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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第2回  本試験までの学習方法について

 皆さん、こんにちは。新年度を迎え、新たな思いでスタートを切られたことと思います。大学の最終学年を迎えた4年生、受験資格取得のために養成校に入学された方、現場で一層責任ある立場に立たれた方等、様々な形で決意を新たにしておられることでしょう。

 大学生の皆さんは卒論や実習、就職活動、現場で働いておられる方々は責任ある仕事との両立、養成校の方々は日々の学習、毎月のレポート提出やスクーリング、現場実習との両立、指導的立場の方は部下の指導や運営管理、残業等との両立、主婦の方々は子育てと仕事と勉強の両立と、どのお立場の方もこれからの受験は時間との戦いになるでしょう。健康に留意して、限られた時間の中で効率よく合格できる力をつけていきましょう。

 皆さん、置かれている状況は異なりますが、精神保健福祉士の国家試験に合格するという目標は一つです。この受験対策講座が、これからの約10か月、初受験の方にとっても、再チャレンジの方にとっても、ともに合格に向かって励まし合い研鑽していける場になるよう、様々な角度から学習を支援していきたいと思っています。
 では、今回は試験までの学習方法と学習計画の立て方について解説していきます。

精神保健福祉士国家試験の性格

 まず、近年の精神保健福祉士の国家試験の結果から、精神保健福祉士の国家試験の性格と特徴を把握しておきましょう。
 前回もみましたが、第22回の合格率は、全科目受験者の場合62.1%、合格ラインは90点、得点率は57.1%でした。共通科目免除受験者の場合は、専門科目80点のうちの合格ラインは40点、得点率は50%でした。

合格率

 全科目受験生の合格率についてみてみると、第19回が62.0%、第20回が62.9%、第21回が62.7%、第22回が62.1%となっており、過去4年は62%台を維持しています。出題形式の変化や問題の難易度に大きな変化がない限り、合格率の約6割という基準は、今後も継続されるのではないかと思われます。

合格ライン

 合格ラインは、最も気になるところですが、第17回が91点、第18回が86点、第19回が91点、第20回が93点、第21回が87点、第22回が90点でした。80点台後半から90点台前半の微増減を繰り返している状況といってよいでしょう。

 合格ラインは、問題の難易度と受験生の実力、および得点率をどの位置に設定するかによって変化します。得点率だけをみると、第16回が50%、第17回が56%、第18回が53%、第19回が55.8%、第20回が52.5%、第21回が53.3%、第22回が50%となっており、50%台で推移しています。

6割の試験

 以上のことからいえることは、全問のうち約6割が解ければ合格できるということです。また、100人のうち60人は合格できるように、問題が作成されている試験であるということができます。逆にいえることは、163問の全問が正解できるような問題は作られていないということです。1科目のうち1~2問は解けない、あるいは解けなくてもよい問題があるということを理解しておきましょう。

完璧を目指さない

 今まで、多くの受験生の学習スタイルをみてきましたが、真面目な人ほど完璧を目指すという傾向が見受けられます。そのため、完璧にできない自分に失望したり自信を失ったりしてしまいやすい傾向にあります。

 「完璧を目指さない」というと、いい加減でよいのか、ということになりますが、そういうことではありません。今までみてきたように、精神保健福祉士の国家試験に合格するためには、163問のすべてを解けなければいけないということではない、ということがおわかりいただけたと思います。つまり、163問のすべてを正解することは求められていないので、完璧を目指す必要はないということを、まず確認しておきましょう。

難問に捉われない

 なぜ、最初にこれを確認する必要があるかというと、完璧を目指すと、過去問を解くとき、全問をすべて理解しなければならないと思い込んでしまい、いわゆる難問といわれる問題に時間をかけてしまって、本来できなければならない問題を、おろそかにしてしまうことに陥りがちだからです。

出題の構成

 試験問題の構成についてみていくと、このことがよくわかります。問題の構成は、精神保健福祉士として当然知っていなければならない基礎的な内容の問題が約5割、それらの知識を応用して実践で活かせるかどうかという応用力を問う問題が約2割、新制度や時代の動向を正確に把握しているかという問題が約1割で、そのほかの約2割は、落とすための問題と考えていいでしょう。

 つまり、全問のうち25問から30問近くは、いわゆる難問といわれる、落とすための問題も入っているということです。専門科目、共通科目それぞれ15問ほどは、1回限りのきわめて時事性の高い問題や、聞いたことのない人物や理論が出題されることがあります。

 このような問題構成になっていますから、受験対策としては、「必ず得点させるために作られている基礎的な問題」に対応できる内容を、十分に学習することがまず基本になります。次に、それらの知識を応用することができる力をつけていくこと、最後に新制度や時代の動向についてデータ関係を含めてチェックする、という学習を行っていくのがよいでしょう。過去問を解いていくとき、落とすためのいわゆる難問、落とし問といわれる問題に時間をとられないように注意しましょう。

共通科目は理解を中心に

 また、受験生に共通してみられる傾向として、専門科目は何とかなりそうだが、共通科目が苦手で不安だという方が多いことです。これは、共通科目は暗記力ではなく、理解力が求められるのがその理由かもしれません。

 例えば、単純に言葉や人物・業績を暗記しても、それらの歴史的背景や意味、理論に対する理解が無ければ、本試験に対応できる力にはなりません。学習のしかたのコツは、「暗記する前にその内容をよく理解すること」です。よく理解したあとに、その知識を定着させるために暗記していくと、記憶が定着しやすくなります。

学習の進め方

 学習の進め方には、大きく分けて2つあります。1つは、テキストなどを最初から読み進めて、全体の概観を知ってから、問題を解いていく方法です。この方法は、知識を満遍なく網羅して学習できるという長所はありますが、重要なポイントがどこなのか把握できないため、漫然とした学習になってしまいやすいという短所があります

 もう1つの方法は、まず問題を解いて出題の傾向を把握してから、テキストなどで理解を深めていく方法です。この方法は、ポイントを把握しやすいという長所がある反面、全体の流れがつかめず知識がバラバラになってしまいやすく、内容相互の関連が把握できにくいこと、問題に出題されていない分野は見落としやすいという弱点があります。

インプットとアウトプット

 では、どのような学習がより効率的で効果的なのでしょうか。これはどちらか一方の方法だけというより、両方をうまく組み合わせて行うことが大切です。テキストを読んで理解することは「インプット」になります。学習した内容について、本当に理解したかどうか問題を解いて確かめることは「アウトプット」になります。この「インプット」と「アウトプット」を、絶えず繰り返しながら理解を深めていくことが、最も効率的で効果的な学習方法です。

 まず一度、第22回の精神保健福祉士の国家試験を解いてみましょう。第22回の163問を一通り解いてみると、案外簡単だと思われる問題もありますし、聞いたことのない言葉や人物が出てきて戸惑う問題もあり、本試験のレベルを体験できます。試験問題は、社会福祉振興・試験センターに掲載されています。実際解いてみると、案外解きやすいと思った科目、まったく歯が立たなかった科目に分かれるかもしれません。

 これから学習を進めていくにあたって、自分の得意と思われる科目と苦手に感じた科目を知っておくと、学習に対する時間配分を考える上で参考になります。苦手だと感じた科目は、他の科目より時間をかけられるような計画を立てていくとよいでしょう。

学習の展開の仕方

 では、これからの約10か月の学習の展開の仕方を考えていきましょう。試験までの10か月を、「4月~8月」「9月~11月」「12月~1月」と、大きく3つに区分しておくと、計画が立てやすいでしょう。

基礎力養成期間

 4月から8月の期間は、「基礎力養成期間」とすることをおすすめします。17科目の基礎的な内容を満遍なく学習しておきましょう。17科目の全体を見通しておき、基礎的な知識をしっかりと身につけておく期間です。17科目で必要とされる知識量は膨大な量になります。基礎的な知識が合否を分けるカギになりますから、大変ですがこの期間にしっかりとした基礎知識を習得しておくことが、最終的には合否を分けるカギになります。

弱点補強期間

 9月から11月にかけては、「応用力と弱点補強期間」とするとよいでしょう。学習した基礎的知識を使って、実際に問題を解ける応用力を身に付けていくこの期間には、模擬試験を受けたり、模擬問題集を解いてみることをおすすめします。模試問題に取り組むことによって、自分の弱点をしっかり把握し、その弱点を徹底的に補強する期間にしましょう。

総仕上げ期間

 12月から1月にかけては、最後の総仕上げの期間になります。もう一度、全体の科目を見直しましょう。得意科目と思っていても、うっかり抜けてしまったり忘れてしまっているものがありますから、それらを丁寧に繰り返し見直し、覚えきれていない部分は、しっかり記憶に定着させ、本試験で正確な解答を導き出せる力をつけていきましょう。  この試験は、苦手科目だからといって1科目でも捨てることはできません。0点科目をつくらないことはもちろん、平均的にすべての科目で6割以上は取れるようにしておくことが、合格のための必須条件です。第23回の本試験日は、第22回と同様、2月の最初の土曜日と日曜日になると思われます。試験直前の週は、体調管理に専念できるように、学習計画からは外しておいたほうがよいでしょう。

講座の組み立て

 この精神保健福祉士受験対策講座は、4月から8月下旬頃までは、専門科目、共通科目の順で、各科目ごとに、出題基準に沿って出題範囲と出題傾向を分析し、学習しておくべき基礎的な内容を確認していきます。9月頃から各科目の重点的な内容について、ポイントを絞って解説していきます。そして最後に、法改正や新制度を中心に、確実に押さえておくべき内容を確認します。

テーマを意識して学習する

 では、科目ごとの学習方法について考えてみましょう。試験問題は、必ず「○○に関する次の記述のうち」のように、一つのテーマをもって作成されています。科目ごとに過去問に取り組む場合、このテーマを常に意識しながら学習していくようにすると、分野ごとに、どのような問題が出題されているかを把握することができるようになります。

 過去3~5年分の過去問を、類似したテーマごとにまとめて一度に解いてみると、それぞれのテーマや分野について、どのポイントを学習しなければならないのかがわかってきます。

 最初は難しくてさっぱりわからず、霧の中を歩いているような感覚に襲われるかもしれません。わからない箇所は、解説を読んだり、手持ちのテキストで確認していくことを繰り返していくと、だんだん、視界が開けてくるという体験をすることができます。このときに、わからないことをわからないままにしないで、しっかり理解していくことを習慣化していくことがとても重要です。これを続けていくと応用力がつき、本試験のときのアウトプット力が格段に高くなります。

過去問の解き方

 過去問を解くときは、単に正答を選ぶことだけで満足することのないようにしましょう。テーマに沿って提示されている5つの選択肢の一つひとつをていねいに読み込み、正答である理由、誤りである理由をしっかり確認して理解し、誤りの選択肢については、正しい文章(内容)に直していく習慣を身につけましょう。そうすることによって、選択肢の一つひとつの内容を正確に理解することができます。この理解力が応用力につながります。

解説書・模試問題集の活用

 中央法規出版から、共通科目は第18回から第22回までの5回分、専門科目は第20回から第22回までの3回分の国家試験問題を収載している過去問解説集や、出題基準に基づいて出題内容を網羅した受験ワークブックが発行されます。これらには科目ごとに出題基準が掲載されており、解答解説も非常に充実していますから、大いに活用して、過去問を解きながら内容を確認していくという学習方法で力を付けていきましょう。

 また、中央法規出版からは精神保健福祉士専門科目の模擬問題集も発行されます。問題数も多く、内容も出題基準に沿って充実しており、解説も詳しく新制度も反映していますから、本試験レベルの実力をつけるためには最適です。出題傾向を把握し自分の実力を知るために、ぜひ取り組んでみてください。

出題基準と出題範囲

 最後に、精神保健福祉士国家試験の出題範囲についてみておきましょう。社会福祉振興・試験センターに、出題範囲と出題基準が公表されています。その出題基準にのっとって試験問題が作成されます。そのため、その内容をよく把握しておくことが大切です。

 受験対策の際、過去問はとても重要な資料ですが、過去問は出題基準をすべて網羅しているわけではありません。ですから、出題基準で学習しておかなければならない範囲をしっかり把握して、出題範囲を網羅して押さえておくことが必要です。

 出題基準は大項目、中項目、小項目に分かれており、大項目は、中項目を束ねる見出しであり、科目全体の範囲を示します。中項目は、試験の出題内容となる事項で、試験問題はこの範囲から出題されます。小項目は、中項目に関する事項をわかりやすくするために例示したものです。最低限押さえておくべき内容であり、例示されているものは一つの例に過ぎないので、これだけではないということも理解しておきましょう。また、出題基準以外からも、出題してよいことになっていますので、出題基準には載っていなくても、過去問で出題実績の高いものには注意をしておく必要があります。

全国の受験生の皆様と

 以上、学習計画の立て方と学習方法についてみてきましたが、お一人お一人、置かれた環境はそれぞれ異なり、学習の進度も異なると思います。最初は試行錯誤になると思いますが、ご自分に最も合った学習方法を、なるべく早く確立していきましょう。限られた時間でも、学習内容を絞って効率よく集中して学習していくことによって、合格する力を十分身につけることができます。

 この試験は、科目数が多く出題範囲が広いため、一人で学習していると、時には壁にぶつかったり、自分との闘いに疲れてしまうことがあるかもしれません。この講座は、そのような全国の受験生の皆様と一緒に、合格まで一緒に励まし合いながら合格を勝ち取っていくことを目的としています。

 今回は、学習方法、学習計画、学習の範囲について一緒に考えてきました。次回からは専門科目について、科目ごとに具体的に出題範囲と学習のポイントを取り上げていきます。次回は、「精神疾患とその治療」を取り上げます。では、早速、学習計画を立ててみてください。