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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第31回 「地域福祉の理論と方法」

「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書

 この報告書は、2008年(平成20年)に、「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」が、「地域における新たな支え合いを求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」と題して出した報告書です。

現状と課題

 この報告書が出された背景には、高齢者や障害者、児童等の分野別の制度は整備されてきた半面、「制度の谷間」にある問題や多様で複合的なニーズに対する対応が十分ではないという実態や、社会的排除の対象となりやすい者やホームレス、低所得者、入院・入所施設から退院・退所して地域生活に移行する、障害者を支える仕組みの不備等の問題がありました。

 一方、住民自身には、自己実現や自己啓発をしたいという意欲の高まりがあり、このような意欲を、地域福祉にどのように位置づけるかが課題でした。

新たな支え合い(共助)の確立

 これらの課題を踏まえて、これからの地域福祉は地域における「新たな支え合い」(共助)を確立すること、地域の生活課題への対応、住民が主体となって参加する場とネットワークづくりが必要であるとしています。

住民主体

 「共助の確立」のためには、住民主体の確保、地域の生活課題の発見、適切な圏域の設定、地域福祉推進のための環境整備が必要であるとし、情報共有、活動拠点の確保、地域福祉のコーディネーターの必要性、活動資金の必要性を提示しています。

地域福祉コーディネーター

 住民の地域福祉活動を支援するために、市町村が一定の圏域に地域福祉コーディネーターを整備し、専門的な対応が必要な事例への対応やネットワークづくり、地域に必要な資源の開発等の役割を持たせるべきであるとしました。

市町村の役割

 市町村は、防災・防犯、教育・文化・スポーツ、就労、公共交通・まちづくり・建築等の幅広い視点から、従来の福祉の枠にとらわれない「総合的なコミュニティ施策」が必要であり、公的な福祉サービス提供と地域福祉活動の基盤整備のために、地域福祉計画への住民の新たな支え合いの位置付け、計画策定に当たっての住民参加の仕組みづくり、圏域の設定、コーディネーターや拠点の整備等が求められるとしています。

生活困窮者自立支援制度

 上記の報告書が出された5年後の2013年(平成25年)には、「生活困窮者自立支援法」が制定されました。

 この法律の制定の背景には、生活保護受給者や生活困窮に至るリスクの高い層が増加していること、地域によっては生活困窮者へ様々な支援が行われてはいるものの、制度化されていないため統一性に欠けること、生活保護制度との連携がとられていないことなどがあり、生活保護制度の見直しと生活困窮者対策の一体実施が不可欠であるとの認識のもとに制定されました。

 主な対象は、現在生活保護を受給していないが、生活保護に至る可能性があり自立が見込まれる者で、制度の目標として、「生活困窮者の自立と尊厳の確保」「生活困窮者支援を通じた地域づくり」があります。

生活困窮者の尊厳の確保

 「生活困窮者の自立と尊厳の確保」として、この制度では、本人の内面からわき起こる意欲や想いが主役となり、支援員がこれに寄り添って支援する、本人の自己選択、自己決定を基本に、経済的自立のみならず日常生活自立や社会生活自立など本人の状態に応じた自立を支援します。また、生活困窮者の多くが自己肯定感、自尊感情を失っていることに留意し、尊厳の確保に特に配慮することが必要であるとしています。

生活困窮者支援を通じた地域づくり

 「生活困窮者支援を通じた地域づくり」としては、生活困窮者の早期把握や見守りのための地域ネットワークを構築し包括的な支援策を用意して、働く場や参加する場を広げていくことが求められます。また、既存の社会資源を活用し、または開発・創造して、生活困窮者が社会とのつながりを実感して主体的な参加に向かえるよう、「支える、支えられる」という一方的な関係ではなく、「相互に支え合う」地域を構築することが重視されます。

 これらの地域づくりのために、支援業務を行う関係機関や民間団体との緊密な連携と、その他の支援体制の整備に配慮して行うことが必要であるとしています。

 なお、2018年(平成30年)に生活困窮者自立支援法が改正され、生活困窮者の定義の改正、生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化として、従来の任意事業の一部の努力義務化、子どもの学習支援事業の強化などが新たに規定されました。詳細については、講座の最後に法改正・新制度の講座を用意していますので、そこで集中的に取り上げていきたいと思っています。

「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書「制度の谷間」にある問題、多様で複合的なニーズへの対応と住民の自己実現への意欲の高まりの地域福祉への位置づけという課題に対応。
考え方地域における「新たな支え合い」(共助)の確立と住民主体の場とネットワークづくり。
基盤整備適切な圏域設定、環境整備、情報共有、地域福祉コーディネーターの必要性。
地域福祉コーディネーター専門的事例への対応やネットワークづくり、地域に必要な資源の開発等の役割。
生活困窮者自立支援法「生活困窮者の自立と尊厳の確保」「生活困窮者支援を通じた地域づくり」を目的に、2013年(平成25年)制定。

持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律

 この法律は、社会保障制度改革の全体像・進め方を明示するものとして、2013年(平成25年)12月に制定されました。

 少子化対策については、すでに成立した子ども・子育て関連法、待機児童解消加速化プランを着実に実施することとしています。医療制度については、病床機能報告制度の創設、地域の医療提供体制の構想の策定等による病床機能の分化と連携、国民健康保険の保険者や運営等の在り方の改革、後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、70~74歳の患者負担と高額療養費の見直し、難病対策等についての改革の検討項目や今後の見直しの時期を示しています。

 介護保険制度については、地域包括ケアの推進、予防給付の見直し、低所得者の介護保険料の軽減等について提言がなされており、この法律で初めて地域包括ケアシステムという用語が使用されました。

 公的年金制度としては、すでに成立した年金関連法の着実な実施、マクロ経済スライドの在り方等の検討事項と今後の見直しの時期等について示しています。

社会保障制度改革推進法2013年(平成25年)12月制定。
児童関連子ども・子育て関連法、待機児童解消の着実な実施等。
医療関連病床機能報告制度、地域医療構想、国民健康保険制度改革、高齢者患者負担・高額療養費の見直し、難病対策等。
介護関連地域包括ケアシステムによる地域包括ケアの推進、予防給付の見直し等。

地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)」

 上記の「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」を踏まえて、2014年(平成26年)に、地域包括ケアシステムの構築と介護保険制度の持続可能性の確保を目的とした「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が制定されました。内容は、医療法と介護保険法関連の改正です。

医療法改正

 医療関係では医療法改正により、病院の病床の機能分化と連携、在宅医療・介護の推進等のために、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置すること、医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定することが規定されました。

 また、医療機関は都道府県知事に、病床の医療機能を報告することが義務づけられ、都道府県は、それをもとに地域医療構想(ビジョン)を策定することが義務づけられました。

介護保険法改正

 福祉関係では介護保険法改正により、地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化を目的に、在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実と、予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、特別養護老人ホーム対象者は原則要介護度3以上とし、低所得者の保険料軽減の拡充、一定以上の所得のある利用者の自己負担の2割への引き上げが行われました。

 また、地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実のために、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、地域ケア会議の推進、生活支援サービスの充実・強化が行われることになりました。

医療介護総合確保推進法2014年(平成26年)地域包括ケアシステムの構築、介護保険制度の持続可能性の確保を目的として制定。
医療法改正病床の機能分化と連携、在宅医療・介護の推進、都道府県に基金を設置。
介護保険法改正在宅医療・介護連携の推進、一部の予防給付の地域支援事業への移行、特別養護老人ホーム対象者の制限、上位所得者の自己負担2割、地域支援事業の充実等。