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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第9回 「精神障害者の生活支援システム」

 皆さん、こんにちは。新型コロナ感染症で落ち着かない日々が続きます。最前線の厳しい状況の中で闘っておられる関係者の方々に、心からの敬意と感謝を表します。このようなときだからこそ、今自分にできることに集中していきたいと思います。

 今回は「精神障害者の生活支援システム」を取り上げます。この科目は、精神障害者の生活を支援するために必要な、居住支援や就労支援のシステム、障害者総合支援法における障害福祉サービスと精神保健福祉士の役割についての知識が求められています。精神障害者を地域で包括的に支援するための具体的な方法について、諸制度を含めて十分に学習しておきましょう。では、はじめに前回の課題の解説をしておきます。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「精神保健福祉に関する制度とサービス」

問題67 「医療観察法」における鑑定入院に関する次の記述のうち、正しいもの2つ選びなさい。

  • 1 医学的観点から「医療観察法」に基づく入院による医療の必要性について意見をまとめる。
  • 2 検査・診断のみならず、精神科治療も行われる。
  • 3 「精神保健福祉法」で規定された指定病院において実施される。
  • 4 入院期間は、原則4週間が限度とされている。
  • 5 鑑定は、精神保健審判員が実施する。


正答1、2

解答解説

  • 1 正しい。検察官から審判の申し立てを受けた地方裁判所は、まず精神鑑定のために鑑定入院命令を出します。入院期間は原則として2か月以内で、必要な場合は1か月の延長が可能です。鑑定医は鑑定後、「医療観察法」に基づく入院による医療の必要性について、鑑定結果に医学的見地からの意見を付して地方裁判所に提出する義務があります。
  • 2 正しい。鑑定入院では、検査、診断だけではなく精神科治療も行われます。精神科治療を行うことにより、通院治療が可能であるか、入院治療が必要であるか等の判断が行われます。
  • 3 誤り。「鑑定入院医療機関」は、対象者を鑑定入院させるための施設として取りきめられた精神科病院(総合病院の精神科病棟を含む)のことです。「鑑定医」とは、鑑定入院をした対象者の鑑定を行うように裁判所に命令された医師です。
  • 4 誤り。鑑定入院期間は、原則として2か月以内で、必要な場合は1か月の延長が可能です。
  • 5 誤り。鑑定医は、鑑定入院した対象者の鑑定を行うよう裁判所に命令された医師で、精神保健審判員とは別の医師でなければなりません。

 いかがでしたか。では、今回の「精神障害者の生活支援システム」について、出題基準と過去の出題実績をもとに、頻出分野を中心に傾向と対策をみていきたいと思います。

精神障害者の概念

 この分野からは、精神障害の特性と、精神障害者の生活支援における精神障害の捉え方、仲間同士の交流や活動範囲の拡大、活動や参加の有効性など、精神障害の疾病の特性についての理解を深めておきましょう。また、精神保健福祉法における精神障害者の定義、精神障害者についての各法律上の定義や「社会的障壁」の定義などは、ぜひ覚えておきたいものです。

精神障害者の生活の実際

 精神障害者の生活実態として、厚生労働省調査による精神障害者の現状、外来患者の現状等についての出題実績があります。
 障害者全体に占める精神障害者の割合、外来患者・入院患者の現状、精神障害者の居住状況や就労状況、生活保護受給状況、経済状態などを、障害者白書、福祉行政報告例、衛生行政報告例などで確認しておくとよいでしょう。

精神障害者の生活と人権

 この分野からは、精神障害者の生活支援の理念として、生活者である本人を主体とした生活モデルや、リカバリーの理念、精神障害者の人権として入院形態や退院請求権、個人情報の取り扱い、成年後見制度、障害者虐待防止法、障害者の権利条約等が出題されています。

 具体的な事例での出題に対応できるように、精神障害者の人権にかかわる諸制度について整理し、障害者に対する差別や偏見、障害者虐待の実態と防止対策についても理解しておきましょう。

精神障害者の居住支援

 精神障害者の居住支援は、大変出題率が高い分野です。障害者自立支援制度の居住支援に関するサービス体系や障害者に対する様々な居住支援体制や各種の事業について学習しておきましょう。

 居住支援にかかわる精神保健福祉士の役割や、行政や関係機関、関連職種との連携などについても押さえておきましょう。「障害者総合支援法」に基づく地域定着支援、地域移行支援のための、指定一般相談支援事業等の具体的な内容は頻出分野です。しっかり理解しておきましょう。

精神障害者の就労支援

 居住支援と同様、この分野も大変出題率の高い箇所です。障害者雇用促進法における障害者の雇用促進施策、雇用義務制度、法定雇用率、障害者雇用納付金制度、職業リハビリテーション機関としての公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害者総合支援法における就労支援事業等の諸機関、諸事業の役割と、それぞれの機関に配置されている就労支援のための専門職の役割等について、制度面の正確な知識を習得しておいてください。

 地域障害者職業センターの業務、就労定着支援事業、就労継続支援事業(A型)、就労継続支援事業(B型)、障害者総合支援法・障害者雇用促進法に基づく就労支援等が出題されています。

精神障害者の生活支援システムの実際

 精神障害者の自立と社会参加として、ソーシャル・サポート・ネットワークやピアサポートシステム、クラブハウスモデルなどについても理解しておきましょう。元気回復行動プラン(WRAP)や包括型地域生活支援プログラム(ACT)、IPS、ピープルファースト運動、自立生活センター等も出題実績があります。

 当事者運動、家族会、セルフヘルプグループ、フォーマルサポートとインフォーマルサポート等の概念と具体的実践についても理解を深めておきましょう。

市町村等の行政機関における相談援助

 この分野は、自立支援医療の根拠法、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、市町村の精神保健福祉相談員の精神保健福祉業務等が出題されています。市町村の精神保健福祉相談員に求められる、地域の実態把握、普及啓発活動、相談援助、社会復帰・自立・社会参加への支援、精神障害者保健福祉手帳関連事務、各種社会資源の整備等の、多様な業務を把握しておきましょう。また、障害者自立支援制度における障害者相談支援事業体系とその具体的な内容、基幹相談支援センターの役割等についても理解しておきましょう。

その他の行政機関における相談援助

 この分野からは、精神保健福祉センター、市町村、保健所、精神保健福祉センター、都道府県知事のそれぞれの役割と業務等が出題されています。市町村と都道府県の役割の違いや、様々な障害者を支援する機関の機能の違い、諸事業における専門職の位置づけ等についても十分学習しておきましょう。

 以上、全体を概観してきましたが、今回は、障害者の就労支援について取り上げていきます。

公共職業安定所

 障害者の就労支援機関の一つに、公共職業安定所があります。公共職業安定所は、職業安定法に基づく国の職業紹介機関で、法律上に「公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他この法律の目的を達成するために必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする」「公共職業安定所は、身体又は精神に障害のある者、新たに職業に就こうとする者その他職業に就くについて特別の指導を加えることを必要とする者に対し、職業指導を行わなければならない」と規定されています。

 公共職業安定所の業務は、求職者への職業紹介、雇用保険関係事務、障害者への職業紹介、障害者の職場定着指導、障害者を雇用する事業主への助言、法定雇用率未達成企業への助言・指導、公共職業訓練等のあっせん等を実施します。

地域障害者職業センター

 地域障害者職業センターは、障害者の職業能力評価、職業指導、職業リハビリテーション計画の作成、関係機関への助言、作業体験、職業準備支援、準備講習、生活技能訓練、障害の判定、リワーク支援計画、ジョブコーチの派遣と養成・研修、事業主支援計画の作成と雇用管理の助言、精神障害者総合雇用支援等を行います。

公共職業安定所障害者への職業紹介、職場定着指導、障害者雇用事業主への助言、法定雇用率未達成企業への助言・指導等を実施
地域障害者職業センター障害者の職業能力評価、職業指導、職業リハビリテーション計画の作成、障害の判定、リワーク支援計画、ジョブコーチ派遣・養成・研修、事業主支援計画の作成と雇用管理の助言等

障害者総合支援法に基づく就労支援

 障害者総合支援法に基づく就労支援は、訓練等給付に位置づけられます。訓練等給付の中の就労支援には、「就労移行支援」「就労継続支援」「就労定着支援」の3種類があります。

就労移行支援

 就労移行支援は、一般企業や一般の事業所に就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者等に、生産活動や職場体験などの機会の提供を通じた、就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練や就労に関する相談や支援を行います。利用期間は原則2年で、一般就労した者に対しては6か月の就労定着支援があります。

 就労移行支援には、「一般型」と「養成施設型」があります。
 「一般型」は、就労に必要な知識・技術の習得、就労先の紹介等を行います。具体的には、職場でのマナーや事務機器の使い方等、職場で働くための必要な技術や対人関係における礼儀等を身につけ、実際の就労に近い環境での実践的なプログラムによる就労体験や企業で職場体験、就職のための履歴書作成、面接対策等の支援まで含むきめの細かい就職活動支援を行い、就職後も一定期間、定着支援を行います。

 「養成施設型」は、養成施設で、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、またはきゅう師免許を取得するための支援を行うもので、支援期間は3年又は5年間です。この養成期間を終了すると、それぞれの受験資格が与えられ国家試験を受験することができます。

就労継続支援「雇用型:A型」

 就労継続支援には、「雇用型:A型」と「非雇用型:B型」があります。
 「雇用型:A型」は、企業等に就労することが困難な、継続的に就労可能な65歳未満の障害のある者に、「雇用契約」に基づく生産活動の機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行います。利用期間の制限等はありません。

 具体的には、難病や障害を持つ者が、事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働くという形態です。雇用契約を結ぶ事業所とは雇用関係が発生し、労働基準法に基づく最低賃金が支払われます。この支援を受けて、一般就労に必要な知識や能力を習得できた場合は一般就労を目指すことができます。

就労継続支援「非雇用型:B型」

 就労継続支援「非雇用型:B型」は、通常の事業所に雇用されることが困難な就労経験のある障害者に生産活動などの機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行います。年齢制限や利用期間の制限はありません。

 年齢や体力的な面等で雇用契約による就労が困難な障害者等が対象で、軽作業等の訓練を自分の体調に合わせて短時間から受けることができ、報酬として工賃を受け取ることができます。

就労定着支援

 就労定着支援は、就労に向けた支援を受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者に、一定期間、その事業所での就労の継続を図るために、その事業所の事業主、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整等と、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導、助言等を行います。

 このサービスができた背景には、一般就労した障害者の職場定着率が非常に悪いという実態がありました。環境の急激な変化に適応できずに、結局仕事を辞めざるを得ないという状況を改善するためにできた制度です。

 支援内容は、障害者との相談を通じて日常生活面の課題を把握し、企業や関係機関等との連絡調整、課題解決に向けて必要となる支援を実施します。利用者の自宅や企業を訪問して、月1回以上は障害者と対面して支援します。また、月1回以上は企業訪問を行うよう努めます。

 具体的には、遅刻や欠勤の増加や身だしなみの乱れがみられてはいないか、薬の飲み忘れはないか、就労先で正確な作業が遂行されているか、職場でのコミュニケーションはうまくいっているか等を把握して必要な支援を行い、企業等と連絡調整を行って就労の定着を支援します。

 利用対象者は、生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を利用して一般就労した障害者で、就労に伴う環境変化により、生活面・就業面での課題が生じている者で、一般就労後6か月を経過した者です。利用期間は最長3年で、1年ごとに更新が必要です。

就労移行支援一般就労を希望する65歳未満の障害者に、一定期間就労のための訓練等を行う
就労継続支援A型(雇用型)企業等に就労することが困難な障害者に、雇用契約に基づいて生産活動の機会の提供、知識・能力の向上のために必要な訓練等を行う
就労継続支援B型(非雇用型)通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、生産活動の機会の提供等必要な訓練等を行う
就労定着支援就労移行支援等を利用して通常の事業所に雇用された障害者の就労の継続のため、関係機関との連絡調整、雇用に伴い生じる諸問題への支援を行う

 いかがでしたか。「精神障害者の生活支援システム」では、障害者の生活支援の理念、精神障害者の現状、障害者の居住支援や就労支援、関連諸制度について、具体的な法制度やサービス内容をよく理解しておきましょう。

 今回で専門科目をいったん終わります。次回からは共通科目を取り上げていきます。次回は「人体の構造と機能及び疾病」です。では、第22回の精神保健福祉士国家試験の中から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第22回 精神保健福祉士国家試験 「精神障害者の生活支援システム」

問題75 「障害者総合支援法」に規定される就労継続支援A型の役割に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 求職者に職業を紹介する。
  • 2 職場適応援助者を養成する。
  • 3 雇用契約に基づき就労の機会を提供する。
  • 4 法定雇用率未達成事業所への指導を行う。
  • 5 一般就労の継続のための支援を行う。