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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第12回 社会理論と社会システム

現代社会の理解

 【社会システム】の分野では、社会現象をシステムとして捉える考え方や、社会の文化や規範、社会の構造や発展に伴う社会意識の変化等についての理解を深めておきましょう。

 また、階級と階層の概念の違い、社会移動における垂直移動、水平移動、世代間移動、世代内移動等の意味を、経済指標と社会指標の違い、社会指標を用いた調査の目的等についても学習しておきましょう。第21回では社会の福祉水準を測定する指標として、幸福度指標が、第19回では所得格差の指標が、第18回ではわが国の就業構造が出題されています。

 【法と社会システム】の分野では、法と社会規範、法と社会秩序について理解しておきましょう。ノネとセルズニックの法モデル、ウェーバーの支配類型論等が定番問題です。第20回では裁判員制度の出題がありました。今年度は、裁判員制度の開始からちょうど10年目に当たりますので、関連報道に気をつけておくとよいでしょう。私たちの生活の秩序と法が、どのようにかかわっているのか、合法的支配や法治国家の意味について、また抑圧的法、自律的法、応答的法の、それぞれの意味についてもよく学習しておきましょう。

 【経済と社会システム】の分野では、市場や交換・互酬性の概念、現代社会における働き方、成果主義や均等処遇、裁量労働制やフリーター、ワーク・ライフ・バランス等の概念を理解しておきましょう。

 グローバル化や産業構造の仕組みの変化に伴って、労働形態、労働環境が大きく変化しています。第21回ではジニ係数が、第20回では、完全失業率、有効求人倍率、非正規雇用、同一労働同一賃金、男女間の賃金格差が出題されました。働き方改革も進められていますから、日々のニュースにも注意をしておいてください。

 市場と消費の観点から、第18回では消費社会論が取り上げられています。ロストウ、ガルブレイス、リースマン、ヴェブレン、ボードリヤールの消費論について、それぞれの理論のポイントを押さえておきましょう。

 【社会変動】の分野の出題率は、全体的に低くなっていますが、近代化や産業化、情報化による社会の変化と特質を整理しておきましょう。第21回では、近代社会の特質として業績主義が出題されました。

 過去には、デュルケム、ウェーバー、テンニース、ジンメル、ベル等の出題実績もあります。社会の変化は、家族やライフサイクル等にも影響を与えています。社会生活の各分野に社会変動がどのような影響をもたらしているか、という視点で学習しておくとよいでしょう。

 【人口】については、第21回では、人口転換、世界人口予測、世界の人口増加の要因、わが国の人口減少の実態、人口ボーナスと人口オーナスについての出題がありました。第18回では、わが国の少子化の実態と合計特殊出生率、乳児死亡率、平均寿命、65歳以上人口割合等の出題がありました。

 人口の概念、人口構造の変化、少子高齢化など、現代の人口問題や実態について押さえておきましょう。人口統計で用いられる基本用語の定義や人口の実態等、社会保障・人口問題研究所等のホームページで確認できますので、目を通しておくとよいでしょう。

 【地域】については、地域やコミュニティの概念、都市化と地域社会の変化、過疎問題、地域における集団や組織について学習しておきましょう。都市化や限界集落についての出題実績があります。第20回ではウェルマンのコミュニティ解放論が、第19回では我が国のコミュニティ政策の展開が出題されています。

 【社会集団及び組織】の分野では、第21回で第一次集団と第二次集団の違い、フォーマルグループとインフォーマルグループ、ゲマインシャフトとゲゼルシャフト、準拠集団、コミュニティとアソシエーションが出題されました。

 近代化に伴って、集団の性格がどのように変化していったかを理解しておきましょう。また、ウェーバーの官僚制論や官僚制の基本的特性、官僚制の逆機能等についても理解しておいてください。

生活の理解

 【家族】の分野では、家族の概念、時代の変遷による家族の変容、家族構造や家族形態、家族の機能について学習しておきましょう。第20回では「国民生活基礎調査」における世帯構造が、第19回では「高齢社会白書」における高齢者の意識調査が出題されています。世帯人員別、世帯類型別、65歳以上世帯の特徴等も含めて、現代の家族形態の状況等を確認しておきましょう。

 【生活の捉えかた】の分野からは、ライフサイクル、ライフコース、家族周期、コーホート、ライフイベント等の概念等が出題されています。生活様式の多様化に伴って生まれてきたライフコースの概念や、生活時間や生活の質、消費のとらえかたなどについても学習しておきましょう。

人と社会との関係

 【社会関係と社会的孤立】の分野では、現代社会における人間関係の希薄さと孤立に対して、ロバート・パットナムの社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の概念を理解しておきましょう。

 【社会的行為】の分野では、ウェーバーによる「価値合理的行為」と「目的合理的行為」の意味、ハーバマスの「コミュニケーション的行為」「戦略的行為」等について理解を深めておきましょう。第21回では、ウェーバーの理解社会学が出題されています。関連する理論として、合理的選択理論、主意主義的行為、社会システム論等も理解しておきたいものです。今回は後ほど、この分野を中心に取り上げていきたいと思っています。

 【社会的役割】の分野からは、第19回、第20回で連続して出題されています。役割期待、役割演技、役割葛藤、役割距離、役割取得、他者や社会から求められる役割と個人の役割遂行との関係、役割と自我の形成等の考え方を整理しておきましょう。

 【社会的ジレンマ】の分野については、第21回、第20回、第18回で出題がありました。個人の合理的行為とそれがもたらす集団への結果、フリーライダー、創発特性、選択的誘因、共有地の悲劇、囚人のジレンマ等について、それぞれの意味をよく理解しておきましょう。

社会問題の理解

 【社会問題の捉え方】では、犯罪や逸脱の捉え方についての理解を深めておきましょう。第19回ではラベリング理論が、第18回では構築主義アプローチの出題がありました。社会病理や逸脱の考え方、分化学習理論なども理解しておきましょう。

 【具体的な社会問題】では、ジェンダー、環境問題、貧困問題、失業、非行、社会的排除、ハラスメント、DV、児童虐待、いじめなど、現代の社会のおける諸問題についての出題があります。貧困の概念と測定方法、ラウントリーやタウンゼントの貧困の概念、ジニ係数、相対的貧困率などの定義や意味、実態を把握しておきましょう。

 第20回では、児童虐待の実態に関する出題がありました。「児童相談所での児童虐待相談対応件数」や警察庁による「少年非行、児童虐待及び性的搾取等の状況について」等に目を通しておくとよいでしょう。

 以上、全体を概観してきましたが、今回は、社会的行為に関して取り上げていきます。

社会の分析方法

 人と社会との関係を分析する立場には、社会全体をシステムとして捉える「社会システム論」の立場、社会現象を、人間から独立し人間の行為を拘束する力を持つものとして捉える「方法論的集団主義」の立場、社会現象は、個人の行為によってつくられていくという視点で捉える「方法論的個人主義」の立場等があります。

社会システム論

 社会システム論とは、生態学から生まれたシステム思考の影響を受けた理論です。システム思考とは、システムを要素の集合として捉え、各要素間が相互に影響を与えて、システム全体に影響を与えていると考えます。各要素間が相互に影響を与えることによって、各要素にはない新たな特性が生まれるとして、これを「創発特性」と名付けています。

 社会システム論は、パーソンズに代表される理論です。パーソンズは、社会をシステムとして捉え、構造と機能という概念で分析しています。社会というシステム全体は、それぞれ独自の機能を持ったサブシステムが相互に影響しあい、社会という全体のシステムの秩序を保っているという理論です。

 パーソンズは経済が適応機能を、政治が目標達成機能を、文化が統合機能を、人と人とのつながりが緊張処理機能等の機能を担っているとし、社会の活動を進め社会秩序を維持しているとしました。

社会的行為論

 社会的行為論は、方法論的個人主義の立場による理論で、ウェーバーの社会的行為論、パーソンズの主意主義的行為論、ゴッフマンの印象操作論、ブルデューのハビトゥス論、ハーバマスのコミュニケーション的行為論等があります。

ウェーバーの理解社会学

 ウェーバーは、方法論的個人主義」の立場から、人間の行為と社会との関係を分析しました。ウェーバーは、個人の行為の「主観的意味」を「内面的に理解」して、その行為を引き起こす動機によって行為を分析し、これを「理解社会学」と名づけました。

ウェーバーの社会的行為類型

 ウェーバーは社会的行為を、意識的に行っている「合理性行為」と、無意識に行っている「非合理性為」に分類し、さらに「合理性行為」を「目的合理的行為」と「価値合理的行為」に、「非合理性行為」を「感情的行為」と「伝統的行為」に分類しました。
 ウェーバーは、これらの行為をどのような概念として、類型化しているのかを見ていきましょう。

目的合理的行為

 目的合理的行為とは、特定の目的を達成するために「手段」として行われる行為です。例えば、経済的な利益を追求するための行為は、「経済的利益をあげる」という目的のために「手段」として行われる行為であって、その行為自体に絶対的な価値があるわけではありません。あくまでも、目的を追求するための行為です。経済的な利益を追求するホモ・エコノミクス(経済人)と呼ばれる行為が、目的合理的行為の代表的な例だといえるでしょう。

価値合理的行為

 価値合理的行為とは、ある固有の絶対的価値に基づいて行う行為です。「価値」自体が、行為の原動力であり行動の基準となるという行為ですから、行為の結果は問いません。結果とは無関係に、ただ絶対的価値だけを行為の基準とします。

 ウェーバーの、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で論じられた、神からの召命としての職業への献身と、禁欲主義というプロテスタンティズムの倫理が、資本主義を生みだし発展させたという理論は、この価値合理的行為に該当するといえるでしょう。

感情的行為

 感情的行為とは、感情に駆られて無意識に行われる行為です。喜怒哀楽の感情や情動に動かされて行う行為で、意識的ではなく、無意識に行っている行為で、行為対象に対して、直接的な感情や気分によって行われる振る舞いを意味します。

伝統的行為

 伝統的行為とは、無意識に習慣的に反応する行為で、一日の始まりに目が覚めて着替えをする、顔を洗う、食事をするなどの行為のように、あえて意識することなく反応的に行っている行為が、伝統的行為に該当します。

ウェーバーの社会的行為論
合理性行為意識的に行っている行為
目的合理的行為特定の目的のために、手段として行われる行為
価値合理的行為固有の価値に基づき、結果とは無関係に行う行為
非合理性行為無意識に行っている行為
感情的行為感情にかられて無意識に行われる行為
伝統的行為無意識に習慣的に反応する行為