張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第26回 「精神障害者の生活支援システム」
皆さん、こんにちは。学習は順調に進んでいますか。受験申込の受付期限は、10月6日(金)です。手続きがまだの方はなるべく早めに済ませておきましょう。
今回は「精神障害者の生活支援システム」の障害者のための居住支援について取り上げていきます。
最初に、前回の課題の解説をしておきましょう。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉に関する制度とサービス」
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問題66 「医療観察法」における鑑定入院に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 入院期間は、6か月が限度である。
- 2 地方裁判所の命令に基づく。
- 3 精神保健審判員が鑑定する。
- 4 医療観察病棟で実施される。
- 5 精神保健福祉士を付添人として選任できる。
- 正答 2
- 1 × 鑑定入院期間は原則2か月で、必要な場合は1か月を限度に延長できる。
- 2 〇 検察官から申し立てを受けた地方裁判所は、まず精神鑑定のために鑑定入院命令を出す。
- 3 × 精神鑑定を行うのは、鑑定医である。鑑定医の条件は、精神保健判定医または同等以上の学識経験を有する医師で、精神保健審判員とは別の医師でなければならない。
- 4 × 精神鑑定は、対象者を鑑定入院させるための施設として、医療観察法で規定された精神科指定病院(総合病院の精神科病棟を含む)で実施する。
- 5 × 弁護士を付添人として選任できる。裁判所は、対象者に付添人がいないときは、職権で国選弁護士等をつける。
解答解説
いかがでしたか。それでは、障害者の居住支援について解説していきます。
障害者総合支援法に基づく居住支援
障害者総合支援法に基づく障害者のための居住支援には、介護給付として施設入所支援、訓練等給付として共同生活援助(グループホーム)、宿泊型自立訓練、福祉ホーム、住宅入居等支援事業(居住サポート事業)があります。今回は、訓練等給付と地域生活支援事業における障害者の居住支援について取り上げます。
共同生活援助(グループホーム)
共同生活援助は、障害者総合支援法の訓練等給付の障害者のための居住支援の制度です。
利用対象者はすべての障害者で、主に夜間、入浴、排せつ、食事の介護等の日常生活上の援助、関係機関との連絡調整等を提供します。介護を必要とする利用者は、障害支援区分の認定を受ける必要があります。
利用料は、所得に応じた自己負担の上限月額があります。
共同生活援助には、介護サービス包括型、外部サービス利用型、日中サービス支援型、サテライト型住居があります。
介護サービス包括型
介護サービス包括型は、グループホームに、生活支援員を配置し、介護サービスを提供します。
外部サービス利用型
外部サービス利用型は、生活支援員は配置されておらず、事業者が外部の指定居宅介護事業者に介護を委託します。
日中サービス支援型
日中サービス支援型は、グループホームで24時間サービスを提供します。事業所の従業者が相談や家事等の日常生活上の援助と入浴等の介護をあわせて行うサービスです。
定員1~5人の短期入所を併設するか、あるいは同じ敷地内で短期入所を実施し、在宅で生活する障害者の緊急一時的な宿泊の場を提供することが義務付けられています。
生活支援員または世話人は、共同生活住居ごとに、1日を通じて常時1人以上配置することとされています。
サテライト型住居
サテライト型住居は、本体住居から利用者がおおむね20分以内で移動可能な距離にグループホームがあることが条件で、民間アパートなどを借りて居住する形態の住居です。
利用者は、本体住居で食事や余暇活動など、コミュニケーションをはかることができ、アパートで一人暮らしをすることができます。
本体住居の職員が1日に数回巡回し、日常生活上でサポートが必要な場合には、すぐに対応できる体制が整えられています。
サテライト型住居の要件として、日常生活を営む上で必要となる設備、サテライト型住居から緊急時に通報を受け取ることができる携帯電話等の通信機器が必要です。
共同生活援助
サービスの位置付け | 障害者総合支援法の訓練等給付 |
---|---|
対象 | 障害支援区分認定が必要 |
介護サービス包括型 | 生活支援員を配置し、事業者が入居者に介護を提供 |
外部サービス利用型 | 外部サービスに介護の提供を委託 |
日中サービス支援型 | 24時間体制でサービスを提供 |
サテライト型住居 | 食事・余暇等は本体施設で提供可能 本体施設職員が定期巡回を実施 |
宿泊型自立訓練
宿泊型自立訓練は、障害者総合支援法の訓練等給付に位置づけられるサービスです。
自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労や障害福祉サービスを利用している者で、地域移行に向けて一定期間、居住の場を提供して帰宅後における生活能力等の維持・向上のための訓練等の支援が必要な障害者を対象としています。
標準利用期間は原則2年で、長期間入院していた場合等は3年になります。また、市町村審査会の意見を聴いたうえで市町村が必要と認める場合は、標準利用期間を超える支給決定の更新を行うことが可能です。
生活訓練として入浴、整容、着替えなどの支援や生活等に関する相談、助言、健康管理等を実施します。利用者負担は応能負担で所得に応じた自己負担上限額があります。
宿泊型自立訓練
対象 | 自立訓練(生活訓練)の対象者 生活能力等の維持・向上のための訓練の支援が必要な障害者 |
---|---|
サービス内容 | 入浴、整容、着替えなどの支援、相談、助言、健康管理等 |
標準利用期間 | 原則2年。長期入院者等は3年 |
利用者負担 | 応能負担。所得に応じた自己負担上限額がある |
福祉ホーム
福祉ホームは、障害者総合支援法の都道府県と市町村の地域生活支援事業の任意事業に位置づけられています。
低額な料金で、居室を利用し、日常に関する相談、助言、関係機関との連絡・調整等のサービスを受けることができます。
利用対象者は、家庭環境、住宅事情等の理由で、居宅で生活が困難な障害者ですが、常時の介護、医療を必要とする状態にある者は対象外です。

住宅入居等支援事業(居住サポート事業)
住宅入居等支援事業は、障害者総合支援法における市町村の地域生活支援事業に位置づけられている事業です。
賃貸契約による一般住宅(公営住宅および民間の賃貸住宅)への入居を希望しているが、保証人がいない等の理由で入居が困難な障害者等に対し、入居に必要な調整、家主等への相談・助言により、障害者等の地域生活を支援することを目的としています。
不動産業者に対して物件の斡旋を依頼したり、家主等との入居契約手続きを支援したりします。
また、利用者の生活上の課題に応じて、関係機関から必要な支援を受けることができるよう、居住支援のための関係機関によるサポート体制の調整を行います。
この事業を実施している市町村は、令和4年3月の厚生労働省発表によると、2020年度(令和2年度)は16%となっています。

住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)
住宅セーフティネット法は、住宅確保要配慮者に賃貸住宅の供給を促進することを目的としています。
基本方針・促進計画
国土交通大臣は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本方針を定めなければなりません。
都道府県や市町村は、地域の住宅事情に応じ登録住宅等に関する都道府県賃貸住宅供給促進計画、市町村賃貸住宅供給促進計画を策定することができます。
住宅確保要配慮者
住宅確保要配慮者とは、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者のことです。
住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として、賃貸人が都道府県等に登録する制度が規定されています。
居住確保要配慮者の入居円滑化に関する措置として、都道府県による住宅確保要配慮者居住支援法人(支援法人)の指定、情報提供、相談支援、家賃債務保証の円滑化、住宅確保要配慮者居住支援協議会(支援協議会)等について規定しています。
支援法人は、家賃債務保証を実施するなど、住宅確保要配慮者が住居を確保しやすい環境を整える役割をもっています。
支援協議会は、地方公共団体、宅地建物取引業者、賃貸住宅管理事業者、住宅確保要配慮者の支援団体等の関係者は、居住支援協議会を組織することができるとされています。
セーフティネット法
基本方針 | 国土交通大臣は基本方針策定義務 |
---|---|
計画 | 地方公共団体の計画策定は任意 |
住宅確保要配慮者 | 低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭等 |
支援法人 | 家賃債務保証等、住宅確保要配慮者が住居を確保しやすい環境を整備 |
支援協議会 | 行政および関係機関は、居住支援協議会を組織できる |
このほかの、障害者の居住支援のための法制度は下記のとおりです。
障害者のための住宅施策
障害者基本法 | 国・地方公共団体は障害者の住居の確保のための施策を講じなければならない(義務) |
---|---|
公営住宅 |
障害者の優先入居制度がある 対象は、身体障害者、知的障害者、精神障害者等 |
公営住宅グループホーム事業(公営住宅をグループホームとして活用するための改修工事費が助成対象)を実施 |
いかがでしたか。では第25回の精神保健福祉士国家試験の中から今回の課題をあげておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神障害者の生活支援システム」
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問題74 次の記述のうち、住宅入居等支援事業(居住サポート事業)の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 指定相談支援事業者による実施が義務づけられている。
- 2 2020年度(令和2年度)において全市町村の8割が実施している。
- 3 事業内容には、家主への相談・助言が含まれている。
- 4 住宅確保要配慮者居住支援協議会の設置が義務づけられている。
- 5 「障害者総合支援法」における自立支援給付に位置づけられている。
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