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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第23回 「精神保健福祉相談援助の基盤」

皆さん、こんにちは。急に秋めいてきました。受験の手続きや学習は順調に進んでいますか。本試験まであと5か月ほどとなりましたが、受験勉強は焦らずに着実に進めていくことが合格の秘訣です。一緒に頑張っていきましょう。

今回は、「精神保健福祉相談援助の基盤」を取り上げます。相談援助の対象・価値・理念・意義や関連専門職、権利擁護、チームアプローチなどが大きなテーマになっている科目です。

最初に前回の課題の解説をしておきましょう。

第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健の課題と支援」

問題15 次の記述のうち、労働と精神保健に関連する法律の説明として、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度で高ストレス者と判定された労働者には、医師による面接指導を受ける義務がある。
  • 2 過労死等防止対策推進法が規定する過労死等の原因には、精神障害が含まれている。
  • 3 「男女雇用機会均等法」は、妊娠中及び産後の危険有害業務の就業制限を規定している。
  • 4 健康増進法は、事業者に対してパワーハラスメント防止のための措置を講じなければならないと規定している。
  • 5 労働契約法では、国が労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定することが規定されている。
正答 2

解答解説

    • 1 × 医師による面接指導を受けることは、義務ではない。本人の申し出がなければ、医師による面接指導を行わせることはできない。
    • 2 〇 「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患、心臓疾患を原因とする死亡、業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、または脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいう。
    • 3 × 妊産婦の危険有害業務の就業制限を規定しているのは、労働基準法である。使用者は、妊産婦を重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所での業務等、有害な業務に就かせてはならないと規定している。
    • 4 × 事業者に、パワーハラスメント防止のための措置義務を規定しているのは、労働施策総合推進法である。
    • 5 × 国が労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定することを規定しているのは、労働安全衛生法である。

いかがでしたか。それでは、アドボカシーの概念について整理しておきましょう。


アドボカシーの概念の発展

アドボカシーは一般的に「権利擁護」と訳され、当事者の権利の弁護・代弁機能を意味します。

ソーシャルワークにアドボカシーという概念が取り入れられたのは1960年代以降です。アメリカでは、1950年代から1960年代にかけて、人種差別問題、ベトナム戦争、貧困問題等の社会的混乱が起こり、こうした課題に対してソーシャルケースワークの無力さが批判されるようになりました。そのような状況の中で生まれたのがアドボカシーという概念です。

この時代までソーシャルワーカーの役割は、イネイブラー・ロールとブローカー・ロールであると考えられていました。イネイブラー・ロールとは当事者に対して側面的支援を行う役割で、ブローカー・ロールとは当事者と様々な諸制度との仲介者としての役割です。

これらのソーシャルワーカーの役割に加えて、グロッサーは、新たにアドボケイト・ロールを取り上げました。単なる側面的、仲介的役割だけではなく、クライエントの側に立ってクライエントの権利を守るというソーシャルワーカーの視点の重要性を指摘した考え方です。

その後、1968年の全米ソーシャルワーカー協会に「アドボカシーに関する特別委員会」が設置され、翌年、「アドボケイトとしてのソーシャルワーカー―社会的犠牲者の擁護者―」という報告書が出されました。

その中で、ソーシャルワーカーには、専門職の責務として、人道主義、民主主義に基づき、社会的犠牲者の擁護者であることが求められているということが示され、アドボカシー機能はソーシャルワークの統合的側面として位置付けられました。

現在ではアドボカシーは、弁護・代弁機能とともに、クライエントの生活ニーズ充足のための援助機能等、クライエントの主体性を尊重する幅広い積極的、実践的、包括的概念として捉えられています。

当事者本人の人権を尊重し、本来の人間としての尊厳を実現するために、アドボカシーを基盤としたエンパワメント・アプローチ、ストレングス・モデル、セルフヘルプグループ等が生まれてきています。

アドボカシーの機能

アドボカシーの機能として、「発見機能」「調整(仲介)機能」「教育・啓発機能」「仲介的弁護機能」「対決機能」「変革機能」「ネットワーキング機能」「情報提供機能」「ソーシャルアクション機能」等があります。

「発見機能」とは、クライエントが抱えている問題を発見する機能です。クライエントが気づいていない権利侵害に関する問題を発見し、クライエントに自らのニーズと権利に気づきをもたらし、その問題を提起すること、生活課題を抱えて援助を必要としている人を発見する等の役割があります。

「調整(仲介)機能」とは、クライエントと制度の間に立ち、当事者のニーズとサービスや資源を調整し、結合させる仲介者としての機能です。

「教育・啓発機能」とは、地域住民やボランティア、関係機関の職員等、多様な人々にクライエントに対する理解を深め、クライエントの人権に関する意識を啓発する機能で、スーパービジョンやコンサルテーションも含みます。

「仲介的弁護機能」とは、機関によって侵害されたクライエントの様々な権利を回復させようとする機能です。

「対決機能」とは、制度や組織の壁に対して、専門職として中立性を保ちながらも、クライエントの利益のために代弁する機能のことです。

「変革機能」は、クライエントの権利が侵害されるような状況に対して、制度やサービスの整備、拡充、資源の開発を求めていく機能です。法制度の改正や改革に向けた活動や、新たなサービスづくり等を行います。

「ネットワーキング機能」とは、ソーシャルワーカーが所属する機関の内外をつなぎ、コーディネートしていく機能です。例えば、退院支援を行うために、様々な社会資源のネットワークを構築しておくことによって、地域移行をスムーズに進めていくことができます。

「情報提供機能」とは、ニーズに応じて情報を提供していく機能のことです。障害特性に応じてわかりやすく情報を提供すること、自己決定のための選択肢を具体的な形で正確に提示することが求められます。

「ソーシャルアクション機能」とは、クライエントのニーズを充足させるために、社会資源の開発、法制度の制定など、サービスの拡大に向けた行動を起こしていく機能のことです。

ソーシャルワーカーは、これらのアドボカシーの諸機能を自覚しながら、実践現場においてクライエントの権利擁護を行っていくことが求められています。

アドボカシーの種類

アドボカシーの分類には、アドボカシーの担い手による分類とアドボカシーの対象者による分類があります。

担い手による分類として、セルフアドボカシー、シチズンアドボカシー、ピアアドボカシー、パブリックアドボカシー、リーガルアドボカシー、ペイシェント(患者)アドボカシー等があります。対象者による分類として、ケースアドボカシーとコーズアドボカシーがあります。

担い手による分類

「セルフアドボカシー」とは、生活上の困難や障害のある当事者が自分たちで権利を主張することです。当事者自身に、自己決定権や自己の権利を主張する力があるという考え方が前提になっています。

ストレングス視点やエンパワメントの視点と親和性の高いアドボカシーです。具体的には、アメリカの知的障害者の当事者活動であるピープルファーストや、重度の肢体不自由を持つ当事者から始まった自立生活運動等が代表的な活動です。

「シチズンアドボカシー」とは、当事者を含む市民が主体となって実施するアドボカシーです。市民の自発的な行為によって、不利益を被る可能性がある人を擁護します。

「ピアアドボカシー」とは、同じ問題を抱える仲間同士がお互いの権利を擁護することです。

「パブリックアドボカシー」とは、公的機関や組織などが権利擁護を行うことです。

「リーガルアドボカシー」とは、弁護士等の司法機関と当事者が協働で権利擁護を行うことです。

「ペイシェントアドボカシー」とは、患者の権利を擁護するために、病院に対して代弁したり、患者自身が解決できるよう援助したりする権利擁護活動のことです。

担い手による分類

セルフアドボカシー 当事者の権利を自分たちで主張すること
シチズンアドボカシー 当事者を含む市民が主体となって権利を擁護すること
ピアアドボカシー 仲間同士がお互いの権利を擁護すること
パブリックアドボカシー 公的機関や組織などが権利擁護を行うこと
リーガルアドボカシー 司法機関と当事者による権利擁護
ペイシェントアドボカシー 患者の権利を擁護する権利擁護活動

対象による分類

対象による分類には、ケースアドボカシーとコーズアドボカシーがあります。

「ケースアドボカシー」とは、個人とその家族等のミクロレベルの個別の権利を護るための働きです。様々な理由で声を上げられないケースの代弁を行ったり、権利侵害が行われているケースの権利の回復、また、個々のケースにおける権利侵害を予防する権利擁護等が該当します。パーソナルアドボカシーともいいます。

「コーズアドボカシー」とは、一定の共通課題をもった集団の権利擁護や代弁のことです。マクロレベルにおける権利擁護で、同じような状況に置かれている人々の権利擁護のために、政策や法制度等に働きかけ、代弁、権利の回復、権利侵害の予防等を行うことです。クラスアドボカシーやシステムアドボカシーともいいます。

対象による分類

ケースアドボカシー 個人・家族の権利を擁護すること。パーソナルアドボカシーともいう
コーズアドボカシー 共通課題を持つ特定の集団の権利を擁護すること。クラスアドボカシー、システムアドボカシーともいう

いかがでしたか。次回は、「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」を取り上げます。では、第25回の試験問題から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」

問題28 次の記述のうち、精神保健福祉士が行う権利擁護における発見機能として、適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 生活費の管理に課題を抱えるクライエントに対し、日常生活自立支援事業の活用を促す。
  • 2 退院後に単身生活を控えているクライエントに対し、アパートの物件情報を提供する。
  • 3 ソーシャルワークの理念と組織・制度の問題を結び付けるために、クライエント集団と地域福祉政策とを結び付ける。
  • 4 市民を対象とした精神保健福祉講座の運営を通して、精神障害に対する理解を求める。
  • 5 長期入院にあるクライエントに対し、地域生活のイメージを描けるような働きかけを行う。

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