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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第12回 「社会理論と社会システム」

 皆さん、こんにちは。今回は「社会理論と社会システム」を取り上げます。この科目は出題範囲が広く理論的な理解が求められるので、苦手意識を持っている受験生が多いかもしれませんが、社会変動に伴う社会の仕組みの変化やそれぞれの時代に生きる人々の意識の変化、ライフスタイルの変化、現代社会の諸課題など、現代に生きる私たちにとって、とても身近な科目です。

 現代社会が抱えるさまざまな問題の影響を受けて困難を抱えている人々を援助する精神保健福祉士として、社会に対するより深い洞察力と分析力を養い、よりよい援助者となるために、学ぶ楽しさを体験していただき、理解を深める一助となればと願っています。
 では、最初に前回の課題を解説していきましょう。

第22回精神保健福祉士国家試験  「心理学理論と心理的支援」

問題9  パーソナリティの理論に関する次の記述のうち、 正しいもの1つ選びなさい。

  • 1  クレッチマー(Kretschmer. E.)は、 特性論に基づき、 体格と気質の関係を示した。
  • 2  ユングOung,C.)は、 外向型と内向型の二つの類型を示した。
  • 3  オールポート(Allport,G.)は、 パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
  • 4  キャッテル(Cattell,R.)は、パーソナリティをリビドーにより説明した。
  • 5  5因子モデル(ビッグファイブ)では、 外向性、 内向性。 神経症傾向、 開放性、 協調性の5つの特性が示されている。


正答2

解答解説

  • 1 誤り。クレッチマーは、「類型論」に基づき、体格と気質の関係を示しました。クレッチマーは、精神障害者とのかかわりのなかから、体型と精神疾患の種類との関係性に着目して分類しました。体型が細長型の場合は統合失調症患者に多く、非社交的で生真面目、過敏で神経質な傾向がみられるとし「分裂気質」と名づけました。体型が肥満型の場合は、躁うつ患者に多く、社交的で親切なときと物静かなときがあるとして、躁うつ(循環)気質と名づけました。身体つきががっちりしていて筋肉質の闘士型の場合は、てんかん患者に多く、几帳面で物事に凝る傾向があり、興奮したり激怒しやすいとして、粘着気質と名づけました。
  • 2 正しい。ユングは、人間の心的エネルギーが向かう方向によって性格を分類しました。心的エネルギーが外側に向かう型を「外向的」とし、心的エネルギーが内側に向かう型を「内向的」としました。さらに、心的活動の機能を「思考」「感情」「直感」「感覚」に分類し、「外向的」な性格は、客観的、現実主義的、外的状況に自分を合わせる特徴を持つとし、「内向的」な性格は、独創性、独善的、感受性が強いという特徴を持つとしました。
  • 3 誤り。オールポートは、特性論の立場から性格を、誰でも持っている共通特性と個別に有する個別特性に区別し、それを表現する表出的特性と態度的特性に分類しました。オールポートは個人のパーソナリティの特徴を視覚化した「心誌(サイコグラフ)を開発し、彼の理論は心理検査の質問紙法の基礎となりました。
  • 4 誤り。キャッテルは、パーソナリティを因子分析によって説明しました。個人の性格について「表面特性」とその背後にある「根源特性」を選び出して、情感の豊かさ、支配性、自我の強さ等16の因子を抽出し、それぞれの因子をどれだけ獲得しているかという度合いを示してパーソナリティを説明しました。パーソナリティをリビドーで説明しようとしたのは、精神分析学者のフロイト(Freud,S)です。
  • 5 誤り。5因子モデル(ビッグファイブ)では、人間が共通して持っている性格特性を、神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性の5つに分類した理論です。「神経症傾向」は刺激やストレスに敏感で不安や緊張が強い、「外向性」は社交性があり活発で積極的である、「開放性」は知的好奇心が強く想像力が旺盛で新しいものに親和性がある、「調和性」は他人の利益を求め共感性が高い、「誠実性」は勤勉で自己コントロール力があり意思や責任感が強いとしています。

 いかがでしたか。「心理学理論と心理的支援」は、記憶、学習理論、発達理論、ストレス、心理検査、心理療法などの頻出分野についても、十分に学習しておきましょう。では、今回の「社会理論と社会システム」に入っていきましょう。出題基準に沿って、過去問の出題傾向を分析しながら、分野ごとに対策を立てていきます。

現代社会の理解

 【社会システム】の分野では、社会現象をシステムとしてとらえる考え方や、社会の文化や規範、社会の構造や発展に伴う社会意識の変化等についての理解を深めておきましょう。
階級と階層の概念の違い、社会移動における垂直移動・水平移動・世代間移動・世代内移動等の意味、経済指標と社会指標の違い、社会指標を用いた調査の目的等についても学習しておきましょう。社会の福祉水準を測定する指標として、幸福度指標、所得格差指標等が出題されています。わが国の就業構造等も出題されていますので気をつけておきましょう。

 【法と社会システム】の分野では、法と社会規範、法と社会秩序について理解しておきましょう。ノネとセルズニックの法モデル、ウェーバーの支配類型論等が定番問題です。私たちの生活の秩序と法が、どのようにかかわっているのか、合法的支配や法治国家の意味について、また抑圧的法、自律的法、応答的法のそれぞれの違いについてもよく学習しておきましょう。

 【経済と社会システム】の分野では、市場や交換・互酬性の概念、現代社会における働き方、成果主義や均等処遇、裁量労働制やフリーター、ワーク・ライフ・バランス等の概念を理解しておきましょう。

 グローバル化や産業構造の仕組みの変化に伴って、労働形態、労働環境が大きく変化しています。ジニ係数、完全失業率、有効求人倍率、非正規雇用、同一労働同一賃金、男女間の賃金格差等が出題されています。働き方改革も進められていますから、日々のニュースにも注意をしておきましょう。

 市場と消費の分野からは、消費社会論が取り上げられています。ロストウ、ガルブレイス、リースマン、ヴェブレン、ボードリヤールの消費論について、それぞれの理論のポイントを押さえておきましょう。

 【社会変動】の分野は、近代化や産業化、情報化による社会の変化と特質を整理しておきましょう。デュルケム、ヴェーバー、テンニース等の出題実績があります。社会の変化は、家族やライフサイクル等にも影響を与えています。社会生活の各分野に、社会変動がどのような影響をもたらしているか、という視点で学習しておくとよいでしょう。

 【人口】の分野では、人口の概念、人口構造の変化、少子高齢化など、現代の人口問題や実態について押さえておきましょう。人口転換、世界人口予測、世界の人口増加の要因、わが国の人口減少の実態、人口ボーナスと人口オーナス、わが国の少子化の実態、合計特殊出生率、平均寿命、65歳以上人口割合等について確認しておきましょう。

 人口の概念、人口構造の変化、少子高齢化など、現代の人口問題や実態について押さえておきましょう。人口統計で用いられる基本用語の定義や人口の実態等、社会保障・人口問題研究所等のホームページで確認できますので、目を通しておくとよいでしょう。

 【地域】については、地域やコミュニティの概念、都市化と地域社会の変化、過疎問題、地域における集団や組織について学習しておきましょう。ウェルマンのコミュニティ解放論、都市化や限界集落、わが国のコミュニティ政策の展開等について理解を深めておきましょう。

 【社会集団及び組織】の分野では、第一次集団と第二次集団の違い、フォーマルグループとインフォーマルグループ、ゲマインシャフトとゲゼルシャフト、準拠集団、コミュニティとアソシエーション等が出題されています。近代化に伴って、集団の性格がどのように変化していったかを押さえておきましょう。また、ウェーバーの官僚制論や官僚制の基本的特性、官僚制の逆機能等についても理解しておいてください。

生活の理解

 【家族】の分野では、家族の概念、時代の変遷による家族の変容、家族構造や家族形態、家族の機能の変化等が出題されています。定位家族、生殖家族、核家族、拡大家族、直系家族、複合家族等の家族形態を理解しておきましょう。また、国民生活基礎調査による家族形態を、世帯人員別、世帯類型別、65歳以上世帯の特徴等を含めて確認しておきましょう。

 【生活の捉え方】の分野からは、ライフサイクル、ライフコース、家族周期、コーホート、ライフイベント等の概念等が出題されています。生活様式の多様化に伴って生まれてきたライフコースの概念や、生活時間や生活の質、消費の捉え方などについても学習しておきましょう。

人と社会との関係

 【社会関係と社会的孤立】の分野では、現代社会における人間関係の希薄さと孤立に対して、ロバート・パットナムの社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の概念を理解しておきましょう。

 【社会的行為】の分野では、ウェーバーによる「価値合理的行為」と「目的合理的行為」の意味、ハーバマスの「コミュニケーション的行為」「戦略的行為」、パーソンズの主意主義的行為論等について理解を深めておきましょう。ウェーバーの理解社会学や合理的選択理論等も出題されています。

 【社会的役割】の分野からは、役割期待、役割演技、役割葛藤、役割距離、役割取得、他者や社会から求められる役割と個人の役割遂行との関係、役割と自我の形成等の考え方を整理しておきましょう。

 【社会的ジレンマ】の分野については、個人の合理的行為とそれがもたらす集団への結果、フリーライダー、創発特性、選択的誘因、共有地の悲劇、囚人のジレンマ等について、それぞれの意味をよく理解しておきましょう。今回はこの分野を中心に取り上げていきます。

社会問題の理解

 【社会問題の捉え方】では、犯罪や逸脱の捉え方についての理解を深めておきましょう。ラベリング理論、構築主義、社会統制論、緊張理論、文化学習理論等の出題がありました。社会病理や逸脱の考え方を理解しておきましょう。

 【具体的な社会問題】では、ジェンダー、環境問題、貧困問題、失業、非行、社会的排除、ハラスメント、DV、児童虐待、いじめなど、現代の社会のおける諸問題についての出題があります。貧困の概念と測定方法、ラウントリーやタウンゼントの貧困の概念、ジニ係数、相対的貧困率などの定義や意味、実態を把握しておきましょう。

 以上、全体を概観してきましたが、今回は「社会的ジレンマ」の概念を中心に取り上げていきます。

囚人のジレンマ

 まず、囚人のジレンマについてみていきましょう。囚人のジレンマとは、相手の出方を知ることができない状況のなかで、自分の利得のために自分が「ある行為」を選択した場合、その結果が相手の出方によって変化し、「利得を得る」ことができるか、あるいは「損失を生じる」ことになるかわからないという状況の下で、「自分が最も大きな利得を得る」ために、どういう選択をするのが一番よいかということを見極めることが困難であることをいいます。自分が最も大きな利益を得るための行為を、「利得の最大化」といいます。

 たとえば、共犯で強盗をした2人の囚人が別々の部屋で取り調べを受けており、「2人とも黙秘を続けた場合」は、それぞれ1年の懲役刑になる、「2人とも自白をした場合」は、2人とも5年の懲役刑になる、「片方が自白し、片方が黙秘を続けた場合」「自白をした者」は5年の懲役刑になり、「黙秘を続けた場合」は20年の懲役刑になると決まっているとします。

 このような状況の場合、それぞれ、相手がどのような行動を取るかがわからないので、それぞれが自分にとって最も得をするような合理的な選択、すなわち「利得が最大化」になる行為を選択していると思っても、その選択の結果は、最善のものになるわけではありません。これが「囚人のジレンマ」という理論です。

共有地の悲劇

 囚人のジレンマが、2人の囚人のそれぞれの利得の最大化を目指した行為の結果は、最善のものになるわけではないという理論であるのに対して、共有地の悲劇は、集団の規模が大きくなった場合に、共有資源を使用している一人ひとりが、利得の最大化を目指した行為を選択した結果が何をもたらすかという理論で、ハーディン(Hardin,G)はこれを、「共有地の悲劇」と名づけました。

 資源へのアクセスが誰にとっても平等であるため、多数者が利用できる資源を共有資源といいます。この共有資源が、乱獲されることによって、資源の枯渇を招いてしまいます。これを共有地の悲劇といいます。

 誰でも使える土地に牛を放牧して生計を立てている人々が、自分の利得を求めて、牛の数を際限なく増やしていくと、結果的に牛が食べる草が無くなってしまい、牧草地は荒れ果てて使えなくなってしまいます。自分の利得を最大化して合理的な判断を行った結果、共有地は使えなくなってしまうという悲劇が起こります。漁業における乱獲などもこれに当たります。

社会的ジレンマ

 社会的な状況において、個人の利益が大きい「非協力」を選択すると、結果的に「社会全体の不利益」を引き起こすことを「社会的ジレンマ」といいます。逆に、社会を構成するメンバーの全員が、個人的には不利益である「協力」を選択すると、「社会全体の利益」を引き起こし、結果的には、すべての個人にとって受ける利益が大きくなります。

 たとえば、一人ひとりが短期的には快適で便利な生活を営むことを選択することで、長期的には、地球温暖化などの社会的不利益がもたらされる、というようなことです。
逆に、個人が、短期的には利益にならないと思われる、環境に対して配慮ある行動を選択することによって、長期的には地球環境の持続性が保たれ、結果的には社会的利益がもたらされることになります。

フリーライダー

 社会的ジレンマを解消することを妨げている要因として、フリーライダーを挙げることができます。集団の中で、自分は貢献をしないで、恩恵だけを受けようとする行動を選択することを「非協力の選択」といい、このような行動をとる者のことを、「フリーライダー」といいます。公共財やサービスを使用する場合、自分は対価や犠牲を払うことなく、利益だけを受ける人のことです。

囚人のジレンマ自分の行為選択の利得が相手の出方によって増減する状況下で、相手の出方がわからない場合、どういう選択をするかというジレンマ
共有地の悲劇資源へのアクセスが誰にとっても平等であるため、多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって、資源の枯渇を招いてしまうこと
社会的ジレンマ社会的な状況において、個人の利益が大きい「非協力」を選択すると、結果的に「社会全体の不利益」を引き起こすこと
フリーライダー公共財やサービスを使用する場合、自分は対価や犠牲を払うことなく、利益だけを受ける人のこと

社会的ジレンマの解消

 では、社会的ジレンマはどのように解消できるでしょうか。フリーライダーを生みださず、個人の利得の最大化だけを求めて、結果的に社会ジレンマを引き起こすような状況を解消するためには、外的誘因である「選択的誘因」と内的誘因である「規範意識」が考えられています。

選択的誘因の提示

 個人が集団の中で、自己の利得の最大化を図ろうとし、結果的に社会的ジレンマを引き起こすという状況を解消するために、集団への非協力的行動に対しては「罰」を与え、協力的行動に対しては「報酬」を与えることによって、協力的行動を引き出すという方法を、アメリカの経済学者であるオルソン(Olson,M)は「選択的誘因」として提示しました。合理的判断による誘因の仕組みとして「賞」や「罰」を与えることです。

 たとえば、街を清潔に保つために、ゴミを街に捨てないで自分で持ち帰って処理する人には報酬を与え、ゴミを捨てていってしまう人には何らかのペナルティを与えるというような方法です。ただ、この方法は、報酬を与えるための費用が生まれ、また、罰を与えるための基準や仕組み作りが必要になるため、コストが発生するという課題が生まれます。

規範意識の醸成

 選択的誘因が、本人の外部にその解決策を見出そうとしているのに対して、規範意識は、本人の内面にその解決策を見出そうとするものです。自分の利益だけを優先する功利主義的な考え方では、集団に対する個人の協力行動を引き出すのは困難であるため、規範意識を育てることによって、協力的行動を引き出そうとする考え方です。

 社会規範を内面化させ、価値観として、適切な行為と不適切な行為を自覚させて、適切な行動をとることを選択できるようにすることです。たとえば、道路にゴミを捨ててはいけない、人のものを盗んではいけない等の規範意識を養うことによって、個人の協力的行動を生みだし、社会的ジレンマを解消しようとする考え方です。

 また、オルソンは、内的誘因として精神的誘因というものを提示し、目的価値の誘因と、連帯的価値の誘因に分類しました。目的価値の誘因とは、集団や社会に自分自身が貢献するということに価値を見出し、達成感を感じるという誘因です。連帯的価値の誘因とは、集団や社会に貢献することによって生まれる、連帯感や帰属感を味わうことができるという誘因です。社会的ジレンマを解消するためには、このような精神的誘因が必要であるとしました。

社会的ジレンマの解決外的誘因としての「選択的誘因」の提示と、内的誘因としての「規範意識」の醸成
選択的誘因の提示合理的判断による誘因の仕組みとして「賞罰を与える」こと
規範意識の醸成社会規範を内面化させ、価値観として、適切な行為と不適切な行為を自覚させて、適切な行動をとることを選択できるようにすること

 いかがでしたか。「社会理論と社会システム」の受験対策は、人物や業績の単なる暗記にとどまらず、社会全般を多角的な視点でとらえて深い理解力を培うことによって、受験のための本当の底力をつけていくことになります。これからもさらに学習を重ねて、学ぶ楽しさを体験していただければと願っています。次回は「現代社会と福祉」を取り上げていきます。

 では、第22回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、挑戦してみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「社会理論と社会システム」

問題20  次のうち、「囚人のジレンマ」に関する記述として、 最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1  合理的な仕組みに対して過剰な執着を持つ状況を指す。
  • 2  一定期間、 閉鎖的・画ー的に管理された場所で生活する状況を指す。
  • 3  協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず、 非協力への個人的誘因が存在する状況を指す。
  • 4  二つの矛盾した命令を受けているため、 そのいずれも選択することができない状況を指す。
  • 5  非協力的行動を行うと罰を受け、 協力的行動を行うと報酬を得ることで、 協力的行動が促される状況を指す。