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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第31回 地域福祉の理論と方法

 皆さん、こんにちは。試験まであと約3か月になりました。模擬試験等の結果が出てくる頃でしょうか。あまり得点が伸びなかった科目や予想外に難しかった問題等に落ち込んでしまうかもしれませんが、模擬試験は自分の実力を知るのと同時に、自分の弱点を把握してそれを克服するのが目的です。
 できなかった問題は、なぜ解けなかったのか、理解が浅かったのか、知識量が少なかったのか、知識の確実性に欠けていたのか等、今からでも十分間に合いますから、よく分析して対策を立てていきましょう。

 この科目は、社会福祉法に規定されている地域福祉計画、社会福祉協議会、共同募金や民生委員法による民生委員などをはじめ、地域福祉のニーズ把握と資源調整、地域福祉人材などについて学習しておきましょう。今回は、福祉サービス第三者評価事業について取り上げていきたいと思います。
 では最初に、前回の課題の解説をしておきましょう。

第20回 精神保健福祉士国家試験 「現代社会と福祉」

問題28 貧困に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 ポーガム(Paugam, S.)は、車輪になぞらえて、経済的貧困と関係的・象徴的側面の関係を論じた。
  • 2 タウンゼント(Townsend, P.)は、相対的剥奪指標を用いて相対的貧困を分析した。
  • 3 ピケティ(Piketty, T.)は、資産格差は貧困の世代間連鎖をもたらさないと論じた。
  • 4 ラウントリー(Rowntree, B.S.)は、ロンドン市民の貧困調査を通じて「見えない貧困」を発見した。
  • 5 リスター(Lister, R.)は、社会的降格という概念を通して、現代の貧困の特徴を論じた。

正答2

解答解説

  • 1 誤り。ポーガムは、貧困を社会全体との関係から捉える貧困観に立ち、貧困の基本形態を、「統合された貧困」「マージナルな貧困」「降格する貧困」に分類しました。「統合された貧困」とは、貧困が社会集団を形成し、社会全体が貧困であるため、「貧困」がスティグマ化されていない貧困の状態のことで、所属員はむしろ社会に統合されていると感じている貧困です。「マージナルな貧困」は、社会の一部だけにみられるマイノリティとしての貧困層のことで、貧困がスティグマ化されやすいという性格をもっています。「降格する貧困」は、失業率の上昇、不安定雇用、絆の弱体化等を特徴とする現代の貧困のことで、経済的危機や不況のまん延が貧困の背景にあり、新しい貧困とも呼ばれるもので、貧困層が次々に生まれ拡大し、社会全体が、いつ自分がそのような貧困の状態に陥ってしまうかわからないという不安を抱えています。
  • 2 正しい。タウンゼントは、「その所属する社会で慣習になっている生活を送り、社会活動に参加したりするための生活資源を欠く状態」を相対的剥奪として定義し、この相対的剥奪の概念に基づいて相対的貧困の概念を提唱しました。貧困調査の指標として、食事、被服、光熱、住宅設備、住居条件、就業(厳しさ、安全、快適さ、福利)、健康、教育、環境、家族関係、休養娯楽、社会関係など12種類にまとめ、それらをさらに細分化して60種類を使用して調査を行い、相対的貧困の概念を説明しています。
  • 3 誤り。ピケティは、資本が収益としての資本を増加させる構造と、経済的資本が個人の努力とは無関係に相続によって継承されるしくみが、格差の拡大を引き起こしているとしています。資産を持っている人ほど不労所得が増加すること、少子化により相続による資産の集中度が上がっていること等により、貧困層と富裕層の連鎖が格差を拡大するという悪循環が生まれていると論じています。
  • 4 誤り。ラウントリーは、ロンドン市民ではなく、ヨーク市の貧困調査を行い、「貧困―都市生活の研究」を出し、ブースの提起した貧困線の概念をさらに明確にして、「第一次貧困」と「第二次貧困」に分類しました。第一次貧困は、肉体的能力を維持するのに必要な最小限度の生活水準で、「絶対的貧困」と呼ばれています。第二次貧困は、その収入の一部を、飲酒とか賭博など他の支出に向けなければ、かろうじて単なる肉体的な能力を維持することのできる生活水準のことです。
  • 5 誤り。リスターは、貧困を車輪モデルで説明しました。貧困の構成要素として、物質的要素と非物質的要素をあげて、物質的要素を貧困のコアになる概念として車輪の軸に据えた理論です。生活資源の不足による物質的貧困は、「許容できない辛苦」であり、この物質的要素である生活資源の不足により、非物質的要素が、関係的・派生的に生じるとしました。非物質的要素として、意見表明の欠如、軽蔑、侮辱、尊厳と自尊心の侵害、恥とスティグマ、権限の欠如、権利の否認と市民権の限定をあげて、貧困は物質的生活資源の不足だけにとどまらず、必然的・派生的に社会的排除を生みだしていくとしました。

 いかがでしたか。「現代社会と福祉」では、福祉の原理論、福祉の歴史的発展の経緯、福祉政策、福祉国家論等についても理解を深めておきましょう。
 では地域福祉論に入って行きましょう。今回は、福祉サービス第三者評価事業について取り上げていきたいと思います。