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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第6回 精神保健福祉の理論と相談援助の展開(1)

 皆さん、こんにちは。今回は、「精神保健福祉士の理論と相談援助の展開」を取り上げていきます。範囲が広いので、今回と次回の2回に分けて進めていきます。この科目は、精神保健福祉士としての援助を具体的にどのように実践していくか、諸制度を熟知した上でケースに適用できる実践力が求められます。援助の基本理念を押さえた上で、具体的な援助技術を駆使していけるように、細部まで丁寧に学習しておきましょう。

 では、はじめに前回の課題の解説をしておきます。

第21回 精神保健福祉士試験 「精神保健福祉相談援助の基盤」

問題16 精神科ソーシャルワーカーの歴史に関する次の記述のうち、正しいもの2つ選びなさい

  • 1 1948年(昭和23年)に、精神科ソーシャルワーカーは精神衛生相談員という名称で初めて精神病院に配属された。
  • 2 1964年(昭和39年)に、保健所の精神衛生相談員を主たる構成員とする日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会が設立された。
  • 3 1987年(昭和62年)の精神衛生法改正時の附帯決議では、精神科ソーシャルワーカー等のマンパワーの充実を図ることとされた。
  • 4 1993年(平成5年)の障害者基本法では、精神科ソーシャルワーカーの具体的な義務が規定された。
  • 5 2010年(平成22年)の精神保健福祉士法の改正では、精神障害者への地域相談支援の利用に関する相談が精神保健福祉士の役割として明確に位置づけられた。

正答 3、5

解答解説

  • 1 誤り。精神病院に初めて精神科ソーシャルワーカーが配置されたのは、「精神衛生相談員」としてではなく、「社会事業婦」という名称による。1948(昭和23)年に、国立国府台病院の院長である村松常雄が医療社会事業部を設置し、社会事業婦を配置したのが、わが国における本格的な精神科ソーシャルワークの導入であった。
  • 2 誤り。1964(昭和39)年に設立された、現在の「精神保健福祉士協会」の前身である「日本精神医学ソーシャルワーカー協会」の構成員の所属先は、ほとんどが精神科病院であった。精神科病院で働く精神科ソーシャルワーカーは、生活療法等のリハビリテーションを主に行っていた。保健所に精神衛生相談員が配置されるようになったのは、1965(昭和40)年の精神衛生法一部改正による。この改正で、保健所が地域の精神保健行政の第一線機関として位置付けられ、保健所に精神衛生相談員が配置できることとされた。
  • 3 正しい。翌年の1983(昭和58)年には宇都宮病院事件が起こり、我が国の精神医療現場における人権侵害が世界的に問題となった。これを契機に、1987(昭和62)年には、精神衛生法が改称・改正され、任意入院制度や精神医療審査会、退院請求制度等が規定されて、精神障害者の人権を重視した精神保健法が制定され、このときの附帯決議として、精神科ソーシャルワーカー等の、マンパワーの充実を測ることが盛り込まれた。
  • 4 誤り。1993(平成5)年の障害者基本法では、精神科ソーシャルワーカーの具体的な業務は規定されていない。1993(平成5)年の障害者基本法は、1970(昭和45)年に制定された「心身障害者対策基本法」を改正・改称したもので、従来法の対象外であった精神障害者を法の対象とし、障害者施策に関する理念と総合的な施策を規定した。
  • 5 正しい。2010(平成22)年の精神保健福祉士法改正では、障害者総合支援法に規定する「地域相談支援」の利用に関する相談に応じることが業務として追加された。同時に、常に利用者の立場に立って誠実にその業務を行わなければならないこと、相談援助に関する知識及び技能の向上に努めなければならないこと、保健医療サービス、障害者総合支援法に規定する障害福祉サービス、地域相談支援に関するサービスその他のサービスとの、密接な連携を行うべきことが規定された。

 いかがでしたか。「精神保健福祉相談援助の基盤」では、このほかにノーマライゼーション、エンパワメント等の援助の理念を実践の現場でいかに適用していくかという視点で学習しておきましょう。

 では、今回の「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」について、近年の出題傾向を分析し、受験対策のポイントを取り上げていきたいと思います。

精神保健医療福祉の歴史と動向

 この分野からは、ほとんど毎回出題がみられます。わが国の精神保健医療福祉の変遷を、「治療・医療モデル」から「生活モデル」への転換という視点をふまえた上で、法制度の改称・改正内容を押さえておきましょう。

 第20回では、わが国の精神保健福祉として、札幌宣言、谷中輝雄、生活モデル、精神保健福祉士、地域生活支援体制の強化が出題されています。

 諸外国の精神保健医療福祉として、政策面では、イタリア、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、韓国、イギリス、フランス等の主要国の精神保健医療政策の発展の経緯について出題されています。

 わが国の精神保健医療福祉関連の法制度の変遷、諸外国の精神保健医療福祉の動向、精神保健医療福祉の事項と人物等がそれぞれ、3~4年に1回の頻度で出題されていますので、そのことをふまえて対策しておくことをおすすめします。

精神障害者に対する支援の基本的な考え方と必要な知識

 わが国における精神科ソーシャルワーカーの活動の歴史や、精神保健福祉士法として法制化された歴史的背景を、精神障害者の権利擁護と自立生活支援の観点から理解を深めておきましょう。

 精神障害者支援の理念としては、ノーマライゼーション、エンパワメント、ストレングス、リカバリー、レジリエンス等の理念を、実践にいかに適用していくか、事例問題に取り組める力を養っておきましょう。

 精神障害の概念や法律上の精神障害者の定義としては、精神保健福祉法における精神障害者の定義、またその他の関連法としては、障害者雇用促進法、医療観察法、自殺対策基本法、発達障害者支援法、障害者差別解消法、障害者総合支援法等の、それぞれの法律における精神障害者への支援についても確認しておくとよいでしょう。

 第21回試験では、障害者福祉に関する法律として上記の関連法の出題がありました。午前科目の「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」と重複する内容ですから、並行してよく学習しておきましょう。

 精神障害者の権利については、治療におけるインフォームドコンセント、権利擁護の機能、権利擁護システムとしての精神医療審査会、成年後見制度、日常生活自立支援事業、障害者虐待防止法等に関する制度や法律も学習しておきましょう。

 権利擁護については、「精神保健福祉相談援助の基盤」の科目で出題される場合と、この科目で出題される場合があります。「精神保健福祉相談援助の基盤」で出題される場合は、権利擁護の理念や概念に関する出題が多く、この科目で出題される場合は、権利擁護の具体的な機能と、それが実践の場でどのように行われているかという視点での出題形態がみられます。今回はのちほど、この権利擁護の機能について取り上げていきます。

精神科リハビリテーションの概念と構成

 ここはとても出題率の高い分野です。WHOによる精神科リハビリテーションの理念と定義、アンソニーによる精神科リハビリテーションの基本原則、精神科リハビリテーションにおける精神保健福祉士の役割などについて理解を深めておきましょう。

 第21回では、精神科リハビリテーションにおけるチームアプローチ、地域に根差したリハビリテーション(CBR)が出題されました。第20回と第18回では精神科リハビリテーションの基本原則が、第19回では精神科リハビリテーションの考え方についての出題がありました。