該当します。アウトリーチ、多職種によるチーム支援を特徴とします。

心理社会的リハビリテーションアプローチ 自分の症状を正しく理解し社会復帰を促していくアプローチ。職業リハビリテーションモデル、クラブハウスモデル、再発予防モデル、ケアマネジメントモデル等がある。
職業リハビリテーションモデル 就労の可能性に焦点を当てるモデル。さまざまな就労形態プログラムで就労を支援。
クラブハウスモデル 当事者が運営に主体的に参加するモデル。
再発予防モデル ストレス管理、社会生活技能訓練、行動療法、心理教育等で早期に対処する力を養う。
ケアマネジメントモデル 多職種チームが訪問して統合的に支援するモデル。包括的地域生活支援プログラム(ACT)が該当。

リハビリテーション計画策定

 リハビリテーションを進めていくためには、リハビリテーション計画を策定することが必要です。計画の策定は、まず現状をアセスメントした上で、総合目標を設定して策定していきます。

 総合目標の設定に際して最も留意すべきことは、本人の希望や思いを優先して設定することです。リハビリテーションの実施のためには、本人の動機付けが最も大きな要因になりますので、実現性の乏しいと思われるような願望であっても、最初から否定するのではなく、希望や願望を重視した総合目標を設定することが求められます。

 この総合目標に沿って、数か月単位の短期目標、1年単位の中期目標、数年単位の長期目標を設定していきます。数か月単位の短期目標には、具体的で実現可能なものを選別して設定します。これらの目標に従って、具体的な短期計画、中期計画、長期計画を立てていきます。

 計画を実施していく段階で、さまざまな状況の変化や、本人の希望や願望の実現性の困難さに直面していった場合は、改めてアセスメントした上で、再度の計画策定を行うことになります。

計画の評価

 計画の評価には、機能評価と資源評価があります。機能評価とは、目標達成のために必要な機能を評価することです。機能評価では、日常生活技能、社会生活技能、問題解決技能、自己管理技能等を評価します。

 日常生活技能とは、生活のリズム、整容、食事管理、買い物などの基本的な生活を行うことができる技能のことです。社会生活技能とは、挨拶や身近な人との円滑な人間関係を保つことができること、コミュニケーション能力等です。問題解決技能とは、さまざまな出来事に対処できる能力のことです。自己管理技能とは、服薬管理、病状を安定させる生活を送ることなどができる能力のことです。

 機能評価で留意すべきことは、利用者のできない機能だけではなく、できる機能にも焦点を当てるという、ストレングスの視点で評価するということです。

 資源評価とは、目標達成のために必要な資源の有無を評価することです。精神障害者のリハビリテーションを実施するためには、地域の社会資源を把握しておくことが必要です。保健、医療、福祉施策のそれぞれの状況、インフォーマルな家族や友人、職場、学校等、本人を取り巻く資源を十分に評価して計画に反映させていくことが求められます。

技能開発計画

 機能評価に基づいて、技能開発計画を策定します。技能開発計画には、直接的技能教育計画と技能プログラミング計画があります。

 「直接的技能教育計画」は、新たな行動能力を習得するための体系的な教育計画で、日常生活技能、社会生活技能、問題解決技能、自己管理技能等の開発等を行う計画のことです。「技能プログラミング計画」とは、すでに習得している技能を適切に使用できるようにするための計画です。

資源開発計画

 資源評価に基づいて資源開発計画を策定します。資源開発とは資源に対する介入のことで、「資源の調整」と「資源の修正」があります。資源の調整とは、すでにある資源と当事者を結び付けることで、資源の修正とは、利用者のニーズに合うように資源提供者と交渉することです。資源開発計画には、障害の理解に向けた周囲への働き掛けも含まれます。

リハビリテーション計画策定 計画策定のためには、総合目標の設置、機能評価、資源評価が必要。
総合目標 利用者のニーズの実現を目標とする。
総合的な目標を本人の希望を優先して設定。
目標 総合目標に基づき、長期目標、中期目標、短期目標を設定。
計画の評価 評価には、機能評価と資源評価がある。
機能評価 目標達成に必要な、生活技能を評価。
資源評価 目標達成に必要な地域の資源を評価。
計画 計画には、「技能開発計画」と「資源開発計画」がある。
技能開発計画 「直接的技能教育計画」:新たな生活技能を教育する計画
「技能プログラミング計画」:すでに習得した技能を活用する計画
資源開発計画 「資源の調整」:すでにある資源と当事者を結び付けること
「資源の修正」:利用者のニーズに合うように資源提供者と交渉

いかがでしたか? 次回は、「精神保健福祉の理論と相談援助の展開(2)」を取り上げていきます。では、第23回の精神保健福祉士の試験の中から今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第23回 精神保健福祉士国家試験

問題 38 次のうち、アンソニー(Anthony,W.)らの提唱した精神科リハビリテーションの基本原則に関する記述として、適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 様々な技法を駆使するよりも、特定の技法を適用する。
  • 2 障害のレベルに応じて、本人の参加の可否を判断する。
  • 3 生活能力の向上よりも、症状の軽減を優先する。
  • 4 熟慮した上で依存を増やすことは、結果的には本人の自立につながる。
  • 5 本人の技能開発の積み重ねが、回復の十分条件となる。