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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第32回  「福祉行財政と福祉計画」

 皆さん、こんにちは。今回は福祉行財政と福祉計画」を取り上げます。この科目は大きく分けて、地方自治法における行政組織の規定、社会福祉にかかわる法定機関、行政における専門職、国と地方の福祉財政の実態、各法律を根拠とした福祉計画という分野に分類されます。今回は、地方公共団体の種類と福祉行政における役割、福祉関係機関について取り上げていきます。はじめに、前回の「地域福祉の理論と方法」の課題の解説をしておきましょう。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「地域福祉の理論と方法」

問題36 社会福祉法に規定されている地域福祉に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 地域住民等は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。
  • 2 市町村は、市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。
  • 3 都道府県は、福祉サ ービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し、支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。
  • 4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は、地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。
  • 5 国及び地方公共団体は、地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。

正答5

解答解説

  • 1 誤り。地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならないのは、市町村です。地域住民等が、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える課題を把握し、支援関係機関と連携して包括的に支援することができるように、市町村に、地域福祉活動参加促進のための環境整備、総合相談・連絡調整体制の整備、関係機関の連携体制の整備を努力義務として規定しています。
  • 2 誤り。市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならないという規定はありません。市町村地域福祉計画は行政計画であり、市町村地域福祉活動計画は社会福祉協議会が策定する民間計画で、相互に連携・協働して策定することが求められています。
  • 3 誤り。福祉サ ービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し、支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならないとされているのは、地域住民等です。「地域住民等は、地域福祉の推進に当たって、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立等の福祉サービスを必要とする地域住民が抱える「地域生活課題」を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う支援関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする」と規定されています。
  • 4 誤り。社会福祉を目的とする事業を経営する者に求められているのは、地域住民や関連サービスとの連携です。社会福祉を目的とする事業を経営する者は、利用者の意向を十分に尊重し、地域住民等との連携を図り、保健医療サービス等の関連サービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行い総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならないとされています。
  • 5 正しい。「福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務」として第6条第2項に、「国及び地方公共団体は、地域住民等が地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等によりその解決を図ることを促進する施策その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。」と規定されています。

 いかがでしたか。「地域福祉の理論と方法」では、社会福祉協議会やコミュニティ論、特定非営利活動法人、民生委員、共同募金、地域における住民参加、住民主体の実際、地域福祉における専門職等についてもよく学習しておきましょう。
 では、今回の「福祉行財政と福祉計画」に入っていきましょう。今回は、地方公共団体の種類と福祉行政における役割、福祉関係機関について取り上げていきます。

地方自治体の仕組み

 地方公共団体は、普通地方公共団体と特別地方公共団体に分類されています。普通地方公共団体とは、「都道府県と市町村」のことで、特別地方公共団体とは、「特別区、地方公共団体の組合、財産区」のことです。

政令指定都市・中核市

 普通地方公共団体である市町村の中で、人口規模の大きい都市について、人口50万人以上の市は「政令指定都市」と位置づけられており、政令指定都市は「区」を設置することができるとされています。人口20万人以上の市は、「中核市」と位置づけられています。

基礎的地方公共団体と広域的地方公共団体

 普通地方公共団体のうち、市町村は、「基礎的地方公共団体」として位置づけられており、都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に地域における事務及びその他の事務で法律又は政令により処理することとされるものを処理するという役割があります。

 普通地方公共団体のうち、都道府県は、「市町村を包括する広域の地方公共団体」として位置づけられており、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの、及びその規模又は性質において、一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するという役割があります。

特別区

 特別地方公共団体の1つである「特別区」とは、東京都が設置している「東京都23区」が代表的なものです。ただ「都」以外の広域地方公共団体である「道府県」も、一定以上の人口を擁している場合は、特別区を設置することができることになっています。「特別区」は、「特別地方公共団体」に位置づけられていますが、役割としては、「基礎的地方公共団体の役割」が求められているということに気をつけておきましょう。

広域連合

 特別地方公共団体の一つである「広域連合」は、「地方公共団体の組合」の中の1つの形態です。複数の普通地方公共団体や特別区が、広域的なニーズに柔軟に対応できるように、行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する組織です。

 福祉の分野では、介護保険の保険者の一つとしての広域連合があります。また、医療の分野では、後期高齢者医療広域連合をあげることができます。後期高齢者広域連合は、都道府県を単位として都道府県内の全市町村が加入するものとして設置されています。

大都市特例

 指定都市、中核市は、大都市行政の円滑化等の観点から、一般の市と事務配分を異にすると位置づけられています。個別法に、「この事務は大都市特例による」と規定されると、本来都道府県が行うべき事務を指定都市や中核市が行うことになります。

普通地方公共団体都道府県:広域的地方公共団体
市町村:基礎的地方公共団体
特別地方公共団体特別区(東京都23区、道府県が設置する区)
地方公共団体の組合、財産区
政令指定都市人口50万人以上
中核市人口20万人以上
広域連合特別地方公共団体の組合の一形態(後期高齢者医療広域連合等)
大都市特例指定都市、中核市は、大都市行政の円滑化等の観点から、一般の市と事務配分を異にすると位置づけられている

地方分権一括法

 地方公共団体の事務には、「法定受託事務」と「自治事務」があります。1999(平成11)年に「地方分権一括法」が制定され、従来の機関委任事務と団体事務が廃止され、法定受託事務と自治事務に改正され、2000(平成12)年に施行されました。

法定受託事務

 

法定受託事務とは、地方自治法に定められている、地方自治体が受託する事務という意味で、第1号法定受託事務と第2号法定受託事務があります。第1号法定受託事務とは、国が本来果たすべき役割にかかわる事務を、国が都道府県と市町村、特別区に委託する事務のことで、第2号法定受託事務とは、都道府県が本来果たすべき役割にかかわる事務を、都道府県が市町村、特別区に委託する事務です。

 第1号法定受託事務には、パスポートの発券等のように、国としての統一性を保つ必要があるものや、国道の管理等のように、本来国が行うべき事務を地方自治体に委託する事務があります。福祉の分野では、最低限度の生活のための生活保護の決定と実施、低所得者対策としての児童扶養手当・特別児童扶養手当の支給事務や、社会福祉事業を実施するために設立される社会福祉法人設立の認可事務等があります。
 いずれも、深く人権にかかわる事務であるということを理解しておくとよいでしょう。

自治事務

 自治事務は、法定受託事務以外のもので、本来地方自治体が行うべき事務とされている事務です。具体的には、社会福祉関係法による措置事務、福祉サービス利用者からの費用徴収事務、地方公共団体としての単独事業等があります。  また、市町村が実施主体である介護保険事務、都道府県と市町村が実施主体である国民健康保険事務、都道府県知事が交付する障害者手帳交付事務、児童福祉、老人福祉、障害者福祉サービスの利用事務、養護老人ホーム入所措置事務等があります。

地方分権一括法1999(平成11)年制定。機関委任事務と団体事務が廃止。法定受託事務と自治事務になった
法定受託事務人権にかかわる事務(生活保護の決定・実施、社会手当関係事務等)
自治事務本来の自治体の事務(介護保険事務、国民健康保険事務、福祉サービス利用事務、福祉サービス措置事務等)

福祉関係機関の設置

 都道府県や政令指定都市、中核市、市町村における福祉関係機関の設置については、個別法にそれぞれ規定があります。

福祉事務所

 福祉事務所は社会福祉法に規定されており、都道府県と市、特別区に設置する義務があり、町村は任意設置となっています。都道府県設置の福祉事務所は、三法事務所と呼ばれており、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法を掌ります。市が設置する福祉事務所は、この三法に老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法を加えた六法を掌ります。

 福祉事務所には、所長、指導監督を行う所員としての査察指導員、現業を行う所員としての現業員、事務を行う職員を配置します。指導監督を行う所員と現業を行う所員は社会福祉主事でなければなりません。

 福祉事務所を設置する町村は、市設置の福祉事務所と同じく、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法の六法を掌ります。福祉事務所を設置しない町村は、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法を掌ります。

都道府県・市
福祉事務所
義務設置 その区域を所管区域とする
社会福祉主事 配置義務
指導監督を行う所員、現業を行う所員は、社会福祉主事でなければならない(所長、事務員は除く)
保健医療事務と兼務可能
都道府県所轄事務 生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法
市所轄事務 上記に加え、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法
町村
福祉事務所
社会福祉主事 配置義務
町村所轄事務 市所轄事務に同じ
福祉事務所を設置しない町村 社会福祉主事 任意設置(置くことができる)
所轄事務 老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に関する事務

社会福祉の実施機関

 社会福祉の実施機関については、設置義務と任意設置を覚えられないという方が多いので、表にまとめておきました。

社会福祉の実施機関
児童相談所児童福祉法:(都道府県・政令指定都市に設置義務)
中核市・特別区は任意設置
精神保健福祉センター 都道府県、指定都市に設置義務
精神保健福祉相談員任意配置(精神保健福祉士等)
身体障害者更生相談所身体障害者福祉法(都道府県に設置義務・指定都市任意)
身体障害者福祉司
知的障害者更生相談所知的障害者福祉法(都道府県に設置義務・指定都市任意)
知的障害者福祉司
婦人相談所売春防止法(都道府県に設置義務、指定都市任意)
婦人相談員(知事又は市長が委嘱)
配偶者暴力相談支援センター機能を持つ
発達障害者支援センター発達障害者支援法(都道府県に任意設置)
地域包括支援センター 介護保険法(市町村に任意設置)
保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員

 設置義務については、次のとおりになっています。

行政機関設置義務等(義務設置:◎、任意設置○)
  都道府県 指定都市 中核市 特別区 町村
福祉事務所  
児童相談所    
精神保健福祉センター        
身体障害者更生相談所        
知的障害者更生相談所        
婦人相談所        
発達障害者支援センター          
地域包括支援センター        

 いかがでしたか。「福祉行財政と福祉計画」の科目では、福祉に関する財政や税制、福祉計画などもバランスよく学習しておきましょう。次回は「社会保障」を取り上げます。では、第22回の精神保健福祉士国家試験の問題から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「福祉行財政と福祉計画」

問題42 地方公共団体に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 特別区を設置できるのは、都に限定されている。
  • 2 都道府県が処理する社会福祉に関する事務は、機関委任事務である。
  • 3 中核市の指定要件として、人口数は50 万以上と定められている。
  • 4 広域連合は、介護保険事業に関する事務を処理できないとされている。
  • 5 政令指定都市は、婦人相談所を設置することができる。