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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第34回 「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」

皆さん、こんにちは。模擬試験の結果が出る頃でしょうか。解答解説をしっかり読み込み、理解を深めておきましょう。

今回は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。まず、前回の課題の解説をしましょう。

第25回精神保健福祉士国家試験「社会保障」

問題55 公的年金制度に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 厚生年金保険の被保険者は、国民年金の被保険者になれない。
  • 2 基礎年金に対する国庫負担は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
  • 3 厚生年金保険の保険料は、所得にかかわらず定額となっている。
  • 4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
  • 5 老齢基礎年金の受給者が、被用者として働いている場合は、老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停止される場合がある。
正答 2

解答解説

    • 1 × 厚生年金保険の被保険者は、厚生年金の保険者が基礎年金拠出金を支払うことによって自動的に国民年金の第2号被保険者になる。
    • 2 〇 基礎年金部分は、国が2分の1を負担する。被保険者の保険料と国の負担金等を財源として、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支給される。
    • 3 × 厚生年金保険の保険料は、32等級の標準報酬制になっており、報酬に応じて保険料率を乗じて算出する。
    • 4 × 保険料免除期間の年金は、税金を財源として、一定の割合が給付される。
    • 5 × 老齢基礎年金の受給者が、被用者として働いている場合は、「老齢厚生年金」の一部又は全部の額が支給停止される場合がある。

いかがでしたか。今回は「障害者福祉の発展の経緯」について解説します。


1940~1970年代

わが国の障害児・者の福祉施策は、第二次世界大戦後に始まりました。

児童福祉法

1947(昭和22)年に、児童福祉法が制定され、障害児を含む全児童を対象とされました。

身体障害者福祉法

1949(昭和24)年には、身体障害者の職業的更生と社会復帰を目的として身体障害者福祉法が制定されました。法律制定時には、重度障害者は対象外でした。

精神衛生法

1950(昭和25)年には、精神衛生法が制定されました。私宅監置の禁止、都道府県に精神病院の設置の義務化、精神衛生審議会の設置、精神衛生鑑定医制度の創設、措置入院制度・同意入院制度・保護義務者制度等が規定されました。

精神薄弱者福祉法

1960(昭和35)年には、精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)が制定されました。

成人した精神薄弱者のための入所施設設置体制の整備、精神薄弱者の人権を護るための精神薄弱者福祉審議会及び精神薄弱者更生相談所の設置、精神薄弱者福祉司の創設、精神薄弱者の更生援護体制の整備について規定されました。

身体障害者雇用促進法

1960(昭和35)年、身体障害者雇用促進法が制定されました。1955(昭和30)年にILO(国際労働機関)が「障害者の職業更生に関する勧告」を出し、障害者の就労推進が提言されたことや、日本の高度経済成長による労働者不足への対応という背景があります。

心身障害者対策基本法

1970(昭和45)年には、それまで障害別に分かれていた身体障害者施策と精神薄弱者施策を総合的に実施するために、心身障害者対策基本法が制定されました。

心身障害者の個人の尊厳、ふさわしい処遇を受ける権利、医療・保護、教育、訪問指導、職業指導、雇用の促進等が盛り込まれました。

児童福祉法 1947年:障害児を含む全児童が対象
身体障害者福祉法 1949年:身体障害者の職業的更生と社会復帰が目的
精神衛生法 1950年:精神障害者のための医療提供体制整備
精神薄弱者福祉法
(現:知的障害者福祉法)
1960年:精神薄弱者の入所施設設置体制の整備
身体障害者雇用促進法 1960年:ILO勧告と働き手の不足という時代背景
心身障害者対策基本法 1970年:身体障害者・精神薄弱者の総合的対策として制定

1980年代

国際障害者年

1981年、国連による国際障害者年のテーマが「完全参加と平等」でした。この理念を浸透させるために、1983年から1992年まで「国連障害者の十年」が実施されました。

自立生活運動の展開

1970年代にアメリカ全土で広まった自立生活運動の影響を受け、1980年代には日本で自立生活運動が展開されていきました。

自立生活運動は、ADLの自立や経済的自立という従来の自立の概念ではなく、自己決定による自立の概念を提唱し、世界規模の運動となっていきました。

精神保健法

1987(昭和62)年には、1984(昭和59)年の宇都宮病院事件を契機に、精神障害者の人権を重視する精神保健法に改称・改正されました。

任意入院制度、入院時書面告知義務、精神保健指定医制度、精神医療審査会制度、応急入院、社会復帰施設(生活訓練施設・授産施設)が規定されました。

国際障害者年 1981年:「完全参加と平等」をテーマに実施
自立生活運動 1970年代にアメリカで広まった自立生活運動の影響を受け1980年代に日本で展開された
精神保健法 1987年:宇都宮病院事件を契機に精神衛生法から精神保健法に改称・改正

1990年代

障害者基本法

1993(平成5)年、心身障害者対策基本法から改称・改正されて障害者基本法が制定されました。

この法律では、精神障害者が法律の対象に拡大され、障害者の自立と社会・経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することが法の目的とされました。

国は障害者基本計画の策定義務、都道府県と市町村は障害者計画の策定努力義務と規定されました。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)

1995(平成7)年、精神保健法が改称・改正され精神保健福祉法が制定されました。

精神障害者を初めて「生活者」の視点でとらえた改正で、精神障害者の自立と社会参加、精神障害者保健福祉手帳制度の創設等が規定されました。

障害者基本法 1993年:心身障害者対策基本法から改称・改正。精神障害者も対象となる
精神保健福祉法 1995年:精神障害者を生活者の視点で捉えた改正。精神障害者保健福祉手帳制度の創設等

2000年代以降

支援費制度

2003(平成15)年、身体障害と知的障害、障害児を対象に、障害者の施設サービス、障害児・者の在宅サービスが、措置から契約として支援費制度に移行しました。この制度では精神障害者が対象外でした。

障害者基本法改正

2004(平成16)年に障害者基本法が改正され、障害者週間、中央障害者施策推進協議会の設置等が盛り込まれ、都道府県と市町村に障害者計画の策定が義務化されました。

障害者自立支援法

2005(平成17)年、障害者自立支援法が制定されました。法の対象に精神障害者が加えられ、身体障害・知的障害・精神障害の三障害の障害福祉サービスが一元化されました。

全国一律の障害程度区分が導入され、区分に応じたサービスを提供することとされました。

支援費制度 2003年:身体障害・知的障害、障害児を対象に、利用契約制度に移行(精神障害は対象外)
障害者基本法改正 2004年:都道府県・市町村障害者計画策定義務化
障害者自立支援法 2005年:身体障害・知的障害・精神障害を対象。障害程度区分を導入

障害者の権利条約批准のための国内法の整備

障害者権利条約

2006年に、国連が障害者権利条約を採択しました。障害者の基本的な人権の享有、尊厳の尊重、完全な社会参加の保障、障害を理由とする差別の禁止、社会的障壁の除去、合理的配慮等について、社会モデルの視点で規定しています。

わが国は、この条約を締結するために国内法の整備を始めました。

障害者虐待防止法

2011(平成23)年、障害者虐待防止法が制定されました。障害者虐待を養護者による虐待、障害者福祉施設従事者等による虐待、使用者による虐待の3種類に分類して定義しました。

障害者虐待発見者に対して速やかな通報を義務付け、市町村虐待防止センター、都道府県障害者権利擁護センターの設置等を規定しました。

障害者基本法改正

2011(平成23)年、障害者基本法が改正されました。障害者権利条約の理念を反映して社会的障壁の概念を導入し、障害の定義に発達障害、難病を追加しました。

障害者総合支援法

2012(平成24)年、障害者自立支援法が改称・改正され、障害者総合支援法が制定されました。この改正で、障害者の定義に難病が加えられ、従来の障害程度区分から障害支援区分に移行しました。

障害者差別解消法

2013(平成25)年、障害者差別解消法が制定されました。障害者差別解消措置として合理的配慮を規定し、行政機関には合理的配慮を義務付け、民間事業者には努力義務と規定されました。

なお、2021(令和3)年の改正により2024(令和6)年4月から民間企業でも義務化されます。

精神保健福祉法改正

2013(平成25)年、精神保健福祉法が改正されました。

保護者制度の廃止、精神科病院に生活環境相談員配置義務、地域援助事業者との連携、退院促進のための体制整備、精神医療審査会の委員規定の改正等が規定されました。

障害者権利条約の批准

わが国は2014(平成26)年、障害者権利条約を批准、締結しました。締約した国は、条約に基づく義務の履行が求められ、包括的な報告を国連に提出することが義務付けられています。

障害者権利条約 2006年:国連が採択
障害者虐待防止法 2011年:障害者虐待を①養護者によるもの、②障害者福祉施設従事者等によるもの、③使用者によるものと定義
障害者基本法改正 2011年:障害者権利条約の理念を踏まえ、社会的障壁の概念を導入
障害者総合支援法 2012年:障害者に難病を追加。「障害程度区分」から「障害支援区分」に移行
障害者差別解消法 2013年:合理的配慮について行政機関は義務、民間事業者は努力義務
(法改正で2024年4月から民間事業者も義務化)
精神保健福祉法改正 2013年:保護者制度の廃止、生活環境相談員配置義務、退院促進体制整備
障害者権利条約の批准 日本は2014年に批准

いかがでしたか。次回は「低所得者に対する支援と生活保護制度」を取り上げます。第25回の精神保健福祉士の試験問題から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」

問題56 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は、ソーシャルインクルージョンを法の目的とし、脱施設化を推進した。
  • 2 1981年(昭和56年)の国際障害者年では、「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマが掲げられた。
  • 3 2003年(平成15年)には、身体障害者等を対象に、従来の契約制度から措置制度に転換することを目的に支援費制度が開始された。
  • 4 2005年(平成17年)に成立した障害者自立支援法では、障害の種別にかかわらず、サービスを利用するための仕組みを一元化し、事業体系を再編した。
  • 5 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では、市町村障害者虐待防止
  • センターが規定された。

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