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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第35回 「低所得者への支援と生活保護制度」

 皆さん、こんにちは。受験まで約2か月となりましたね。不安や焦りを感じている方も多いかもしれません。これからでも十分力をつけることができますので、自信をもって取り組んでいきましょう。弱点になっている科目や理解が不足している分野を把握し、不足している知識量を補い、曖昧な知識については確実な知識にしていきましょう。
 忙しい毎日のなかでの学習時間の確保は、大変だと思います。限られた時間のなかで、出題率の高い分野を確実に得点できるように効率よく学習していきましょう。

 今回は、「低所得者への支援と生活保護制度」を取り上げていきます。この科目は大きく分けて、公的扶助の歴史的発展の経緯、生活保護制度の概要、保護の実施機関と役割、生活保護の実態、生活困窮者自立支援法、求職者支援法、低所得者等への生活福祉資金貸付制度やホームレス対策、被保護者の就労支援施策等に分類されます。
 今回は、保護の実施における現場での対応について取り上げます。では、まず前回の課題の解説をしておきましょう。

問題59 「障害者総合支援法」に定められている市町村の役割などに関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 障害支援区分の認定のための調査を、指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
  • 2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため、協議会を設置する。
  • 3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。
  • 4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。
  • 5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。

正答1

解答解説

  • 1 正しい。障害支援区分認定調査については、市町村の職員が行うほか、市町村は、その業務を指定一般相談支援事業者等に委託できるとされています。認定調査を委託された指定一般相談支援事業者等は、障害者等の保健又は福祉に関する専門的知識技術を有するものとして、厚生労働省令で定める者に当該委託に係る調査を行わせることとしています。
  • 2 誤り。障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるために設置するのは、市町村審査会です。市町村審査会は、認定調査のコンピューター判定を踏まえて二次判定を行い、市町村はこの二次判定に基づいて障害支援区分認定を行います。協議会は、地方公共団体は設置することが努力義務とされている機関で、関係機関、関係団体、障害者、家族、障害者等の福祉・医療・教育・雇用関連職務従事者、関係者等により構成され、関係機関の連絡調整、情報共有、連携、体制整備の協議などを行います。
  • 3 誤り。市町村は、市町村障害福祉計画を策定することが義務づけられています。市町村障害福祉計画には、障害福祉サービス等の提供体制の確保の目標、各年度の指定障害福祉サービス等の種類ごとの必要量の見込み、地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項を盛り込まなければならないとされています。都道府県も、都道府県障害福祉計画を策定することが義務づけられています。
  • 4 誤り。指定障害福祉サービス事業者の指定を行うのは、都道府県知事です。都道府県知事は、障害福祉サービス事業者と一般相談支援事業者の指定を行います。また、障害者自立支援制度にかかわる審査請求の請求先であり、申請に対する裁決を下します。都道府県知事は、条例によって障害者介護給付費等審査会を設置することができ、審査会を設置している場合は、知事は審査請求について審議をさせることができます。都道府県知事は、障害福祉サービス情報を公表する義務があります。
  • 5 誤り。高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行うのは、都道府県です。都道府県の地域生活支援事業は、専門性の高い相談支援事業や広域的な支援事業で、発達障害者支援センター運営事業等も実施することになっています。

 いかがでしたか。「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」では、障害者福祉の発展の経緯、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの種類と対象とサービス内容、障害者基本法、障害者差別解消法、発達障害者支援法、障害者雇用促進法、障害者手帳制度等もしっかり学習しておきましょう。

 それでは、今回の「低所得者に対する支援と生活保護制度」の科目の生活保護の実施における現場での対応について取り上げていきます。

保護の補足性の原理の適用

 「保護の補足性の原理」とは、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として実施される」ことを意味しています。

資産の活用

 「その利用し得る資産の活用」としては、資産を売却するなどして生活の維持に努めること、売却できないときは、その資産を貸与して収益をあげる等の活用方法を取ることとされています。例えば、山や広大な土地等を所有していて現金収入が無い場合等は、それらを売却する、あるいは貸与する等をして、生活費に充てることが求められます。

持ち家の扱い

 所有する家がある場合等は、その家を処分して生活費に充てることが原則ですが、所有する家を処分してしまうよりも、その家に住むという有効活用のほうが生活の維持に役立つと認められるような場合は、その家を処分しなくてもよいと判断される場合があります。

 厚生労働省令では、持ち家を処分する基準として、標準3人世帯の生活扶助基準額に、住宅扶助特別基準額を加えた額の概ね10年分(約2千万円程度)をめどとして提示しており、それ以下の資産価値の場合は持ち家を処分しないでも、生活保護を受けることができるという判断基準を示しています。

 また、持ち家がある場合は、生活福祉資金貸付制度の「要保護者世帯向け不動産担保型生活資金」を活用して、その家に住み続けながら貸付金で生活し、死亡したらその家を担保にして返済するという方法もあります。

能力の活用

 「能力その他あらゆるものを活用する」とは、稼働能力のある人は、その能力を活用するということを意味します。ただ、働く意思があり、働く能力があり、就職活動も一生懸命行っていても就職できないという場合は、保護の対象になります。

公的制度の活用

 老齢年金、障害年金、遺族年金等の公的年金の受給資格がある場合等は、まずその年金を活用します。また、特別障害者手当や児童扶養手当等の様々な社会手当の受給資格がある場合等は、それらの社会手当の受給を優先します。また、生活福祉資金貸付制度等、あらゆる制度をまず活用することが求められます。

扶養義務者の扶養義務の履行

 民法に定める扶養義務者の扶養義務の履行も、保護の補足性の原理に該当し、民法に定める扶養義務者の扶養等は、生活保護に優先して行われることになっています。民法に定める扶養義務の範囲は、本人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹が該当する「絶対的扶養義務者」と3親等内親族が該当する「相対的扶養義務者」に分かれます。

 福祉事務所は、民法に定める絶対的扶養義務者に対しては、扶養義務の履行を求めることができますが、相対的扶養義務者の場合は、福祉事務所の申立により、家庭裁判所が扶養義務の履行を求める旨の審判を下したときに限って、扶養義務を負わせることができます。

 また、「絶対的扶養義務者」がいる場合がすべて自動的に生活保護を受けることができないということではありません。絶対的扶養義務者であっても、収入が低く非課税所得者に該当する等、扶養義務を履行することが困難と認められる状態の場合は、扶養義務の履行が不可能と判断され、扶養義務の履行は求められません。また、扶養義務者が被保護者との感情的な対立を理由に扶養を拒否した場合なども、必ずしも要保護者の保護受給権がなくなるわけではありません。

保護の補足性の原理その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用する
資産の活用資産の売却・貸与など。持ち家の場合は売却が基本だが、一定の要件を満たした場合は、売却しないでも保護を受けることができる
能力の活用稼働能力を有する場合は就職活動を行う。就職活動を行っても就職できない場合は生活保護の対象となる
公的制度の活用社会手当や公的な貸付制度等の活用
扶養義務の優先絶対的扶養義務者の扶養義務の履行を優先。相対的扶養義務者の扶養義務については、家裁の審判による

申請方法

 生活保護の申請は、要保護者、その扶養義務者、その他の同居の親族が行うことができます。申請方法は書面で行いますが、口頭でも可能とされています。福祉事務所指定の用紙が用意されていますが、必ずしもそれを使用しなければいけないということではありません。申請を行う意思が明確になっている文面であれば、自分で作成した形式の申請書で申請することもできます。

調査・検診命令

 申請を受けた保護の実施機関である福祉事務所は、必要であると認めるときは、要保護者の資産や収入の状況、健康状態等の事項を調査するために、申請書を受理した日から1週間以内に調査を実施します。また、必要なときは要保護者に対して指定医師又は指定歯科医師の検診を受けるよう命じることができます。

 検診命令は、稼働能力に疑いがある場合、医療扶助の決定に際して要保護者の病状を確認する必要がある場合、障害者加算の認定に必要と認められる場合、介護扶助のために医学的判断が必要な場合等が対象になります。

金融機関への照会

 保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産や収入の状況について、金融機関等に照会を行うことができます。ただ、配偶者からの暴力から逃れてきた母子家庭等の扶養義務者への照会のように適切でない場合は、扶養義務者への直接照会ではなく、関係機関や所轄する保護の実施機関に、書面で調査依頼を行う等の配慮が求められます。

扶養義務者への通知

 保護開始前に、保護の実施機関は、扶養義務者が民法の扶養義務を履行していないと認められる場合に保護の開始を決定しようとするときは、あらかじめ、その扶養義務者に対して書面で、厚生労働省令で定める事項を通知しなければならないとされています。

扶養義務者の履行違反

 扶養義務者に扶養義務履行違反があった場合、保護の費用を支弁した保護の実施機関は、実施機関が支弁した費用についての徴収権があります。生活保護法第77条には、被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができると規定されています。

 また、この場合、扶養義務者が負担すべき額について保護の実施機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立によって、家庭裁判所がこれを定めることとされています。

被保護者の届け出義務

 被保護者は、収入が変わったり、支出等の生計の状況について変動があったとき、世帯の構成に変更があったときは、速やかに保護の実施機関に届け出る義務があります。例えば、親族から仕送りがあった場合等は届け出なければなりません。親族からの仕送りは収入認定されます。

 また、高校生が大学進学のための入学資金を蓄えるためにアルバイトをしたような場合、その収入についても届け出る義務があります。ただし、このように将来の目標が明確なアルバイト収入等は収入認定から除かれ、貯蓄をしておくことが許されています。

申請者要保護者、その扶養義務者、その他の同居の親族
申請方法原則書面だが口頭でも可能。福祉事務所指定以外の書面でも可能
調査必要なときは1週間以内に調査を実施
検診命令必要なとき、検診命令を出す
金融機関への照会必要なときは要保護者・扶養義務者の資産・収入について、金融機関等に照会を行うことができる
扶養義務者への通知保護の実施機関は、扶養義務者が扶養義務を履行していない場合は保護開始前に書面で通知しなければならない
扶養義務の履行違反扶養義務履行違反があった場合は、実施機関が支弁した費用についてその費用の全部又は一部をその者から徴収することができる
被保護者の届け出義務収入・支出・世帯構成の変更等があった場合は、すみやかに保護の実施機関に届け出る義務
収入認定親族からの仕送りは収入認定の対象
一定の目的のための収入は収入認定から除かれ、貯蓄が可能

 いかがでしたか。生活保護の4原理4原則とその実際の適用、被保護者の権利と義務、生活保護の8扶助とその内容、生活困窮者自立支援制度等についても、理解を深めておきましょう。では、今回の課題を第22回精神保健福祉士の国家試験から上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「低所得者への支援と生活保護制度」

問題68 事例を読んで、福祉事務所の生活保護現業員による保護申請時に行う説明に関する記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(70歳女性)は、年金と息子からの仕送りで一人暮らしをしていた。息子が交通事故で仕事を失い、収入がなくなって仕送りができなくなり、年金だけでは暮らせないため、生活保護を申請した。

  • 1 働くことが可能との医師の判断がある場合には、生活保護を受給できないと説明する。
  • 2 Jさんに娘がいる場合には、娘からの扶養を受けることが生活保設を受給するための要件となることを説明する。
  • 3 自宅が持ち家の場合、処分した後に生活保護を受給できると説明する。
  • 4 収入に変更があった場合は、申告する義務があることを説明する。
  • 5 保護申請は、福祉事務所指定の申請書でなければ受け付けられないことを説明する。