張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第21回 「精神疾患とその治療」
皆さん、こんにちは。厳しい暑さが続きます。体調を崩さないよう健康には十分気をつけてこの時期を乗り越えていってください。
今回から専門科目に入っていきます。「精神疾患とその治療」は、代表的な精神疾患とその症状が出題範囲の大きな部分を占めます。疾病の特徴や症状と、治療法などをよく把握しておきましょう。今回は、代表的な精神疾患の症状について取り上げていきます。
まず、先週の「権利擁護と成年後見制度」の課題を解説していきます。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「権利擁護と成年後見制度」
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問題79 事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。- 1 Aさんは、特別代理人の選任を請求できる。
- 2 Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
- 3 Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。
- 4 特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う。
- 5 特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。
- 正答 2
- 1 × Aさんと弟のBさんは兄弟で遺産分割協議を行うので、利益相反状況になる。そのため、成年後見人であるBさんが家庭裁判所に特別代理人の選任請求を行う。
- 2 〇 家庭裁判所によって選任された特別代理人は、遺産分割協議に関する代理行為について本人を代理する。
- 3 × Bさんは、遺産分割協議に当たり、特別代理人選任請求を行うことが求められているだけであり、成年後見人を辞任する必要はない。
- 4 × 特別代理人は、遺産分割協議に関する代理行為に関する代理権だけを付与されるのであって、Bさんが成年後見人の地位を失うわけではない。
- 5 × 特別代理人には、特定の法律行為に関してのみ代理権を付与されている。それ以外の法律行為に関する代理権はない。
解答解説
いかがでしたか。では、「精神疾患とその治療を」取り上げて解説をしていきます。今回は、代表的な精神疾患の症状について取り上げます。
統合失調症
統合失調症の症状には、大きく分けて陽性症状と陰性症状があります。
陽性症状
陽性症状として、知覚の異常としての幻覚、思考内容の異常としての妄想、思考過程の異常としての思考障害、そのほか自我障害、意欲・行動の異常、感情障害、精神運動興奮等があります。
幻覚とは、実際にはないものが感覚として感じられることで、統合失調症では人がいないのに人が話す声が聞こえる幻聴が代表的です。自分の考えが他人の声として聞こえてくる思考化声や、複数の人が自分のことを批判しているように聞こえる対話形式の幻聴もあります。
妄想とは、誤った確信のことで、妄想着想、妄想気分、妄想知覚等があります。
思考障害は、思考の統合が困難になることで、思考滅裂、連合弛緩、思考途絶などがあります。無意味な言葉の羅列である言葉のサラダなどが代表的な症状です。
自我障害には、作為体験、思考伝播、思考干渉、思考奪取、離人症等があります。
陰性症状
陰性症状には、意欲・行動の障害として、自発性の低下、意欲欠如、感情鈍麻、自閉等があります。感情鈍麻とは、活き活きとした感情が喪失した状態のことです。

陽性症状 | 幻聴、連合弛緩、思考途絶、作為体験、離人症、精神運動興奮、緊張状態等 |
---|---|
陰性症状 | 自発性の低下、意欲欠如、感情鈍麻、自閉等 |
統合失調症の予後
統合失調症の予後は、発症年齢、発症の状態、発症誘因の有無、未治療期間等によって左右されます。
一般的に、発症年齢が若いほど予後が悪いといわれています。解体型は発症年齢が低いため予後が悪い傾向にあります。
発症が急激であるほど予後はよく、緩徐な発症であるほど予後が悪いといわれています。
また、発症に具体的で明らかな誘因がある場合や未治療期間が短いほど、予後が良いといわれています。
気分障害
気分障害は大きくうつ病と双極性障害に分類されます。
うつ病
うつ病の症状として、「感情の障害」による症状、「意欲・行動の障害」による症状、「思考の障害」による症状があります。
感情の障害による症状として、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、自責感、無価値観、意欲・行動の障害による症状として、精神運動抑制、希死念慮、自殺企図等がみられます。思考の障害による症状として、思考制止、微小妄想があります。微小妄想には、貧困妄想、罪業妄想、心気妄想があります。
定型型うつ病の身体症状として、食欲低下、早朝覚醒等の睡眠障害がみられます。非定型うつ病では、食欲亢進、過眠、高度の疲労感、批判に対する過敏性などがみられます。
双極性障害
双極性障害は、躁病相とうつ病相が交互に出現します。
躁病相では感情の障害として気分の高揚、過活動、易刺激性、易怒性がみられ、攻撃的になります。意欲・行動の障害として、多弁、注意散漫、浪費、社会的逸脱行動等があります。思考の障害として、観念奔逸、誇大妄想などがみられます。
身体症状としては、睡眠時間の減少、食事摂取に対する無関心のための体重減少などが見られます。

気分障害
うつ病相 | 抑うつ気分、興味や喜びの喪失、自責感、希死念慮、自殺企図、思考抑制等 |
---|---|
躁病相 | 過活動、易刺激性、観念奔逸、誇大妄想等 |
不安障害
不安障害には、全般性不安障害、パニック障害、広場恐怖症、社交不安症、限局性恐怖症等があります。
全般性不安障害は、なんでもないことを過度に心配し、全般的、持続的に不安な症状を呈します。
パニック障害は、突然理由もなく急激に不安が高まり、動悸、発汗、息苦しさ、胸部の痛み等のパニック発作を起こす障害で、予期不安が特徴です。
広場恐怖症は、解放的空間等で、何かが起こるかもしれないという恐怖のために、公共交通機関に乗れない、閉鎖的空間に行けないという症状を呈します。
社交不安症は、人前に出ると吃音や手の震え、赤面恐怖等の症状を呈します。
限局性恐怖症は、特定の物に限定して起こる恐怖症で、高所恐怖症や閉所恐怖症等があります。

不安障害
全般性不安障害、パニック障害、広場恐怖症、社交不安症、限局性恐怖症等
強迫性障害
強迫性障害には、強迫観念と強迫行為があります。強迫観念とは、無意味で馬鹿らしいと分かっていても、反復して生まれてくる考えをいいます。強迫観念が行動に出たものを強迫行為といい、いくら手を洗ってもきれいになった気がせず、いつまでも洗い続けるというような症状です。
ストレス関連障害
ストレス関連障害には、急性ストレス障害と心的外傷後ストレス障害(PTSD)に分類することができます。
急性ストレス障害は、外傷体験直後から症状が現れ、1か月以内に症状が落ち着くことが特徴です。
心的外傷後ストレス障害は、外傷体験直後には発症せず、一定期間経過後に症状が出現するのが特徴です。心的外傷の出来事を再体験するフラッシュバック、心的外傷体験を想起させる事柄を持続的に避ける、覚醒亢進等の症状が見られます。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が頻出
解離性障害
解離性障害は、大きな苦痛を受けた場合等に自我を守るための無意識の症状で、意識の障害や記憶の欠損等が生まれます。
2つ以上の別の人格が1人の中に存在する解離性同一症、心的外傷に関する記憶を思い出せない生活史健忘、職場や家庭から失踪して自分の身を守る解離性遁走、解離状態に昏迷が重なる解離性昏迷、解離と同時にけいれんが起きる解離性けいれん、不安な立場に置かれたときに的外れに応答するガンザー症候群等があります
転換性障害
転換性障害は、心身のストレスが身体に置き換えられる障害で、身体麻痺、失声、視力障害等があります。医学的な検査をしても器質的な原因は見出されません。

・解離性障害
解離性同一症、生活史健忘、解離性遁走、解離性昏迷、解離性けいれん、ガンザー症候群等
・転換性障害
身体麻痺、失声、視力障害等
心気障害(心気症)
心気障害とは、些細な感覚の異常を重大な病気の予兆であると強い思い込み確信する障害です。病院で検査して何でもないという結果が出ても信じないで、重篤で進行性の身体疾患に罹患している可能性が高いという確信に過度にとらわれてしまいます。
境界性人格障害
境界性人格障害は、「成人のパーソナリティ及び行動の障害」に分類されます。症状の特徴は、対人関係の不安定性と過敏性、自己像の不安定性、極度の気分変動、衝動性などです。見捨てられ不安、感情の揺れ動き、慢性的な空虚感、過食や拒食、自傷行為などがみられます。治療は、認知行動療法などの精神療法が中心になりますが、必要に応じて薬物療法も行われます。

境界性人格障害
対人関係や自己像の不安定性、極度の気分変動、見捨てられ不安、慢性的な空虚感が特徴
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)はF9の「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」の多動性障害に位置付けられます。代表的な症状としては、注意力が乏しいまたは注意の持続時間が短い、年齢不相応の過剰な活動性や衝動性があるため機能や発達が妨げられている状態で、これら両方の症状がある場合もあります。

注意欠如・多動症(ADHD)
注意力の乏しさ、過剰な活動性と衝動性が特徴
以上、代表的な精神障害の症状について見てきましたがいかがでしたか。次回は「精神保健の課題と支援」を取り上げます。それでは、第25回精神保健福祉士国家試験の問題の中から課題をあげておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神疾患とその治療」
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問題3 次のうち、統合失調症の陰性症状として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 言葉のサラダ
- 2 貧困妄想
- 3 感情鈍麻
- 4 作為体験
- 5 思考抑制
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