メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第20回  「権利擁護と成年後見制度」

 皆さん、こんにちは。今回は「権利擁護と成年後見制度」を取り上げます。この科目は精神保健福祉士として精神障害者の権利を護る立場にある私たちが、実践の場で法的根拠に基づいて、いかに精神障害者の権利を護っていくかという具体的な知識を問われる科目です。苦手に感じる受験生が多いかもしれませんが、身近な行為を法律的な視点で考える訓練をしていきましょう。 では、まず前回の保健医療サービスの課題の解説をしていきます。

第22回 精神保健福祉士国家試験「保健医療サービス」

問題71  医療施設等の利用目的に関する次の記述のうち、最も適切なもの1 つ選びなさい。

  • 1 介護医療院の利用は、主として長期にわたり療養が必要である要介護者を対象としている。
  • 2 療養病棟の利用は、急性期で医療的ケアが必要である者を対象としている。
  • 3 地域包括ケア病棟の利用は、病院で長期にわたり医療的ケアが必要である者を対象としている。
  • 4 介護老人保健施設の利用は、高度で濃密な医療と介設が必要である者を対象としている。
  • 5 回復期リハビリテーション病棟の利用は、高度急性期医療を受けた後、終末期と判断された者を対象としている。

正答1

解答解説

  • 1 適切。「介護医療院」は、要介護者で長期療養者に、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、機能訓練等必要な医療と日常生活上の世話を行うことを目的とする施設で、介護保険法上の「介護保険施設」、医療法上の「医療提供施設」として位置づけられています。長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者に、日常的な医学管理、看取りやターミナルケア等の「医療機能」と「生活機能」を兼ね備えた施設として、従来の医療法上の療養病床の移行先として2018年(平成30年)4月に創設されました。
  • 2 適切でない。療養病棟は、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための、慢性期の長期入院患者を対象とした病棟です。療養病床には、医療療養病床と介護療養病床があり、今後は廃止の方向に向かっています。療養病床の廃止に伴い、従来の療養病床は介護老人保健施設と介護医療院に移行することが想定されています。
  • 3 適切でない。「地域包括ケア病棟」は、急性期治療を経過し病状が安定した者に対して、在宅や介護施設への復帰支援に向けた、医療や支援を行う病棟です。急性期患者、在宅患者、介護施設等から、緊急入院を必要とする患者を受け入れて在宅復帰支援を実施することにより、地域包括ケアシステムを支える役割を担っています。特定機能病院以外の病院であること、患者13人に対して看護は1名以上配置、夜勤の看護師は2名以上配置、専従の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を1名以上配置、専任の在宅復帰支援担当者を1名以上配置することとされています。在宅復帰率は7割以上、入院期間は、原則60日以内とされています。
  • 4 適切でない。介護老人保健施設は、要介護者の心身の機能の維持回復を図り、看護・医学的管理の下で、介護と機能訓練等の必要な医療と日常生活上の世話を行う施設で、介護保険法上の「介護保険施設」であり医療法上の「医療提供施設」です。食事や排せつの介助等とともに在宅復帰を目的とするリハビリテーションを実施し、一定期間経過後、在宅に復帰することを目的としています。
  • 5 適切でない。回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等によって身体機能が低下した患者に、専門的・集中的なリハビリテーションを行う病棟で、寝たきりの防止、在宅復帰を目的としています。回復期のリハビリテーションが必要な者が8割以上入院していること、一定の職員の配置義務、入院患者の3割以上が重症患者であること、重症患者の3割以上が退院時に日常生活機能が改善していること、在宅復帰率が7 割以上、社会福祉士等が適切に配置されていること等の条件があり、疾病によって入院期間が定められています。

 いかがでしたか。「保健医療サービス」は、このほか診療報酬制度、医療保険制度、医師や看護師などの医療専門職の役割、地域医療における連携等をよく学習しておきましょう。
では、今回の「権利擁護と成年後見制度」について、出題基準に添って過去の出題傾向を分析し対策を立てていきます。

相談援助活動において想定される法律問題

 「福祉サービスの利用と契約」については、福祉サービスを提供する事業者と利用者との契約における、債務と債務不履行責任、不法行為による損害賠償責任の出題実績があります。第22回では、判断能力が低下した状況での売買契約の取り消し要件等、民法の契約の概念の出題がありました。

 認知症の利用者が起こした事故についての責任の所在、利用者同士のけんかによるけがとそれに対する職員の対応等、不法行為責任、法定監督義務者責任、使用者責任、求償権についても確認しておきましょう。

 「消費者被害と消費者保護」の分野からは、特定商取引におけるクーリングオフに関する出題がみられます。「消費者契約法」や「特定商取引法」の内容を学習しておきましょう。消費者契約法における契約取り消しの要件、福祉関係事業者における個人情報等の適切な取り扱いに関する法令、改正個人情報保護法等にも気をつけておきましょう。

 自己破産、借家保証については、まだ出題実績はありませんが、小項目として例示されていますので、「破産法」や「借地借家法」等の概要を知っておくとよいでしょう。

 「行政処分と不服申立て」については、福祉サービスに関する苦情申立てと行政処分に対する不服申立ての違い、介護保険や障害者自立支援給付の介護給付費等に係る行政処分や生活保護制度における処分等に対する不服申立てなどが出題されています。各分野におけるそれぞれの不服申立制度について、整理しておきましょう。

日本国憲法の基本原理の理解

 「基本的人権の尊重」として、自由権、平等権、社会権、参政権、受益権について、それぞれの権利の内容を確認しておきましょう。

 基本的人権の保障における外国人への適用、生存権訴訟の最高裁判例、参政権、国民の義務等が出題されています。社会保障関連法規や生活保護法における外国人の取り扱いを理解しておきましょう。

 自由権のうち、信教の自由、人身の自由、財産権の自由、表現の自由、幸福追求件、人格権、プライバシー権等、援助者として知っておくべき利用者の人権について、具体的にどのようにかかわるべきかという視点での学習をしておくとよいでしょう。

民法の理解

 民法の基本的な考え方として、意思能力、行為能力、制限能力者等について、成年後見制度との関連でそれぞれの意味を押さえておいてください。

 契約については、契約の意味、契約の種類、民法における典型契約、双務契約・片務契約等の契約の類型、委任契約などの内容を整理しておきましょう。

 親族については、親権者の懲戒権の制限、未成年の子どもに対する親権の行使、成年擬制、労働契約、離婚による親権、監護権、養育費の負担、面会交流権等、子どもをめぐる各権利について学習しておきましょう。

 養子縁組制度については、民法改正により特別養子縁組制度の改正がありました。年齢の引き上げ等、改正内容を押さえておきましょう。また、普通養子縁組と特別養子縁組の違い、養子縁組制度における家庭裁判所の役割等を整理しておきましょう。

 親族の定義、血族と姻族、婚姻、離婚、親権と監護権、認知、児童虐待などにおける親権の濫用、親権停止・親権喪失宣告請求などについても理解を深めておきましょう。扶養義務者の順序とその程度について当事者の協議が調わない場合の家裁の役割、絶対的扶養義務と相対的扶養義務の範囲等についても確認しておきましょう。

 相続については、法定相続順位と相続割合、指定相続と遺留分制度、遺産分割協議、遺言能力と遺言の効力などについて学習しておきましょう。この分野からは、相続の具体的な相続割合、生前贈与の扱いなどが出題されています。

行政法の理解

 行政法の分野で基本となる法律は、「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法」が代表的なものです。これらの法律における行政行為、行政手続、行政不服申立制度、行政事件訴訟の類型、国家賠償の基本的考え方について理解を深めておきましょう。

 第22回では、行政不服審査法の改正内容が出題されました。行政不服審査法と行政事件訴訟法の性格の違い、行政処分と取消訴訟の関係をよく理解しておきましょう。今回は、後ほどこの分野について取り上げていきます。

 行政機関の情報公開については、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」による情報公開制度などの内容について、学習しておきましょう。

成年後見制度

 成年後見制度には、「民法」に基づく「法定後見制度」と「任意後見契約に関する法律」に基づく「任意後見制度」の2種類があります。基本的に根拠法も目的も異なる制度ですので、違いを理解しておきましょう。

 民法に基づく法定後見制度については、補助人、保佐人、後見人に付与される権限の違いや、法定後見人の選任、代理権、同意権、取り消し権の付与と範囲、申立てにおける本人の同意の必要の有無、市町村長申し立て等の法定後見制度の概要について、整理しておきましょう。

 また、後見人の責務として、本人の意思尊重義務や善管注意義務、成年後見人の法定監督義務者責任、本人と法定後見人との利益相反時の対応等に注意して学習しておくとよいでしょう。法定後見人の辞任要件、後見人の欠格事由等も出題されていますので気をつけて学習しておきましょう。

 「任意後見」については、「任意後見契約に関する法律」に目を通して、その制度の概略を理解しておきましょう。任意後見契約締結の要件、契約の法的効果の発生要件、任意後見監督人選任請求権者、任意後見制度と成年後見制度との関係、任意後見人と本人との利益相反の場合の対応、任意後見監督人の欠格要件、任意後見人解任請求等が出題されています。

 成年後見制度における家裁の役割や東京法務局の役割、任意後見制度における登記所のそれぞれの役割についての出題もみられますので、関係機関の役割、位置づけを整理しておきましょう。

 成年後見に関する民法の改正内容が出題されています。成年被後見人宛ての郵便物の転送、成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結等の、家庭裁判所への手続き等、改正内容を整理しておくとよいでしょう。

 「成年後見制度の最近の動向」については、裁判所のホームページに「成年後見制度の概況」が掲載されていますので、審理期間、後見類型、保佐類型、補助類型の申立件数、申立ての動機、成年後見人等と本人との関係、市区町村長申立て件数、本人の男女別割合・年齢階層別割合等を押さえておきましょう。

日常生活自立支援事業

 事業の実施主体、利用対象者、利用手続きのプロセス、事業の利用形態の民法の典型契約における位置づけ等の出題があります。事業の根拠法、事業内容、従事職員の資格、専門員と生活支援員の役割、利用対象者、成年後見制度との関係等についての基本的内容を整理しておきましょう。また、事業の最新の動向を把握しておきましょう。

成年後見制度利用支援事業

 この分野からは、制度の利用対象者、制度の内容等が出題されています。成年後見制度利用支援事業は、障害者総合支援法における市町村の地域生活支援事業の必須事業として位置づけられていますので、事業の実施状況等も含めて理解を深めておきましょう。

 第22回では、成年後見制度利用促進法の詳細な内容が出題されました。成年後見制度利用促進基本計画の計画期間とその内容、成年後見制度利用促進会議の設置、成年後見等実施機関、成年後見関連事業者の定義などについて確認しておきましょう。

権利擁護に係る組織、団体の役割と実際

 家庭裁判所の家事調停事項、家事審判事項のそれぞれの内容、人事訴訟、少年事件等について学習しておきましょう。また、後見登記、不動産登記等における法務局の役割、市町村申立て等における市町村の役割、弁護士、司法書士の役割や、社会福祉士の活動の実際についても、それぞれの役割を理解し、事例問題にも対応できるようにしておきましょう。市町村長申立てとその対象、市町村における市民後見人等の人材育成についても押さえておきたいものです。

権利擁護活動の実際

 この分野からは、事例問題での出題が多く見受けられます。知的障害者に対する虐待事例、成年後見人による財産管理、認知症高齢者に対する成年後見活動の実際、高齢者、児童、障害者のそれぞれの虐待防止法における虐待の定義、悪質商法による認知症高齢者の被害への対応等が出題されています。なお、近年連続して、DVや虐待関係をテーマとしてまとめて1題出題される傾向がみられます。

 高齢者虐待防止法、児童虐待防止法、障害者虐待防止法のそれぞれの内容を整理しておきましょう。また、消費者被害等について各分野の法制度を習熟しておくとともに、権利侵害等に対する権利擁護活動の実際に対応できる力をつけておきましょう。

 アルコール等依存者への対応、非行少年への対応、ホームレスへの対応、多問題重複ケース等の分野からの出題はまだありませんが、これらに関しても他科目と重複する分野ですから併行して学習しておくとよいでしょう。
以上、全体を概観してきましたが、今回は行政不服審査法について改正を含めて取り上げていきます。

行政不服審査法とは

 まず、行政不服審査法の目的と性格を確認しておきましょう。
 行政不服審査法の目的は、第1条第1項に「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で、広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と規定されています。簡単にいえば、行政庁が行う違法・不当な行政処分に対して、国民が行政機関に対して不服申立てを行う制度について規定しているのが、行政不服審査法です。

一般概括主義

 行政不服審査法は、一般概括主義をとっています。一般概括主義とは、すべての行政処分を対象としているという意味です。行政庁が行うすべての行政処分に対して、不服がある場合は、この行政不服審査法が適用されるということです。

個別法優先規定

 上記の第1条第1項の規定に続いて、同法第1条第2項には、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政処分)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」と規定されています。つまり、他の法律に行政不服申立てに関して規定がある場合は、そちらの法律の規定を優先するということで、これを個別法優先規定といいます。

 たとえば、生活保護法では、行政処分に対して審査請求制度と再審査請求制度を規定しています。また、介護保険法では、審査請求先として介護保険審査会が規定されています。このように、個別法に特別の規定がある場合は、そちらの規定が優先して適用されます。

不服申立ての対象

 行政不服審査法における不服申立ての対象には、「処分」に対する不服申立てと、「不作為」に対する不服申立ての2種類があります。「処分」とは、行政庁の権限で国民に権利と義務を生じさせる行為です。「不作為」とは、国民が法令に基づいて行政庁に申請した場合、一定の期間を経過したにもかかわらず、何らの処分をしないことをいい、これに対して行政機関に対して「不作為」の不服申立てを行うことができます。

不服申立ての種類

 不服申立ての種類には、「審査請求」「再調査の請求」「再審査請求」の3種類があります。2016年(平成28年)度の行政不服審査法改正前までは「異議申立制度」がありましたが、改正により廃止され、「審査請求」に一元化されました。

審査請求

 行政不服審査法では、不服申立ては原則として「審査請求」で行うこととされています。審査請求先は、行政処分を下した処分庁や不作為庁の最上級行政庁になります。審理方法は書面審理を原則とし、審査請求に対して裁決が下されます。

再調査の請求・再審査請求

 上記のように、不服申立ては原則として「審査請求」で行うこととされていますが、個別法に特別な規定がある場合に限り、審査請求の前に処分を下した処分庁に対して「再調査の請求」を行うことができます。再調査の請求とは、処分庁に対して処分の取り消し、あるいは変更を求める手続きのことです。「再調査の請求」と「審査請求」は、いずれを選んでもよいとされています。

 また、個別法に特別な定めがある場合は「再審査請求」を行うことができます。再審査請求を行うか行政事件訴訟を行うかは、自由に選択できます。

審理員による審理

 審理員による審理制度とは、審査請求人と処分庁の、両者の主張を公平に審理することを目的として、処分に関与しない「審理員」が審理するという制度です。「審理員」は、審査庁が、処分に関与していない等の要件を満たす職員の中から指名することになっています。

審理の手続き

 審理は書面審理が原則となります。ただし、審査請求人等の利害関係者から申立てがあった場合は、口頭意見陳述の機会を与えなければなりません。法改正により、審査請求人は、審理員に対して提出書類等の閲覧・写しの交付を求めること、口頭意見陳述における処分庁への質問等ができるようになりました。

 審理員は、審理手続きの終結後「審理員意見書」として審査庁に提出し、それを受けた審査庁は、一定の場合を除き、行政不服審査会等の「第三者機関」に諮問しなければならないとされています。これらの手続きを経て、審査庁は裁決を下します。

標準審理期間

 法改正により、審査庁は、審査請求を受けてから裁決に至るまでの「標準審理期間」を設定することが「努力義務」とされ、これを定めたときは公にしておかなければならないとされました。

不服申立て期間

 不服申立てをすることができる期間が、法改正により、従来の60日から「3か月」に延長されました。行政処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。また、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、原則として審査請求を行うことができなくなります。なお、不作為についての審査請求の期間の定めはありません。

一般概括主義 すべての行政処分が対象
個別法優先規定 個別法に規定がある場合は個別法の規定が優先される
審査請求の対象行政処分、不作為処分
申立ての種類(1)審査請求、(2)再調査の請求、(3)再審査請求
審査請求審査請求先は処分庁・不作為庁の最上級行政庁
再調査の請求個別法に規定がある場合のみ行うことができる
審理員による審理行政処分に関与しない「審理員」が審理する
第三者機関の点検有識者から成る第三者機関が「審理員意見書」を点検する
標準審理期間標準審理期間の設定は努力義務
不服申立て期間不服申立て期間は3か月

行政不服審査法と行政事件訴訟法との関係

 最後に、「行政不服審査法」と「行政事件訴訟法」との関係についてみていきます。
 「行政不服審査法」は、「違法または不当」な行政処分に対して、「行政機関」に対して行う「不服申立制度」について規定している法律です。これに対して「行政事件訴訟法」は、「違法」な行政処分に対して、「司法機関」すなわち裁判所に対して「訴訟を提起」する手続きについて規定している法律です。

 「違法」とは、行政処分が法律に違反しているかどうかという「適法」であるか「違法」であるかという意味で、「不当」とは法律違反ではないが正当性があるか、正当性に欠けるかどうかという意味です。行政不服審査は、行政処分が法律に違反しているかどうかという「違法性」だけでなく、その行政処分に「正当性があるかどうか」という範囲まで審査の対象とします。
 それに対して「行政事件訴訟」は、行政処分が法律に違反しているかどうかという点だけを、審判の対象とします。

審査請求と取り消し訴訟との関係

 行政事件訴訟は、行政権の行使によって国民に権利・利益の侵害が起こった場合、国民は訴訟を提起することができるということに関する法律です。行政不服審査法に基づく審査請求との関係は、行政事件訴訟法第8条に、「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。」と規定されており、審査請求ができるときでも、行政事件訴訟の提起のほうを選択することができます。
 ただし、個別法に、「審査請求の裁決後でなければ処分の取り消しの訴えを提起することができない」という規定がある場合は、審査請求の裁決を経なければ、取り消し訴訟を提起することはできません。

 たとえば、生活保護法には、行政処分に対して不服がある場合は、最初はまず、「審査請求」を行い、その裁決が下された後に、「再審査請求」か「行政事件訴訟」のいずれかを選ぶことができるという規定になっています。これを「審査請求前置主義」といいます。

 また、審査請求後3か月が経っても裁決が下されない場合や、処分や処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要がある場合、その他裁決を経ないことに正当な理由があるときは、裁決を経ずとも取り消し訴訟を提起することができます。

行政不服審査法 行政処分の違法性と不当性に対する不服申立て
行政事件訴訟法 行政処分の違法性に対する訴訟
取り消し訴訟 審査請求できるときでも取り消し訴訟を提起できる
審査請求前置主義個別法に審査請求前置の規定がある場合は審査請求を優先する。
審査請求後3か月以内に裁決が無い場合等は訴訟を提起できる

 いかがでしたか。「権利擁護と成年後見制度」は、成年後見制度、消費者保護や憲法における基本的人権、民法における行為能力や契約、不法行為と損害賠償、親族・相続関係、等についても、よく学習しておきましょう。

 今回まで、共通科目について過去の出題傾向を分析して対策を考えてきました。次回からは、専門科目についてポイントを絞って解説をしていきます。次回は「精神疾患とその治療」を取り上げます。では、第22回精神保健福祉士国家試験の中から今回の課題を上げておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「権利擁護と成年後見制度」

問題79 行政処分に対する不服申立てに関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 処分庁に上級行政庁がない場合は、処分庁に対する異議申立てをすることができる。
  • 2 審査請求をすることのできる期間は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して10 日以内である。
  • 3 審査請求に係る処分に関与した者は、審査請求の審理手続を主宰する審理員になることができない。
  • 4 行政事件訴訟法によれば、特別の定めがあるときを除き、審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することができない。
  • 5 再調査の請求は、処分庁以外の行政庁が審査請求よりも厳格な手続によって処分を見直す手続である。