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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第12回 社会理論と社会システム

パーソンズの主意主義的行為論

 次に、ウェーバー以外の、社会的行為論を取り上げていきたいと思います。まずアメリカの社会学者パーソンズ(Parsons, T.)の主意主義的行為論を見ていきましょう。

 パーソンズは、功利主義の立場に立つホッブズ(Hobbes, T.)が、この社会は、一人ひとりが自分の目的の達成のためには手段を選ばない行為を行うために「万人の万人のための闘争」という秩序なき状態になっていると指摘したことに対して、これを「ホッブズ問題」と名づけ、その解決のために「主意主義的行為論」を提唱しました。

 主意主義的行為論とは、社会の構成員が共有する価値を「共通価値」と名づけ、社会の構成員がその共通価値に基づいて社会的行為を行うことにより、社会秩序の維持がもたらされるという考え方です。

 共通価値は、内面化された社会の規範に決定される価値観であり、パーソンズは、目的を達成するための行為に、正しさという規範を求めることによって、ホッブズのいう「万人の万人のための闘争」という状態から、社会的秩序をもたらすことができると考えました。

 これは、適切な手段を用いて目的を達成していくという社会秩序を形成するための行為論で、これをパーソンズは、「主意主義的行為論」と名づけました。

合理的選択理論

 では、次にこのほかの社会的行為論を見ていきましょう。個人の合理的行為と社会全体の利益について分析したのが、合理的選択理論です。一人ひとりが個人の利益を追求する合理的と思われる行為を選択した結果、社会全体の不利益をもたらしてしまうという理論で、「社会的ジレンマ」に代表される理論です。

 2人の囚人が逮捕され取り調べを受ける段階で、それぞれの行為の選択の結果が、相互に影響を与える場合、どの行為を選択するかというジレンマを抱えることを「囚人のジレンマ」といいます。

 自由に使用できる共有地で牛を放牧する際、個人の利益を優先して、次々に放牧する牛の数を増やしていくと、結果的に共有地の草が無くなってしまい、その土地を使用できなくなってしまうことを「共有地の悲劇」といいます。

ゴッフマンの印象操作

 社会的行為論の一つとして、ゴッフマン(Goffman, E.)は「印象操作」という概念を提示しました。ゴッフマンは、人間の社会的行為を、劇場におけるパフォーマーとしての役割演技としてとらえました。役割演技とは、演技者は、演技を見る者に対して、どのように見られたいかという意図をもって演技を行っているという考え方です。

 演技者が、演技を見る者に対して与える印象を操作することを、印象操作といいます。人間は、何らかの社会的行為を行う場合、自分がどのように相手に見られたいかと考えながら、相手に自分自身を示しているのだとして、人間の社会的な行為を、印象操作という概念で説明しました。

ブルデューのハビトゥス論

 フランスの社会学者ブルデューは、人間の行為のなかには、必ずしも意識的、自覚的に行われるわけではなく、何気なく身についた習慣として行われる行為というものがあることに注目し、それを「ハビトゥス」と名づけました。

 ハビトゥスとは、過去の経験に基づいて個人の内に身についた知覚や思考、実践行動を生み出す性向を意味します。その人が生まれ育った環境や生活歴、経験などによって身につけた、立ち居振る舞いや考え方、行動様式のことです。ブルデューは、このハビトゥスによって人々は、さまざまなことがらを、無意識に習慣として行動していると考えました。

 そしてブルデューは、このハビトゥスを含めて、社会的に再生産されるものを文化資本と名づけました。ブルデューは文化資本を、ハビトゥスのように身体化された行動様式としての文化資本と、家具や食器、絵画や書物等のように物体として蓄積される文化資本、学歴や資格等のように制度化された文化資本に分類しています。

 ブルデューはこれらの文化資本は、教育等によって再生産されるとし、文化資本の配分の不平等が再生産によって社会的な格差を生み出していると指摘しました。

主意主義的行為理論パーソンズが提唱。社会の成員の「共通価値」により社会秩序が可能であるとしてホッブズ問題を論じた。共通価値は内面化された社会の規範に決定されるとしている。
合理的選択理論個人の利益を追求する合理的と思われる行為が社会全体の不利益を招くという「社会的ジレンマ」の理論。
役割演技ゴッフマンが提唱。人間の社会的行為を役割演技として捉え、人間の社会的な行為を印象操作という概念で提示した。
文化資本ブルデューが提唱。身体化された行動様式としての文化資本、物体として蓄積された文化資本、学歴等制度化された文化資本は再生産されると論じた。

ハーバマスのコミュニケーション的行為論

 ドイツの哲学者ハーバマス(Habermas, J.)は、従来の社会的行為理論を、目的論的行為、戦略的行為、規範に規制される行為、演劇的行為の4種類に分類し、新たに、コミュニケーション的行為を提唱しました。

 「目的論的行為」とは、目的を達成するための行為で、ウェーバーの目的合理的行為と対応するものです。戦略的行為とは目的論的行為の一つで、他者の行為を計算に入れたり他者の選択に影響を与えることによって、自己の目的の実現を目指す行為のことです。何らかの力により、相手の意思決定に影響を及ぼし、自己の目的の実現を目指そうとする行為です。

 「規範に規制される行為」とは、社会が共有する共通の規則や規範に則って行われる行為のことです。演劇論的行為とは、行為者が相手に対して、自分自身について一定の印象を与えようとする行為です。

 ハーバマスは、従来の行為をこのように分類したうえで、社会的行為は、単に目的を達成するためだけに行われるべきではなく、真理性、正当性、誠実性に基づく、コミュニケーションによって合意を形成するという行為に移行すべきであるとし、コミュニケーション的行為という概念を提示しました。

 「コミュニケーション的行為」とは、言語を媒介として、自己と他者の相互了解や合意形成を目的として行われる行為です。これは強制による合意ではなく、承認や異議を自由に表明しながら行われる、主体的なコミュンケーションによる合意形成であり、このようなコミュニケーション的行為によって、真の意味での社会秩序の形成に、より近づくことができるとしました。

ハーバマスの行為論
目的論的行為目的を達成するための行為
戦略的行為他者の行為を計算に入れたり他者の選択に影響を与えることによって、自己の目的の実現を目指す行為
規範に規制される行為社会が共有する共通の規則や規範に則って行われる行為
演劇論的行為行為者が、相手に対して自分自身について一定の印象を与えようとする行為
コミュニケーション的行為言語を媒介として、真理性、正当性、誠実性に基づき相互了解や合意を目指して行われる行為

 いかがでしたか。「社会理論と社会システム」の受験対策は、人物や業績の単なる暗記にとどまらず、社会全般を多角的な視点でとらえて深い理解力を培うことによって、受験のための本当の底力を付けていくことになります。これからもさらに学習を重ねて、学ぶ楽しさを体験していただければと願っています。次回は「現代社会と福祉」を取り上げます。

 では、第21回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、挑戦してみてください。

第21回 精神保健福祉士国家試験 「社会理論と社会システム」

問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して、その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 合理的選択理論
  • 2 主意主義的行為
  • 3 理解社会学
  • 4 コミュニケーション的行為
  • 5 社会システム論