メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第11回  「心理学理論と心理的支援」

 皆さん、こんにちは。お元気ですか。梅雨に入り天候が変化しやすく落ち着きませんが、体調管理に留意しながら、合格を目指して頑張っていきましょう。今回は「心理学理論と心理的支援」を取り上げます。では、まず前回の課題の解説をしておきましょう。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「人体の構造と機能と疾病」

問題5  1978年にWHOが採択したアルマ・アタ宣言に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1  先進国と開発途上国間における人々の健康状態の不平等について言及している。
  • 2  政府の責任についての言及はない。
  • 3  自己決定権についての言及はない。
  • 4  保健ニーズに対応する第一義的責任は、 専門職個人にあると言及している。
  • 5  地域、 国家、 その他の利用可能な資源の活用についての言及はない。


正答1

解答解説

  • 1 正しい。人々の健康状態に関して、特に「先進国と発展途上国間にみられる大きな格差」を取り上げ、「人々の健康に関してとりわけ先進国と発展途上国の間に存在する大きな不平等は国 内での不平等と同様に、政治的社会的経済的に容認できないものである」「新国際経済秩序に基づいた経済社会開発は、すべての人々の健康を可能な限り達成し、先進国と発展途上国の健康状態の格差を縮小するために基本的な重要なことである」として、先進国と発展途上国間にみられる大きな健康格差の解消を訴えています。
  • 2 誤り。「政府は、国民の健康に責任を負っているが、これは適切な保健及び社会政策の保証があって初めて実現される」「政府、国際機関および世界中の地域社会にとって、今後約20年の主要な社会的目標は、西暦2000年までに、世界中の全ての人に、社会的、経済的に生産的な生活を送ることができるような健康水準を達成することである」として、政府の責任を明記しています。
  • 3 誤り。「人々は個人または集団として自らの保健医療の立案と実施に参加する権利と義務を 有する。」「自助と自己決定の精神に則り、地域社会の全ての個人や家族の全面的な参加があって、はじめて彼(女)らが広く享受できうるものとなる」として、自己決定権を重視しています。
  • 4 誤り。「地域や後方支援レベルにおいても、保健医療チームとして働くために、地域社会が求める保健ニーズに応えるために、社会的にも技術的にも適格に訓練された保健ワーカー、すなわち、医師、看護婦、助産婦、補助要員、可能であれば地域ワーカーや、必要によっては伝統治療師たちの力を必要とする」としており、個人ではなく、保健医療チームとして取り組むべきことを提示しています。
  • 5 誤り。「地域、国家、その他の利用可能な資源を最大限利用し、地域社会と地域住民が最大限の自助努力を行い、プライマリ・ヘルスケアの計画、組織化、実施、管理に参加することが重要であり、これを推進する。そして、この目標のために、適切な教育を通じて地域住民がこれに参加する能力を開発する」「すべての政府は、プライマリ・ヘルスケアを、他の部門と協力し、包括的国家保健システムの一部として着手し維持していくために、国家の政策、戦略、および行動計画を作成すべきである」「この目的のために政治的意思を実行し、国内資源を動員し、利用可能な外部資源を合理的に活用することが必要である」として、社会資源の活用に言及しています。

 いかがでしたか。「人体の構造と機能及び疾病」では、心身の構造と機能、疾病と障害等もよく学習しておきましょう。では、今回の「心理学理論と心理的支援」について、出題基準と過去問の分析によって出題傾向を把握し、対策を立てていきます。

人の心理学的理解

 この分野は、心理学の基礎的な知識を押さえておきましょう。【心と脳】の関係については大脳の各部位の役割を、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、小脳等の機能について確認しておきましょう。

【情動と情緒】【欲求・動機付け】

 情動と情緒については、「気分」「情動」「感情」の違い、欲求と動機づけ、原因帰属等が出題されています。内発的動機づけ、外発的動機づけ、マズローの欲求階層説、達成動機等の意味や内容をよく理解しておきましょう。

【感覚・知覚・認知】

 感覚・知覚・認知は、出題率が高い分野です。知覚の体制化、知覚的補完、知覚の恒常性、適刺激、暗順応、錯視、仮現運動、運動残効、図と地の分離、奥行き知覚、パターン認知等が出題されていますので、よく学習しておきましょう。

【学習】

 オペラント条件づけ、レスポンデント条件づけの実験と具体例、刷り込み、観察学習、洞察学習と試行錯誤等、学習形成における具体的な実験が出題されています。それぞれの実験の内容と学習理論を押さえておきたいものです。

【記憶】

 記憶については、作動記憶、自伝的記憶、手続き記憶、長期記憶、エピソード記憶、意味記憶、展望記憶等、出題パターンは決まっているので、記憶の種類と内容を整理しておきましょう。

【知能・創造性・人格・性格】

 収束的思考と拡散的思考、結晶性知能と流動性知能、知能指数の算出方法、ウェクスラー版知能検査とビネー知能検査等が出題されています。人格・性格論の分野は、類型論と特性論の違い、ユング、クレッチマー、シュプランガー、オールポート等を整理しておきましょう。今回は後ほど、この分野について解説していきます。

【集団】

 集団については、社会心理学的視点から、集団の凝集性や集団規範、集団思考、同調や社会的手抜き、アナウンスメント効果などの内容、ソシオメトリー、リーダーシップ論等を、また教育心理学的視点からの、ピグマリオン効果なども整理しておきましょう。社会的ジレンマ、傍観者効果、同調、コーシャスシフト等も出題されています。

【適応・人と環境】

 適応の分野からは、防衛機制(適応規制)の出題がみられます。抑圧の考え方、知性化、転換、打ち消し、合理化、反動形成、昇華等を、具体例で出されても解答できるようにしておきましょう。

 人と環境については、あまり出題率が高い分野ではありません。コミュニティ心理学、犯罪被害者、ひきこもり、学生相談、職場のメンタルヘルス、非行児童等の支援の際の援助の手法や役割を理解しておきましょう。

人の成長・発達と心理

 この分野は、出題率の高い分野です。発達の概念として、成熟優位説、環境優位説、ピアジェ、エリクソンの発達段階説、ボウルビィのアタッチメント理論などについて理解しておきましょう。

日常生活と心の健康

 この分野からは、ストレス対処法(コーピング)、バーンアウト等が出題されています。ストレスとストレッサーの関係、ストレスの症状と対処方法、危機介入、ソーシャルサポート、問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングのそれぞれの意味、外傷後ストレス障害などについても理解しておくとよいでしょう。

心理的支援の方法と実際

【心理検査の概要】

 投影法と質問紙法の違いや、人格検査、発達検査、知能検査、適性検査のそれぞれの検査方法と検査対象について、整理しておきましょう。MMPI,PFスタディ、TAT,WAIS,CMI、ロールシャッハテスト、東大式エゴグラム、内田クレペリン精神検査等の出題実績があります。

【カウンセリングの概念と範囲】

 カウンセリングにおける介入法、心理教育カウンセリング、パーソンセンタード・カウンセリング、認知行動カウンセリング、家族カウンセリング、ピアカウンセリング、マイクロカウンセリング等が出題されています。カウンセリングは、心理療法の技法を応用していますので、心理療法をよく理解することで、カウンセリングについての理解も深まります。

 カウンセリングとソーシャルワークとの関係についてはまだ出題がありませんが、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの業務の違いや視点の違い等を理解しておくとよいでしょう。

【心理療法の概要と実際】

 この分野は大変出題率が高いので、丁寧に学習しておきましょう。認知行動療法、サイコドラマ、解決志向モデル、精神分析、森田療法、暴露療法、動作療法、社会生活技能訓練(SST)、ブリーフセラピー、系統的脱感作法、来談者中心療法、自律訓練法、家族療法等が出題されています。遊戯療法、箱庭療法、内観療法等も含めて、それぞれの内容と理論をよく把握しておきましょう。

 以上、出題基準をもとに過去の出題実績を通して、出題傾向の分析と対策についてみてきました。では、今回はパーソナリティ理論について取り上げていきます。

パーソナリティ理論の分類

 パーソナリティ理論には、「類型論」と「特性論」があります。類型論とは、人間の性格をいくつかの典型的な「型」に当てはめて理解しようとする方法です。特性論とは、人間の性格の特徴をどの程度持っているかによって、理解しようとする方法です。

 「類型論」は、性格を直感的、全体的に把握することができますが、固定的に分類してしまいやすく、類型に当てはまらない中間の型や類型が混合している場合は類型化できないという欠点があります。

 「特性論」は、一人ひとりの特性が理解しやすいという長所があります。特に類型論と異なるのは、中間に位置する人格も個別に分類することが可能です。ただ、特性を詳細にみるため全体性に欠けるという欠点があります。

 「類型論」に該当するのは、クレッチマー、シェルドン、ユング、シュプランガー等がいます。「特性論」に該当するのは、オールポート、キャッテル、アイゼンク等がいます。

クレッチマー

 まず、類型論からみていきましょう。クレッチマーは、精神障害者とのかかわりのなかから、体型と精神疾患の種類との関係性に着目して分類しました。

 体型が細長型の場合は、統合失調症患者に多く、非社交的で生真面目、過敏で神経質な傾向がみられるとし、「分裂気質」と名づけました。体型が肥満型の場合は、躁うつ患者に多く、社交的で親切な時と物静かな時があるとして、躁鬱(循環)気質と名づけました。身体つきががっちりしていて筋肉質の闘士型の場合は、てんかん患者に多く、几帳面で物事に凝る傾向があり、興奮したり激怒しやすいとして、粘着気質と名づけました。

シェルドン

 シェルドンは、クレッチマーが精神疾患と体型の関係から分類したのに対して、一般的な男性の体型を調べ、胎生期の胚芽の発達の部位によって性格を分類しました。

 体型が「細長型」は「外胚葉型」と名づけ、頭脳緊張型で神経質、過敏、社会的活動に消極的な性格であるとしています。「外胚葉」とは皮膚や爪等を形成する胚葉のことです。
 体型が「肥満型」は「内胚葉型」と名づけ、内臓緊張型で誠実、社交的、リラックスしている性格であるとしています。「内胚葉」とは消化管を形成する胚葉です。
 体型が「筋肉型」は「中胚葉型」と名づけ、身体緊張型で活動的、冒険的、競争的な性格であるとしました。「中胚葉」とは、筋肉や骨格を形成する胚葉です。

ユング

 ユングは、人間の心的エネルギーが向かう方向によって性格を分類しました。心的エネルギーが外側に向かう型を「外向的」とし、心的エネルギーが内側に向かう型を「内向的」としました。さらに、心的活動の機能を「思考」「感情」「直感」「感覚」に分類し、「外向的」な性格は、客観的、現実主義的、外的状況に自分を合わせる特徴を持つとし、「内向的」な性格は、独創性、独善的、感受性が強いという特徴を持つとしました。

シュプランガー

 シュプランガーは、人生に関して何に価値を置くかという基準で、性格を6種類に分類しました。
 「理論型」は、物事を理論的に追求しようとすることに価値を置き、「経済型」は、物事の経済的、効率性を重視し、「芸術型」は、美の追求に価値を置き繊細な感情と物事を感情的に捉える傾向があり、「権力型」は、権力志向が強く他人を支配したり政治的な関心が強い傾向があり、「社会型」は、社会の役に立つことに関心があり、「宗教型」は、神への奉仕や神秘的な事がらに関心を持つ傾向があるとしました。

類型論

特徴 性格を典型的な類型にまとめて理解。直観的、全体的に把握するのに役立つが、性格を固定的にとらえやすい
クレッチマー 体型による分類
細長型(分裂気質)、肥満型(躁鬱気質)、闘士型(粘着気質)
シェルドン 胚葉による分類
細長型(頭脳緊張型)、肥満型(内臓緊張型)、筋肉型(身体緊張型)
ユング 心的エネルギーの向かう方向で分類
内向型と外向型に類型化
シュプランガー 価値観によって理論、審美、経済、宗教、社会、政治の6種類に分類

オールポート

 次に、特性論についてみていきましょう。オールポートは、辞書から性格に関する形容詞を選び出して、その内容を誰でも持っている共通特性と個別に有する個別特性に区別し、それを表現する表出的特性と態度的特性に分類しました。

 オールポートの理論は、心理検査の質問紙法の基礎となりました。また、彼は個人のパーソナリティの特徴を一目でわかるように視覚化した「心誌(サイコグラフ)を開発しました。

キャッテル

 キャッテルは、個人の性格について自己評価、特定状況における客観テス等を用いて、表面特性とその背後にある根源特性を選び出して16の因子を抽出し、この16の因子について、それぞれの因子をどれだけ獲得しているかという程度を、プロフィールで示すことができるようになっています。

 例えば、知能的であるか知能的でないか、情感が豊かであるか貧しいか、自我が強いか弱いか、支配的であるか服従的であるか等の16の因子の程度で性格を分類する方法です。

アイゼンク

 アイゼンクは、パーソナリティは、個別的反応(誤差因子)、習慣的反応(特殊因子)、特性(グループ因子)、類型(一般因子)の4つの階層から成るとして、「内向性―外向性」「神経症的傾向」という因子によって性格を分類しました。この分類は、モーズレイ人格検査の基礎になっています。

ビッグファイブ理論

 ビッグファイブ論は、多くの研究者によって研究され1990年代以降注目されているパーソナリティ論で、人間が共通して持っている性格特性を5つに分類した理論です。

 「神経症傾向」は刺激やストレスに敏感で不安や緊張が強い、「外向性」は社交性があり活発で積極的である、「開放性」は知的好奇心が強く想像力が旺盛で新しいものに親和性がある、「調和性」は他人の利益を求め共感性が高い、「誠実性」は勤勉で自己コントロール力があり、意思や責任感が強いとしています。

特性論

特徴 個々の人間に出現する行動傾向である特性の組合せによってパーソナリティを把握する方法
オールポート 全ての人が持つ「共通特性」と個人が持つ「個人特性」に分類し心誌(サイコグラム)で表現
キャッテル 個人特性と共通特性を、「表面特性」だけでなく「根源特性」を重視し、因子分析の手法を用いて16の基本的因子を抽出して分類
アイゼンク 「内向性―外向性」、「神経症的傾向」という「類型水準」によって分類。人格を階層的構造体として捉えた
ビッグファイブ論 5因子論。人間の性格を「神経症傾向」「外向性」「経験への開放性」「調和性」「誠実性」から構成されるとした

 いかがでしたか。この科目は範囲が広く、最初はカタカナ名に慣れるのが大変だと思いますが、最初からすべて覚えようとするのではなく、まず内容を理解することを大切にして学習していってください。次回は、「社会理論と社会システム」を取り上げます。
 では、今回の課題を、第22回精神保健福祉士国家試験問題からあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回精神保健福祉士国家試験  「心理学理論と心理的支援」

問題9  パーソナリティの理論に関する次の記述のうち、 正しいもの1つ選びなさい。

  • 1  クレッチマー(Kretschmer. E.)は、 特性論に基づき、 体格と気質の関係を示した。
  • 2  ユング(Oung,C.)は、 外向型と内向型の二つの類型を示した。
  • 3  オールポート(Allport,G.)は、 パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
  • 4  キャッテル(Cattell,R.)は、 パーソナリティをリビドーにより説明した。
  • 5  5因子モデル(ビッグファイプ)では、 外向性、 内向性。 神経症傾向、 開放性、 協調性の5つの特性が示されている。