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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第33回 「社会保障」

 皆さん、こんにちは。11月後半を迎え、受験まで約2か月余となりました。この時期は、自分の弱点や苦手な科目や分野を把握して、重点的に学習していきましょう。

 今回取り上げる「社会保障」は苦手意識を持つ受験生が多いようですが、出題分野がはっきりしている制度系の科目なので、学習すれば必ず得点に結びつきます。今から取り組めば十分得点アップが期待できますので、一緒に頑張っていきましょう。

 出題分野は、社会保障の概念や理念、社会保障の財源と費用、社会保険と公的扶助の関係、医療保険の歴史的展開、年金保険・医療保険・介護保険・労働者災害補償保険・雇用保険のそれぞれの保険者・被保険・保険料・保険給付の内容、諸外国における社会保障制度の概要等になっています。

 公的保険制度については、近年、個別の社会保険制度だけではなく、社会保険制度を横断的な視点でとらえた問題が出題される傾向がみられますので、社会保険全体の枠組みについて整理しておきましょう。今回は、年金保険制度について取り上げていきます。はじめに前回の課題を解説しておきましょう。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「福祉行財政と福祉計画」

問題42 地方公共団体に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 特別区を設置できるのは、都に限定されている。
  • 2 都道府県が処理する社会福祉に関する事務は、機関委任事務である。
  • 3 中核市の指定要件として、人口数は50 万以上と定められている。
  • 4 広域連合は、介護保険事業に関する事務を処理できないとされている。
  • 5 政令指定都市は、婦人相談所を設置することができる。

正答5

解答解説

  • 1 誤り。特別区は東京都だけが設置できるのではありません。都以外の道府県も、一定の人口を擁している場合は設置することができます。人口200万人以上の指定都市等が市議会の議決、管轄都道府県議会の議決を経て特別区設置協議会を設置して協議し、一定の手続きによって特別区設置協定書を作成して総務大臣の決定を受けて設置します。
  • 2 誤り。1999(平成11)年に「地方分権一括法」が制定され、従来の機関委任事務と団体事務が廃止され、法定受託事務と自治事務に改正され、2000(平成12)年に施行されました。そのため、現在は機関委任事務はありません。都道府県が処理する社会福祉に関する事務は、第1号法定受託事務として位置づけられています。福祉の分野の第1号法定受託事務としてはこのほか、生活保護の決定と実施事務、低所得者対策としての児童扶養手当・特別児童扶養手当の支給事務や、社会福祉事業を実施するために設立される社会福祉法人設立の認可事務等があります。
  • 3 誤り。中核市の指定要件として、人口数は20万以上と定められています。人口50万以上と定められているのは、政令指定都市です。
  • 4 誤り。介護保険法では介護保険の保険者として、市町村、特別区、広域連合を規定していますので、広域連合は介護保険事業に関する事務を処理できます。広域連合とは、地方自治法における特別地方公共団体の組合のなかの1つの形態で、複数の普通地方公共団体や特別区が、広域的なニーズに柔軟に対応できるように、行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する組織です。
  • 5 正しい。婦人相談所は、売春防止法に基づく機関で、都道府県には設置義務があり、指定都市は任意設置とされています。指定都市に任意設置とされている機関としては、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所があります。都道府県と指定都市の両者に義務設置とされている機関は、児童相談所と精神保健福祉センターです。

 いかがでしたか。「福祉行財政と福祉計画」で、福祉行政組織や機関の役割とともに、国及び地方公共団体における福祉財政や、各分野の福祉計画についてもよく学習しておきましょう。では、今回の「社会保障」に入っていきたいと思います。今回は、年金保険制度について取り上げていきます。

年金保険制度

 わが国の社会保険制度は、年金保険、医療保険、労働保険、介護保険のすべてが強制加入制度によって実施されています。年金保険制度も20歳以上60歳未満は、強制加入になっています。日本国内に居住していることが年金保険に加入するための要件とされていますが、日本国籍でなければならないという国籍要件はありません。これはわが国が国連の難民条約を批准しているからで、難民条約では社会保障に関して国籍によって差別をしてはならないと規定しています。

被保険者の種類

 強制加入の国民年金制度は、国民年金被保険者を、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分類しています。第1号被保険者は、20歳以上60歳未満で2号被保険者・3号被保険者以外の者です。20歳以上なら、学生も強制加入となっています。
第2号被保険者は、被用者つまりサラリーマンで厚生年金保険に加入している者です。第3号被保険者は、第2号被保険者の被扶養配偶者です。

強制加入被保険者要件
加入要件国籍要件はない
第1号被保険者20歳以上60歳未満で、第2号被保険者・第3号被保険者以外の者
第2号被保険者厚生年金被保険者
第3号被保険者20歳以上60歳未満で、第2号被保険者の被扶養配偶者

保険料免除制度

 第1号被保険者には、保険料の「免除制度」と「学生納付特例制度」及び「納付猶予制度」があります。免除制度には、「法定免除」と「申請免除」があり、法定免除対象者は生活保護の生活扶助受給者と障害基礎年金受給権者です。申請免除は、低所得者で保険料支払いが困難な者が対象で、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。

 法定免除の期間は、年金の受給資格期間の算定対象になり、65歳になったら老齢基礎年金は2分の1を受給することができます。申請免除の期間も年金の受給資格期間に算定され、年金額は、全額免除期間分は8分の4、4分の3免除期間分は8分の5、半額免除期間分は8分の6、4分の1免除期間分は8分の7が支給されます。保険料納付免除期間の保険料は、過去10年に遡って追納でき、追納した期間は年金額に反映されます。

特例制度と猶予制度

 上記の免除制度とは別に、「学生納付特例制度」と「納付猶予制度」があります。
 「学生納付特例制度」は、本人の所得が一定額以下のときに、申請により特例の対象になります。家族の収入額は関係ありません。「納付猶予制度」は、20歳以上50歳未満の国民年金第1号被保険者で、本人、あるいは本人と配偶者の所得が一定額以下の場合、申請すれば保険料納付が猶予される制度です。

 学生納付特例制度と納付猶予を受けた期間は年金額には反映されませんが、老齢年金の受給資格期間の算定対象になります。10年に遡って追納することができ、追納した期間は年金額に反映されます。また、特例期間中あるいは猶予期間中に障害を負った場合でも、障害基礎年金は全額支給されます。

第2号・第3号被保険者の国民年金部分の保険料

 厚生年金保険に加入している第2号被保険者の国民年金部分の保険料は、厚生年金の保険料の中から支払われます。
 20歳以上60歳未満で第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者の保険料は、第3号被保険者本人には支払い義務はありません。第3号被保険者の保険料は、配偶者である第2号被保険者が加入している年金保険者が、「基礎年金拠出金」として拠出することになっています。

保険料免除制度等
法定免除生活扶助受給者、障害基礎年金受給権者が対象。受給資格期間の算定対象。老齢基礎年金は2分の1を受給できる
申請免除低所得者対象。4段階の免除があり、段階に応じて一部支給がされる
学生納付特例本人の所得が一定以下の場合に対象。受給資格期間の算定対象になるが年金額には反映されない
納付猶予制度本人あるいは本人と配偶者の所得が一定以下の場合に対象。受給資格期間の算定対象になるが、年金額には反映されない

基礎年金部分と厚生年金部分の給付

 国民年金の基礎部分である基礎年金の給付には、「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」の3種類があります。厚生年金部分の給付には、「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」があります。

老齢基礎年金

 基礎年金部分の給付である老齢基礎年金を受け取るためには、年金を受給する資格として、10年の受給資格期間を満たす必要があります。年金額は、保険料納付額と月数に算定率を乗じて算定されます。保険料免除期間も免除額に応じて一部が月数に応じて支給額に反映されます。保険料を40年払い続ければ、満額支給になります。

マクロ経済スライド方式

 老齢基礎年金の年金額は、マクロ経済スライド方式が採用されています。マクロ経済スライド方式とは、年金の被保険者(加入者)の減少、平均寿命の延び、社会の経済状況を考慮して年金の給付金額を変動させる制度です。少子化により、稼働能力者が減少傾向にあるなかで、高齢化による年金受給者の増加に対して、全体の収支のバランスをとっていこうという考え方に基づいた計算方式です。

支給開始年齢

 老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳ですが、本人の希望により、60歳からの「繰り上げ支給」、70歳までの「繰下げ支給」という制度があります。繰り上げ支給のときは減額になり、繰り下げ支給のときは増額になります。

老齢基礎年金
受給資格期間10年
年金額の算定保険料納付額と月数に算定率を乗じて算定
保険料免除期間の月数も反映される
マクロ経済スライド方式を採用
満額支給40年間納付の場合は満額支給
支給開始年齢65歳(減額繰り上げ支給、増額繰り下げ支給制度あり)

障害基礎年金

 障害基礎年金の受給要件は、国民年金法施行令の障害等級の1級と2級に該当する者で、被保険者期間のうち3分の2以上の期間の保険料が納付あるいは免除されている者、または、65歳未満で初診日のある月の前前月までの1年間に保険料未納期間が無い者です。

 学生納付特例適用期間、納付猶予適用期間は納付済み期間と同様に扱われ、この期間に障害を負った場合、障害基礎年金は全額支給されます。障害認定日以降の障害である「事後重症」にも適用されます。20歳未満に障害を負った場合は、被保険者期間がなくても1級あるいは2級に該当すれば、所得制限を条件に支給対象になります。

 障害基礎年金の支給額は、2級が老齢基礎年金満額相当額と同額で、1級はその1.25倍になります。支給対象者が生計を維持する者で子どもがいる場合は、子の加算がつきます。また、受給権発生後に子どもが生まれた場合でも加算の対象になります。

障害基礎年金
対象障害等級1・2級
支給要件原則保険料納付済み機関が被保険者期間のうち3分の2以上あること
20歳未満障害も所得制限を条件に対象となる
事後重症にも支給される
学生納付特例適用期間、納付猶予適用期間の障害も対象
支給額1級(2級の1.25倍)
2級(老齢基礎年金満額と同額)
子の加算子がある場合は子の加算がつく

遺族基礎年金

 遺族基礎年金の受給対象は、「子」と「子のある配偶者」です。「子」は18歳未満であること、障害児の場合は20歳未満であることが条件で、婚姻した子は対象外です。「子のある配偶者」に支給される場合は、その子に対しては「子の加算」がつくので、「子」に対する個別の支給はありません。第1子と第2子の加算額は、それぞれ22万4,500円で、第3子以降はそれぞれ7万4,800円になっています。

 支給要件は、25年以上の受給資格期間がある者が死亡した場合で、被保険者期間の3分の2以上は保険料を納付していることが条件です。遺族基礎年金の年金額は、老齢基礎年金の満額と同額で、それに上記の「子の加算」がつきます。

遺族基礎年金
対象子と子のある配偶者
子(18歳未満・障害児は20歳未満、婚姻した子は対象外)
支給要件25年以上の受給資格期間がある者が死亡した場合に支給
年金額老齢基礎年金と同額+子の加算

厚生年金制度

 次に、被用者保険である厚生年金制度について確認しておきましょう。厚生年金制度の被保険者の対象年齢は、70歳未満になっています。5人以上従業員を使用する事業所は、強制適用事業所として厚生年金に必ず加入しなければなりません。従業員が5人未満の事業所の場合は、従業員の2分の1以上の同意によって社会保険庁長官の認可を受ければ厚生年金の適用事業所になることができます。

被保険者要件

 厚生年金に加入し被保険者になるための被保険者要件として、正規職員であること、あるいは、正規職員の勤務時間のおおむね4分の3以上の勤務時間がある者であることが求められています。ただし、501人以上が企業に勤務する場合は、週20時間以上、月額賃金8万8千円以上、雇用見込み期間1年以上である者は、被保険者になることができます。 また、労使合意がなされた場合は、500人以下の企業で働く労働者の場合も、上記の条件を満たしている者は、被保険者になることができます。

厚生年金保険料

 厚生年金の保険料は、31等級の標準報酬制になっています。保険料負担は労使折半で、事業主は、事業主負担分と被保険者から徴収した保険料を税務署に納付する義務があります。被保険者の育児休業期間と産前産後休業期間中の保険料は、本人負担と事業主負担とも全額免除になっています。

厚生年金制度
対象年齢70歳未満
加入要件正規職員、正規職員の勤務時間のおおむね4分の3以上ある者
501人以上の企業で一定の条件を満たした者及び500人以下の企業で労使合意のもと一定の条件を満たした者
保険料31等級の標準報酬制
保険料負担労使折半
保険料免除育児休業期間、産前産後休業期間の保険料は、本人分・事業主分とも全額免除される。

老齢厚生年金

 老齢厚生年金の保険給付対象要件は、老齢基礎年金受給権者で被保険者期間1か月以上の者です。支給開始年齢は65歳で、65歳から70歳までの繰り下げ支給制度があります。繰り下げ支給の場合は年金額が増額になります。外国人で6か月以上加入期間のある者は、帰国後2年以内に脱退一時金の請求が可能です。

給付要件と給付額

 老齢厚生年金の給付要件は、老齢基礎年金の受給権者であること、すなわち10年間の受給資格期間を満たしていることと、老齢厚生年金の被保険者期間が1か月以上あることです。老齢厚生年金の給付額は、標準報酬月額と被保険者期間に基づいて算出され、老齢基礎年金に上乗せする形で支給されます。

在職老齢年金制度

 65歳以上の在職者で年金と給与が一定額以上の場合には、年金の一部停止あるいは全額停止が行われます。これを在職老齢年金制度といいます。ただし、個人事業主の場合は、事業収入は給与ではないため、在職老齢年金制度の対象にはなりません。なお、在職老齢年金制度は老齢厚生年金だけを対象としており、老齢基礎年金は対象としていませんので、老齢基礎年金部分は全額支給となります。

老齢厚生年金
給付要件老齢基礎年金受給権者で被保険者期間1か月以上の者
支給開始年齢65歳。65歳から70歳までの繰り下げ支給制度(増額)あり
支給形態老齢基礎年金に上乗せ支給
在職老齢年金制度年金と給与が一定額以上の場合、年金一部停止・全額停止

障害厚生年金

 障害厚生年金は、被保険者期間中に初診日がある傷病による障害で1級、2級及び3級に該当する者と、それ以外の軽度の障害が対象です。1級と2級対象者は、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級と軽度の場合の一時金としての障害手当金は、障害厚生年金だけの独自給付です。

 20歳前に障害を負った場合は、初診日が厚生年金の被保険者期間中ではないので、障害厚生年金の給付対象にはなりません。業務災害で障害を負った場合は、障害厚生年金は全額給付され、労働者災害補償保険の障害補償年金は減額して給付されます。

障害厚生年金
支給対象1.2級は上乗せ、3級、障害手当金は独自給付
20歳前障害支給対象外
併給調整障害厚生年金は全額支給、障害補償年金は減額支給

遺族厚生年金

 遺族厚生年金の遺族の範囲は、妻、子、夫、父母、祖父母、孫です。受給権者の順位は、①子のある配偶者(夫は55歳以上)又は子、②子の内妻または55歳以上の夫、③55歳以上の父母、④孫、⑤55歳以上の祖父母です。30歳未満で子のない配偶者の受給期間は、受給開始から5年間に限定されています。遺族厚生年金の受給額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

遺族厚生年金
遺族の範囲妻、子、夫、父母、祖父母、孫
有期年金制度30歳未満の子のない妻は5年間に
年金額老齢厚生年金額の4分の3

 以上、年金保険制度についてみてきましたが、いかがでしたか。社会保障は範囲が広く大変ですが、社会保険を中心によく学習しておきましょう。次回は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。

 では、第22回精神保健福祉士国家試験問題から2問、今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「社会保障」

問題52 遺族年金に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。
  • 2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は、その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。
  • 3 遺族基礎年金は、死亡した被保険者の孫にも支給される。
  • 4 受給権を取得した時に、30 歳未満で子のいない妻には当該遣族厚生年金が10年間支給される。
  • 5 遺族厚生年金の額は、死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。

問題55 事例を読んで、適切なものを2つ選びなさい。

〔事例〕
F さん(65 歳女性)は、22 歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き、厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し、35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き、現在ではかなりの事業収入を得ている。
  • 1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には、給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。
  • 2 Fさんは通算して10 年以上年金制度に加入しているので、老齢基礎年金を受給できる。
  • 3 Fさんが専業主婦であった期間は、F さん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。
  • 4 Fさんは、事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。
  • 5 Fさんは65 歳なので老齢厚生年金を受給できるが、事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。