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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第33回 「社会保障」

健康保険法

 まず、わが国の医療保険制度についてみていきましょう。
 わが国の公的医療保険制度は、1922(大正11)年、工場や鉱山労働者等の低賃金労働者を対象とした被用者のための「健康保険法」が初めての制度です。ただ、1923(大正12)年の関東大震災の影響等により、施行は5年後の1927(昭和2)年からでした。

国民健康保険法

 その後、世界大恐慌が起こり、不況によって都市の工場労働の失業者が大量に農村に帰ってきました。また、生糸や繭の価格の暴落や飢饉等により、農村は困窮をきわめていきました。

 このような環境のなかで、農村や漁村は劣悪な劣健康状態に置かれ、病気と医療費負担の増大、農村や漁村の無医村問題などの課題が山積しました。このような状況を解決するため、1938(昭和13)年に、農民や自営業者を対象に旧国民健康保険法が制定されました。ただし、これは任意加入の制度でした。

船員保険法

 1939(昭和14)年には、船員を対象とした船員保険法が制定されました。この船員保険法は、船員を対象として医療保険だけではなく、老齢年金や障害、死亡、労災等すべてを包括的に含む総合的な法律でした。

国民健康保険法改正

 第二次世界大戦後の1948(昭和23)年には、国民健康保険法が抜本的に改正されました。この改正で国民健康保険の実施主体は市町村とされました。また財源を確保するために、1951(昭和26)年には、国民健康保険料を国民健康保険税として徴収することができるように地方税法が改正されました。

新たな国民健康保険法制定

 1958(昭和33)年に、新国民健康保険法が公布され、すべての市町村は1961(昭和36)年までに、国民健康保険事業を開始しなければならならないことになりました。厚生省や都道府県等によって、制度の未実施市町村への積極的な指導が行われ、国民健康保険制度は全国に広がり、1961(昭和36)年4月1日には国民皆保険が実施されました。

老人医療費無料化

 1972(昭和47)年、老人福祉法が改正され、翌年の1973(昭和48)年に老人医療費の無料化が施行されました。背景には、市町村国保に加入する高齢者が複数の疾患を抱えて長期の療養生活を送ることが多く、高齢者の医療費負担をいかに軽減するかが大きな課題となっていたという状況がありました。

 このようななかで、1969(昭和44)年に東京都と秋田県が老人医療費の無料化を導入し、その後各地の地方公共団体が次々と無料化して、1972(昭和47)年にはほとんどの都道府県で老人医療費が無料化される状況となり、その結果国の施策として制度化されたものです。この制度は、70歳以上(寝たきり等の場合は65歳以上)の高齢者に対して、医療保険の自己負担分を国と地方公共団体の公費を財源として支給するものでした。

高額療養費制度

 1973(昭和48)年に、高額療養費制度が創設されました。背景には、医療技術の高度化が進み医療費の自己負担額が増大していること、医療ニーズの多様化が進んできたことなどがあります。

老人保健法制定

 1970(昭和45)年にわが国の高齢化率は7%に達し、1973年には老人福祉法が改正され老人医療費が無料化されました。その結果、急激な高齢化の進展とともに老人医療の給付費も急騰しました。

 老人医療費無料化により、必要以上の受診が増え、介護サービスを必要とする高齢者の福祉施設が少なく老人医療費が無料である医療機関に長期入院する「社会的入院」が増加し、老人医療費が急騰したという背景がありました。

 これらの問題を解消するため、1982(昭和57)年には老人医療費の一部有料化、老人保健施設の創設を含む老人保健法が制定されました。この法律は、国民の老後の健康の保持と適切な医療の確保を図り、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、国民保健の向上および老人福祉の増進を図ることを目的としています。

高齢者の医療の確保に関する法律

 その後、2008(平成20)年には老人保健法が廃止され、高齢者の医療の確保に関する法律が制定されました。この法律によって、75歳以上の高齢者等を対象にした「後期高齢者医療制度」が創設されました。

 老人保健法では、他の医療保険制度に加入しながら老人医療が適用されていましたが、後期高齢者医療制度は、独立した医療保険制度として創設されたものです。75歳以上になった高齢者はすべて、それまで加入していた医療保険から後期高齢者医療制度に移行することになりました。家族の被扶養者であってもこの後期高齢者医療制度に加入しなければならず、個人としてこの医療保険の保険料を負担することとなりました。

 以上、医療保険の発展の経緯をみてきました。簡単に表にしておきましょう。

健康保険法1922(大正11)年制定。工場や鉱山労働者等の被用者のための医療保険。
旧国民健康保険法1938(昭和13)年制定。年農民や自営業者を対象。保険者は市町村で任意加入。
船員保険法1939(昭和14)年制定。船員を対象とした包括的法律。
国民健康保険法改正1948(昭和23)年改正で、実施主体は市町村とされた。
1951(昭和26)年改正で、国民健康保険料を国民健康保険税として徴収することができるようになった。
国民健康保険法1961(昭和36)年4月1日、国民皆保険が施行された。
老人医療費無料化1972(昭和47)年の老人福祉法改正により老人医療費無料化。施行は1973(昭和48)年。
高額療養費制度創設1973(昭和48)年制度の創設。
老人保健法1982(昭和57)年、老人医療費一部有料化導入、老人保健施設の創設。
高齢者の医療の確保に関する法律2008(平成20)年、後期高齢者医療制度を創設。