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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第16回 「社会保障」

 皆さん、こんにちは。受験勉強は順調に進んでいますか。社会福祉振興・試験センターのホームページに、第23回の精神保健福祉士国家試験の「試験概要」と「受験申し込み手続き」が掲載されています。

 試験日は、昨年と同様、2月の初頭の令和3年2月6日(土)に専門科目、7日(日)の午前に共通科目となっています。受験申込書の受付期間は、令和2年9月10日(木)から10月9日(金)まで(消印有効)です。

 前もって受験の申し込みに必要な書類『受験の手引』を取り寄せる必要があります。『受験の手引』は、請求してから手元に届くまでには数日間かかるので、早めに請求しましょう。請求すると『受験の手引』は、8月上旬以降に順次発送されます。社会福祉振興・試験センターのホームページから請求することもできますが、その場合は7月下旬に請求窓口が開設されますので、今から受験手続きの準備をしておきましょう。

 今回は、「社会保障」を取り上げます。近年多角的な視点からの出題が多くなっています。各制度を細部まで丁寧に学習し、短文事例問題にも対応できる力をつけていきましょう。では、最初に前回の課題の解説をしていきます。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「福祉行財政と福祉計画」

問題47 福祉計画に関して、1990年(平成2年)の福祉関係八法改正より以前の記述として、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1  「エンゼルプラン」が策定された。
  • 2  障害福祉計画が障害者自立支援法に規定された。
  • 3  社会福祉施設緊急整備5か年計画が策定された。
  • 4  「新ゴールドプラン」が策定された。
  • 5  地域福祉計画が社会福祉法に規定された。


正答 3

解答解説

  • 1 誤り。エンゼルプランは、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」として1994(平成16)年に策定されました。子育ては家庭だけの課題ではなく、国や地方公共団体、企業、職場、地域を含めた社会全体で取り組むべきことであるとしています。このエンゼルプランに基いて「緊急保育対策等5カ年事業」が出され、保育所の量的拡大、低年齢児保育、延長保育等の多様な保育サービスの充実、地域子育て支援センターの整備等に関して具体的な数値目標が示されました。
  • 2 誤り。障害福祉計画が障害者自立支援法に規定されたのは、2005(平成17)年で、都道府県障害福祉計画、市町村障害福祉計画とも、策定が義務づけられました。2012(平成24)年には、障害者自立支援法が「障害者総合支援法」に改称・改正され、「都道府県障害福祉計画」「市町村障害福祉計画」は、引き続き策定義務とされています。
  • 3 正しい。「社会福祉施設緊急整備5カ年計画」が策定されたのは、高齢化率が7%を超えた翌年の1971(昭和46)年です。高齢化による高齢者入所施設の需要の増加、重度障害者のための施設の未整備、保育所の不足等に対して、老人福祉施設の整備、重度身体障害者施設、心身障害児・者施設、保育所等を、1971(昭和46)年から5年をかけて整備していくという計画です。
  • 4 誤り。「新ゴールドプラン」は、1994(平成6)年に策定されました。1989(平成元)年に策定された「高齢者保健福祉推進十カ年戦略(ゴールドプラン)」は10カ年計画でしたが、高齢化の進展が予想以上に急激だったため、新たなゴールドプランを策定し、在宅福祉の充実、ホームヘルパーの確保、訪問看護ステーションの設置等の目標数値を掲げました。
  • 5 誤り。社会福祉法に地域福祉計画が規定されたのは、2000(平成12)年の社会福祉事業法から社会福祉法に改称・改正されたときです。この法律の制定時には、地域福祉計画の策定は任意規定でしたが、2018(平成30)年の法改正により「市町村地域福祉計画」「都道府県地域福祉支援計画」とも、策定が努力義務になりました。また、同時に「市町村地域福祉計画」「都道府県地域福祉支援計画」は、高齢者、障害者、児童その他の福祉の各分野における共通的な事項を横断的に記載する計画として位置づけられ、計画について定期的に調査、分析・評価を行うことが努力義務とされました。

 いかがでしたか。「福祉行財政と福祉計画」では、「福祉行政」「福祉財政」「福祉計画」の分野をバランスよく学習しておきましょう。では、今回の「社会保障」について近年の出題実績を分析しながら、出題傾向と対策について解説していきます。

現代社会における社会保障制度の課題

 「厚生労働白書」や「総務省人口推計」等から、少子・高齢化の実態、人口推計に関しての出題がみられます。現代社会における社会保障制度の課題として、人口動態の変化、少子高齢化と社会保障制度の関係、労働環境の変化等を学習しておきましょう。

社会保障の概念や対象及びその理念

 「社会保障の概念と範囲」では、社会保障制度審議会の1950年勧告、1995年勧告の内容、社会保障の役割と意義、理念、対象について学習しておきましょう。「社会保障制度の発達」は、大変出題率が高い分野です。医療保険制度、公的年金制度の沿革、老人保健制度、介護保険制度等の歴史的展開と経緯について、時代背景を踏まえて理解し、暗記ではない理解に基づく知識を積み重ねておきましょう。

社会保障の財源と費用

 この分野も出題率の高い箇所です。社会保障の財源構成、国民負担率、社会保障給付費の部門別構成割合、対国内総生産比、対国民所得比やその国際比較など、連続して出題されている定番問題ですから、国立社会保障・人口問題研究所のホームページなどで確認し整理しておきましょう。

社会保険と社会扶助の関係

 社会保険と社会扶助の関係を理解しておきましょう。社会保険制度と公的扶助の基本的な特質について、救貧的機能・防貧的機能、個別給付・画一給付、給付要件、給付対象、財源等が出題されています。それぞれの制度の目的と性格の違いを押さえておきましょう。

公的保険制度と民間保険制度の関係

 公的保険と民間保険の性格の違い、強制加入と任意加入、保険料の扱い、自動車損害賠償責任保険、確定拠出年金、厚生年金基金等の出題実績があります。基本的な内容を把握しておきましょう。

社会保障制度の体系 年金保険制度の具体的内容 医療保険制度の具体的内容

 ここからは毎回3問から4問出題されており、極めて出題率の高い分野です。わが国の社会保険制度は、「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5種類の社会保険によって構成されています。

 それぞれの保険制度の目的、仕組み、保険者、被保険者、給付内容、給付要件、財源構成について整理しておきましょう。また、児童扶養手当、子ども手当等の家族手当制度についても確認しておきましょう。では、それぞれの内容について学習しておくべきことをみていきます。

年金保険制度

 年金保険制度について、被用者、非被用者の年金制度の基本的枠組みを理解しておきましょう。1号被保険者、2号被保険者、3号被保険者の被保険者要件、保険料免除制度、老齢年金、障害年金、遺族年金のそれぞれの受給資格と算定方法、労災保険と障害年金との関係、遺族基礎年金の受給要件等について、よく学習しておきましょう。

医療保険制度

 医療保険制度の仕組み、国民健康保険と健康保険の違い、医療保険の給付内容、自己負担割合、高額療養費医療制度、後期高齢者医療制度等の、全体の枠組みをしっかりと理解し整理しておきましょう。医療保険と労災保険との関係、出産手当と出産育児一時金との違い、保険外併用療養費等の基本的な内容についても理解を深め、確実に点を確保できるようにしていきましょう。今回は、後ほど医療保険制度の枠組みについて取り上げていきます。

介護保険制度

 生活保護受給者と介護保険との関係、介護保険料負担、介護保険財源構成等の出題がみられます。介護保険制度と医療保険制度の関係、介護保険制度と労災保険制度との関係等、他制度との関係をよく理解しておきましょう。

労災保険制度

 業務災害、通勤災害の定義、労災保険給付の対象要件、特別加入制度、労災の給付内容、労災保険料の滞納時の保険給付の可否、障害厚生年金と労災給付との関係、労災補償と民事訴訟での損害賠償との関係、医療保険給付と労災保険給付との関係等が出題されています。労災保険の適用対象、労災保険の保険料率、事業主の保険料負担、通勤災害の認定要件等も含めて、事例問題に対応できるようにしておきましょう。

雇用保険制度

 雇用保険の仕組み、雇用保険の監督機関、雇用保険の保険者、被保険者要件、雇用保険料の事業主と費用者の負担割合、雇用保険財源、雇用保険法と求職者支援法との関係等を押さえておきましょう。

 雇用保険の給付内容として、基本手当、就業促進手当、教育訓練給付、育児休業給付・介護休業給付等が出題されています。出題傾向をみると、回を重ねるごとに詳細になり難易度が上がっていますので、細部に渡って丁寧に学習しておきましょう。

家族手当制度

 児童手当、児童扶養手当、出産・育児支援等について学習しておきましょう。児童手当と児童扶養手当の併給、所得制限、支給対象児童、児童手当の財源、諸手当の併給について、理解しておきましょう。

諸外国における社会保障制度

 諸外国の社会保障制度が出題されています。ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、アメリカなどの先進主要国における社会保障制度の概要について、それぞれの国の社会保障制度の発展の歴史的経緯を踏まえて、現在の社会保障制度体制を把握しておきましょう。

 アメリカの医療保障制度としての、メディケア、メディケイド、オバマ政権による医療制度改革、ドイツの疾病保険、介護保険制度、イギリスのベヴァリッジ報告に基づく社会保険制度や国民保健サービス制度(NHS)、フランスの医療保険における償還払い制度、各国の社会保障制度の歴史的発展と特徴等を整理しておきましょう。
 以上、全体を概観してきましたが、今回は医療保険制度の枠組みについて取り上げていきます。

医療保険制度の仕組み

 医療保険制度全体は大きく分けて、被用者を対象とする「職域保険」と居住要件による「地域保険」、居住要件と年齢要件による「後期高齢者医療制度」の3種類に分類されます。それぞれについて詳しくみていきましょう。

被用者保険(職域保険)

 被用者を対象とする「職域保険」には、健康保険法に基づく「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「組合管掌健康保険(健康保険組合)」、船員組合法に基づく「船員保険」、各種の共済組合法に基づく「共済組合」があります。

全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)は、組合管掌健康保険(健康保険組合)に加入していない民間企業の中小企業の被用者が加入する保険です。保険者は全国健康保険協会で、保険料率は都道府県ごとに設定し、給付内容は法定給付だけです。

組合管掌健康保険(健康保険組合)

 組合管掌健康保険は、事業所で働いている被保険者が常時700人以上、2つ以上の事業所が共同して設立する場合は被保険者が常時3000人以上の場合、それぞれ厚生労働大臣の認可によって組合を設立することができます。

 組合を設立すると、一定の範囲内で組合ごとに自主的に保険料率を設定でき、従業員の保険料負担割合を労使折半より低く設定することができます。また、法定給付以外の付加給付を行うことができ、企業の福祉厚生のための疾病予防のための事業などを実施することも可能になります。

船員保険

 船員保険法に基づく船員保険は、海上で働くという特殊性に鑑み、独立した法律で医療保障を行おうとする制度です。職務外の病気やけが、出産、死亡について保険給付を行い、運営は全国健康保険協会が実施しています。

共済組合

 共済組合には、公務員を対象とする「国家公務員共済組合」と「地方公務員共済組合」及び、私立学校教職員を対象とする私立学校教職員共済組合があります。被用者の年金制については、公務員の共済組合制度は廃止され、現在は公務員も民間被用者すべて、厚生年金制度に一元化されていますが、医療保険制度に関しては、公務員等は健康保険制度とは別建ての、共済組合制度によって実施されているということに注意しておきましょう。

全国健康保険協会 加入対象:中小企業等
給付内容:法定給付のみ
保険料率は都道府県ごとに設定
組合管掌健康保険 加入対象:大企業等
給付内容:法定給付、付加給付
保険料率は組合ごとに設定。
船員保険対象:船員
保険者:全国健康保険協会
各種共済組合種類:国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学職員共済組合

法定給付と付加給付

 「法定給付」と「付加給付」という言葉が出てきましたので、簡単に説明しておきましょう。「法定給付」とは、「法律に定められている給付」という意味で、健康保険法、船員保険法、各種の共済組合法に定められている給付のことです。この「法定給付」は、必ず実施することが義務づけられています。

 これに対して「付加給付」とは、法定給付に上乗せする給付のことで、組合管掌健康保険(健保組合)は、法定給付以外に独自の上乗せ給付である「付加給付」を行うことができることになっています。大企業等は、優秀な人材を確保するために組合を設立し、企業側の保険料率の負担割合を高くして被用者の保険料負担を押さえ、さまざまな付加給付や保健事業を行っています。

地域保険

 次に、居住要件による地域保険について取り上げます。地域保険には、国民健康保険法に基づく、都道府と市区町村を保険者とする「国民健康保険」と、業種ごとに組合を設立してつくる「国民健康保険組合」があります。

国民健康保険

 国民健康保険は、都道府県と市町村が実施主体となります。都道府県は、財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運円の確保等、都道府県内の統一的な運営方針を示す等の都道府県全体を総括する役割があります。

 市町村は、地域住民との身近な関係のなかで被保険資格の管理、被保険者証の発行、保険料の徴収、保険給付の決定と保険給付の実施等の役割を担います。国民健康保険の給付内容は、法定給付だけです。

国民健康保険組合

 国民健康保険組合は、医師や弁護士、美容師、土木建築業等が同業種ごとに、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けて設立します。保険の実施主体である保険者は、国民健康保険組合です。

 国民健康保険組合の保険料率は、一定の範囲内で組合ごとに設定することができ、保険給付として法定給付以外に独自の付加給付を行うことができます。この2点が、国民健康保険と大きく異なる点です。

国民健康保険 運営主体:都道府県(財政運営)と市町村(保険用徴収と保険給付)
給付内容:法定給付のみ
国民健康保険組合 保険者:国民健康保険組合
保険料率:組合ごとに設定
給付内容:法定給付と付加給付

後期高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度は、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて、都道府県を単位に全市町村が加入する「後期高齢者広域連合」が保険者となります。被保険者は、75歳以上の高齢者と65歳以上75歳未満の一定の障害の状態にあると認められた者です。生活保護受給者は適用除外規定がありますので、気をつけておきましょう。

 被保険者は、家族の被扶養者であっても個人として保険料を支払う義務が生じます。保険料は後期高齢者広域連合が決定し、市町村が徴収します。保険料の算出方法は、均等割額と所得割額を合計して個人単位で算出し、徴収も個人単位で行います。医療費の自己負担割合は、原則1割負担で、現役並所得者は3割負担です。

 後期高齢者医療制度の財源構成は、被保険者の保険料が1割、後期高齢者支援金(若年者の保険料)が4割、公費が5割です。公費の5割の内訳は、国:都道府県:市町村が、4:1:1の割合になっています。

後期高齢者医療制度

保険者 後期高齢者医療広域連合
被保険者75歳以上(一定の障害状態の65歳以上75歳未満)
被保護者は適用除外
保険料の決定後期高齢者医療広域連合
保険料徴収市町村
自己負担割合1割負担。現役並所得者は3割負担
財源構成後期高齢者の保険料:1割、後期高齢者支援金:4割
公費:5割
公費負担割合全体の5割の内訳(国4:都道府県1:市町村1)

社会保険における公費負担

 最後に、近年出題率の高い、社会保険財源における公費の補助について確認しておきましょう。国民健康保険と後期高齢者医療制度には、給付費等の50%の公費負担があります。全国健康保険協会は、給付費等の16.4%です。組合管掌健康保険は、財政が逼迫した組合に対してのみ、補助があります。共済組合には、国庫補助はありません。

国民健康保険給付費等の50%
後期高齢者医療制度給付費等の50%
全国健康保険協会給付費等の16.4%
組合管掌健康保険財政逼迫組合に対する補助
共済組合なし

 いかがでしたか。今回は、医療保険の給付内容については取り上げることができませんでしたが、よく出題される傷病手当や出産手当、出産育児一時金、年齢や所得に応じて異なる自己負担割合などについて整理しておきましょう。次回は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。では、今回の課題を、第22回精神保健福祉士国家試験問題のなかからあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「社会保障」

問題53 医療保険制度に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 後期高齢者医療制度には、75 歳以上の全国民が加入する。
  • 2 後期高齢者の医療費は、後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。
  • 3 都道府県は、当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。
  • 4 健康保険組合の保険料は、都道府県ごとに一律となっている。
  • 5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し、国は補助を行っていない。