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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第1回 ご挨拶

 精神保健福祉士の受験生の皆さん、本年度も昨年度に続き、第23回精神保健福祉士国家試験の受験対策講座を担当させていただくことになりました張と申します。よろしくお願いいたします。皆さんと一緒にこの1年間、合格を目指して受験対策講座に携わることができますことを、大変嬉しく思っております。

 精神保健福祉士の国家試験も、いよいよ23回目を迎えます。精神保健福祉士という資格の誕生と現在に至るまでの経過を顧みるとき、皆さんの諸先輩方が精神障害者の権利を護るために、どんなに熱い思いで実践を積み上げてきたかを思うと感慨を禁じえません。

 精神保健福祉士資格の誕生後も、時代の変化とニーズの多様化、業務範囲の拡大、新たな社会的変化への対応のために、真摯に向き合い、研鑽と実践を丁寧に積み上げ続けている諸先輩の働きによって、精神保健福祉士という資格は、社会の中で大きな信頼を勝ち得てきました。

 また、社会の変化に伴い、いじめや不登校、職場におけるメンタルヘルス、災害時の精神的支援、ひきこもりや8050問題等、社会が抱える課題も多様化しています。このような社会状況に対して、精神保健福祉士に求められる役割と期待がますます大きくなっています。

 精神保健福祉士は、現代の社会の中で他の資格には代えることができない重要な位置を占め、大きな役割が期待されています。特に、社会の中で、なかなか声を上げることができない精神障害者や困難を抱える方々のために役立ちたいと、この資格を取得しようと取り組んでおられる皆様に、深い感謝と敬意を覚えています。
 学習時間がなかなか取れない厳しい環境の中で、わずかな時間をみつけて学習に取り組まれる皆様のために、この1年間、少しでもお役に立つことができればと、心から願っています。

高い志の実現のために

 今まで、多くの精神保健福祉士の受験生の皆さまとかかわらせていただいて強く感じているのは、皆さまの高い志です。精神障害者に対する深い共感と社会に山積する様々な精神保健福祉に関する諸課題への深い洞察、そしてそれらに積極的に取り組んでいこうとの意欲を感じます。

 自らの知識と技術を高め、社会の課題を敏感に感じ取り、課題を抱える精神障害者に寄り添い、その権利を護り、それらの方々の日々が輝きに満ちたものとなるようにと、資格取得を目指している受験生の皆さまに出会い、その志の高さと熱意に多くのことを教えていただいてきました。このような皆さまの資格取得のために、少しでもお役に立たせていただきたいという思いを、年々強くしています。

精神保健福祉士の国家試験と受験対策

 精神保健福祉士の国家試験は、専門科目6科目と共通科目11科目の合計17科目となっており、科目数の多さと1科目の出題範囲の広さに、どのように勉強していったらよいのか、漠然とした不安を感じておられる方もおられると思います。

 受験生の皆さまの中には、現役の大学生の方、受験資格取得のために養成校に通学されている方、現場ですでに活躍しながら通信教育でレポート提出に追われている方等、様々な立場の方がおられると思います。置かれている環境や立場は異なりますが、共通している一番の課題は、学習時間の確保の困難さと、膨大な学習量の内容のどこに焦点を絞って学習したらよいのかということではないでしょうか。

 精神保健福祉士の国家試験は、単なる暗記力ではなく、これから精神保健福祉士として実践していくための、人間や社会に対する深い洞察と幅広い知識を習得することが求められます。限られた学習時間の中で、効率よくこれらをご自分のものとしていただけるように、この講座が多くの受験生の皆さんにとって、少しでもお役に立つことができればと心から願っています。

精神保健福祉をめぐる動向

 精神保健福祉士の国家試験は、障害者全般を取り巻く環境を、大きく反映させた出題傾向となっています。

 障害者全般をみると、障害者権利条約批准のための障害者基本法改正、障害者虐待防止法、障害者総合支援法、障害者差別解消法等の制定、障害者雇用促進法改正、発達障害者支援法改正などが相次いで行われてきました。現在は、これらが施行された後の様々な現実的な課題と、実践への適用と運用等の具体的、実践的な問題が出題される傾向にあります。

 精神保健福祉分野では、精神保健福祉士法の改正による精神保健福祉士の業務の拡大、精神保健福祉法改正による精神科病院入院者の退院促進が進められています。実践現場では様々な取り組みが行われており、具体的な問題の出題頻度が非常に高くなっています。

 また、障害者雇用促進法の改正による雇用促進、障害者差別解消法施行による合理的配慮も本格的に始動しており、精神障害者が社会の中で人権が保障され、その人らしくいきいきと生きていくために、精神保健福祉士の占める役割は、従来以上に一層重要性を増してきています。

 さらに社会全体をみると、新型コロナウイルスによる肺炎のパンデミックと社会不安が急激に蔓延し、先行きの見えない不安に襲われています。経済の不安定化、グローバリズムのひずみ、就労形態の多様化による非正規職員の増加、格差の拡大、貧困の連鎖、地域や家族関係の脆弱化、いじめの陰湿化、死亡事例が多発する児童虐待、ひきこもりの高年齢化、ブラック企業や貧困ビジネス、労働力人口の減少による外国人労働者の受け入れと労働条件、文化的多様性などの課題が山積しています。

 難民問題とポピュリズムの台頭、国家間の緊張状態による社会全体の不安定化、環境破壊と多発する自然災害等が、わが国の社会全体にも大きく影響を与えています。社会の緊張が高まるとき、最も標的にされやすいのは社会的な弱者です。社会の余裕がなくなると、怒りや敵意は少数の弱者に向けられ、社会的な弱者に対する感情的な社会的排除が無意識のうちに日常的に蔓延していきます。

 このような社会的な背景のなかで、精神保健福祉士には、本質を見誤ることなく常に社会の動向を的確に把握し、精神障害者が抱える現実の生活課題と社会との関係を洞察する力が求められます。

 精神保健福祉士の具体的な活躍が求められている場として、精神障害者の地域移行や社会復帰支援、医療観察制度や更生保護制度における福祉的視点による支援、職場のメンタルヘルス対策、自殺対策、貧困や児童虐待への取り組み、スクールソーシャルワーカー、精神医療審査会委員等にとどまらず、地域包括ケアシステムの中での精神障害者支援等、様々な社会生活の場面において、ソーシャルワーカーとしての精神保健福祉士への期待が一層高まっています。

 受験生の皆さまには、ぜひ実践力のある、政策全般にも明確な意識をもってかかわることのできる精神保健福祉士として活躍するソーシャルワーカーとなっていただきたいと願っています。そして、そのための精神保健福祉士資格取得としての試験の合格のために、皆さんと一緒に学んでいけることを、大変嬉しく思っています。

第22回試験結果

 第22回精神保健福祉士国家試験は、例年通り、基礎的な知識とそれを実践に活かしていく応用力を問う、出題基準に沿ったバランスのよい出題でした。出題形式についても例年通り、五肢択一問題と五肢択二問題で構成されており、出題内容も、過去の出題傾向と大きな変化は見られませんでした。

 受験者数は6,633人で昨年より146人の減少、合格者数は4,119人で昨年より132人の減少でした。合格率は62.1%で、昨年の62.7%より0.6%だけ低くなっています。合格率についてみると、過去3年は62%台で推移しています。

 合格ラインは、全科目の問題数163問のうちの90点以上で、得点率は57.1%です。昨年の合格ラインは87点でしたから合格ラインは3点上がっています。専門科目だけでは、80問のうちの40点以上で、得点率は50%でした。昨年は合格ラインが41点でしたから1点下がっていますが、昨年度と比較して、大きな変化はなかったといえるでしょう。

 全体を概括すると、共通科目では、一部難問もみられましたが難易度としては、例年とそれほど大きな変化はなかったといえるでしょう。専門科目も、データ系や制度系では難問もみられましたが、共通科目同様、例年と大きな変化はなかったと思われます。

 長文事例問題では、社会的に取り上げられている具体的な取り組みが出題される傾向にあり、実践的な内容になってきています。今後は、社会の中で精神保健福祉士に求められる役割に関して、一層具体的な出題になっていくことが考えられます。社会的なニーズを背景に、精神保健福祉士の包括的な力量が問われる傾向が強くなってきていますので、学習の際は、いつも具体的な状況をイメージしながら、広い視野で学習を進めていくことをおすすめします。

合格のための近道

 受験生の皆さんは、精神保健福祉士の国家試験の出題範囲の広さと内容の深さを考えると不安でいっぱいかもしれません。時間との戦いの中で、時には壁にぶつかり、時には自信を失うこともあるかもしれません。そのようなときも、着実な学習を積み重ねていくことによって、不安は必ず自信に変わっていきます。合格のための一番の近道は、一見遠回りのように見えますが、1日1日、着実に努力を積み重ねていくことです。

 最初はばらばらな知識であっても、学習を進めていくと、17科目が相互に関連を持っており、一つひとつの知識がすべて関連していることに気づいてきます。そうなると、全体を見通すことができるようになり、学ぶことの楽しさを体験できるようになります。

 限られた時間の中での学習は、不安と困難を伴うと思いますが、学ぶ苦しみを乗り越えていくと、学習の楽しさを体験できるようになります。不安が自信に変わり、困難が喜びに変わるという体験をしていただけるために、この講座を大いに活用していただければと思っています。

合格を目指して

 第22回試験の発表以来、受験生から、次々に合格の知らせが届いてきます。一人ひとりの顔を思い浮かべながら、言葉にならない感慨でいっぱいになります。
 時には不安と限界に押しつぶされそうになりながら、必死で取り組んでいた方、理解が深まってきた時の喜びに満ちた表情、苦しい学習の中、ひたすら自分を信じて最後まで粘り切って栄冠を勝ち取った方、それらのお一人お一人に、惜しみない拍手を送りたいと思います。

 けれども、0点科目やケアレスミスなどで惜しくも無念の涙をのんだ方、体調などの理由で実力を十分発揮できなかった方、合格ラインの僅差で涙をのんだ方もおられたと思います。試験の非情な現実の前には言葉を失いますが、今までの積み重ねは大きな力となり必ず報われます。ぜひ再度チャレンジして、ともに合格の栄冠を勝ち取っていきましょう。

 これからの受験までの1年間、皆さんが、学ぶ楽しさを味わい、無限の可能性が最大限に発揮されて合格を勝ち取ることができるよう、全力で応援していきたいと思っています。この講座は、毎週火曜日に更新されます。受験までの長い道のり、学習に不安を覚えることもあることでしょう。この講座では合格のために、様々な角度から学習のポイントを紹介していきたいと思っています。

 次回は、第22回試験を踏まえて、受験のための学習方法と、本試験までの学習計画の立て方を中心に、第23回試験の受験対策を考えていきたいと思います。皆さんの1年間が実り多いものとなりますように、全力を尽くして応援していきたいと思っています。合格を目指して、これから1年間一緒に頑張っていきましょう。