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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第44回 第23回精神保健福祉士国家試験  共通科目分析

 皆さん、こんにちは。試験の結果発表が待ち遠しい日々を過ごしておられることと思います。前回の専門科目に続き、今回は共通科目の出題傾向を分析していきます。

人体の構造と機能及び疾病

 人の成長と老化、健康の概念、リハビリテーションについては、基本的な知識で対応できる内容でしたが、心臓と血管の構造と機能については、仕組みを理解するのに少々迷った方もおられるかもしれません。

 疾病の分野は、今回はがんに特化した出題でしたが、内容としては常識で解けるレベルの問題でした。高次脳機能障害は頻出なので過去問をやっていれば十分対応できたでしょう。DSM-5からの自閉症スペクトラムも、同一性への固執は代表的な症状ですので、特に問題はなかったと思われます。科目全体でみると、特に難問といえるものは見当たらず、得点しやすかったのではないでしょうか。

心理学と心理的支援

 マズローの欲求階層説、知覚の体制化、発達障害、心的外傷ストレス障害(PTSD)、認知行動療法については、基礎的な知識で対応できる内容でした。社会的関係で生じる現象としてのピグマリオン効果やハロー効果、単純接触効果、同調等も過去に出題実績のある定番問題でした。

 心理検査のWISC-IVの結果についての評価は初出問題だったので、戸惑った受験生が多かったのではないでしょうか。また、改訂長谷川式簡易知能評価スケールについても結果の評価に関して出題されているので、今後は心理検査の対象や方法だけではなく、結果の評価も視野に入れて学習しておく必要があるかもしれません。

 今回は、記憶、パーソナリティ論、学習理論、防衛機制等の出題はみられませんでしたが、全体的に難易度はそれほど高くなかったと思われます。

社会理論と社会システム

 テンニースのゲマインシャフトやライフコース、ゴッフマンの役割距離、社会的ジレンマは、出題率の高い分野でかつ基礎的な知識で解ける内容でしたので、十分対応できたことと思います。

 都市化論は、あまり聞き慣れない人物名に驚かれたのではないかと思いますが、ワースのアーバニズム論がわかれば選択できたでしょう。合計特殊出生率については、詳細を把握している受験生は少なかったと思いますので、少々難度は高かったといえるでしょう。

 逸脱理論の分野では、デュルケムとマートンのアノミー論の違いについての理解が求められる内容でした。科目全体でみると、取り組みやすい内容だったといえるでしょう。

現代社会と福祉

 社会福祉法、イギリスの社会福祉の発展の歴史の分野からの新救貧法の出題は、例年の出題傾向を踏襲したものでした。厚生労働白書、各国の社会福祉、男女共同参画に関しても、難易度はそれほど高くはありませんでした。

 近年、福祉の原理論や資源・ニーズ論に関する出題が姿を消していましたが、久しぶりに福祉政策における資源供給の分野からの出題がありました。内容も、基本的知識で解けるもので難度は低いものでした。

 近年頻出の、国連の報告書の1つである「人間開発報告書」は、詳細の内容を問う難度の高い内容でした。労働施策推進法は消去法で解ける問題でしたが、政策評価法や住宅政策に関しては困難を覚えた方が多かったのではないでしょうか。

 この科目は出題範囲が広く、現代社会が抱える多様な問題とそれらに対する施策の詳細を問う問題が多く、今回も昨年同様、大変難易度が高い科目であったといえるでしょう。

地域福祉の理論と方法

 社会福祉法における地域福祉の推進の規定、地域生活課題を抱える人々への施策としての生活困窮者自立支援法や日常生活自立支援事業、認定特定非営利活動法人、人材養成等は定番問題で、基礎的な知識で対応できる内容でした。

 地域福祉のあり方については、「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」の詳細を読んでいなくても消去法で取れる問題でした。民生委員制度は、今回は歴史的な経緯を問うもので、「全国寝たきり老人実態調査」については知らなかった人も多かったと思われ、難度の高い内容でした。

 また、社会福祉法人の「地域における公益的な取り組み」に該当するか否かについての事例問題、福祉サービスの立案・評価についても難度が高く、科目全体でみると、難度の高い科目に分類できるでしょう。

福祉行財政と福祉計画

 都道府県の役割、都道府県に設置義務がある機関、行政機関の配置義務職種、地方財政白書については、定番問題で内容も基礎的なものでした。福祉財源については、国庫負担と国庫補助金の違いを問う、少々難度の高い内容でした。

 福祉計画関係では、介護保険事業計画に特化されており、過去にも出題実績があるため、過去問を丁寧に解いていれば対応できる内容でした。「市町村地域福祉計画策定状況調査結果」については、詳細を把握していた受験生は少なかったと思われますので、非常に難度の高い問題でした。
 今回は、従来頻出の社会保障関係費関連問題がなかったこと、地方自治法の法定受託事務と自治事務関連の出題が無かったこと等が特徴としてあげられるでしょう。

社会保障

 社会保険制度については、年金保険、医療保険、労災保険、雇用保険と、例年どおりバランスよく出題されており、内容も基礎的なものでした。最近の傾向として併給調整関連の出題がみられますが、今回も労災給付と医療給付の関係、特別児童扶養手当と児童手当の併給等、給付の相互関係に関する出題がみられたのが目を惹きました。

 人口推計や人口動態統計等は少々難度が高く、困難を覚えた受験生も多かったでしょう。「厚生労働白書」に関しては、内容を見ていなかった人でも社会保障の概念がわかっていれば対応できるものでした。今回は、社会保障の歴史的発展の分野の出題が無かった点が目を惹きましたが、全体的な難易度は例年どおりといえるでしょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 法制度については、障害者総合支援法が2問、発達障害者支援法、精神保健福祉法、障害者虐待防止法がそれぞれ1問でした。それぞれ基本的な内容で、基礎的な知識で十分対応できました。

 「生活のしづらさなどに関する調査」は、詳しいデータは知らなくても就労継続支援B型事業所の利用者が多いというのは、常識レベルで解ける問題でした。また、障害者虐待の実態についても、それほど難度は高くありませんでした。

 障害者福祉制度の発展過程の精神障害者の私宅監置の廃止、退院後生活環境相談員については、精神保健福祉士の専門科目で必ず学習する内容なので問題はなかったでしょう。事例問題も解きやすい内容でしたから、全体的にこの科目は点数が伸びる可能性があると思われます。

低所得者に対する支援と生活保護制度

 生活保護法に関しては、基本原理・基本原則、不服申し立て制度、福祉事務所の組織は、定番問題で内容も基礎的なものでした。被保護者調査は、被保護実人員の細かい数値は把握していなくても消去法で解答を導き出せる内容でした。

 扶助内容と申請条件に関する事例問題も、基礎的な知識で対応できるものでした。被保護者に対する就労支援については、少々細かい内容だったので、精神保健福祉士だけの受験生には厳しかったと思われますが、社会福祉士も両方受験する受験生は、社会福祉士の専門科目の「就労支援」で学習する内容なので対応できたかと思われます。

 今回は久しぶりに生活福祉資金貸付制度の出題がありましたが、基礎的な内容だったので対応できたでしょう。科目全体でみると、それほど難問は無く、取り組みやすかったと思われます。

保健医療サービス

 医療保険制度が2問、医療法が1問、医療関連専門職種が1問、医療ソーシャルワーカーの事例問題が1問と、全体がバランスよく出題されており、これらについては基礎的な知識で対応できるものでした。

 わが国のがん対策、医師の守秘義務規定違反についての刑法上の規定、訪問看護ステーションの指定要件の3問は、難度の高い内容でした。また、事例問題の労災給付の休業特別給付金については初出問題だったため、戸惑った受験生も多かったでしょう。全体的にみて、前回に比べると難度が高かったといえるでしょう。

権利擁護と成年後見制度

 憲法の分野から1問、民法から3問、成年後見関係が3問で、今回は消費者契約関連の出題はありませんでした。憲法の分野からは、あまり出題実績のない財産権の判例に関する知識を求められる、大変難度の高い出題がありました。

 民法の分野の賃貸借契約の相続や債務保証も、難度の高い内容でした。遺言については基礎的な知識で対応できるものでしたが、短文事例の民事責任については、不法行為責任と債務不履行責任、使用者責任等、損害賠償責任についての知識を問われる難度の高い内容でした。

 成年後見制度の後見人等の機能、任意後見制度、成年後見関係事件の概況については、基礎的な知識で対応できる範囲でした。科目全体でにみると、他の科目に比べて難度が高かったといえるでしょう。

 以上、共通科目を分析してきましたが、共通科目全体をみると、科目によってばらつきがあり、一概には言えませんが全体では昨年度と同様、あるいは少々難度が上がっているという感触があります。

 2回に渡り本試験問題の分析を行ってきましたが、いかがでしたか。今回で本年度の講座は終了です。1年間、熱心にご愛読いただき、心から感謝申し上げます。精神障害者の人権を護り、課題を抱える精神障害者がいきいきと輝いて生きることができるために、熱心に勉強に取り組んでこられた皆さんと一緒に学習を進めてくることができ、心から嬉しく思っています。

 特に今年はコロナ禍のなかで、学生の皆さんは対面学習もままならないもどかしさを覚えながらの学習だったことと思います。すでに現場で活躍されている皆さんは、通常業務に加えてコロナ対策に神経をすり減らしながらの受験対策で大変だったことと思います。そのようななかでの皆さんの頑張りは、必ず報われるものと信じています。

 結果が出るまでは不安だと思いますが、今までの学習の成果が十分発揮されて合格の栄冠を勝ち取られますように、また、精神障害者の生活がより豊かなものとなるために、皆さんのお働きが進められていきますように、そしてそのことを通して皆さんの人生もさらに豊かなものとされますように、心から期待し応援しています。
 一年間ご愛読いただき、本当にありがとうございました。