メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第31回  「地域福祉の理論と方法」

 皆さん、こんにちは。試験まであと約3か月になりました。模擬試験等の結果が出てくる頃でしょうか。あまり得点が伸びなかった科目や予想外に難しかった問題等に落ち込んでしまうかもしれませんが、模擬試験は自分の実力を知るのと同時に、自分の弱点を把握してそれを克服するのが目的です。

 できなかった問題はなぜ解けなかったのか、理解が浅かったのか、知識量が少なかったのか、知識の確実性に欠けていたのか等、今からでも十分間に合いますからよく分析して対策を立てていきましょう。

 この科目は、社会福祉法に規定されている地域福祉計画、社会福祉協議会、共同募金や民生委員法による民生委員などをはじめ、地域福祉のニーズ把握と資源調整、地域福祉人材などについて学習しておきましょう。今回は、社会福祉法に規定されている地域福祉について取り上げていきます。では、最初に前回の課題の解説をしておきましょう。

第22回 精神保健福祉士国家試験「現代社会と福祉」

問題26 1973年(昭和48年)の「福祉元年」に実施した福祉政策に関する次の記述のうち、 正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。
  • 2 標準報酬の再評価を行い、厚生年金では「9万円年金」を実現した。
  • 3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。
  • 4 老人医療費支給制度を実施して、60 歳以上の医療費を無料にした。
  • 5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。

正答1

解答解説

  • 1 正しい。我が国は高度経済成長により国の財政が豊かになりましたが、急激なインフレにより物価高騰を招き、給与所得者の所得は上昇しました。しかし、年金受給者の年金額では物価の高騰についていくことができず、高齢者の生活が困窮しました。そのため、1973(昭和48)年には、年金額を物価の上昇に連動させる「物価スライド制」が導入されました。
  • 2 誤り。経済成長に伴い給与所得が上昇している実態を踏まえて、年金額の算定基準となる過去の賃金の標準報酬を、経済成長にあわせて現在の価格に再評価する「賃金スライド」を行うことにより、月額5万円年金を実現しました。
  • 3 誤り。1973(昭和48)年の「福祉元年」に実施したのは、高額療養費制度です。高度先進医療が進み医療費の自己負担が重くなるために治療をあきらめざるを得ないという現状に対して、健康保険法が改正されて高額療費制度が創設されました。2年後の1975(昭和50)年には、この制度が国民健康保険にも適用されるようになりました。
  • 4 誤り。高齢化に伴い、合併症の多い高齢者の医療費の自己負担が増えている実態に対して、この年、老人福祉法が改正されて70歳以上の高齢者等の老人医療費の無料化制度が導入されました。
  • 5 誤り。老人家庭奉仕員派遣事業が法制化されたのは、1963(昭和38)年の老人福祉法の制定によります。この事業は、最初は長野県上田市で始められたもので、その後各地方自治体で全国的に展開されていき、老人福祉法上に位置づけられたものです。当初は低所得者だけが対象でしたが、その後、所得要件を撤廃し応能負担となっていきます。これは現在のホームヘルプ事業の前身です。

 いかがでしたか。「現代社会と福祉」では、福祉の原理論、福祉の歴史的発展の経緯、福祉政策、福祉国家論等についても理解を深めておきましょう。では、地域福祉論に入っていきましょう。今回は、現在取り組まれている地域福祉政策の背景と2018(平成30)年に施行された社会福祉法改正について取り上げていきます。

新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン

 2015年(平成27年)厚生労働省に設置された「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム」から、「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」が取りまとめられました。

 このビジョンでは、多機関の協働による「包括的支援体制構築事業」として、複合的な課題を抱える者等に対して、包括的な支援システムを構築し、高齢者などのボランティア等を活用し、地域に必要とされる社会資源を創出する取り組みをモデル的に実施すること、地域の実情に合った総合的な福祉サービスを提供するため、地域で誰もが支え合う共生型社会を実現し、人口減少下における効率的で柔軟な事業運営を確保するため、まちづくりの一つのかたちとして、高齢、障害、児童等の福祉サービスを総合的に提供できる仕組みを推進することが掲げられています

事業内容

 事業は具体的に、市区町村が実施主体となって、地域の中核となる相談機関を中心に、相談者が複数の相談機関に行かなくても複合的な悩みを総合的、円滑に相談できる体制の整備を目的としています。相談者本人が抱える課題だけではなく、世帯全体が抱える課題を把握し、多機関・多分野の関係者が話し合う会議を開催するなど、その抱える課題に応じた支援が包括的に提供されるよう必要な調整を行う、また、地域に不足する社会資源の創出を図る等の内容となっています。

相談支援包括化推進員

 この事業には、キーパーソンとして「相談支援包括化推進員を配置」することになっています。事業の実施主体は、自立相談支援機関(生活困窮者自立支援法に基づく)や地域包括支援センター(介護保険法に基づく)、相談支援事業所(障害者総合支援法に基づく)など、地域における相談支援機関のなかから、関係機関を円滑にコーディネートすることが可能な機関を選定し、その機関に「相談支援包括化推進員」を適当数配置します。

 「相談支援包括化推進員」は、相談者等が抱える課題の把握、プランの作成、相談支援機関等との連絡調整、相談支援機関等による支援内容等に関する指導・助言等の業務を実施します。この「相談支援包括化推進員」として、社会福祉士のあり方を検討するとされています。

相談支援包括化ネットワークの構築

 実施主体と相談支援包括化推進員は、地域において相談支援機関等がそれぞれの役割を果たしつつ、チームアプローチによる支援が行われるよう、地域の相談支援機関等のネットワークを構築します。

 実施主体と相談支援包括化推進員は、定期的に「相談支援包括化推進会議」を開催し、各相談支援機関の業務内容の理解と連携方法、地域住民の福祉ニーズの把握方法、地域に不足する社会資源創出の手法、この事業による支援実績の検証等について、各相談支援機関等の関係者間で意見交換を実施します。

新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン2015年(平成27年)厚生労働省のプロジェクトチームがとりまとめ
包括的支援体制構築事業多機関の協働によって複合的な課題を抱える者等に包括的な支援システムを構築
相談支援包括化推進員課題把握、プラン作成、相談支援機関等との連絡調整、指導・助言、相談支援包括化ネットワークの構築などを実施

『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)

 厚生労働省の「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部は、「『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)」を2017年(平成29年)に決定しました。

地域課題の解決力の強化

 生活に身近な地域において、住民が世代や背景を超えてつながり、相互に役割を持ち、「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合う取組を育んでいくこと、国民一人ひとりが、生活における楽しみや生きがいを見出し、様々な困難を抱えた場合でも、社会から孤立せず、安心してその人らしい生活を送ることができる社会を実現していくとしています。

地域丸ごとのつながりの強化

 この分野では、 耕作放棄地の再生や森林などの環境保全、空き家の利活用、商店街の活性化など、地域社会が抱える様々な課題は、高齢者や障害者、生活困窮者などの就労や社会参加の機会を提供する資源でもあるとして、社会・経済活動の基盤としての地域において、社会保障・産業などの領域を超えてつながり、人々の多様なニーズに応え、資源の有効活用や活性化を実現するという「循環」を生み出していくことで、人々の暮らしと地域社会の双方を支えていくとしています。

地域を基盤とする包括的支援の強化

 地域包括ケアの理念を普遍化し、高齢者だけではなく、障害者や子どもなどが地域において自立した生活を送ることができるよう、地域住民による支え合いと公的支援が連動し、地域を『丸ごと』支える包括的な支援体制を構築し、切れ目のない支援を実現していくとしています。

専門人材の機能強化・最大活用

 住民とともに地域をつくり、また、人々の多様なニーズを把握し、地域生活のなかで本人に寄り添って支援していく観点から、専門性の確保に配慮しつつ養成課程のあり方を見直すことで、保健医療福祉の各資格を通じた基礎的な知識や素養を身につけた専門人材を養成していくとしています。

『地域共生社会』の実現に向けて2017年(平成29年)「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部が決定
地域課題の解決力の強化「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合う取り組み
包括的支援の強化地域住民による支え合いと公的支援の連動による包括的支援体制を構築
専門的人材養成専門人材の機能強化と最大活用のため、専門性の確保、養成課程のあり方の見直し、専門的人材を養成

社会福祉法改正

 上記のような様々な議論と提言を踏まえ、複合化した課題を抱える個人や世帯に対する支援や「制度の狭間」の問題など、既存の制度による解決が困難な課題の解決を図るため、地域住民による支え合いと公的支援が連動した包括的な支援体制の構築を目指し、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、2017年(平成29年)に社会福祉法が改正されました。

地域福祉推進の理念規定

 地域福祉の推進の理念として、支援を必要とする住民(世帯)が抱える多様で複合的な地域生活課題について、住民や福祉関係者による把握と、関係機関との連携等による解決が図られることを目指す旨が次のように明記されました。

 社会福祉法第4条第2項に、「地域住民等は、地域福祉の推進に当たっては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする」と規定されました。

包括的支援体制の整備

 この理念を実現するため、市町村が包括的な支援体制づくりに努める旨が規定され、地域住民の地域福祉活動への参加を促進するための環境整備、住民に身近な圏域において、分野を超えて地域生活課題について総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制の整備、主に市町村圏域において生活困窮者自立相談支援機関等の関係機関が協働して、複合化した地域生活課題を解決するための体制を整備することが、次のように努力義務として規定されました。

 社会福祉法第106条の3第1項に、「市町村は、次に掲げる事業の実施その他の各般の措置を通じ、地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めるものとする。」とされており、下記の①~③が掲げられています。

  • ① 地域福祉に関する活動への地域住民の参加を促す活動を行う者に対する支援、地域住民等が相互に交流を図ることができる拠点の整備、地域住民等に対する研修の実施その他の地域住民等が地域福祉を推進するために必要な環境の整備に関する事業
  • ② 地域住民等が自ら他の地域住民が抱える地域生活課題に関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、必要に応じて、支援関係機関に対し、協力を求めることができる体制の整備に関する事業
  • ③ 生活困窮者自立支援法第三条第二項に規定する生活困窮者自立相談支援事業を行う者その他の支援関係機関が、地域生活課題を解決するために、相互の有機的な連携の下、その解決に資する支援を一体的かつ計画的に行う体制の整備に関する事業

 また、同条第2項には、厚生労働大臣は、上記に掲げる事業に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとするとされています。

経営者の地域住民との連携努力義務

 社会福祉を目的とする事業を経営する者に対して、地域住民との連携を行うことが努力義務として次のように規定されました。

 社会福祉法第5条には、「社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等との連携を図り、かつ、保健医療サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならない。」と規定されました。

国・地方公共団体の責務

 「福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務」が、第6条第2項に、「国及び地方公共団体は、地域住民等が地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等によりその解決を図ることを促進する施策その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。」と規定されました。

地域福祉計画の充実と評価

 市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画の策定が努力義務化され、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として位置づけられ、策定した地域福祉計画については、定期的に調査、分析及び評価の手続きを行い、必要に応じて見直しを行うことが、次のように努力義務とされました。

 法第107条、第108条に、市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画を策定するよう努めるものとすると、地域福祉計画の策定が努力義務と規定され、「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項」また、市町村が包括的支援体制整備のための事業を実施する場合には、その事業に関する事項を盛り込むべきことが規定されました。

 また、同条第2項に、「市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。」と規定され、定期的な調査、分析及び評価を行うことが努力義務とされました。都道府県地域福祉支援計画も同様に規定されています。

 なお、社会福祉法の最新の改正として、2020(令和2)年6月に「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」が制定されています。詳細については、12月以降に集中的に行う「法改正・新制度」で取り上げていく予定です。

2017年(平成29年)社会福祉法改正
地域福祉推進の理念規定の追加保健医療、住まい、就労、教育の課題、地域社会からの孤立等の地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等により解決を図る
包括的支援体制の整備市町村に、地域福祉活動参加促進のための環境整備、総合相談・連絡調整体制の整備、関係機関の連携体制の整備を努力義務として規定
経営者の地域住民等との連携努力義務社会福祉を目的とする事業の経営者に、地域住民・関連サービス等との連携と総合的な提供を努力義務として規定
地域福祉計画の充実と評価市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉支援計画の策定が努力義務化、定期的な調査、分析及び評価を行う努力義務規定

 いかがでしたか。この科目は、地域福祉の理念や概念、発展の歴史、地域福祉における行政組織、地域福祉の担い手や専門職、社会福祉協議会の役割等も整理しておきましょう。
 次回は「福祉行財政と福祉計画」を取り上げます。では、第22回の精神保健福祉士国家試験問題から今回の課題を挙げておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「地域福祉の理論と方法」

問題36 社会福祉法に規定されている地域福祉に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 地域住民等は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。
  • 2 市町村は、市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。
  • 3 都道府県は、福祉サービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し、支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。
  • 4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は、地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。
  • 5 国及び地方公共団体は、地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。