張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第33回 「社会保障」
皆さん、こんにちは。11月半ばとなり、受験まで3か月を切りました。自分の弱点を把握して、重点的に学習していきましょう。
今回は、「社会保障」を取り上げていきます。まずは前回の課題を解説しておきましょう。
- 第25回精神保健福祉士国家試験 「福祉行財政と福祉計画」
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問題48 次のうち、法律に基づき、福祉計画で定める事項として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 都道府県介護保険事業支援計画における地域支援事業の見込み量
- 2 都道府県障害者計画における指定障害者支援施設の必要入所定員総数
- 3 市町村子ども・子育て支援事業計画における地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保及び資質の向上のために講ずる措置に関する事項
- 4 市町村障害福祉計画における障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に関する事項
- 5 市町村老人福祉計画における老人福祉施設の整備及び老人福祉施設相互間の連携のために講ずる措置に関する事項
- 正答 4
- 1 × 地域支援事業の実施主体は市町村であるため、地域支援事業の見込み量を定めるのは市町村介護保険事業計画である。
- 2 × 指定障害者支援施設の必要入所定員総数を定めるのは、障害者総合支援法に基づく都道府県障害福祉計画である。都道府県障害者計画は、障害者基本法に基づいた障害者施策全般に関する計画である。
- 3 × 従事者の確保と資質の向上を行うのは都道府県の役割なので、地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保及び資質の向上のために講ずる措置に関する事項を定めるのは都道府県子ども・子育て支援事業支援計画である。
- 4 〇 障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保を行うのは市町村なので、これらは市町村障害福祉計画に定める。
- 5 × 老人福祉施設の整備及び老人福祉施設相互間の連携のために講ずる措置を行うのは都道府県なので、これらは都道府県老人福祉計画に定める。
解答解説
いかがでしたか。それでは、今回は「公的年金制度」について解説していきます。
年金保険制度
わが国の社会保険は強制加入で、国民皆保険・皆年金制度です。加入要件は日本国内に居住していることで、国籍要件はありません。
被保険者の種類
国民年金制度は、国民年金被保険者を第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分類しています。それぞれの定義は、次のとおりです。
第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満で、第2号被保険者・第3号被保険者以外の者 |
---|---|
第2号被保険者 | 厚生年金被保険者 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の被扶養配偶者であって20歳以上60歳未満の者 |
年金保険制度のしくみ
全国民が国民年金(基礎年金)に加入します。
第2号被保険者は、国民年金に加入し、厚生年金にも加入することになります。第3号被保険者は、保険料の自己負担はありません。第2号被保険者と第3号被保険者の国民年金部分の保険料は、厚生年金保険者が基礎年金拠出金として負担します。
国民年金の老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の給付のための費用に対して、国は2分の1を負担することが義務付けられています。
保険料免除制度と学生納付特例制度・納付猶予制度
第1号被保険者で保険料を支払うことが困難な者に対して保険料免除制度と学生納付特例制度・納付猶予制度があります。
保険料免除制度
保険料免除制度には、法定免除と申請免除があります。保険料免除期間は受給資格期間の算定対象になります。10年以内であれば追納可能で、追納分は年金額に反映されます。
法定免除 | 対象:生活扶助受給者、障害基礎年金受給権者など | ||||
---|---|---|---|---|---|
免除された期間は、老齢年金を受け取る際に2分の1(税金分)支給される | |||||
申請免除 | 対象:低所得者 | ||||
免除区分 | 全額免除 | 3/4免除 | 1/2免除 | 1/4免除 | |
給付割合 | 1/2 | 5/8 | 6/8 | 7/8 |
学生納付特例制度と納付猶予制度
免除制度とは別に、低所得者に対して学生納付特例制度と納付猶予制度があります。猶予されている期間は、受給資格期間の算定対象になります。
10年以内であれば追納可能です。しかし、保険料免除制度と異なり、学生納付特例制度と納付猶予制度では、追納しないと老齢基礎年金額には反映されないということに気をつけておきましょう。それぞれの対象は次のとおりです。
学生納付特例 | 本人の所得が一定以下の学生 |
---|---|
納付猶予制度 | 20歳以上50歳未満で本人、本人と配偶者の所得が一定以下の者 |
基礎年金部分の給付
国民年金の基礎年金の給付には、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の3種類あります。
老齢基礎年金
受給資格期間 | 10年 |
---|---|
年金額の算定 | 保険料納付額と月数に算定率を乗じて算定 |
保険料免除期間の月数も反映される | |
マクロ経済スライド方式を採用 | |
満額支給 | 40年間納付の場合は満額支給 |
支給開始年齢 | 65歳 |
繰上・繰下支給 | 60歳から繰上(減額)支給 75歳まで繰下(増額)支給 |
マクロ経済スライド方式とは、少子化による稼働能力者の減少傾向と高齢化による年金受給者の増加に対して、年金の給付金額を変動させる制度です。
障害基礎年金
対象障害等級 | 1級・2級 | |
---|---|---|
支給対象 | 20歳未満も所得制限を条件に対象となる | |
学生納付特例適用期間・納付猶予適用期間の障害も対象 | ||
支給額 | 1級 | 2級の1.25倍 |
2級 | 老齢基礎年金満額と同額 | |
子の加算 | 生計維持者に子がある場合は子の加算がつく |
遺族基礎年金
対象 | 子、子のある配偶者 |
---|---|
子:18歳未満(障害児は20歳未満・婚姻した子は対象外) | |
支給要件 | 25年以上の受給資格期間がある被保険者が死亡した場合に支給 |
年金額 | 老齢基礎年金の満額と同額+子の加算 |
第1号被保険者の独自給付
第1号被保険者は、被用者のような2階建て部分がありません。受け取る年金額が1階建ての部分だけだと少なくなるため、次のような独自給付があります。
付加年金 | 付加保険料(月額400円)を支払っておけば、給付が上乗せされる 任意加入(国民年金基金加入者は、加入できない) |
---|---|
寡婦年金 | 10年以上の保険料納付期間がある第1号被保険者の夫が亡くなったとき、10年以上の婚姻期間を有する妻に60歳から65歳までの間、老齢基礎年金額の4分の3を支給 |
死亡一時金 | 3年以上保険料を納付した者で遺族基礎年金を受給できない者 (寡婦年金か死亡一時金いずれかを選択) |
脱退一時金 | 被保険者期間6か月以上の外国人が帰国後2年以内に請求した場合給付される |
厚生年金制度
厚生年金制度は、被用者である第2号被保険者に対する保険で、対象年齢は70歳未満です。
強制適用事業所・任意適用事業所
強制適用事業所 | 5人以上従業員を使用する事業所 |
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任意適用事業所 | 5人未満の従業員事業所で、従業員の2分の1以上の同意により厚生労働大臣の認可を受けて適用 |
加入要件と保険料
加入要件 | 正規職員と、正規職員の勤務時間のおおむね4分の3以上の職員 週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金8万8000円以上、雇用見込み期間2か月以上で学生でない労働者は加入対象 |
---|---|
保険料 | 32等級の標準報酬制(報酬に応じて保険料率を乗じて算出) |
保険料負担 | 労使折半 |
保険料免除 | 育児休業期間、産前産後休業期間の保険料は、本人分・事業主分とも全額免除される |
老齢厚生年金
給付要件 | 老齢基礎年金受給権者で被保険者期間1か月以上の者 |
---|---|
支給開始年齢 | 65歳 |
繰上・繰下支給 | 60歳から繰上(減額)支給 75歳まで繰下(増額)支給 |
支給形態 | 老齢基礎年金に上乗せ支給 |
在職老齢年金制度 | 年金と給与の合計が一定額以上の場合、老齢厚生年金が一部停止か全額停止 |
障害厚生年金
支給対象 | 1級・2級は障害基礎年金に上乗せ 3級の障害厚生年金または障害手当金 |
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20歳前障害 | 初診日が被保険者期間外なので支給対象外 |
併給調整 | 障害厚生年金は全額支給、障害補償年金は減額支給 |
遺族厚生年金
遺族の範囲 | 妻、子、夫、父母、孫、祖父母 |
---|---|
有期年金制度 | 30歳未満の子のない妻は5年間の支給 |
年金額 | 老齢厚生年金額の4分の3 |
いかがでしたか。では、第25回の精神保健福祉士国家試験の問題から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「社会保障」
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問題55 公的年金制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 厚生年金保険の被保険者は、国民年金の被保険者になれない。
- 2 基礎年金に対する国庫負担は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
- 3 厚生年金保険の保険料は、所得にかかわらず定額となっている。
- 4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
- 5 老齢基礎年金の受給者が、被用者として働いている場合は、老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停止される場合がある。
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