メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第4回 「精神保健の課題と支援」

 皆さん、こんにちは。新年度を迎え早くも1か月が過ぎましたね。毎日忙しい日々を送っておられると思います。なかなか学習には手がつけられないという方も多いかと思います。本試験まで9か月余ありますが、長いようでも実はあっという間に過ぎてしまいます。毎日少しずつでも学習する習慣を身につけましょう。

 今回は、「精神保健の課題と支援」を取り上げていきたいと思います。現代社会は多くの精神保健福祉の課題が山積しています。この科目は、精神保健に関する社会生活のあらゆる分野の課題を対象とするため、範囲が広く対応に苦慮するかもしれませんが、近年の出題傾向をみると、常識の範囲内で解答を導きだせるものが多くみられます。

 出題範囲を着実に学習し、基本的な知識をしっかりと身につけておけば、合格圏の得点は十分可能です。さまざまな報道にアンテナを張り巡らせて、精神保健に関する情報に注目しておくとよいでしょう。
 では最初に、前回の課題の解説をしておきたいと思います。

第21回 精神保健福祉士国家試験 「精神疾患とその治療」

問題7 次のうち、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用でみられることが多いもの2つ選びなさい。

  • 1 運動失調
  • 2 体重減少
  • 3 消化性潰瘍
  • 4 眠気
  • 5 嘔気

正答 4、5

解答解説

  • 1 適切でない。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用に運動失調はみられない。運動失調は、めまい、ふらつき、まっすぐに歩けない等の症状である。抗不安薬や睡眠薬による中枢神経全般に対する抑制作用として、運動失調がみられることがあるが、一過性で可逆的なものである。抗てんかん薬の一部には、過量投与により運動失調をはじめとする精神・神経症状が出現することがある。
  • 2 適切でない。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用に、体重減少はみられない。抗てんかん薬のトピナ等で体重減少がみられることがある。
  • 3 適切でない。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用に、消化性潰瘍はみられない。薬剤の投与による副作用として消化性潰瘍が起こるものとしては、非ステロイド性抗炎症薬を挙げることができる。
  • 4 適切。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用には、精神神経系症状として、眠気やめまい、ふらつき、頭痛が現れる場合がある。なお、初期投与時や用量変更時に、賦活症候群として、不安、焦燥、パニック発作、不眠、易刺激性、衝動性、アカシジア、躁状態がみられることがあり、自殺の危険性を高めるおそれもあるので、小児、若年成人に使用する場合は注意が必要である。
  • 5 適切。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の副作用には、消化器症状として服用初期の吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの胃腸障害がみられる場合がある。これらの症状は、服用後2~3週間程で軽減する傾向にある。

 いかがでしたか。では、今回の「精神保健の課題と支援」に入っていきましょう。過去の出題の傾向を分析しながら、出題率の高い分野を中心に取り上げて、対策を立てていきたいと思います。

精神の健康と、精神の健康に関連する要因及び精神保健の概要

 「社会構造の変化の新しい健康観」の分野からは、「健康の定義」として、第20回でICFの概念についての出題がありました。アルマ・アタ宣言のプライマリ・ヘルスケアやオタワ憲章のヘルスプロモーションの概念等が出題されていますので、内容を押さえておきましょう。

 「ライフサイクルと精神の健康」の分野からは、「発達課題」として、注意欠陥多動性障害、エリクソン、ピアジェの発達理論やゲゼルの成熟優位説、ボウルビイの愛着(アタッチメント)理論等が出題されています。共通科目の「心理学理論と心理的支援」と重なる内容ですから、並行して学習しておくとよいでしょう。

 「ストレスと精神の健康」からは、第21回でストレスに関しての出題がありました。燃え尽き症候群(バーンアウト)、ストレスとストレスコーピング、急性ストレス障害、外傷後ストレス障害等について確認しておきましょう

 「自殺予防」は、大変出題率が高い分野です。第21回では、2016(平成28)年4月の自殺対策基本法の改正内容が出題されました。新たな自殺総合対策大綱や自殺の実態等も把握しておきましょう。今回は、この分野をのちほど取り上げていきたいと思っています。自殺の実態は、内閣府による「自殺対策白書」で確認しておきましょう。

精神保健の視点から見た家族の課題とアプローチ

 この分野からは、家族の課題として、ドメスティック・バイオレンス、マタニティブルーズと産後うつ、子育て不安と児童虐待等が繰り返し出題されています。介護負担と高齢者虐待、ひきこもり、がん患者支援、グリーフケア等も含めてよく学習しておきましょう。

 また、これらの諸課題を支援する機関として、要保護児童対策地域協議会、配偶者暴力相談支援センター、ひきこもり地域支援センター、地域包括支援センター、児童家庭支援センター、発達障害者支援センター等の関連機関が出題されています。それぞれの機関の法的位置づけと役割を把握しておきましょう。

精神保健の視点から見た学校教育の課題とアプローチ

 「現代日本の学校教育と生徒児童の特徴」の分野からは、第20回でいじめ防止対策推進法が出題されています。いじめや不登校、校内暴力、自殺、非行等について、文部科学省が実施している「児童生徒の問題行動等指導上の諸問題に関する調査」の結果等を、文部科学省のホームページで確認しておきましょう。また、いじめや不登校については、それぞれの定義も正確に理解しておきましょう。

 「教員の精神保健」「関与する専門職と関係法規」からは、第21回で「平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査」(文部科学省)が出題されました。教師のバーンアウトや精神疾患による休職の実態、学校保健安全法等の内容を確認しておきましょう。

 いじめや不登校、貧困などが複雑に絡み合っている、学校現場における児童の諸課題に対して、スクールソーシャルワーカーの役割の重要性が増してきていますので、スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領(平成25年4月1日付:初等中等教育局長決定:平成29年一部改正)等にも目を通して、スクールソーシャルワーカーの位置づけ、役割等について、具体的な事例問題にも対応ができるようにしておきましょう。

精神保健の視点から見た勤労者の課題とアプローチ

 この分野は極めて出題率が高く、第21回ではストレスチェック制度が、第20回では労働者の精神保健の現状と職場のメンタルヘルスが出題されています。非正規職員の増加と正規職員の過重労働、職場におけるうつ病の増加や過労死など、長期休業や自殺との関連において、職場でのメンタルヘルス対策が急務となっていますので、今後も出題の可能性は高いと思われます。

 労働安全衛生法やストレスチェック制度、過労死等防止対策推進法、労働者の職場復帰支援としてのリワークプログラム、男女雇用機会均等法等の関連法規の内容をよく学習しておきましょう。

 また、「心理的負荷による精神障害の認定基準(精神障害者の労災認定基準)」「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」等にも目を通しておきましょう。

精神保健の視点から見た現代社会の課題とアプローチ

 災害関係では、災害対策基本法における施策と、被災者の精神的な外傷への対応を押さえておきましょう。犯罪被害者への支援については、犯罪被害者等基本法等の被害者への支援体制施策をよく理解しておきましょう。「犯罪被害者に対する急性期心理社会支援ガイドライン」にも目を通しておくとよいでしょう。

 現代社会の課題としてのニートや貧困問題、フリーター、ホームレスの実態については、全国調査の結果等を確認しておきましょう。また、ホームレス自立支援法におけるホームレスの定義やホームレス対策、ホームレスの実態についても理解しておきましょう。

 性同一性障害については、第21回で「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」が出題されました。「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」と併せて目を通しておきましょう。

精神保健に関する対策と精神保健福祉士の役割

 この分野では、アルコール患者の実態と特徴、うつ病や自殺との関連、WHO(世界保健機構)におけるアルコール対策、健康日本21(第2次)などのわが国のアルコール施策について学習しておきましょう。また、アルコール健康障害対策基本法における、アルコール健康障害の定義や基本計画策定等についての規定を整理しておきましょう。

 薬物依存対策としては、2018(平成30)年8月に新たに策定された第五次薬物乱用防止五か年戦略の要点や、ダルク等の薬物依存症当事者活動について理解を深めておきましょう。認知症高齢者施策については、制度的な面として、認知症疾患医療センター、認知症地域支援推進員、認知症サポーターキャラバン、認知症サポート医、認知症地域支援施策推進事業等について整理しておくとよいでしょう。

 ひきこもり対策としては、第21回で、「ひきこもり地域支援センター」に関する出題がありました。厚生労働省から出されている「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」や、ひきこもりの定義と実態、地域若者サポートステーション等についても整理しておきましょう。

 精神保健福祉士の役割として、第20回では、依存症対策における精神保健福祉士の支援のあり方が出題されています。依存症患者の特質の理解と、ソーシャルワーカーの視点に立った支援のあり方を習得しておきましょう。