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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第45回 第21回精神保健福祉士国家試験共通科目分析

 皆さんこんにちは。試験の結果発表が待ち遠しい日々を過ごしておられることと思います。前回の専門科目に続いて、今回は共通科目を取り上げて、出題傾向を分析していきましょう。

人体の構造と機能及び疾病

 人の成長・発達の分野から、精神の成長・発達として、エリクソンの発達段階説が出題されたのには、心理学の科目かと意外性を感じましたが、難易度は高くはありませんでした。

 人体の各器官と構造と機能、ICFについては定番問題でしたが、落ち着いて読まないと誤りを誘う表現がみられました。健康及び高血圧、障害、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)に関しても、一般常識で答えられる内容でしたので、全体的に難易度はそれほど高くなかったと思われます。

心理学理論と心理的支援

 動機付け理論、記憶、防衛機制、ストレス対処法、基礎的な知識で十分対応できる内容でした。感覚・知覚については、一部戸惑う選択肢もあり、迷った受験生もあったかと思われます。

 心理検査についても、ある程度学習していれば選択できたでしょう。心理療法は、オペラント条件付け、レスポンデント条件付け理論とその応用である行動療法の概念を理解しているかどうかという問題でした。あまり出題実績のない、臨床動作法も出題され、少々難問だったといえるかもしれません。ただ、科目全体としては、取り組みやすかったのではないでしょうか。

社会理論と社会システム

 社会指標、社会移動、社会集団、フリーライダーは、定番問題でした。人口に関する出題は極めて久しぶりで、目を引きました。ジニ係数については、相対的貧困率との違いで迷った受験生もおられたのではないでしょうか。

 社会的行為に関しては、従来の視点とは異なる視点での出題でしたので、難問の部類に入るでしょうが、科目全体としては、例年通りの難易度であったといえるでしょう。

現代社会と福祉

 イギリスの福祉政策の歴史、社会福祉法の制定については、基本的な知識で対応できたでしょう。福祉避難所については、近年の出題率も高く、ガイドラインの詳細は知らなくても常識の範囲内で解答できる内容でした。

 ヘイトスピーチ解消法、性同一障害、最低賃金制度等、時事性の強い出題は難易度が高く、人間の安全保障、世界幸福度報告書などの国際的な動向についても、解答に苦慮する出題で、全体としては難易度の高い内容でした。

 ポランニー、ブルデユー、デュルケム、バージェスなど、社会理論の科目と重複する内容がみられたこと、福祉政策論的な出題が影をひそめてきていること等が特徴としてあげられます。

地域福祉の理論と方法

 地域福祉の理念、社会福祉協議会、地域福祉の連携については、基本的な知識で対応できる内容でした。地域福祉の対象としての被災者、ホームレス、生活困窮者、ひきこもり、障害者虐待等は、個別分野の制度や法律に関する知識を問うものでした。また、地域福祉の担い手や組織についても、一般的な常識の範囲内で対応できたでしょう。

 短文事例問題は、例年と同様、市町村社会福祉協議会と地域包括支援センター、生活困窮者自立支援制度における取り組みや対応を問うもので、定番問題でした。地域福祉政策関連の報告書については、各分野の方向性を把握していれば対応できたかと思われます。

 高齢者の分野の地域包括ケアの推進に関しては、社会福祉士国家試験の「高齢者」の分野に該当する内容で、精神保健福祉士だけの受験生には、少々難易度が高かったのではないでしょうか。全体でみると、一部難問がありましたが、難易度はそれほど高くはなかったと思われます。

福祉行財政と福祉計画

 福祉行政機関の役割、福祉財政の実態、福祉計画という3分野からバランスよく出題されていました。都道府県の役割、社会保障関係費の構成割合、福祉計画策定の相互関係は、定番問題でした。

 福祉計画に定めるべき事項についても、都道府県と市町村の役割の違いを知っていれば対応できたでしょう。ただ、福祉計画の策定過程と、第5期障害福祉計画作成のための基本指針に関する問題は、難易度の高いものでした。また、医療と介護の改革に関する出題は、難易度は高くはなかったのですが、新たな出題スタイルで目を引きました。

社会保障

 年金保険制度と医療保険制度がそれぞれ1問ずつと、短文事例問題で、雇用保険と介護保険と労災保険が横断的に出題されていました。近年の傾向として、医療保険制度の歴史的展開と社会保険制度財源の出題もあり、出題傾向が定着してきている感があります。

 隔年での出題がみられる諸外国の社会保障制度もそれほど難易度の高い内容ではありませんでした。科目全体でみると、取り組みやすかった出題内容であったといえるでしょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 障害者の実態、障害者福祉の発展過程、障害者関連法の根拠法についての出題は、定番問題でした。障害福祉サービスについては、新たな自立生活援助が出題されていたのが目を引きました。

 短文事例問題では各機関の役割について、また個別の問題でも、各センターの役割についての出題があり、障害者に関する相談機関や支援機関についての知識を問う内容が目立ちました。

 短文事例で、65歳以上になったときの障害福祉サービスと介護保険サービスとの関係が出題されていたのが注目されます。今後はさらに相互関係に関する出題が予想されるでしょう。科目全体でみると、それほど難易度は高くはなく、ある程度の点は確保できたのではないかと思われます。

低所得者に対する支援と生活保護制度

 扶助の種類と内容、福祉事務所の組織と業務については、一定の知識があれば解ける内容でした。また、生活困窮者自立相談支援事業の短文事例も、常識の範囲内で対応できるものでした。

 低所得者の状況、保護基準、扶養義務者とのかかわりについては、従来よりも掘り下げた内容で、難易度の高いものでした。また、無料定額宿泊所は、あまり出題実績がありませんので、解答に苦慮した受験性も多かったと思われます。この科目は全体的に見て、例年より難易度は高かったといえるでしょう。

保健医療サービス

 医療保険の給付内容、医療保険制度の仕組み、国民医療費、診療報酬制度、医療関係職種の業務は定番問題でした。

 へき地医療については、一定の知識が要求される内容でしたので、難易度が高かったといえるでしょう。医療ソーシャルワーカーの短文事例は、医療ソーシャルワーカーの心理的、社会的、経済的な視点が問われる内容でした。科目全体で見ると、前回よりも難易度は低く、取り組みやすかったのではないかと思われます。

権利擁護と成年後見制度

 成年後見関係事件の概況、日常生活自立支援事業は、定番問題でした。最高裁判例は、しばらく出題がなかったので意表を突かれた受験生も多かったのではないでしょうか。出題内容は、朝日訴訟を知っていれば解けるものでしたが、選択肢のなかには難易度の高いものがありました。特別養子縁組の出題も、近年はしばらくありませんでしたから、詳細な内容まで把握していた受験生は多くはなかったと思われます。

 行政事件訴訟についても、従来は、取り消し訴訟がわかれば十分対応できたのが、今回は、さら深く掘り下げた内容になっており、非常に難易度の高い出題でした。児童虐待防止法の改正内容は予想の範囲内でしたが、しばらく出題のなかった特定商取引法が出題されたのが目を引きました。科目全体でみると、難易度は高い科目であったといえるでしょう。



 以上、共通科目を分析してきましたが、共通科目全体をみると、科目によってはばらつきがありますが、全体では難易度は上がっているという感触があります。

 前回と今回で本試験問題の分析を行ってきました。今回で最後の解説となります。1年間、精神障害者のために良き援助者になろうという高い志をもって、試験勉強の励んでおられる皆さんとともに、歩んでくることができたことを心から感謝しています。

 精神障害者のために良き援助者になろうという高い志をもって卒論や実習、就職活動という多忙ななかで学習に励んでこられた学生の皆さん、すでに現場で大きな活躍しながら限られた時間のなかで、必死で学習に取り組んでこられた皆様全員に、深い敬意と拍手をお送りします。

 皆さんの今までの努力が実を結び、全員が合格の栄冠を勝ち取られることを、心から願っています。精神障害者の方々の良き理解者、パートナーとして、これからも是非、精神障害者の人権が護られ、輝いた人生を送ることができるように、皆様の熱い思いが発揮されていきますように。また、この働きを通して、皆さんの人生がさらに豊かなものとされ、ますます輝いていきますようにと、心から期待し応援しています。本当に、1年間お疲れさまでした。ご受講いただき、ありがとうございました。