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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第33回 「社会保障」

労働者年金保険法

 次に、わが国の年金保険制度の発展の経緯についてみていきましょう。わが国の最初の年金保険制度は、1941(昭和16)年の労働者年金保険法制定による制度化です。これは、工場等に勤務する男性労働者だけを対象としたものでした。労働者の福祉の充実と労働力を確保し強化することによって、生産力を拡充することを目的として制定されました。

厚生年金保険法

 工場労働者だけを対象としていた労働者年金保険制度の対象が、事務職及び女性にも拡大されて労働者年金保険法を改称し改正されたのが1944(昭和19)年の、厚生年金保険法です。

国民年金法

 昭和30年代の高度経済成長によって国民の生活水準が徐々に向上していき、一般の人々が老齢や疾病などによって貧困状態に陥ることを防ぐための防貧政策の必要性が認識されるようになっていきました。民間サラリーマンや公務員については、すでに被用者年金制度がありましたが、自営業者や農林漁業従事者等を対象とした公的年金制度はありませんでした。

 人口の都市集中や核家族化が進行し、将来の高齢化社会が予測されるという時代背景のもと、全国民を対象にした老後の所得保障を求める声が高まっていきました。それに対応して、1959(昭和34)年には公的年金制度を自営業者にも適用するために、国民年金法が制定されました。
 これによって、国民皆年金体制が実現することになり、1961(昭和36)年には、全面施行されました。

物価スライド制の導入

 1973(昭和48)年のオイルショックに伴う急激なインフレに対処するため、厚生年金の給付水準に、物価スライド制が導入されました。物価スライド制とは、年金額の実質価値を維持するために、物価の変動に応じて年金額を改定することで、前年の1月から12月までの消費者物価指数の変動に応じて、翌年の4月から自動的に年金額が改定される制度です。

基礎年金制度の導入

 1985(昭和60)年には、公的年金制度が抜本的に改正されて基礎年金制度が制度化され、翌年の1986(昭和61)年4月から導入されました。

 国民年金が全国民共通の基礎年金とり、厚生年金保険や共済年金加入者が、同時に国民年金にも加入するという形態になりました。国民年金は公的年金の基礎部分を担い、厚生年金保険は原則として報酬比例部分を担うことになりました。

この基礎年金制度の導入によって、厚生年金の被保険者は、国民年金と厚生年金保険の両方に加入することになりました。

2004(平成16)年の年金制度改正

 2004(平成16)年に年金制度が改正され、基礎年金の国庫負担が、従来の3分の1から2分の1へ引き上げられました。また、国民年金保険料は、2017(平成29)年に1万6,900円で固定されることになり、厚生年金保険料率も18.3%で固定されることになりました。

マクロ経済スライド制度

 また、この改正でマクロ経済スライド制が導入されました。マクロ経済スライド制とは、現役人口の減少や平均余命の伸び方に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

 これは、少子高齢化の進展により、現役世代からの保険料収入の減少が見込まれるなかで、予想される収入の範囲で給付を行う必要性が生じたからです。社会全体の公的年金制度を支える現役世代の人数の変化と、平均余命の伸びに伴う給付費の増加という、マクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みです。

年金受給資格期間の短縮

 従来は、老齢年金を受け取るためには、保険料納付済期間と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が、原則として25年以上必要でした。そのため、受給資格期間が足りずに無年金となる人が生まれてきてしまいました。

 納付した保険料ができるだけ給付に結びついて無年金者にならないようにするためには、新たな救済措置が必要であるという観点から、2017(平成29)年8月から年金受受給資格期間が短縮され、10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになりました。

労働者年金保険法1941(昭和16)年制定。工場等に勤務する男性労働者だけを対象。
厚生年金保険法1944(昭和19)年、労働者年金保険法を解消・改正。対象を事務職、女性にも拡大。
国民年金法1959(昭和34)年制定。自営業者にも適用。1961(昭和36)年の全面施行により国民皆年金体制が実現。
物価スライド制の導入1973(昭和48)年、オイルショックに伴う急激なインフレに対応して厚生年金の給付水準に物価スライド制を導入。
2004年の年金制度改正基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1へ引き上げ。
2017(平成29)年に国民年金保険料、厚生年金保険料率を固定。
マクロ経済スライド制度の導入。
年金受給資格期間を10年に短縮。

労働者災害補償保険法

 最後に、労働者の業務災害等に対する補償制度についてみていきましょう。
 わが国の労働者の業務災害に対する制度としては、鉱山労働者については1905(明治38)年制定の鉱業法、工場労働者については1911(明治44)年制定の工場法、土木建築事業等の屋外労働者については、1931(昭和3)年の労働者災害扶助法によって制度化され実施されていきました。

 また同年、労働者災害扶助責任保険法が制定され、業務災害扶助について、政府管掌による強制保険として位置づけられました。その後、第二次世界大戦後の1947(昭和22)年には労働基準法が制定され、業務災害に対する事業主責任が明確にされました。

 この事業主責任としての事業主負担が過重になることに対して、その軽減を図り労働者に対する補償を確実にするために、社会保険でこれを行うことができるように、1947(昭和22)年、業務災害に関する法律を統合した労働者災害補償保険法が制定され、労働基準法と同時に施行されました。

鉱業法1905(明治38)年制定。鉱山労働者を対象。
工場法1911(明治44)年制定。工場労働者を対象。
労働者災害扶助法1931(昭和3)年制定。土木建築業、運輸事業等の屋外労働を対象。
労働者災害扶助責任保険法1931(昭和3)年制定。業務災害扶助について、政府管掌による強制保険として位置づけられた。
労働者災害補償保険法1947(昭和22)年、労災関係法を統合した労働者災害補償保険法が制定された。

 いかがでしたか。社会保障は範囲が広く大変ですが、社会保険を中心によく学習しておきましょう。次回は「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。
 では、第21回精神保健福祉士国家試験問題から、今回の課題を上げておきますのでチャレンジしてみてください。

第21回 精神保健福祉士国家試験 「社会保障」

問題53 医療保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 健康保険法(1922年(大正11年))により、農業従事者や自営業者が適用対象となった。
  • 2 老人福祉法(1963年(昭和38年))により、国民皆保険が実現した。
  • 3 老人保健法(1982年(昭和57年))により、高額療養費制度が創設された。
  • 4 介護保険法(1997年(平成9年))により、老人保健施設が創設された。
  • 5 健康保険法等の改正(2006年(平成18年))による「高齢者医療確保法」により、75歳以上の高齢者が別建ての制度に加入する後期高齢者医療制度が創設された。
  • (注)「高齢者医療確保法」とは、「高齢者の医療の確保に関する法律」のことである。