張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第28回 「心理学理論と心理的支援」
皆さん、こんにちは。受験の手続きも終わり、いよいよ本格的な体制で受験勉強に取り組む方も多いことでしょう。学習計画を立てて、合格のための最も効果的な学習を進めていきましょう。今回は「心理学理論と心理的支援」を取り上げていきます。
まず前回の課題の解説をしていきましょう。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「人体の構造と機能及び疾病」
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問題2 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 対象は障害のある人に限定されている。
- 2 「社会的不利」はICFの構成要素の一つである。
- 3 「活動」とは、生活・人生場面への関わりのことである。
- 4 仕事上の仲間は「環境因子」の一つである。
- 5 その人の住居は「個人因子」の一つである。
- 正答 4
- 1 × 国際生活機能分類(ICF)は、「健康の構成要素」の生活機能に関する分類で、障害のある人に限定されてはいない。
- 2 × 「社会的不利」とは、国際障害分類(ICIDH)における概念である。疾患が「機能・形態障害」を生み、そのため「能力障害」が生まれ、その結果「社会的不利」が生まれるとして、障害を原因と結果の概念でとらえている。
- 3 × 「活動」とは、課題や行為の個人による遂行のことで、調理・掃除等、家事行為などの生活行為である行動を指す。
- 4 〇 環境因子とは、個人を取り巻く環境のことで、物理的環境、人的環境、社会的環境に分類できる。仕事上の仲間は人的環境に該当する。
- 5 × その人の住居は、環境因子の一つである。バリアフリーになっていれば促進因子になり、バリアフリーになっていなければ阻害因子となる。
解答解説
いかがでしたか。それでは、今回は心理療法について解説していきます。
来談者中心療法
来談者中心療法は、クライエントを中心とした療法で、ロジャーズによって提唱されました。カウンセラーは、クライエントを共感的に理解し、積極的にクライエントに関心をもち、クライエントをありのまま受容します。
クライエントが自分自身の課題に気づき、自分自身で解決していくことができるようになることを支援します。

精神分析療法
精神分析療法は、フロイトの精神分析をもとにした心理療法です。
クライエントの内面に抑圧された過去の出来事が問題を引き起こしていると考え、自由連想法、転移などの方法で自分自身を洞察できるように援助し、過去の経験によって抱えている無意識の葛藤から解放する療法です。

認知行動療法
認知行動療法は、認知療法と行動療法を応用した療法です。
認知療法とは、認知のゆがみを矯正し、新たな受け止め方を作り上げること、すなわち認知の再構成を行う治療法です。ゆがんだ認知で物事を受け止めてしまう自動思考を修正します。
行動療法とは、クライエントが現在抱えている行動上の問題に焦点を当てて、適切な行動を学習していけるよう援助する治療法です。あえて恐怖や不安にさらす暴露療法や、リラクゼーション、モデリングなどを活用して望ましい行動を強化していきます。

社会生活技能訓練
社会生活技能訓練(SST)は、ロールプレイ等の技法を用いて、対人関係で必要なスキル習得を図る集団療法です。
それぞれの取り組むべき課題を決め、ロールプレイによるリハーサルを行います。
ロールプレイでは、よいところを褒める正のフィードバックをし、さらによくするための改善点を話し合い、実際の生活場面で行うチャレンジ課題を設定し、次回のSSTで報告します。
このような訓練を通して、社会生活に適応できる技術を身につけていきます。

応用行動分析
応用行動分析は、行動療法を応用した治療法です。
クライエントの行動の前後を分析して、行動の目的を明らかにし、行動前後の環境に働きかけて操作し、クライエントの問題行動を消去していく治療法です。
例えば、子どもが乱暴な行動をした場合、その行動の前の状況とその行動との関係、その行動がもっている機能、行動の結果を分析します。機能とは、その行動が「いやなことから逃れる」あるいは、「注目を集める」という機能を果たしているかどうかということです。
これらを分析して、「乱暴な行動」を引き起こしている原因をなくすために、「状況」と「結果」を変えるという方法を取ります。

ブリーフセラピー
ブリーフセラピーは、クライエントの現在と未来に焦点を当てる、効率的、効果的な短期療法のことです。
問題の原因探しをするのではなく、未来の解決に重点を置いて、短期間での変化を志向するという点に特徴があります。
解決志向アプローチ
ブリーフセラピーの代表的な技法に解決志向アプローチがあります。
解決志向アプローチは、問題の原因に焦点を当てるのではなく、クライエントが抱えている問題がうまくいった場合等の例外探し、「問題が解決したら、一番したいことは何ですか」のようなミラクルクエスチョンという会話技法等を用いて問題の解決を目指す。
ブリーフセラピー | 短期間に効率的・効果的な治療を行う |
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解決志向アプローチ | ブリーフセラピーの一つ。問題の解決に焦点を当てるアプローチ |
漸進的筋弛緩法
漸進的筋弛緩法は、筋肉を一時的に緊張させ、その後筋肉を弛緩させることで弛緩感覚を習得し、リラクゼーションを図る方法です。血流や代謝を改善し、痛みの軽減、不安の低下、集中力の改善等の効果がみられます。
自律訓練法
自律訓練法とは、自己催眠による治療法で、意識的にリラックスした状態をつくることによって自律神経のバランスを図り、精神的安定を図る治療法です。
深呼吸、手足や筋肉の弛緩、手足の温感練習などにより、意識を集中させて自己暗示をかけることによって、自分の心身の状態を自分で調整できるようにします。
暴露療法
暴露療法とは行動療法の一種で、不安を克服するために、クライエントが恐怖や不安を抱えているものに対して、危険がないように配慮しつつ直面させる治療法です。
刺激や不安を避けるのではなく、あえて不安を喚起する場面に繰り返して曝し、徐々に不安に慣れさせていくという治療法で、不安障害や強迫性障害等に適用することができます。
系統的脱感作法
系統的脱感作法とは、暴露療法と自律訓練法、漸進的筋弛緩法等を応用した治療法です。
不安階層表を作成し、リラックスした状態で、不安の弱い階層から不安の場面を想起し、段階を追って不安を強めていき、不安に慣れさせて不安を解消していく方法です。
動作法
動作法は、重度の脳性まひの児童のための動作訓練法として開発されたものです。
身体の緊張が強く身体が自由に動かせない状態の児童が治療者と一緒に課題の動作を行い、身体の緊張をほぐしていきます。
身体を開いていくことが、心を開いていくことを促すことを発見した成瀬悟策によって開発されました。
漸進的筋弛緩法 | 筋肉の緊張と弛緩により弛緩感覚を習得し、リラクゼーションを図る方法 |
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自律訓練法 | 自己催眠により自律神経のバランスと精神的安定を図る療法 |
暴露療法 | あえて不安を喚起する場面に曝し、不安に慣れさせていく療法 |
系統的脱感作法 | 不安の弱い階層から不安の場面を想起し、段階を追って不安を解消していく方法 |
動作療法 | 動作を行うことによって精神的開放を促す治療法 |
遊戯療法
遊戯療法とは、言語表現が十分できない子どもを対象とし、遊びによる感情表出によって治療する方法です。遊びを通して自己を解放し、子ども自身の自己治癒力で解決することを助けます。
セラピストと子どもの信頼関係を前提として、安定した関係の中で、子どもが自分自身を自由に表現することができるようにして治癒につなげます。
箱庭療法
箱庭療法とは、砂の入った箱の中に自由にミニチュアの玩具を置いて自由な表現を行う治療法です。
言葉では表現できない意識の奥の葛藤などを表現することができ、無意識を意識化し、自己への気づきや葛藤からの解放、自己理解の深化によって、自己を再統合していきます。
心理劇(サイコドラマ)
心理劇は、台本のない即興劇を行い、即興で役割演技を行うことによって創造性、自発性を獲得し、洞察性を高める治療法です。
クライエントは、役割を演じることによって、自己の生活を見つめ直し、新たな視点や解決策を見出してゆくことができます。
家族療法
家族療法は、家族をシステムとして捉える治療法です。家族に問題行動を起こした人物がいた場合、その人物だけに問題があるのではなく、その問題は家族全体のシステムが引き起こしたものと捉えて、家族のシステムに介入して治療します。
遊戯療法 | 遊びによる感情表出で自己治癒力を引き出し治療法 |
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箱庭療法 | 箱の中にミニチュアの玩具を置いて自由な表現による治療法 |
心理劇 | 即興劇による役割演技によって創造性、自発性を獲得し洞察性を高める治療法 |
家族療法 | 家族をシステムとして捉え、家族全体に介入する治療法 |
森田療法
森田療法は、神経症患者を対象に、不安があることを「あるがまま」に受け入れ、心身の不調や症状がある状態で、絶対臥褥等の方法により自然治癒力を引き出す治療法です。森田正馬(もりたまさたけ)が開発しました。
食事と洗面、排泄以外は一切何も行わないで布団で寝ている絶対臥褥から、軽作業期、作業期、社会生活準備期という段階を経て治療を行います。

内観療法
内観療法とは、クライエントは外部からの刺激を断ち、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を書き出し、他者への感謝を再確認する治療法で、吉本伊信が開発しました。
クライエントは自分自身を見つめ直し、今までどんなに多くの人が支えてきてくれたかに気づき、自分自身の自己中心性から脱却して、他者を肯定的に認知できるようになります。

いかがでしたか。次回は「社会理論と社会システム」を取り上げます。では、第25回の精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「心理学理論と心理的支援」
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問題14 心理療法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 ブリーフセラピーは、クライエントの過去に焦点を当てて解決を目指していく。
- 2 社会生活技能訓練(SST)は、クライエントが役割を演じることを通して、対人関係で必要な技能の習得を目指していく。
- 3 来談者中心療法は、クライエントに指示を与えながら傾聴を続けていく。
- 4 精神分析療法は、学習理論に基づいて不適応行動の改善を行っていく。
- 5 森田療法は、クライエントが抑圧している過去の変容を目指していく。
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