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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第36回  保健医療サービス

 皆さん、こんにちは。受験会場も決まり着々と準備を進めておられることと思います。模擬試験等の結果で不安を抱えている方もいるかもしれません。これからの取り組みで十分合格を勝ち取ることができますから、焦らずに着実に学習を進めていきましょう。

 今回は「保健医療サービス」を取り上げます。この科目は、医療保険制度の概要、国民医療費の実態、診療報酬制度、医療施設の分類と機能、医療ソーシャルワーカーや医療関係専門職の役割と連携などが出題範囲になっています。今回は、診療報酬制度について取り上げていきます。では、まず前回の課題の解説をしていきましょう。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「低所得者への支援と生活保護制度」

問題68 事例を読んで、福祉事務所の生活保護現業員による保護申請時に行う説明に関する記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(70歳女性)は、年金と息子からの仕送りで一人暮らしをしていた。息子が交通事故で仕事を失い、収入がなくなって仕送りができなくなり、年金だけでは暮らせないため、生活保護を申請した。

  • 1 働くことが可能との医師の判断がある場合には、生活保護を受給できないと説明する。
  • 2 Jさんに娘がいる場合には、娘からの扶養を受けることが生活保護を受給するための要件となることを説明する。
  • 3 自宅が持ち家の場合、処分した後に生活保護を受給できると説明する。
  • 4 収入に変更があった場合は、申告する義務があることを説明する。
  • 5 保護申請は、福祉事務所指定の申請書でなければ受け付けられないことを説明する。

正答4

解答解説

  • 1 適切でない。働くことが可能という医師の診断書があっても、求職活動をしており、それでも就職できずに困窮に陥った状態にあるときは、生活保護の対象になります。Jさんは年金だけで暮らしており、年齢も70歳と、求職活動をしてもすぐには就職に結びつく可能性は低いと思われます。もし仕事に就くことができたとしても、年金収入と就労による収入の合計が最低基準に達しないときは、生活保護の受給対象になります。
  • 2 適切でない。扶養義務者がいる場合、その扶養義務者が扶養義務を履行しなければ、生活保護を受給できないわけではありません。もしJさんに娘がいても、その娘の収入が低く非課税世帯の場合等は、扶養義務の履行は求められません。
  • 3 適切でない。持ち家があっても、その持ち家を処分するよりも、そこに住むことによって有効に活用するほうが生活の維持に資する場合は、必ずしも処分という選択肢が求められるわけではありません。所有する家を処分してしまうよりもその家に住むという有効活用のほうが生活の維持に役立つと認められるような場合は、その家を処分しなくてもよいと判断される場合があります。また、持ち家がある場合は、生活福祉資金貸付制度の「要保護者世帯向け不動産担保型生活資金」を活用して、その家に住み続けながら貸付金で生活し、死亡したらその家を担保にして返済するという選択肢も考えられます。
  • 4 適切。被保護者の義務として、届け出義務があります。被保護者は、収支の状況や世帯の状況に変動があったときは、速やかに保護の実施機関に届け出なければなりません。収入として親族から仕送りがあった場合や、高校生が大学進学のための入学資金を蓄えるためのアルバイト収入等も届け出る義務があります。仕送りは収入認定となりますが、将来の目標が明確なアルバイト収入等は収入認定から除かれて貯蓄をしておくことが許されています。
  • 5 適切でない。保護の申請は、福祉事務所が指定する申請書ではなくても受け付けられます。申請を行う意思が明確になっている文面であれば、自分で作成した形式の申請書で申請することもできます。また、申請方法は書面で行いますが、口頭でも可能とされています。

 いかがでしたか。このほか、生活保護の扶助の内容や生活困窮者自立支援制度等についても学習しておきましょう。では、今回は「保健医療サービス」の医療保険制度における自己負担限度額に関して取り上げていきます。

高額療養費制度

 医療保険制度では、収入に応じて自己負担の上限額を定めている「高額療養費制度」があります。これは、医療費の家計負担が重くならないための制度で、1か月の医療費が一定額を超えた場合は、その超えた額を支給する制度です。同一の医療機関における自己負担だけではなく、複数の医療機関の自己負担額を合算できます。

自己負担上限額

 自己負担上限額は、年齢と所得に応じて決められています。70歳未満は、所得に応じて「年収1160万円以上」「年収770万円~1160万円」「年収370万円~770万円」「年収370万円未満」「住民税非課税」の5段階に設定されています。

 70歳以上は、「現役並み」が「1160万円~」「年収約770万円~約1160万円」「年収370万円~約770万円」の3段階に分かれており、「一般」は「年収156万円~370万円」「住民税非課税等」が「住民税非課税世帯」と「年金収入80万円以下の住民税非課税世帯」の2段階に分かれており、合計6段階あります。

適用除外

 高額療養費制度は、病院に支払うすべての費用を合算できるわけではありません。入院時の食費、居住費、保険外併用療養費の評価療養、選定療養、申し出療養に係る自己負担分は、高額療養費として合算できません。

保険外併用療養費

 わが国は、保険診療と保険外の診療の併用は認められていませんが、厚生労働大臣が認めた「評価療養」「選定療養」「患者申出療養」は、保険診療との併用が認められています。 これらの費用は、保険給付の対象ではなく全額自己負担になりますが、療養にかかる基礎部分は、保険外併用療養費として支給されます。

 保険外併用療養費の「評価療養」とは、高度先進医療に要する費用や、医薬品や再生医療等の製品の治験に係る診療、法律では承認されているが保険には収載前の医薬品等です。「選定療養」とは、特別な病室等のように被保険者が選定したサービスについては、全額自己負担になります。歯科治療の金や合金の使用、時間外診療、大病院の初診察、180日以上の入院、制限回数を超える医療行為等です。

 「患者申出療養」とは、未承認薬等、患者本人からの申し出により使用する治療薬などです。これは、将来的に保険適用となるためにデータ収集することも目的の一つとしています。以上の評価療養、選定療養、患者申出療養は、全額自己負担なので、高額療養費として算定することはできません。

限度額適用認定証制度

 高額療養費は、窓口で自己負担分を支払った後、医療保険者に高額療養費の申請を行って審査を受け、その後、自己負担限度額以上の支払い部分が払い戻されるという、償還払いの仕組みになっています。ただ、一度は立て替え払いをするという方法は、患者の負担が大きく、申請を行ってから支払いを受けるまでに3か月ほどかかってしまうため、「限度額適用認定証制度」ができました。

 「限度額適用認定証制度」とは、前もって自分が加入する医療保険に、限度額適用認定証の発行を申請してその交付を受け、それを病院の会計窓口に提示すると、窓口負担は自己負担限度額の上限を支払うだけでよいという制度です。償還払い制度に比べて、一時的に立て替える必要がなく、大変便利な制度であるといえます。

高額療養費制度
高額療養費制度一か月の医療費の自己負担上限額を超えた額が支給される制度
自己負担上限額70歳未満は5段階、70歳以上は6段階に収入に応じて設定
適用除外入院時の食費、居住費、保険外併用療養費の自己負担分等
限度額適用認定証制度加入医療保険者が発行する限度額適用認定証を支払い時に窓口に提示すると自己負担限度額の負担で済む制度

保険外併用療養費
基礎部分の給付評価療養、選定療養、患者申出療養の「基礎部分」を給付
評価療養高度先進医療、医薬品の治験等
選定療養特別室・紹介状の有無等
患者申出療養高度先進医療や医薬品の治験に該当しないが、患者が希望して申し出た療養

世帯合算制度

 高額療養費制度には、「世帯合算制度」と「多数回該当制度」があります。
 「世帯合算制度」とは、自分一人だけの自己負担額では高額療養費の上限に達しない場合でも、同じ月に同じ医療保険に加入している場合に、同じ世帯の他の世帯構成員の医療費の自己負担額と合算することができる制度です。

 具体的には、「同一月」の「同一保険」の、被保険者と被扶養者の支払い額を合算することができる制度です。被保険者とその被扶養者の住所が異なっていても家計を同じくし実質上の扶養関係にあれば合算できます。共働きの夫婦で異なる健康保険加入の場合は、同一住所でも合算できません。また、健康保険被保険者と後期高齢者医療制度の被保険者が同居している場合は、それぞれ加入する医療保険が異なるので、合算できません。

 月をまたいでは合算できないこと、同一世帯でも加入する医療保険が異なる場合は合算できないということに気をつけておきましょう。

合算の方法

 高額療養費の申請では、同一の医療機関の自己負担が上限額を超えない場合でも、他の医療機関の医療費や、同じ世帯の同じ公的医療保険に加入している者の医療費についても合算できます。

 70歳未満の場合は、2万1000円以上であることが必要です。70歳以上75歳未満の場合は、2万1000円以内でも、自己負担額を合算できます。また、70歳以上75歳未満の場合は、「入院」の自己負担に、世帯内の「外来」の自己負担額も合算することができます。

多数回該当

 高額療養費制度の1つである「多数回該当」とは、高額療養費の支給を「直近の12か月間」に「3回以上」受けていたら、「4回目」からは多数回該当になるという制度です。多数回該当になった場合は、自己負担限度額が引き下げられます。例として、年収が「370万円~770万円」者の場合は、多数回該当になると自己負担上限が、4万4400円になります。

高額医療・高額介護合算療養費

 医療保険だけでは、自己負担上限額に達しない場合でも、介護保険の自己負担と合算して、その「1年間の合計」が基準額を超えた場合は、その超えた額を高額医療・高額介護合算療養費として支給されます。

支給特例

 長期間に渡って治療の継続が必要な疾病で、著しく高額な医療費が必要となる場合は、自己負担限度額を、通常より引き下げる特例制度があります。対象となる特定疾病は法令で指定されており、血友病、人工腎臓を実施している慢性腎不全、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群です。自己負担限度額は月額上限1万円で、70歳未満の人工腎臓を実施している慢性腎不全の上位所得者は、2万円となっています。

世帯合算制度同一月、同一医療保険の世帯員の医療保険は合算して自己負担上限額を超えた分は高額療養費支給の対象となる
多数回該当高額療養費の支給を直近の12か月間に3回以上受けていたら、4回目からは自己負担額が低くなる
高額医療・高額介護合算療養費過去1年間の医療保険と介護保険の自己負担の合算が自己負担上限額を超えた額が支給される
支給特例 高額長期疾病(特定疾病)に係る高額療養費の支給特例
原則1か月、自己負担額上限1万円

後期高齢者医療制度

 最後に、後期高齢者医療制度について整理しておきましょう。後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者及び後期高齢者医療広域連合が認めた一定の障害状態の65歳以上75歳未満の者が対象です。ただし、被保護者はこの医療保険制度の適用から除外されていますので、気をつけておきましょう。

 後期高齢者医療制度の保険者は、都道府県単位でその都道府県内のすべての市町村が加入する「後期高齢者広域連合」です。後期高齢者医療制度は、他の医療保険制度からは独立した医療保険制度ですから、被保険者に該当する年齢になると、家族の被扶養者であるか否かにかかわらず75歳以上の者はすべて被保険者となり、保険料の支払い義務が発生します。

 後期高齢者医療制度の保険者は、都道府県単位でその都道府県内の全ての市町村が加入する「後期高齢者広域連合」です。保険者である後期高齢者広域連合は、保険料を決定し保険給付を行う実施主体です。後期高齢者医療制度の保険料は、均等割額と所得割額を合計して個人単位で算出し、保険料の徴収も個人単位で実施されます。保険料の徴収は市町村が実施します。

費用負担と財源構成

 後期高齢者医療の自己負担は原則1割で、現役並み所得者の自己負担は3割です。自己負担を除いた後期高齢者医療における費用の財源構成は、後期高齢者医療の保険料が1割、後期高齢者医療の対象外である若年者の保険料としての後期高齢者支援金が4割、公費が5割となっています。公費負担の内訳は、国4:都道府県1:市町村1の割合になっています。

後期高齢者医療制度
被保険対象者75歳以上及び65歳以上75歳未満で一定の障害の状態にある者
(被保護者を除く)
保険者後期高齢者医療広域連合
保険料個人単位で設定し徴収
自己負担割合原則1割、現役並み所得者は3割
財源構成後期高齢者の保険料:1割
後期高齢者支援金(若年者の保険料):4割
公費:5割
公費負担割合全体の5割の内訳(国4:都道府県1:市町村1)

 以上、医療保険制度の高額療養費制度を中心にみてきましたが、いかがでしたか。このほか、医療法、医療施設、医療計画、医療関連職種、医療ソーシャルワーカーの役割と業務などについても理解を深めておきましょう。
 次回は、「権利擁護と成年後見制度」を取り上げます。では、第22回の精神保健福祉士の国家試験問題から今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「保健医療サービス」

問題70 日本の医療費の自己負担限度額に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 食費居住費差額ベッド代は、高額療養費制度の支給の対象とはならない。
  • 2 医療保険加入者が70 歳未満である場合、二人以上の同一世帯で合算した年額の医療費の自己負担限度額が定められている。
  • 3 医療保険加入者が医療保険と介護保険を共に利用した場合、それらの費用を世帯で合算した月額の自己負担限度額が定められている。
  • 4 医療保険加入者が70 歳以上である場合、入院の費用に限り世帯単位での医療費の自己負担限度額が定められている。
  • 5 医療保険加入者が高額長期疾病(特定疾病)の息者である場合、医療費の自己負担を免除することが定められている。