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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第44回 第22回 精神保健福祉士国家試験  共通科目分析

 皆さん、こんにちは。試験の結果発表が待ち遠しい日々を過ごしておられることと思います。前回の専門科目に続いて、今回は共通科目の出題傾向を分析していきます。

人体の構造と機能及び疾病

 人体の仕組みと働きの分野では、大脳の仕組みとしての後頭葉の働きは定番問題でした。高齢に伴う心身の変化の分野では脱水がテーマで、腎臓の機能低下も選択に問題はなかったでしょう。消化器の分野も、膵臓の選択肢がわからなくても消去法で正答が導き出せる問題でした。

 ICFでは、個人因子と環境因子の違いがわかっていれば十分対応でき難易度は低かったと思われます。健康の分野でのアルマ・アタ宣言も、基本的な内容でした。脳血管性認知症、リハビリテーションの分野も頻出問題で基礎的な内容でした。科目全体でみると、特に難問といえるものは見当たらず、得点しやすかったのではないでしょうか。

心理学と心理的支援

 しばらく出題されていなかったパーソナリティ論は、それほど難易度は高くはなく基礎的な知識で対応できるものでした。愛着理論は、詳細な内容でしたので判断に悩んだ受験生がおられるかもしれません。記憶に関しては、高齢者の認知機能の特徴としての出題でしたが、記憶に関する基本的な知識があれば対応できた内容でした。

 ストレスとバーンアウト、心理療法についても、過去の出題実績がある頻出問題なので対応しやすかったと思われます。ただ、「馴化」については、あまり聞き慣れない言葉なので戸惑った受験生が多かったのではないでしょうか。

 今回は、学習理論、動機付け理論、防衛機制、心理検査等の出題がありませんでした。全体的に、難易度はそれほど高くなかったと思われます。

社会理論と社会システム

 ウェーバーの官僚制論、コンパクトシティ、家族形態論、囚人のジレンマについては、基本的知識で対応できる内容でした。労働力調査は、正確な数値がわかっていなくても、完全失業率が低下していることはメディアでも報道されていますので対応できたと思います。

 パーソンズの主意主義的行為理論と構築主義については、過去に出題実績がありますが、難問の部類に入るでしょう。今回は、社会変動、人口、階層論、集団・組織論、役割理論、ライフステージ、貧困等の出題がありませんでした。全体でみると、例年どおりの難易度であったといえるでしょう。

現代社会と福祉

 社会福祉法、2016(平成28)年の社会福祉法に関しては、過去の出題実績もあり対応しやすかったと思います。ベヴァリッジ報告については、ナショナルミニマムの概念との相違で過ちを誘いやすい記述だったため、混乱した受験生も多かったのではないでしょうか。

 三浦文夫については、貨幣的ニード、非貨幣的ニード論を理解していれば選択できたでしょう。社会保障政策の歴史的経緯は、社会保障や高齢者の分野と重複する内容で、各分野の制度の発展の経緯を正確に理解していることが求められる少々難度の高い問題でした。

「ソーシャルワークの専門職である社会福祉士に求められる役割等について」は、今後の包括的な支援体制の整備におけるキーパーソンとしての社会福祉士の位置づけに関する内容で、今後の精神保健福祉士と社会福祉士の国家試験のカリキュラム改正にも関係してくる問題でした。

 そのほかの問題は時事性が高く、「ニッポン一億総活躍プラン」、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」、「持続可能な開発目標」(SDGs)、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」は、通常の社会の変化や時事的課題に関心を持って注意していても、なかなか正解を導き出せない難問でした。

 今回は全体的に、出題範囲の広さ、現代社会が抱える多様な問題とそれらに対する施策の詳細を問う問題が多く、大変難易度が高かったといえるでしょう。

地域福祉の理論と方法

 日本の地域福祉の歴史については、隣保館、中央慈善協会、共同募金会、方面委員制度、社会福祉協議会に関する基本的知識で十分対応できる内容でした。市町村社会福祉協議会の組織、民生委員・児童委員の規定、また、短文事例の福祉活動専門員についても、基礎的な知識でクリアできたでしょう。

 地域福祉における住民参加を促進する仕組み、ボランティア活動、社会福祉法における地域福祉に関する規定、地域福祉推進のための財源、福祉調査と分析活動、短文事例のアウトカム評価については、極めて難度の高い内容でした。全体的に得点が困難な問題が多く、受験生にとっては厳しい科目であったといえるでしょう。

福祉行財政と福祉計画

「大都市特例における特別区の設置に関する法律」に規定する、特別区の設置を理解している受験生は少なかったと思われます。地方財政白書は定番問題でした。福祉施設等の費用財源も、生活保護財源がわかっていれば対応できたでしょう。

 福祉計画の分野では、内閣府管轄と厚生労働省管轄の違いを問う問題が近年多くなってきていますので、過去問をしっかり理解して学習していた受験生は対応できたでしょう。計画に関する評価義務規定、福祉計画の歴史的経緯、第7期介護保険事業計画の内容については、少々難しく、全体的に見て難度の高い科目だったといえるでしょう。

社会保障

 社会保険制度については、年金保険、医療保険、労災保険、雇用保険がバランスよく出題されていました。2問の短文事例問題も、基礎的な知識で対応できるものでした。

 わが国の社会保障制度の歴史的展開については、歴史の流れを正確に把握できていたかどうかで得点が分かれたでしょう。頻出の社会保障制度費用統計についても、統計内容の詳細なデータを問う内容であったため、選択に困難を覚えた受験生もいたことと思われます。
 全体として、詳細な内容についての正確な知識を求める問題は多かったという印象ですが、難易度については例年どおりといえるでしょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 法制度については、障害者総合支援法が2問、発達障害者支援法が1問、障害者基本法が1問、医療観察法が1問でした。それぞれ基本的な内容で、基礎的な知識で十分対応できました。

「生活のしづらさなどに関する調査」は、詳しいデータはわからなくても、困った時の相談相手は家族が多いということは推測できたと思われます。

 障害者福祉制度の発展過程についても、第4次障害者基本計画の内容すべてを知らなくても消去法でも解くことができたでしょう。医療観察制度は、この科目で出題されたことがなかったので目を惹きましたが、今後はこの傾向が進むかもしれません。

 全体として今回は難問といわれる問題が少なく、基本的な良い問題が多かったといえるでしょう。

低所得者に対する支援と生活保護制度

 生活保護の実態については、細かいデータを把握していなくても高齢化による介護扶助人員が増加していることは、推測できたと思います。生活保護の基本原理と原則、生活保護の種類と内容、短文事例の現業員の業務、福祉事務所の社会福祉主事の位置づけ等は、基本的な内容でした。

 低所得者支援として、生活困窮者自立支援制度、無料低額宿泊所等が出題されました。生活困窮者自立支援制度については、直近の法改正の内容を押さえていたかどうかが得点の分かれ目になったでしょうが、全体として大変取り組みやすい内容でした。

保健医療サービス

 高額療養費制度、医療施設、特定健康診査・特定保健指導、理学療法士の業務については、基本的な内容でした。短文事例問題の終末期患者の意思決定支援、医療ソーシャルワーカーの業務についても、基本的な理解と知識で解くことができるものでした。

 保健師の業務については、保健師の活動指針にまで目を通していた受験生は少なかったと思いますので、少々困難を覚えたかもしれません。今回は、出題率の高い診療報酬制度や国民医療費に関する出題がありませんでした。前回に比べると非常に難度は低くなったといえるでしょう。

権利擁護と成年後見制度

 今回は憲法の分野からの出題はなく、民法1問、行政不服審査法1問、成年後見制度関連3問、日常生活自立支援事業1問、高齢者虐待防止法1問という問題構成でした。行政不服審査法については、改正内容を把握していれば、十分対応できたでしょう。

 成年後見制度の申立権者、市町村長の審判請求権規定、日常生活自立支援事業、高齢者虐待防止法は、基礎的な知識で対応できたと思われますが、成年後見制度利用促進法は、詳細な内容が問われており、難易度は高いものでした。

 民法の分野における、判断能力が低下時の売買契約の有効性については、難度が高く、解答に困難を覚えた受験生が多かったのではないかと思われます。

 以上、共通科目を分析してきましたが、共通科目全体をみると、科目によってはばらつきがありますが、全体では昨年度と同様あるいは少々難易度が上がっているという感触があります。

 2回にわたり本試験問題の分析を行ってきましたがいかがでしたか。今回で本年度の講座は終了です。一年間、熱心にご愛読いただき、心から感謝申し上げます。精神障害者の人権を護り、一人ひとりがいきいきと輝いて生きることができるために、よき援助者となろうという、高い志を持った皆様と一緒に学習を進めてくることができたことを心から嬉しく思っています。

 学生の方は、卒論や実習、就職活動という多忙ななかで、すでに現場で御活躍の方は、忙しい仕事と家事・育児や介護の合間を縫って、それぞれ学習に励んでこられた皆様全員に、深い敬意とともに大きな拍手をお送りします。

 結果が出るまでは不安だと思いますが、皆様の今までの努力が実を結び、全員が合格の栄冠を勝ち取られることを心から願っています。これから、今までの学習の成果が十分発揮され、精神障害者の生活が豊かなものとなりますように、また、皆様の人生もさらに豊かなものとされ、お互いにますます輝いていきますようにと、心から期待しています。
 一年間ご愛読いただいて、本当にありがとうございました。