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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第13回 「現代社会と福祉」

 皆さん、こんにちは。コロナ対策のために厳しい環境のなかで奮闘してくださっている方々に心からの感謝と敬意を表します。不自由な生活が続きますが、そのようななかでも工夫しながら学習のペースを作っていきましょう。

 今回は「現代社会と福祉」を取り上げます。福祉の歴史的な発展の経緯についての理解をはじめ、福祉政策、現代社会の課題等、広範囲に及ぶ知識と理解が求められます。苦手な方が多いと思いますが、全科目の基盤となる科目なので、他の科目を理解するためにも基本的な福祉の考え方と枠組みについて十分学習しておきましょう。
 では、最初に前回の課題の解説をしておきます。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「社会理論と社会システム」

問題20  次のうち、「囚人のジレンマ」に関する記述として、 最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1  合理的な仕組みに対して過剰な執着を持つ状況を指す。
  • 2  一定期間、 閉鎖的・画一的に管理された場所で生活する状況を指す。
  • 3  協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず、 非協力への個人的誘因が存在する状況を指す。
  • 4  二つの矛盾した命令を受けているため、 そのいずれも選択することができない状況を指す。
  • 5 非協力的行動を行うと罰を受け、 協力的行動を行うと報酬を得ることで、 協力的行動が促される状況を指す。


正答3

解答解説

  • 1 適切でない。合理的な仕組みとして代表的なものは官僚制組織です。ウエーバー(Weber,M.)は官僚制組織を、合法的で規則に則った手続きによって、公平性や公正さが確保された組織であるとしました。ただ、規則を遵守することを優先し過剰に執着したため、結果的に組織の目的が達成できない状況に陥ってしまいました。これをマートン(Merton,R.K.)は、官僚制の逆機能として指摘しました。
  • 2 適切でない。一定期間閉鎖的・画一的に管理された状況は、ゴッフマン(Goffman,Eが「全制施設」と名づけた状況です。同じような境遇にある人々が、長期間社会から隔離され遮断された閉鎖的な状況で、高度に管理された日常生活を送る環境のことです。ゴッフマンは、刑務所や精神科病院等の管理し統制された環境のなかで、人々が築く人間関係の様子を著書「アサイラム」に著し、相互行為論の先駆けとなりました。
  • 3 適切。「囚人のジレンマ」とは、相手の出方を知ることができない状況のなかで、自分の利得のために自分が「ある行為」を選択した場合、その結果が、相手の出方によって変化し、「利得を得る」ことができるか、あるいは「損失を生じる」ことになるかわからないという状況の下で、「自分が最も大きな利得を得る」ためにどういう選択をするのが一番よいかということを見極めることが困難であることをいいます。自分にとって最も得をするような合理的な選択、すなわち「利得が最大化」になる行為を選択していると思っても、その選択の結果は、必ずしも最善のものになるわけではありません。これが「囚人のジレンマ」という理論です。
  • 4 適切でない。二つの矛盾した命令を受けているため、 そのいずれも選択することができない状況のことは、ダブルバインドといいます。たとえば、子どもが家の大事なものを割ってしまった場合、親が「大丈夫よ」と言いながら、大変怒った表情をしていると、親の言葉と表情のどちらを信じていいかわからなくなってしまうような状況をいいます。このように、発するメッセージに矛盾があるような場合は、子どもは精神的に不安定になりがちです。
  • 5 適切でない。集団への非協力的行動に対しては「罰」を与え、協力的行動に対しては「報酬」を与えることによって、協力的行動を引き出すという状況は、「選択的誘因」といいます。アメリカの経済学者であるオルソン(Olson,M)は、合理的判断による誘因の仕組みとして「賞」や「罰」を与えることを「選択的誘因」として提示しました。

 いかがでしたか。「社会理論と社会システム」は、範囲が広く概念的な理解が求められますので、内容をよく理解することを重視した学習をしていきましょう。では、「現代社会と福祉」について、出題基準に沿って対策を立てていきましょう。

現代社会における福祉制度と福祉政策

 この分野は、福祉制度の概念の変遷、福祉政策の概念と理念について、社会保障の枠組みや定義、ベヴァリッジ報告における社会保障の考え方などに焦点をあてて学習しておきましょう。わが国の福祉政策の変遷過程については、社会保障制度審議会勧告や社会福祉基礎構造改革なども含めて、戦後から現在に至る時代背景を踏まえてよく理解しておきましょう。

福祉の原理をめぐる理論と哲学

 福祉の原理をめぐる理論や哲学・倫理として、出題率は落ちていますが、エスピン・アンデルセンの福祉国家論、ロールズの「正義論」やセンの潜在能力理論(ケイパビリティ・アプローチ)の出題実績があります。

 わが国の福祉の原理をめぐる理論と哲学としては、大河内和男、岡村重夫、孝橋正一、仲村優一、三浦文夫、一番ヶ瀬康子等の理論の出題実績がありますので、基本的な理論を押さえておきましょう。

福祉制度の発達過程

 「前近代社会と福祉」「産業社会と福祉」については、イギリスの福祉政策の歴史、ラウントリーのヨーク調査の出題がみられます。わが国の社会福祉制度の歴史では、恤救規則、救護法、中央慈善協会、済世顧問制度、方面委員制度、内務省の救護課設置、救護法、戦時厚生事業等が出題されています。

 わが国の福祉制度の発達過程については、産業の発展や貧困との関係、民間の慈善事業から社会事業への移行、戦時体制の影響などについて、社会背景も踏まえて学習しておくと理解が深まります。

 イギリスの救貧法、慈善組織協会活動、ブースやラウントリーの貧困調査、ナショナルミニマムやベヴァリッジ報告等のイギリスの福祉国家の形成過程、世界の主要国における社会福祉制度の形成過程を、政治や経済との関係で把握し、それぞれの特質を理解しておきましょう。今回は後ほど、第二次世界大戦以降のイギリスの福祉の発展の歴史について取り上げていきます。

 「現代社会と福祉」については、第二次世界大戦後の生活困窮と福祉、経済成長と福祉、新自由主義等の概念も理解しておきましょう。この分野からは、具体的にわが国の戦後の福祉政策として、戦後混乱期、戦後復興期、高度経済成長期にかけての、福祉三法体制、福祉六法体制、福祉元年、日本型福祉社会、障害者自立支援制度等が出題されています。戦後の社会福祉事業法による社会福祉法人制度の創設から社会福祉基礎構造改革への過程、近年の社会福祉法人制度改革も含めて学習しておきましょう。

 現代社会の特質として、グローバル化と貧困、科学技術の進展に伴うリスク社会、新自由主義や福祉多元主義等の概念と実際についても理解を深めておきましょう。

福祉政策におけるニーズと資源

 「需要とニーズの概念」の分野は、近年主題率が低くなっていますが、欲求とニーズの関係、必要原則と貢献原則、ニーズ充足の方法、貧困とニードの捉え方、ブラッドショーのニーズ論、潜在的ニードと顕在的ニード、ニードの顕在化に果たす専門職の役割について基本的な事柄を理解しておきましょう。

 「資源の概念」の分野は、資源の意味、資源の性格、普遍主義的な資源の配分、福祉サービスのニーズ判定等の出題実績があります。福祉政策におけるニーズの意味、ニーズと資源の関係、資源の分配方法、ニード充足のための資源の配分と福祉政策について学習しておくとよいでしょう。

福祉政策の課題

 「福祉政策と社会問題」の分野は、貧困、孤独、失業、要援護、偏見と差別、社会的排除、ヴァルネラビリティ等の社会問題に関する理解が求められます。出題実績をみると、社会的排除と社会的包摂、貧困、格差、子どもの貧困対策大綱、ヘイトスピーチ解消法、育児・介護休業法等が出題されています。

 現代社会の福祉政策の課題があらゆる分野から出題されますので、厚生労働白書や国民生活基礎調査等に目を通しておきましょう。また貧困の概念や失業の実態、若年者の生活、経済格差とその対策、海外の社会保障と福祉の制度と趨勢などについても学習しておきましょう。

 「福祉政策の現代的課題」の分野からは、国連による「人間の安全保障」「持続可能な開発目標」(SDGs)、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」が出題されています。世帯・婚姻の動向、生活困窮者自立支援制度、自殺対策基本法等とともに、少子高齢化の進展、雇用形態の多様化が進む社会的背景に対して、現在進められている様々な諸改革に注意をしておきましょう。

 「福祉政策の課題と国際比較」の分野では、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国等の社会保障制度の特徴を整理しておきましょう。世界幸福度報告書や世界の各国の福祉改革が出題されています。また、イギリスのベヴァリッジ報告や「第三の道」、コミュニティケアの展開、アメリカの社会保障法、TANF、オバマ政権による医療保険改革、ドイツの介護保険法、フランスの家族手当制度、スウェーデンのエーデル改革、韓国の「老人長期療養保障法」等の出題もみられていますので、国際的な動向も把握しておきましょう。

福祉政策の構成要素

 「福祉施策の論点」の分野は、効率性と公平性、普遍主義と選別主義、自立と依存、自己選択とパターナリズム等の概念を理解しておきましょう。性同一性障害、OECDの「より良い暮らしイニシアチブ」なども出題されています。OECDの相対的貧困率の定義、ジニ係数、国民生活基礎調査、男女共同参画社会や男性の育児休業取得率、ひとり親世帯の労働形態や平均収入、女性議員が占める割合等も押さえておきましょう。

 「福祉政策における政府の役割・市場の役割・国民の役割」の分野からは、国、都道府県、市町村、地方社会福祉審議会のそれぞれの役割について、社会福祉法にどのように規定されているかについての出題実績があります。「福祉行財政と福祉計画」の科目とも重なる分野ですから、並行して学習しておきましょう。

 「福祉政策の手法と政策決定過程と政策評価」からは、福祉サービスのプログラム評価の方法に関する出題がありました。予算や人材等の資源の投入の評価、プログラム実施の適切さを評価する過程の評価、産出の評価、プログラムの達成状況の成果評価、効率性の評価等について理解を深めておきましょう。

 「福祉供給部門」の分野は、福祉サービスの供給主体としての政府部門、民間営利部門、民間非営利部門、ボランタリー部門、インフォーマル部門、社会的企業等が出題されています。

 「福祉の供給過程」の分野からは、受益と負担、福祉サービスの準市場(疑似市場)についての出題実績があります。福祉サービスの利用者負担の意味、国民負担率、応能負担と応益負担、所得控除の性格、公費負担方式と社会保険方式における受益と負担の対応関係、準市場の概念と仕組みについてよく理解しておきましょう。公と民の関係、再分配の意味と方法、割当、行政計画等についても学習しておきましょう。

 「福祉利用過程」の分野からは、福祉サービスの評価について、評価の視点、第三者評価等が出題されています。福祉サービス利用に関する情報の非対称性、福祉サービス第三者評価事業、苦情解決制度等についても学習しておいてください。

福祉政策と関連政策

 ここからは、関連政策として非常に幅広い分野からの出題があります。最低賃金制度、住宅セーフティネット法、不登校児童の教育支援策等が出題されています。住宅政策、労働政策等、多様な分野における政策について絶えずアンテナを張って情報をつかんでおくことをおすすめします。

相談援助活動と福祉政策の関係

 この分野からは、「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割について」(2018年(平成30年))が出題されています。共生社会の実現のための協働と連携を構築していく人材としての社会福祉士の位置付けについて理解を深めておきましょう。

 以上、全体を概観してきましたが、今回は第二次世界大戦前後のイギリスの福祉の発展の歴史について解説していきます。

ナショナル・ミニマム

 後にシドニー・ウェッブの妻となったビアトリスは、シドニーと結婚する前、義理の従兄にあたるブースのロンドン調査に参加していました。夫になるシドニーは、漸進的社会主義を掲げるフェビアン協会の中心的な人物です。

 このウェッブ夫妻は結婚後、1897年に『産業民主制論』を著し、標準賃金や標準労働時間と産業効率の関係を述べ、労働者の経済的福祉と個人的自由のためにも国民の最低限の生活を保障すべきであるという、ナショナル・ミニマム論を展開しました。これは、「衛生・安全基準」「労働時間の上限」「最低賃金」「義務教育」の4項目から、経済の発展の前提として貧困の予防と生存権の保障を論じたものです。

救貧法及び困窮者救済に関する王命委員会報告

 貧困者の急激な増大に対して、イギリス政府は1909年、新たな救貧法を検討するために「救貧法及び困窮者救済に関する王命委員会」を設置しました。この委員の一人として、シドニー・ウェッブが選ばれています。

 この委員会が出した報告書は、多数派意見と少数派意見に分かれました。多数派は、慈善組織協会のロックが代表的な論者で、困窮者のための新たな救済制度として、貧困は個人の責任であるという新救貧法の精神を引き継ぐべきであるとし、ソーシャルワークの技術を取り入れ、慈善活動を推進し発展させることによって、救済を進めていくべきであるとしました。

 これに対して、ナショナル・ミニマム論を提示したシドニー・ウェッブが代表的論者である少数派の意見は、貧困は個人の責任によって生じるというより、社会の仕組みがもたらしているものであるから、社会的責任で救済すべきであると主張しました。

国民保険法

 少数派報告の意見は、国民にすぐには受け入れられませんでしたが、ウェッブ夫妻は啓蒙活動を全国的に展開していきました。その後の総選挙によって、労働者階級を含む政党が勝利し、様々な社会保障関連の法律が成立していきました。その一つが1911年の国民保険法です。この法律は健康保険と失業保険から成り、社会保険によって病気や失業による貧困から国民を守ろうとするもので、イギリス救貧法体制の改革を目的として制定されました。

ベヴァリッジ報告

 1942年には、第二次世界大戦後のイギリスの社会保障体制のあり方についてベヴァリッジ報告が出されました。これは、ナショナル・ミニマムの具現化のために、戦後実現されるべき「社会保障計画」を具体的に提言したものです。

 この報告書では、「窮乏」「疾病」「無知」「不潔」「怠惰」の5巨悪に対して、均一拠出・均一給付という「社会保険」を中心に、国が責任をもってナショナル・ミニマムを達成すべきであるとし、これを「公的扶助」と「任意保険」で補うという考え方を提示しました。

 この報告書の提言をもとに、第二次世界大戦後のイギリスの社会保険の枠組みが構築されました。その後、イギリスは、ゆりかごから墓場までといわれる老齢、疾病、障害、失業等をすべて包含した福祉国家体制を築き上げていきました。

ナショナル・ミニマム論ウェッブ夫妻が『産業民主制論』で提唱。国民の最低限の生活の保障を論じた
王命委員会報告救貧法を継承すべきとする多数派報告と、社会全体でナショナルミニマムを保障すべきとする少数派報告を提示
国民保険法健康保険と失業保険から成る法律
ベヴァリッジ報告ナショナル・ミニマムを具現化するための包括的な「社会保障計画」を提言。「社会保険」を中心に、「公的扶助」と「任意保険」で補うという考え方を提示

大きな政府

 次に、福祉と経済との関係をみていきましょう。国家が経済に積極的に介入するという考え方を「大きな政府」といいます。資本主義国家は利潤の追求が目的なので、必然的に貧富の差が生まれます。その格差を少しでも縮小するために国家は経済に介入すべきであるとしたのが経済学者のケインズです。

 このケインズ理論を採用したのが、アメリカのルーズベルト大統領です。1929年の世界大恐慌のために失業者が急激に増加した状況に対して、国家として大規模な公共事業を実施して失業者を救済するという「ニューディール政策」を採用しました。この政策によって経済が活性化し大恐慌を乗り切ることができました。

 イギリスは、ベヴァリッジ報告に基づいて、国が責任を持ってナショナル・ミニマムを実現するという「大きな政府」の理念に基づいて福祉国家を建設し発展させていきました。世界の各国もイギリスに倣って福祉国家建設に邁進していきましたが、1973年のオイルショックを契機に、世界全体の経済が停滞し、「大きな政府」に代わって「小さな政府」が提唱されるようになりました。

小さな政府

 小さな政府とは、国家は経済に介入せず、経済は新自由主義に基づく競争原理によって活性化すべきであるという考え方です。新自由主義とは、自由な経済活動と自由競争による市場経済の仕組みで、自己責任を重視する価値観に基づく立場です。

 この小さな政府の理論的根拠となったのは、新自由主義経済の考え方とハイエクの福祉国家批判で、この小さな政府を採用したのが、イギリスのサッチャー政権とアメリカのレーガン政権です。新自由主義を採用したサッチャー政権は、社会福祉への公費支出の削減と民間導入、効率重視等を推し進めました。その結果、福祉サービスの質の低下、格差の拡大などが生まれ、労働者階級の不満が蓄積されていきました。

第三の道

 その後、イギリスはサッチャー政権からブレア政権に代わり、ブレア政権は、アンソニー・ギデンズの提唱する「第三の道」を採用しました。「第三の道」とは、大きな政府でもなく小さな政府でもなく、それらを超えた道という意味で、福祉国家を再建するためには教育と職業訓練による人的投資を行い、労働によって福祉を実現するという積極的な福祉のあり方を意味します。従来の金銭給付から、労働による自立を重視した「ワークフェア」すなわち「労働による福祉」という考え方です。

大きな政府国は経済に積極的介入
(ケインズ理論)
ニューディール政策、イギリスのっ福祉国家政策として採用
小さな政府国は市場に介入しない
(新自由主義)
サッチャー政権が採用
第三の道教育・職業訓練による人的投資
(ギデンスの理論)
ブレア政権が採用

ヤングハズバンド報告

 次に、イギリスにおけるコミュニティケアに関する報告書を中心に取り上げていきましょう。「ヤングハズバンド報告」は、1959年に『地方自治保健・福祉サービスに関する調査委員会報告書』として出されたソーシャルワークの機能に関する報告書です。ソーシャルワーカーの専門性を高めるために、養成・研修コースを開設すべきこと、ソーシャルワーカーの雇用を増加することの必要性を提言しました。

シーボーム報告

 シーボーム報告は、1968年に『地方自治体と対人社会サービスに関する報告』として出されたもので、それまで縦割で行われていた福祉行政の窓口を、地方自治体に一元化させ統合すべきであるという提言を行いました。その結果、1970年に「地方自治体社会サービス法」が制定され、行政地区が再編されて従来の保健・福祉・児童の3部門が統合されて、地方自治体にコミュニティの基盤としての機能を持つ「対人社会サービス部」が設置され、統合的・包括的サービスが提供されるようになりました。

ウルフェンデン報告

 ウルフェンデン報告は、1978年に『民間非営利団体の将来』として出され、福祉供給体制として、公的部門、民間非営利部門、民間営利部門、インフォーマル部門による多元的な供給主体の必要性を訴え、民間営利部門を含めた福祉供給体制の多元化を提唱しました。

バークレー報告

 バークレー報告は、1983年に『コミュニティソーシャルワーカーの役割と任務』として出されたもので、コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践である「コミュニティソーシャルワーク」を提唱して、ソーシャルワーカーの重要性を指摘しました。

グリフィス報告

 グリフィス報告は、1988年に『コミュニティケア:行動計画』として出されたもので、福祉サービスの経営の効率化、民間サービスの導入、ケアマネジメント、計画策定、苦情処理システムを提言しました。

 この報告書を受けて策定されたのが、1990年制定の「国民保健サービス及びコミュニティケア法」です。これにより、地方自治体が必要なサービスを多様な供給主体から購入し、継ぎ目のないサービスを提供する体制が整えられていきました。

イギリスにおける報告書
ヤングハズバンド報告1959年。ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設し専門性を高めることを提言
シーボーム報告.1968年。地方自治体における対人社会サービスの一元化を提言
ウルフェンデン報告1978年。福祉供給体制の多元化を提唱
バークレー報告1983年。ソーシャルワーカーの重要性を指摘
グリフィス報告1988年。経営の効率化等を提言

 いかがでしたか。次回は「地域福祉の理論と方法」を取り上げます。では、第22回の精神保健福祉士の国家試験問題から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「現代社会と福祉」

問題25 「ベヴァリッジ報告」に関する次の記述のうち、 最も適切なもの1つ選び なさい。

  • 1  福祉サービスの供給主体を多元化し、 民間非営利団体を積極的に活用するように勧告した。
  • 2   従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」路線を選択するように勧告した。
  • 3  ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設して、 専門性を高めるように勧告した。
  • 4  衛生•安全、 労働時間、賃金、 教育で構成されるナショナル・ミニマムという考え方を示した。
  • 5  社会保障計画は、 社会保険。 国民扶助、 任意保険という三つの方法で構成されるという考え方を示した。